ep.382 ポジティブな兎と、震える猫
新スタッフ全員合流! ポジティブすぎる兎と、震える猫。そして22時までタダ働きを強いられる猫二。
「にゃうにゃあ! 空中撮影担当が確保できたなら、次は地上と演出の要なのです! さあ、貨物室の奥で震えている子たちも、外の空気を吸うのですー!!」
咲姫の掛け声と共に、輸送船から新たに二人の獣人が引きずり出された。
「やぁやぁ皆さん! 素晴らしい景色ですね! 僕はぽぷらん。咲姫さんに『銀河を驚かせる主役にしてあげる』って言われて来ました! よろしくお願いしますねぇ!」 長い耳をパタパタと揺らし、眩いばかりの笑顔を振りまくのは兎獣人の男、ぽぷらんだ。拉致された状況を「新しい世界への招待」と脳内変換しているのか、彼の辞書に「悲観」の文字はない。
「...うう、美味しいお魚をいっぱい食べさせてあげるって言われたのに。ここ、お魚どころか草と泥の匂いしかしないニャ...」 対照的に、自分の尻尾を抱えてガタガタと震えているのは猫獣人の女性。彼女は、先に泥まみれで地面を掘っていた同族の猫二と目が合い、さらに顔を青ざめさせた。
「...さらっと。新スタッフの皆様、歓迎します。これより皆様を『社宅』へ案内します。ただし、規約に基づき、家賃として毎月 銅貨300NkQ(文官の平均給与分) を給与から天引きさせていただきます」 アリシアが事務的に告げた瞬間、猫獣人の女性の耳が力なく垂れ下がった。
「家賃が給与と同じ!? 働いても働いても、手元に何も残らない計算じゃないですかー!!」 超新人が自分のことのように絶叫するが、ぽぷらんは「ほほう、天引き! 面倒な支払いがなくて助かりますね!」と親指を立てている。
「にゃうにゃあ! 細かいことはいいのです! 20時の日没まではスタジオ建設、22時の日付変更までは自分たちの生活基盤を整える時間なのです! 社宅は寝るためだけの場所! 夢を見るのは、仕事中だけで十分なのですー!!」
「あはは、いいこと言うねぇ~。じゃあ、引っ越し祝いにこの『新生活セット』を売ってあげるよぉ~。特別価格で 銀貨1枚(1,000NkQ) さぁ~。上級魔法を1個教わるのと同じ値段だけど、君たちの明るい未来に免じて、特別にツケ(利息1.1倍)でいいよぉ~」 うさちぁんが、パン1個=1NkQ の世界で、新スタッフたちにさらなる借金の鎖を巻き付けようと微笑む。
「...さらっと。猫二総務部長。新スタッフの教育および、22時までの『自宅建設』の監督も貴方の仕事です。もちろん、その時間は無給ですのであしからず」 「僕の人生、日没後も真っ暗ニャーー!!」 白金貨(100,000NkQ) クラスの負債を抱えた猫二の悲鳴が、22時の消灯を待たずして星系に木霊した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
咲姫(総監修):星系全体の構造を「TRANSFORM」し、拉致したスタッフを「主役」という名の歯車に組み込む。
ぽぷらん(新スタッフ・兎):超ポジティブ。拉致も家賃天引きも「新しい経験」として楽しむ。
超新人: 時給3NkQ(酒1杯分) を握りしめ、夜の20時から自分の家を建てるための泥にまみれる。
猫獣人の女性(新スタッフ):拉致の現実に震える常識人。家賃 銅貨300NkQ(文官の平均給与分) の宣告に絶望する。
うさちぁん:銀貨1枚(1,000NkQ) の新生活セットを売りつけ、初日からスタッフを借金漬けにする。
猫二(総務部長):20時以降の「無給監督業務」を押し付けられ、過労死ラインを光速で突破。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━