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ep130 禍月組

 隼斗に指を指された蒼は、特に気にする様子もなく先程の位置まで戻り座る。

「俺のことは、とりあえずは喋る置物だとでも思ってて。ノアズ計画潰す計画に参戦したくてきただけだから」

 周りからの怪訝な視線が刺さるが、蒼は無視して道徳を見た。
 道徳は豪快に笑いながらも目の奥には真剣さが隠れている。流石だなと思いながら、しっかりと合った目を見て、確認する。

「俺が、関わっても良いよな?」
「もちろんだ。駄目なら、天音に指示している」
「それはそれで面白そうだったかもだ!」

 天音と喧嘩は楽しそうだと少しワクワクした。

「相も変わらずに戦闘狂だな」
「戦闘狂では、ない!」
「いや、お前はどっからどう見ても戦闘狂だろう」

 天音もまた、蒼の隣に戻ってきて頭を軽くはたく。蒼は口を尖らせるが反論はやめた。室内の空気にどこからか殺意が混ざり込む気配がした。

「じゃ、話戻してくれて良いぜ」
「......蒼、マジで必要最低限、喋るのやめろ」
 
 天音が頭を押さえながら蒼にしか聞こえないように小声で呟く。

「とりあえず、状況は分かった。隼斗も一旦、落ち着け。過去じゃなく、未来の話をしよう」
「......わかりました」

 隼斗は頷くと、天音の隣に腰を下ろす。
 それを確認して、道徳は頷いた。

「では、"サーカス"の一部が立てているというノアズ計画。先程、天音の説明で全貌は分かったが、首謀者達の詳しい情報を聞いていいか、隼斗」

 道徳は、隼斗に話を振る。室内の視線が隼斗へと集中する。
 隼斗はその視線を一身に浴びながら、それでも怯むことなく口を開いた。

「多分、今過激派をまとめているのは春宮です。表向きは物腰の優しい好青年を気取っていますが、普通に裏社会とも繋がりがあります。以前のシージャックまで過激派をまとめていた須藤はまだ話せば分かる奴でしたが、春宮は違う。笑顔で人を陥れ、状況によっては裏切り、自分だけは安全圏にいるような奴です。......ほとんどの奴はこの性格を知らない。知ってるのは、俺以外は須藤と白鷺、蓮ぐらいだと思うっす」

 隼斗は姿勢を正しながら、ただまっすぐに道徳だけを見ている。
 
「春宮に関しては、俺も気をつけていたんですが、須藤を隠れ蓑に動いていたみたいで、今日までこの動きに気付けなかったっす。"サーカス"の特性上、来るものは拒まず、去るものは追わずで、入れ替わり立ち替わりで......って言い訳ですよね」
「いや、いい。4月のシージャック事件は仕入れていた。誰がとはバレていなくても、内通者の可能性を考えて静かに動いていた可能性もあるだろう」
「......そうですね、実際にシージャック事件は俺以外にも気付いて潰そうとしていた奴らも数名いましたから」

 道徳に肯定され、隼斗はホッと胸をなで下ろしていた。

「それにしても、"サーカス"が1枚岩ではないことは分かっていたが、最近は特にひでぇな」
「1年前は昴がなんとか、押さえ込んでいた。4月までは須藤がある程度はコントロールしていたんすよ。それが、シージャックの失敗で陥落した。そこからは、かなりの無法地帯になってまして、俺もまだ全貌はつかめてないです」

 隼斗は申し訳なさそうに頭を下げる。その様子を見ながら蒼は頭の中で状況を整理する。
 先程から何度か出ている、シージャック事件は蒼が関わったものと同じもののようだ。あの時は、全員の顔を覚えたが、今後は関係ないと記憶から消去した。
 しかし、あの時は20人近くがいたはずなのに10人近くに減ったのは何があったんだと少し蒼は気になった。
 そして、その正解はすぐに隼斗が教えてくれた。

「シージャックの反省を踏まえたのか本当に信頼できる仲間を春宮は秘密裏に集めていたみたいなんすよ。あいつはよく人と話している奴だから巧みに仲間集めをしていたみたいです」
「その、春宮という奴に問題は?」

 道徳が厳しい瞳で隼斗を見つめる。隼斗は少し考えるそぶりを見せてから、口を開いた。

「話している限りは問題ないんすけど、出入りしている場所が場所なので、危険です」

 隼斗はそこで言葉を切ると、室内にいる幹部達を順番に見回した。そして最後に道徳を見つめる。

「春宮の背後に、禍月組まがつきぐみがいる可能性が高いです」

 隼斗の言葉に至る所で息をのむ音が聞こえた。

 ――禍月組。

 本島と御影島2つに勢力を持つ神庭会とは違い、本物の極道組織だ。組織内に能力者がいるかは分からない。蒼も存在は知っているが、関わることで周りへの影響も考え、近付かないようにしているレベルではこの島の闇の一つである。
 予想外の名前が出たためか、室内のざわつきは大きい。

「......禍月組か」

 ざわめきを止めるように、道徳は低くそれでいて通る声で短く呟いた。
 その瞬間に、ピタッとざわめきが止まる。

「隼斗、その情報は間違いないんだな」
「出入りしているところまでは確認しています。ただ、まだ証拠まで掴めてなくて......。確信を持てたら、報告するつもりでしたが、十中八九、繋がりはあると思います」
「そうか」

 道徳は短く頷くと頬杖をつくのをやめて、膝にそれぞれ手を置いた。

「ノアズ計画とやらに、禍月組が関わっている可能性があるとなると、こちらも出方を考えないといけねぇな」

 軽い口調でありながらも緊張感の乗った声に室内でゴクリと息をのむ音が聞こえた。
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ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
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ep130 禍月組

 隼斗に指を指された蒼は、特に気にする様子もなく先程の位置まで戻り座る。

「俺のことは、とりあえずは喋る置物だとでも思ってて。ノアズ計画潰す計画に参戦したくてきただけだから」

 周りからの怪訝な視線が刺さるが、蒼は無視して道徳を見た。
 道徳は豪快に笑いながらも目の奥には真剣さが隠れている。流石だなと思いながら、しっかりと合った目を見て、確認する。

「俺が、関わっても良いよな?」
「もちろんだ。駄目なら、天音に指示している」
「それはそれで面白そうだったかもだ!」

 天音と喧嘩は楽しそうだと少しワクワクした。

「相も変わらずに戦闘狂だな」
「戦闘狂では、ない!」
「いや、お前はどっからどう見ても戦闘狂だろう」

 天音もまた、蒼の隣に戻ってきて頭を軽くはたく。蒼は口を尖らせるが反論はやめた。室内の空気にどこからか殺意が混ざり込む気配がした。

「じゃ、話戻してくれて良いぜ」
「......蒼、マジで必要最低限、喋るのやめろ」
 
 天音が頭を押さえながら蒼にしか聞こえないように小声で呟く。

「とりあえず、状況は分かった。隼斗も一旦、落ち着け。過去じゃなく、未来の話をしよう」
「......わかりました」

 隼斗は頷くと、天音の隣に腰を下ろす。
 それを確認して、道徳は頷いた。

「では、"サーカス"の一部が立てているというノアズ計画。先程、天音の説明で全貌は分かったが、首謀者達の詳しい情報を聞いていいか、隼斗」

 道徳は、隼斗に話を振る。室内の視線が隼斗へと集中する。
 隼斗はその視線を一身に浴びながら、それでも怯むことなく口を開いた。

「多分、今過激派をまとめているのは春宮です。表向きは物腰の優しい好青年を気取っていますが、普通に裏社会とも繋がりがあります。以前のシージャックまで過激派をまとめていた須藤はまだ話せば分かる奴でしたが、春宮は違う。笑顔で人を陥れ、状況によっては裏切り、自分だけは安全圏にいるような奴です。......ほとんどの奴はこの性格を知らない。知ってるのは、俺以外は須藤と白鷺、蓮ぐらいだと思うっす」

 隼斗は姿勢を正しながら、ただまっすぐに道徳だけを見ている。
 
「春宮に関しては、俺も気をつけていたんですが、須藤を隠れ蓑に動いていたみたいで、今日までこの動きに気付けなかったっす。"サーカス"の特性上、来るものは拒まず、去るものは追わずで、入れ替わり立ち替わりで......って言い訳ですよね」
「いや、いい。4月のシージャック事件は仕入れていた。誰がとはバレていなくても、内通者の可能性を考えて静かに動いていた可能性もあるだろう」
「......そうですね、実際にシージャック事件は俺以外にも気付いて潰そうとしていた奴らも数名いましたから」

 道徳に肯定され、隼斗はホッと胸をなで下ろしていた。

「それにしても、"サーカス"が1枚岩ではないことは分かっていたが、最近は特にひでぇな」
「1年前は昴がなんとか、押さえ込んでいた。4月までは須藤がある程度はコントロールしていたんすよ。それが、シージャックの失敗で陥落した。そこからは、かなりの無法地帯になってまして、俺もまだ全貌はつかめてないです」

 隼斗は申し訳なさそうに頭を下げる。その様子を見ながら蒼は頭の中で状況を整理する。
 先程から何度か出ている、シージャック事件は蒼が関わったものと同じもののようだ。あの時は、全員の顔を覚えたが、今後は関係ないと記憶から消去した。
 しかし、あの時は20人近くがいたはずなのに10人近くに減ったのは何があったんだと少し蒼は気になった。
 そして、その正解はすぐに隼斗が教えてくれた。

「シージャックの反省を踏まえたのか本当に信頼できる仲間を春宮は秘密裏に集めていたみたいなんすよ。あいつはよく人と話している奴だから巧みに仲間集めをしていたみたいです」
「その、春宮という奴に問題は?」

 道徳が厳しい瞳で隼斗を見つめる。隼斗は少し考えるそぶりを見せてから、口を開いた。

「話している限りは問題ないんすけど、出入りしている場所が場所なので、危険です」

 隼斗はそこで言葉を切ると、室内にいる幹部達を順番に見回した。そして最後に道徳を見つめる。

「春宮の背後に、禍月組まがつきぐみがいる可能性が高いです」

 隼斗の言葉に至る所で息をのむ音が聞こえた。

 ――禍月組。

 本島と御影島2つに勢力を持つ神庭会とは違い、本物の極道組織だ。組織内に能力者がいるかは分からない。蒼も存在は知っているが、関わることで周りへの影響も考え、近付かないようにしているレベルではこの島の闇の一つである。
 予想外の名前が出たためか、室内のざわつきは大きい。

「......禍月組か」

 ざわめきを止めるように、道徳は低くそれでいて通る声で短く呟いた。
 その瞬間に、ピタッとざわめきが止まる。

「隼斗、その情報は間違いないんだな」
「出入りしているところまでは確認しています。ただ、まだ証拠まで掴めてなくて......。確信を持てたら、報告するつもりでしたが、十中八九、繋がりはあると思います」
「そうか」

 道徳は短く頷くと頬杖をつくのをやめて、膝にそれぞれ手を置いた。

「ノアズ計画とやらに、禍月組が関わっている可能性があるとなると、こちらも出方を考えないといけねぇな」

 軽い口調でありながらも緊張感の乗った声に室内でゴクリと息をのむ音が聞こえた。
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ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
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