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ep129 会議は進まない

 座敷に乗り込んできた隼斗は、ズカズカと天音の横まで歩いてきた。明らかに焦った表情で肩で息をしていた。
 道徳に頭を下げると息を整えながら、天音の前へと移動して睨む。後ろに控えていた蒼はサングラス越しでも隼斗の眼力の強さが分かり、思わず口笛を吹きそうになる。

「隼斗、オヤジの前だぞ」

 蒼の位置からは見えないが、天音の性格を考えると隼斗を睨み返しているのだろう、前から聞こえてくる声音には怒りが含まれていた。
 隼斗は盛大に舌打ちをすると、小声で「この野郎」と悪態をつく。そして、道徳の前へと歩み出た。

「今回の件、気付けなくて申し訳ない」

 道徳の前に着くと隼斗はすぐに土下座をした。頭を床に叩きつけるような動作に思わず、蒼は額を押さえた。
 
「......顔を上げろ、隼斗」

 落ち着いた、しかし感情は読ませない声で短く言葉を紡いだ。隼斗は少しだけ時間をおいてから顔を上げた。天音の後ろからチラリと見えた横顔は追い詰められているように青い。

「別に、今回の件はお前だけの責任じゃねぇ。能力者の組織が新たに出来るって話でお前を最初っから、組織の創設時点で送り込んだ以上、後から来た奴らの派閥から敬遠されるのも考えれば分かった」

 胡座を組み、頬杖をついた状態で道徳は軽快に笑う。

「そもそも、お前に頼んだのは"サーカス"のリーダー日向昴の監視だ。そのリーダーが行方不明で探していて、そもそも"サーカス"のアジトにそんなにいなかったのも知っている」
「......だとしても、俺の責任っす。天音が来なかったらまだ知らなかったので、そこは甘んじて受け入れます」

 隼斗が真剣に話しているのを聞きながら、蒼は笑いをこらえるのに必死だ。今回の件は天音も棚からぼた餅状態で知っただけの出来事だ。
 ノアズ計画の全貌を知りたくて、蒼が昴を連れて乗り込むための足に偶然使った。
 それが、"サーカス"のリーダーである昴の居場所とノアズ計画、そして本島で計画されているらしい能力者誘拐事件の計画まで手に入れたのだ。

 そしてその情報は全て、蓮によって齎されたもので天音はただ姿消しの運び屋をやっただけだ。蒼が頼まなければ、この件は未だに神庭会には知られていなかった。
 蒼は天音の後ろに座ったことを後悔した。この角度からだと天音の表情が見えない。絶対に面白いのになと思いながら蒼は隼斗に視線を戻す。

「だから、いいと言ってるだろ。それよりも今後どうするかだ」

 申し訳なさそうに顔を歪める隼斗に道徳はピシャリと言い放つ。そこまで大きな声を出していないが空気が震えたように感じた。

「そうっすね。とりあえず、許可が出るなら蓮......うちのセキュリティ担当に正体を明かして協力を仰げたらと思ってるんですが」
「......そいつは信用できるのか?」
「基本、引きこもりなんで外部とのやりとりはほぼないっすね」

 そいつはオンラインゲームで外部と繋がりまくっているぞと蒼は口を挟みたくなったが、流石に座敷内に流れる空気の重さから自重した。
 
「オヤジ、発言いいか?」
「なんだ、天音」

 状況を見守っていた天音が口を開く、そして立ち上がると隼斗の隣に並んだ。

「隼斗が言っているのが、俺が今日会った奴なら、他言無用にしてくれると思います。それに成り行きとは言え、昴クン......"サーカス"のリーダーに隼斗が内通者だってことはバレたんで」
「バレたというか、バラしにいっただろ」
「待て、まさかあそこに昴がいたのか!?」

 堪えきれなくなり、蒼は茶々を入れる。隼斗は目を見開き、天音に掴みかかった。
 
「おい、テン!あの場にいたのはお前と、そこのガキだけじゃなかったのか!?」
「落ち着け、隼斗。オヤジの前だぞ」
「これが落ち着いていられるか!」

 胸ぐらを掴みながら、額同士がくっつくのではないかという距離感で隼斗は怒りをあらわにした。

「お前、俺に扉を開ける時間を教えたときに、実は一緒にいたとかいわないよな?」
「離せ、隼斗。......一緒にいたがなんだ? あの流れで感動の再会ってか? ただでさえ、侵入だ。リスク考えたら言うわけないだろ」
「状況が分かっていたら、俺も合わせろとは言わない! だけどな......」

 震える腕を隼斗は不服そうに天音から放す。

「だったら、すーさんに会いに行く? 明日とか!」
「は?......テン、このガキなんだ」

 状況の様子見をしていた蒼は、大体を理解したため、立ち上がり2人に近付くと隼斗の言葉を遮り、2人の間に入る。
 隼斗は思わずと言ったように間抜けな声を出す。蒼は気にせずに、続けた。

「え?すーさん......昴さんに会いたいんだよな?」
「蒼......、頼むから黙っていてくれ。というか、その話は会議が終わってからにしてくれ」
「はーい」

 天音が頭を押さえながら蒼を見る。顔にはデカデカとこれ以上余計なことはするなと書かれていた。蒼は小さく笑うと元いた場所に戻る。

「そもそも、あのガキはなんだ! なんで、当たり前のようにここにいる!」

 隼斗は蒼を指差しながら疑問を口にする。蒼の視線の端で何人かの幹部が頷くのが見えた。
 頭を抱える天音を嘲笑うかのように、道徳の笑い声が広い座敷の中をこだました。
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ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
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ep129 会議は進まない

 座敷に乗り込んできた隼斗は、ズカズカと天音の横まで歩いてきた。明らかに焦った表情で肩で息をしていた。
 道徳に頭を下げると息を整えながら、天音の前へと移動して睨む。後ろに控えていた蒼はサングラス越しでも隼斗の眼力の強さが分かり、思わず口笛を吹きそうになる。

「隼斗、オヤジの前だぞ」

 蒼の位置からは見えないが、天音の性格を考えると隼斗を睨み返しているのだろう、前から聞こえてくる声音には怒りが含まれていた。
 隼斗は盛大に舌打ちをすると、小声で「この野郎」と悪態をつく。そして、道徳の前へと歩み出た。

「今回の件、気付けなくて申し訳ない」

 道徳の前に着くと隼斗はすぐに土下座をした。頭を床に叩きつけるような動作に思わず、蒼は額を押さえた。
 
「......顔を上げろ、隼斗」

 落ち着いた、しかし感情は読ませない声で短く言葉を紡いだ。隼斗は少しだけ時間をおいてから顔を上げた。天音の後ろからチラリと見えた横顔は追い詰められているように青い。

「別に、今回の件はお前だけの責任じゃねぇ。能力者の組織が新たに出来るって話でお前を最初っから、組織の創設時点で送り込んだ以上、後から来た奴らの派閥から敬遠されるのも考えれば分かった」

 胡座を組み、頬杖をついた状態で道徳は軽快に笑う。

「そもそも、お前に頼んだのは"サーカス"のリーダー日向昴の監視だ。そのリーダーが行方不明で探していて、そもそも"サーカス"のアジトにそんなにいなかったのも知っている」
「......だとしても、俺の責任っす。天音が来なかったらまだ知らなかったので、そこは甘んじて受け入れます」

 隼斗が真剣に話しているのを聞きながら、蒼は笑いをこらえるのに必死だ。今回の件は天音も棚からぼた餅状態で知っただけの出来事だ。
 ノアズ計画の全貌を知りたくて、蒼が昴を連れて乗り込むための足に偶然使った。
 それが、"サーカス"のリーダーである昴の居場所とノアズ計画、そして本島で計画されているらしい能力者誘拐事件の計画まで手に入れたのだ。

 そしてその情報は全て、蓮によって齎されたもので天音はただ姿消しの運び屋をやっただけだ。蒼が頼まなければ、この件は未だに神庭会には知られていなかった。
 蒼は天音の後ろに座ったことを後悔した。この角度からだと天音の表情が見えない。絶対に面白いのになと思いながら蒼は隼斗に視線を戻す。

「だから、いいと言ってるだろ。それよりも今後どうするかだ」

 申し訳なさそうに顔を歪める隼斗に道徳はピシャリと言い放つ。そこまで大きな声を出していないが空気が震えたように感じた。

「そうっすね。とりあえず、許可が出るなら蓮......うちのセキュリティ担当に正体を明かして協力を仰げたらと思ってるんですが」
「......そいつは信用できるのか?」
「基本、引きこもりなんで外部とのやりとりはほぼないっすね」

 そいつはオンラインゲームで外部と繋がりまくっているぞと蒼は口を挟みたくなったが、流石に座敷内に流れる空気の重さから自重した。
 
「オヤジ、発言いいか?」
「なんだ、天音」

 状況を見守っていた天音が口を開く、そして立ち上がると隼斗の隣に並んだ。

「隼斗が言っているのが、俺が今日会った奴なら、他言無用にしてくれると思います。それに成り行きとは言え、昴クン......"サーカス"のリーダーに隼斗が内通者だってことはバレたんで」
「バレたというか、バラしにいっただろ」
「待て、まさかあそこに昴がいたのか!?」

 堪えきれなくなり、蒼は茶々を入れる。隼斗は目を見開き、天音に掴みかかった。
 
「おい、テン!あの場にいたのはお前と、そこのガキだけじゃなかったのか!?」
「落ち着け、隼斗。オヤジの前だぞ」
「これが落ち着いていられるか!」

 胸ぐらを掴みながら、額同士がくっつくのではないかという距離感で隼斗は怒りをあらわにした。

「お前、俺に扉を開ける時間を教えたときに、実は一緒にいたとかいわないよな?」
「離せ、隼斗。......一緒にいたがなんだ? あの流れで感動の再会ってか? ただでさえ、侵入だ。リスク考えたら言うわけないだろ」
「状況が分かっていたら、俺も合わせろとは言わない! だけどな......」

 震える腕を隼斗は不服そうに天音から放す。

「だったら、すーさんに会いに行く? 明日とか!」
「は?......テン、このガキなんだ」

 状況の様子見をしていた蒼は、大体を理解したため、立ち上がり2人に近付くと隼斗の言葉を遮り、2人の間に入る。
 隼斗は思わずと言ったように間抜けな声を出す。蒼は気にせずに、続けた。

「え?すーさん......昴さんに会いたいんだよな?」
「蒼......、頼むから黙っていてくれ。というか、その話は会議が終わってからにしてくれ」
「はーい」

 天音が頭を押さえながら蒼を見る。顔にはデカデカとこれ以上余計なことはするなと書かれていた。蒼は小さく笑うと元いた場所に戻る。

「そもそも、あのガキはなんだ! なんで、当たり前のようにここにいる!」

 隼斗は蒼を指差しながら疑問を口にする。蒼の視線の端で何人かの幹部が頷くのが見えた。
 頭を抱える天音を嘲笑うかのように、道徳の笑い声が広い座敷の中をこだました。
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ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
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