担任ですね
「坊主、名前、言えるか」
ぼんやりとした視界の中、低く掠れたおっさんの声が耳に届いた。
「......よしだ、あおい、十六歳、住所はS県の......」
「ストップ、意識はしっかりしてるな。ならもう大丈夫だ」
周りから良かった、無事だ、と明るい声が漏れ聞こえる。だけど俺には状況が全然分からない。
「.........おっさん、俺どうなったの?」
「アオイとやら、お前さん森の中でゴブリンに襲われて気絶してたんだよ」
「ゴブ......??」
「まあまず飲め。水だ」
差し出されたコップの中にある水を飲み干す。生まれてこのかた、こんな美味い水初めて飲んだ。
「うめえ」
「よっぽど喉渇いてたんだな」
「あんたぁ、ジオさんに助けてもらえてラッキーだったね!!」
水が身体中に行き渡ったからか、視界がクリアになる。木造の小屋...店?の中、俺はおっさんに支えられて、何とか上体だけ起こして座っていた。
目の前にはかーちゃんぐらいの歳の、ふくよかなおばさんと、その周りに老若男女がずらり。
だけど変だ。格好がなんていうか、洋画の中から出てきたみたいな古くさい服装なのだ。
ドレス、鎧、マントにブーツ。そういや顔立ちも絶対日本人じゃないっていう顔ばかり。
「...すんません、ここどこっすか」
「ビスカリア地方の宿場町だよ、ここは俺の行きつけの酒場」
「.........俺、何でここにいるんでしょう......」
皆が顔を見合わせる。その答えを持つものはここには居なそうだった。
「お前さん、記憶喪失か?」
「いや.......記憶はあるけど、でもこの土地は知らないし、なんか絶対俺がいた国じゃない......」
「確かに坊主の服、奇妙な服だな」
俺はシャツにベージュのズボン、高校の制服のままだ。
おっさんの服はよく見ると、鎧にマント、腰に剣。ゲームとかでよく見る冒険者そのものだ。
「......もしかして、魔物とか出ます?」
「?この辺りか?出るな」
「おっさん、強いの?」
「あんた!ジオさんに向かっておっさん、おっさんって!!」
「いいよおかみ。......強いよ」
不敵に笑うおっさんは、男の俺が見ても滅茶苦茶カッコよかった。なんていうか、色気がすごい。
「それで、あっちはどうだ?」
おっさんが顔を上げた先には、見慣れた大人が横たわっていた。
メガネに太っちょ、白シャツにぱつぱつの黒パンツ。見慣れたフォルム。
「そめちゃん何でいんの」
「......ハッ、ここは??あれ、俺酔い潰れた??」
「そめちゃん、ここ日本じゃないよ」
「おい、吉田!!子供が来るとこじゃないぞここ!!何だ?何で皆集まってるんだ?」
おっさんが眉間に皺を寄せて聞いてきた。
「お前さんの知り合い?」
「担任ですね」