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雨の日とアールグレイ
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短編
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雨の日とアールグレイ
作者:
静寂漣
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世界には、二種類の人間がいる。 雨が降ったときに、ただただ自分を濡らすだけで鬱陶しい、と思う人と、雨音の向こうにある静寂を愛せる人。 僕たちは間違いなく、後者だった。 大学の片隅にある、少し薄暗い旧図書館。 そこは僕たちにとって、激しい雨から逃れて潜り込む、静かな潜水艦のような場所だった。 僕の記憶の中の彼女は、いつも雨の匂いと、甘く爽やかなアールグレイの香りを纏っている。 ベージュのトレンチコート。白磁のマグカップ。そして、古い紙を扱うために傷ついた、小さな指先。 僕たちは、お互いのプライベートに、必要以上に踏み込むような真似はしなかった。 連絡先を熱心に交換することも、今度どこかへ行こうと騒がしく約束することもなかった。 ただ、三つ隣の席に座り、同じ静寂を分け合い、数行の文字を交わす。 大人しい僕たちの恋は、雨音に紛れるように、ただ静かに、けれど誰よりも一途に、心の奥底へ降り積もっていった。 「薫先輩」 2つ年下の彼女が、小さな声で僕の名前を呼ぶ。 その響きだけで、僕の灰色だった日常は、綺麗な琥珀色に染まっていくのだった。 これは、もうすぐ大学を卒業してこの街を去る僕と、雨の日に深く繋がっていった彼女の、、静かで、一番純粋だった季節の記憶。 窓ガラスを叩く細かな雨の音が、今も耳の奥で、優しくアールグレイの湯気を揺らしている。
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目次(2話)
最終更新:2026/9/6
潜水艦の街
2026/9/5 投稿
琥珀色の交換日記
2026/9/6 投稿
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