ep.235 迷子の聖女と、隠し倉庫の禁断ポテチ
王国の聖女は、日々「清貧」と「自制」を説く立場にありました。しかし、空から降ってくる「お酒の雲」の匂いと、炭酸ロケットの轟音、そして丘全体から立ち上る香ばしい匂いに、彼女の理性がついに崩壊しました。 「......これは、悪魔の誘惑か、あるいは神の導きか。確かめねばなりません(食べたい)」
【陥落:聖女と禁断のフルコース】
隠し通路(第二の道)をフラフラと彷徨っていた聖女を捕獲したのは、パトロール中の咲姫でした。 「そんなに痩せ細って、お米の神様に失礼なのです! 聖女なら、美味しいものを食べて人々を笑顔にするのが仕事のはずなのです!」
咲姫は問答無用で聖女を0番倉庫へ連行し、目の前に「究極のセット」を並べました。
雪山の氷結炭酸とお酒:さっきまで(ep.234)の雪山に埋めてキンキンに冷やしておいた、喉を突き刺すような刺激の炭酸酒。
厚切りベーコンポテチ:巨大オーブンで、イノシシの脂を吸わせながらカリッカリに焼き上げた厚切りのポテト。
「さあ、召し上がるのです!」 聖女が震える手でポテチを一口齧り、お酒を流し込んだ瞬間、彼女の瞳から大粒の涙が溢れました。 「......神は......神はここにいたのですね......」
【降臨:物理的な神様】
「呼んだ~? 神様なら、ここにもいるよぉぉ~♪」 その時、段ボール箱の中から、顔を真っ赤にした「うさちぁん」がひょこっと顔を出しました。手には飲みかけの焼酎瓶。 「ひぇっ!? (物理的な)神様!?」 本物の神(?)を目の当たりにし、聖女は腰を抜かしますが、咲姫は構わず彼女の手に真っ白な小麦粉をなすりつけました。
「驚くのは後なのです! 食べる専門はうさちぁんだけで足りているのです。聖女さんは今日から、パンを焼いて奇跡を起こす『パン作り教』の伝道師になるのです!」
【目覚め:パン作り教の誕生】
咲姫に教わった通り、聖女が祈りを込めながら生地をこね始めると、不思議なことが起こりました。彼女の聖なる魔力が生地に染み込み、オーブンに入れる前からパンが神々しく発光し始めたのです。 「......ああ、この弾力、この温もり。これこそが愛。これこそが救済です!」 焼き上がったのは、一口食べればどんな悩みも吹き飛ぶ『聖女の極楽あんぱん』 聖女は自ら聖衣を脱ぎ捨て、エトスフェリアの特製エプロンを纏いました。彼女の瞳には、かつての迷いはありません。ただ、最高の焼き加減を追求する職人の情熱だけが宿っていました。