ep.353 制作発表「玉ねぎは天国の死者か地獄の生者か」
「にゃうにゃああ! 全銀河が震えた前作の興奮も冷めやらぬ今! 私はさらなる深淵へと手を伸ばすのです! 次なる舞台は再びあの聖地、『NUC食堂1号店』
豪華キャストを迎え、ドキュメンタリーを超えた『魂のメイキング』制作決定なのですー!!」
玉葱の皮が桜吹雪のように舞い散る特設ステージ。水中ゴーグルを額に上げた咲姫が、充血した瞳を輝かせながら叫んだ。その背後には、今回の「主役」として集められた、あまりにも癖の強すぎる面々が並んでいる。
「...まずはこの方! 演技歴120年、和装の重鎮! 餡子熊王(あんこくまおう)先生なのです!」
紹介されたのは、見事な毛並みの熊獣人。重厚な着物を粋に着こなし、腰には「特製インペリアル」と刻印された巨大な水筒を下げている。
「...うむ。玉葱の地獄とやら、芸の肥やしにさせてもらおう。...ズズッ」
熊王が水筒の蓋を開けて啜ったのは、茶ではなく「こしあん」だった。
「続いて、地底の穴掘り職人、バッシュさん! 彼の掘る穴は、地獄の底まで通じているのです!」
「がはは! 玉葱の根っこがどこまで続いてるか、俺のスコップが暴いてやるぜ! ...ところで監督、この惑星には『熟成された酒』は埋まってねえのか?」
ドワーフのバッシュは、すでに現場の地質よりも「埋蔵酒」にしか興味がない様子だ。
「そして...私の『尊いセンサー』が駅のホームで爆発した奇跡の美少女! 期待の超新人、ハーフエルフのルネちゃんなのです!」
「あ...あの、私、ただ落としたお財布が見つからなくて泣いていただけなんですけど...。ここ、どこなんですか...? 目が痛くて、また涙が...」
絶望的な幸の薄さを漂わせる美少女ルネ。彼女の涙を見た瞬間、咲姫のシャッターが狂ったように切られた。
「これなのです! この『本物の絶望』! 餡子を啜る静寂、地を穿つ執念、そして理由なき涙! この三人が揃えば、玉葱は天国にも地獄にもなるのですー!!」
「あはは、新しいおもちゃ...じゃなくて、役者さんがいっぱいだねぇ~。特におじいちゃん熊、その中身の餡子、私のお酒と交換しない?」
うさちぁんが、早くもベテラン俳優の私物をボッタクリ価格で交渉し始め、ステージ裏では騎士が「...また犠牲者が増えた...」と、遠い目で玉葱を磨き始めていた。
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【新章進捗:1/8】
咲姫(総監督):前作のヒットで得た資金(と借金)を投じ、新キャストを確保。
餡子熊王:玉葱の刺激を「餡子の甘み」で中和しようとするベテラン。
バッシュ:ドワーフの習性で、玉葱惑星の「核」を掘り当てようとしている。
ルネ:理由もわからず連れてこられたハーフエルフ。存在自体が「悲劇」のヒロイン。
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