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ep105 監視カメラ

蒼は歩きながら考える。

 ノアズ計画。

 名前から連想されるのはノアの方舟だ。そして唯華ははっきりと乗船者と言っていた。
 そこから考えられるのは、船での島らかの脱出だ。しかし春のシージャック事件で唯華が警察に"サーカス"の使った隠し通路を売ってるのを偶然、蒼は聞いていた。
 "サーカス"側も一度失敗した経路を使うとは思えない。

「......うーん?」

 蒼は顎に右手を当てながら考える。自然と口から声が溢れるが気にしない。
 少し考えてから、顎から手を外してポケットに手を突っ込む。スマホを取り出して、弄る。

 とりあえず、唯華のスマホをハッキング出来るかな。

 そんなことを考えながら蒼の視線はスマホから離さずに、意識は周りの気配を探りながら歩く。
 そして目的地である、昼に能力者の相手をした商店街の一角まで蒼はスマホを弄りながら一切周りを見ずに到着する。

「さてと」

 蒼はスマホをしまうと、上を見上げる。アーケードから夕陽が入り込んで、反射でキラキラと輝いている。視線を左右に動かす。
 立っている位置を映し出している防犯カメラの場所を割り出す。
 蒼は指さし確認をしながら数を数えた。

「3つか」

 そして、またスマホを取り出すと防犯カメラの位置をメモする。

「よしっ、帰るか」

 まずは昼の映像の確認。それが終わったら、衛星カメラや島全体のカメラをハッキングして、男の行動範囲を漁る。それで、"サーカス"の隠れ家が分かれば御の字かなと蒼は駿河家に帰ってからの計画を立てる。
 流石に師崎家には迷惑はかけられない。でも駿河家では唯華も日常的に多くのサーバーを経由してハッキングを行っているから、問題ない。

 蒼は鼻歌交じりに来た道を戻った。自然と口角が緩むのを感じる。
 アーケードから出ると、微かに草花に混ざり、雨が降りそうな匂いがする。傘を持ってきてないなと蒼は空を見上げる。
 雲が徐々に厚くなってきている様に感じる。まだ降り出さないだろうと蒼は直感で思った。

 それでも、早く帰ることに越したことはない。蒼は頭の中で駿河家までの最短距離を思い浮かべ、気合を入れると走り出した。



◇◇◇◇



 なんとか雨が降る前に目的地に蒼は辿り着いた。駿河家にある自分の部屋に入ると部屋の電気をつける。
 部屋の中には最低限のものしか置いていない。蒼は慣れた様子で部屋の奥にある机に向かい、パソコンの電源を入れる。

 この家にパソコンはどれだけあるんだろうとパソコンが立ち上がるまでにぼんやりと考える。
 研究にハッキング、大半は普通の使われ方をしてないだろうなと蒼は笑う。

「普通......か。そんなものに意味あんのかなー」

 デスクチェアに座りながら、重心を後ろにかける。デスクチェアはギシギシと音を立てながら天井を見上げた。
 その拍子に帽子が床へと落ちて長い墨色の髪が解放されたという様に広がった。

 髪も随分と伸びたなと蒼の思考は横道に逸れる。
 願掛けに髪を伸ばすと決めてから、もう数年経った。人殺しと後ろ指を刺されても何も感じない。外野が何を言おうと、蒼自身が知っていることだ。
 真実は1つ。それでも、思い込めば事実は何通りにも出来る。

 蒼の中での事実はいつまで経っても変わらない。静香の意識が戻ること。そして静香の・・・生・を隠すこと。
 それが蒼にできる唯一の償いだと、この生きづらい世界で生きて罰を受け続ける、それだけを支えに生き続けている。
 
 ボーッとそんなことを考えているとパソコンが立ち上がる。
 蒼は重心を前へと戻すと慣れた手つきでキーボードにパスワードを打ち込んだ。
 床に落ちた帽子を無視して蒼は、マウスとキーボードを静かに動かす。

 商店街のシステムには慣れているのですぐに入れた。そこから、防犯カメラの映像を漁る。スマホでメモしたカメラの映像に切り替えた。3つの映像を並べると、蒼が男を取り押さえた時間の少し前まで戻す。
 少し俯く度に髪が顔にかかり、鬱陶しい。蒼は画面からは目を離さずに髪を結い直す。

「へぇー」

 男が騒ぎを起こす前に、4人程で話しながら歩いている映像を見つける。蒼はその4人を拡大して、画像を鮮明にして顔を確認する。
 1人は蒼を追跡して中原に引き渡した男だ。

 蒼は4人の顔を認証させ、島内のシステムにも侵入する。すぐに公式、非公式の防犯カメラを開くと以前組んだプログラムを使用して、4人の行動を洗う。

「とりあえず"サーカス"の隠れ家でも分かれば、そこに侵入してノアズ計画の聞き耳立てればいいよな」

 別の窓を開き、蒼は御影島を映している衛星カメラがないかを探る。すると現在進行形で御影島を見張る様にある衛星カメラがあることに気付く。
 不思議に思いながら、とりあえず衛星カメラにもハッキングを仕掛ける。

「......?  セキュリティが甘いのはわざとか?」

 あまりにも簡単に侵入できて、逆に蒼は警戒する。複数のサーバーを中継しているから、この場所がバレる心配はまずない。下手なウイルスが仕込まれていないかを確認するも、痕跡は見つからない。

――気持ち悪いな。

 あまりにも呆気ない。蒼はそれに嫌な違和感を覚える。しかし、今は"サーカス"を優先だ。何かあれば唯華がなんとかするだろうと蒼は最大限の警戒をしながら、カメラから男達の動向を探るために、プログラムを走らせた。
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ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
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ep105 監視カメラ

蒼は歩きながら考える。

 ノアズ計画。

 名前から連想されるのはノアの方舟だ。そして唯華ははっきりと乗船者と言っていた。
 そこから考えられるのは、船での島らかの脱出だ。しかし春のシージャック事件で唯華が警察に"サーカス"の使った隠し通路を売ってるのを偶然、蒼は聞いていた。
 "サーカス"側も一度失敗した経路を使うとは思えない。

「......うーん?」

 蒼は顎に右手を当てながら考える。自然と口から声が溢れるが気にしない。
 少し考えてから、顎から手を外してポケットに手を突っ込む。スマホを取り出して、弄る。

 とりあえず、唯華のスマホをハッキング出来るかな。

 そんなことを考えながら蒼の視線はスマホから離さずに、意識は周りの気配を探りながら歩く。
 そして目的地である、昼に能力者の相手をした商店街の一角まで蒼はスマホを弄りながら一切周りを見ずに到着する。

「さてと」

 蒼はスマホをしまうと、上を見上げる。アーケードから夕陽が入り込んで、反射でキラキラと輝いている。視線を左右に動かす。
 立っている位置を映し出している防犯カメラの場所を割り出す。
 蒼は指さし確認をしながら数を数えた。

「3つか」

 そして、またスマホを取り出すと防犯カメラの位置をメモする。

「よしっ、帰るか」

 まずは昼の映像の確認。それが終わったら、衛星カメラや島全体のカメラをハッキングして、男の行動範囲を漁る。それで、"サーカス"の隠れ家が分かれば御の字かなと蒼は駿河家に帰ってからの計画を立てる。
 流石に師崎家には迷惑はかけられない。でも駿河家では唯華も日常的に多くのサーバーを経由してハッキングを行っているから、問題ない。

 蒼は鼻歌交じりに来た道を戻った。自然と口角が緩むのを感じる。
 アーケードから出ると、微かに草花に混ざり、雨が降りそうな匂いがする。傘を持ってきてないなと蒼は空を見上げる。
 雲が徐々に厚くなってきている様に感じる。まだ降り出さないだろうと蒼は直感で思った。

 それでも、早く帰ることに越したことはない。蒼は頭の中で駿河家までの最短距離を思い浮かべ、気合を入れると走り出した。



◇◇◇◇



 なんとか雨が降る前に目的地に蒼は辿り着いた。駿河家にある自分の部屋に入ると部屋の電気をつける。
 部屋の中には最低限のものしか置いていない。蒼は慣れた様子で部屋の奥にある机に向かい、パソコンの電源を入れる。

 この家にパソコンはどれだけあるんだろうとパソコンが立ち上がるまでにぼんやりと考える。
 研究にハッキング、大半は普通の使われ方をしてないだろうなと蒼は笑う。

「普通......か。そんなものに意味あんのかなー」

 デスクチェアに座りながら、重心を後ろにかける。デスクチェアはギシギシと音を立てながら天井を見上げた。
 その拍子に帽子が床へと落ちて長い墨色の髪が解放されたという様に広がった。

 髪も随分と伸びたなと蒼の思考は横道に逸れる。
 願掛けに髪を伸ばすと決めてから、もう数年経った。人殺しと後ろ指を刺されても何も感じない。外野が何を言おうと、蒼自身が知っていることだ。
 真実は1つ。それでも、思い込めば事実は何通りにも出来る。

 蒼の中での事実はいつまで経っても変わらない。静香の意識が戻ること。そして静香の・・・生・を隠すこと。
 それが蒼にできる唯一の償いだと、この生きづらい世界で生きて罰を受け続ける、それだけを支えに生き続けている。
 
 ボーッとそんなことを考えているとパソコンが立ち上がる。
 蒼は重心を前へと戻すと慣れた手つきでキーボードにパスワードを打ち込んだ。
 床に落ちた帽子を無視して蒼は、マウスとキーボードを静かに動かす。

 商店街のシステムには慣れているのですぐに入れた。そこから、防犯カメラの映像を漁る。スマホでメモしたカメラの映像に切り替えた。3つの映像を並べると、蒼が男を取り押さえた時間の少し前まで戻す。
 少し俯く度に髪が顔にかかり、鬱陶しい。蒼は画面からは目を離さずに髪を結い直す。

「へぇー」

 男が騒ぎを起こす前に、4人程で話しながら歩いている映像を見つける。蒼はその4人を拡大して、画像を鮮明にして顔を確認する。
 1人は蒼を追跡して中原に引き渡した男だ。

 蒼は4人の顔を認証させ、島内のシステムにも侵入する。すぐに公式、非公式の防犯カメラを開くと以前組んだプログラムを使用して、4人の行動を洗う。

「とりあえず"サーカス"の隠れ家でも分かれば、そこに侵入してノアズ計画の聞き耳立てればいいよな」

 別の窓を開き、蒼は御影島を映している衛星カメラがないかを探る。すると現在進行形で御影島を見張る様にある衛星カメラがあることに気付く。
 不思議に思いながら、とりあえず衛星カメラにもハッキングを仕掛ける。

「......?  セキュリティが甘いのはわざとか?」

 あまりにも簡単に侵入できて、逆に蒼は警戒する。複数のサーバーを中継しているから、この場所がバレる心配はまずない。下手なウイルスが仕込まれていないかを確認するも、痕跡は見つからない。

――気持ち悪いな。

 あまりにも呆気ない。蒼はそれに嫌な違和感を覚える。しかし、今は"サーカス"を優先だ。何かあれば唯華がなんとかするだろうと蒼は最大限の警戒をしながら、カメラから男達の動向を探るために、プログラムを走らせた。
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ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
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