ep.271 開幕!招かれざるプロデューサーと猫の誘惑
エトスフェリアのインフラ管理官テラが、隣の惑星システムへの出張監査に
出かけてから三日。月面拠点『かぐや庵』周辺には、かつてない「ゆるい空気」
が漂っていた。
「テラちゃんがいないと、空気がキンキンしてなくて過ごしやすいのです!」
「そうだねぇ咲姫ちゃん。お酒の在庫チェックも甘いし、最高だよぉ♪」
咲姫とうさちぁんが、アンペリアの蛇口から出る「微炭酸水(うさちぁん
特製)」を片手にのんびりしていたその時、ガシャン!と派手な音を立てて
一人の男が現れた。
派手な虎の刺繍が入ったスカジャン。首にはジャラジャラとした金の鎖。
ピンと立った耳と、不敵に揺れる尻尾。猫獣人の「猫二(ねこじ)」である。
「ヘイヘイ! そこにいるのは銀河の寵児、咲姫様じゃにゃいか!」
猫二は大きなトランクを広げると、そこからネオン色に光る怪しい機械を
次々と取り出した。
「俺は猫二。宇宙を熱狂させるプロデューサーだにゃ。お嬢さん、アンタの
その膨大な魔力、ただ水を流すためだけに使うなんて勿体ないにゃ。
俺と一緒に、銀河全域を震わせる『ギャラクシー・フェス』をやるにゃ!」
「フェス...? なんだか響きが美味しそうなのです!」
咲姫の興味を引いたと見るや、猫二の舌はさらに滑らかに回る。
「そうにゃ! アンペリアの配管を光ファイバー代わりに使って、咲姫様の
歌と姿を全惑星に同時配信するにゃ。蛇口からはシャンパン、空からは
金粉、ステージは純金! もちろん、プロデュース料は格安でいいにゃ!」
「いいよぉ! 面白そうだよぉ! 猫ちゃん、採用!」
うさちぁんが勢いで承諾した瞬間、月面拠点の改装工事が始まった。
「ちょっと待ったぁぁぁ!!」
血相を変えて飛び込んできたのはリオだった。彼の手には、猫二が勝手に
発行した「エンタメ予算申請書(白紙委任状)」が握られている。
「猫二! この予算規模は何だ! 予備費が全部ライブの特効用火薬代に
なってるじゃないか! それにアンペリアの改造は、テラさんが帰ってきたら
絶対怒られるぞ!」
リオが猫二の胸ぐらを掴もうとしたその瞬間。猫二はスッと目を伏せ、
あざとく首を傾げて、その場に丸くなった。
「にゃー...にゃー(わかんにゃい)。俺、ただの猫だにゃ。
難しい数字の話は、お腹が空いちゃうにゃ...にゃーん」
「...っ、こ、この...! にゃーにゃー鳴いてごまかすな!
さっきまで普通に喋ってただろう!」
「にゃー(ゴロゴロ)」
猫二の「可愛さ(という名の無責任)」と、咲姫の「ワクワク」が
合体し、エトスフェリアのインフラは瞬く間にネオン輝く
巨大なライブハウスへと変貌を遂げていく。
遠くの惑星で、テラの事務ボードが「異常な魔力消費」のアラートを
鳴らし始めていることも知らずに...。
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【楽の章:進捗状況 1/6】
・猫二:初登場。リオの追求を「猫のフリ」で回避しつつ、予算を食い潰す。
・インフラ:アンペリアを「ストリーミング用ケーブル」に改造中。
・リオ:月面保険の残高を見て卒倒寸前。
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