
⑭ 母の告白
昭和51年、西暦なら1976年4月。ボクは六年生になった。担任は、去年と同じ中田先生。 例の人権無視野郎だ。彼は新学期開始早々、あろうことか、今年もボクに、不名誉なあだ名をつけて喜んでいた。 彼は黒板に、ボクのクラスメートの氏名と出席番号を書き出して示す時、男子は白、女子は赤のチョークで表し、ボクだけ黄色で書いたのだ。その上でボクに対して「黄色の13番」などというメンドクサイあだ名を命名をしたのだった。 ......やっぱりコレ、訴訟してもいいレベルのイジメだよねえ? まあ、でも、そんな変なあだ名が定着するはずもなく、ボクは自分のペースで、クラスメートたちと、そこそこ良好な関係を築いていた。 例のガキ大将とも、去年の暮れに和解出来たし.........。 でも正直に言うと、最終的には、しつこく絡んでくる彼に対して、ボクがキレてしまって、暴力に訴えたんだけどね。 剣道部で鍛えられたせいで、いつの間にか、ボクも身長が伸びて、腕力もついていたのだった。 暴力で勝っても、何だかスッキリしない。自分の中の動物的な部分を、引き出された感じがして、とても後味が悪かったのを覚えている。 だからこれ以降、長い間、他人に対して暴力的になることはなかったのだ。 さて話は変わるけど、6月に入ったころ、そんな担任から宿題が出された。それは"自分の名前のルーツを調べよう"......そんな課題だった。 この頃のボクは、宿題に早め取りかかることがすっかり習慣化していたので、帰宅して早々、玄関で母さんに質問してみたのだった。 母さんは、少しその場で考えていたけど、「こっちへ来て座りなさい」とボクをリビングに連れて行った。 ソファに向かい合わせに座ると、母さんが話し始めた。「雪村も六年生だし、そろそろ話してもいいころね?......いいわ。今から話すことは、信じられないこともあるだろうけど、全部本当のことよ。だから真剣に聞いてね」 一体、何を話すというのだろう。母さんはいつもより少し怖い顔をしていた。「......実は昔、あなたにはお姉さんがいたの。でも、生まれてすぐに亡くなってしまったのよ」 ああ、昔、叔母さんが怒っていたアレのことか。 幼いながらに、ボクの記憶の中でひっかかっていた、ナニかが蘇ってきた。「彼女がちゃんと生まれていれば、空から降る雪に子どもの子と書いて、雪子という名前になるはずだったの」「!?」ボクはとても驚いた。と、同時に、心のどこかで納得もした。「次にあなたが生まれたときに、お父さんが、戦国武将の真田幸村のことが大好きだったから、それにあやかってユキムラと名付けたんだけど......ユキの字は、お姉さんの雪をもらってつけたのよ」......そうだったんだ。コレで宿題は提出できそうだ。「......でね」 母さんの話はまだまだ続く。「ここからが不思議な話なんだけど......雪子が亡くなってすぐ、お母さんが病院のベッドで泣いていると、雪子がやって来たの」「???」 今、なんて?「ああ、正しく言うと、自分のことを雪子と名乗るセーラー服を着た少女が、わたしの枕元に立っていたのよ......そして、彼女はとても優しくわたしの事を慰めてくれたのよ」「そんな......?」「彼女は、この世ではないどこかで、雪子は生きているから安心して、と言っていたわ......私には、彼女がウソをついているようには見えなかった」 母さんの目は、どこか遠くを見ているようだった。「ただ、ここからがもっと不思議なんだけど」 まだナニかあるのか?「実はお母さんね、彼女にもっと昔に出会っていたのよ」「えっ?」 何だか背筋が寒くなるボク。「お母さんがお父さんに初めて出会ったあの日......今からそう、17年くらい前かしらねえ」 いよいよ雪子さんが何者かわからなくなってきた。 それとも、昔、彼女が言っていたように、もっともっと、色々な本を読んだり勉強したりすれば、理解できるようになるのだろうか? ボクは何だか途方に暮れてしまったのだった。

⑭ 母の告白
昭和51年、西暦なら1976年4月。ボクは六年生になった。担任は、去年と同じ中田先生。 例の人権無視野郎だ。彼は新学期開始早々、あろうことか、今年もボクに、不名誉なあだ名をつけて喜んでいた。 彼は黒板に、ボクのクラスメートの氏名と出席番号を書き出して示す時、男子は白、女子は赤のチョークで表し、ボクだけ黄色で書いたのだ。その上でボクに対して「黄色の13番」などというメンドクサイあだ名を命名をしたのだった。 ......やっぱりコレ、訴訟してもいいレベルのイジメだよねえ? まあ、でも、そんな変なあだ名が定着するはずもなく、ボクは自分のペースで、クラスメートたちと、そこそこ良好な関係を築いていた。 例のガキ大将とも、去年の暮れに和解出来たし.........。 でも正直に言うと、最終的には、しつこく絡んでくる彼に対して、ボクがキレてしまって、暴力に訴えたんだけどね。 剣道部で鍛えられたせいで、いつの間にか、ボクも身長が伸びて、腕力もついていたのだった。 暴力で勝っても、何だかスッキリしない。自分の中の動物的な部分を、引き出された感じがして、とても後味が悪かったのを覚えている。 だからこれ以降、長い間、他人に対して暴力的になることはなかったのだ。 さて話は変わるけど、6月に入ったころ、そんな担任から宿題が出された。それは"自分の名前のルーツを調べよう"......そんな課題だった。 この頃のボクは、宿題に早め取りかかることがすっかり習慣化していたので、帰宅して早々、玄関で母さんに質問してみたのだった。 母さんは、少しその場で考えていたけど、「こっちへ来て座りなさい」とボクをリビングに連れて行った。 ソファに向かい合わせに座ると、母さんが話し始めた。「雪村も六年生だし、そろそろ話してもいいころね?......いいわ。今から話すことは、信じられないこともあるだろうけど、全部本当のことよ。だから真剣に聞いてね」 一体、何を話すというのだろう。母さんはいつもより少し怖い顔をしていた。「......実は昔、あなたにはお姉さんがいたの。でも、生まれてすぐに亡くなってしまったのよ」 ああ、昔、叔母さんが怒っていたアレのことか。 幼いながらに、ボクの記憶の中でひっかかっていた、ナニかが蘇ってきた。「彼女がちゃんと生まれていれば、空から降る雪に子どもの子と書いて、雪子という名前になるはずだったの」「!?」ボクはとても驚いた。と、同時に、心のどこかで納得もした。「次にあなたが生まれたときに、お父さんが、戦国武将の真田幸村のことが大好きだったから、それにあやかってユキムラと名付けたんだけど......ユキの字は、お姉さんの雪をもらってつけたのよ」......そうだったんだ。コレで宿題は提出できそうだ。「......でね」 母さんの話はまだまだ続く。「ここからが不思議な話なんだけど......雪子が亡くなってすぐ、お母さんが病院のベッドで泣いていると、雪子がやって来たの」「???」 今、なんて?「ああ、正しく言うと、自分のことを雪子と名乗るセーラー服を着た少女が、わたしの枕元に立っていたのよ......そして、彼女はとても優しくわたしの事を慰めてくれたのよ」「そんな......?」「彼女は、この世ではないどこかで、雪子は生きているから安心して、と言っていたわ......私には、彼女がウソをついているようには見えなかった」 母さんの目は、どこか遠くを見ているようだった。「ただ、ここからがもっと不思議なんだけど」 まだナニかあるのか?「実はお母さんね、彼女にもっと昔に出会っていたのよ」「えっ?」 何だか背筋が寒くなるボク。「お母さんがお父さんに初めて出会ったあの日......今からそう、17年くらい前かしらねえ」 いよいよ雪子さんが何者かわからなくなってきた。 それとも、昔、彼女が言っていたように、もっともっと、色々な本を読んだり勉強したりすれば、理解できるようになるのだろうか? ボクは何だか途方に暮れてしまったのだった。

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