ep122 様々な陰謀?
今後の方針が決まると、昴が蓮に連絡先を伝えている。蒼と天音は少し離れた場所でそれを見ていた。
「いや、"サーカス"の創始者と聞いていたが、まともそうな奴だな」
「まともだから、怖いんだよ。天音さん」
小声で天音と蒼は2人に聞こえないように意見交換をしていく。
「あーいう、いい人が過激派を抱え込んだ"サーカス"をまとめていた。それは異常だと思うけど」
「......仲よさそうだったが、腹の内の探り合いでもしているのか?」
「別にそんなつもりはないけどさ。普通の人なのに人望があって、誰でも受け入れる。やってることは聖人君子だ。でも、聖人君子だって人だぜ? 多様な考えを全部受け入れて破綻しないわけがない。それでもまともでいる、俺はそっちの方が異常だと思うぜ?」
天音は視線を昴から横にいる蒼に動かした。
「やっぱり、お前は油断ならねぇな」
「そう? 普通の考えだと思うけど」
「そもそも普通はそこまで考えねぇんだよ」
吐き捨てる天音に、蒼は首をかしげた。
「そもそも普通って何を持って普通なんだ? 常識さえ環境で変わるのに普通に意味があるのか?」
「急に哲学的な話をするな。俺に学がないの知っているだろ」
「別に考え方だから、学は関係ないと思うけどさ」
天音はなんともいえない表情で蒼を見下ろしている。
「お前、本当にいろんな意味で年相応って言葉と無縁だよな」
「......喧嘩売ってんなら、喜んで買うぜ?」
「別に、売ってねぇよ。相変わらずだな」
「人って変わる気がなければ一生変わらないからさ」
笑いながら蒼は昴達に視線を向けた。
「でもよかったの? てっきりあの2人の話に聞き耳立てるかと思っていた」
「流石に少しとはいえ、一緒にいればそれなりに人柄分かるからな」
「ヒュー、流石――」
「それ以上言ったら、流石に絞めるからな?」
茶化そうと神庭会の役職を言おうとした蒼に気付いた天音はすぐに釘を刺した。蒼は笑ってごまかす。
「どうしたんですか?」
蒼の誤魔化すための笑い声がでかかったためか、昴達の視線を一身に受ける形となっていた。
もう話は終わったんだと蒼は天音から離れて昴達に近付く。
「もういいの? 感動の再会とまでは行かなかったけど、次いつ会えるかわかんなくないか?」
「大丈夫です。私のやることは決まっています。だから、あとはまた蓮さん達に合流できるように頑張るだけです」
「相変わらずリーダーは真面目やな。とりあえず、姉貴に今日のことは黙っとくな? なんかリーダー探して変な底なし沼に足を踏み入れたみたいなんよ。最近は、ここにも帰ってきてないし、面倒事は重ならないように気をつけないといけんからな」
昴が微かに息をのむ音が聞こえた。
「RENってお姉ちゃんいるんだ。どんな人なんだ?」
蒼は好奇心に駆られ、蓮のそばへと寄る。蓮は少し呆れた様子でスマホを取り出した。
「いい年して、ゴスロリ着て魔女みたいな帽子かぶってる......うん、変人」
「自分の姉に変人って流石、REN!」
蒼は腹を抱えながらも内心は冷静だ。最近、唯華が月陽以外にもテレポーターを利用していることは知っている。そして、その女が魔女のような格好をしているのをチラリと見たことがある。
底なし沼は、唯華だったかと別の意味でさらに笑いがこみ上げる。
「確かに、そこはくっつけない方がいいかもな」
「な? で、さらにネット越しでも分かるアビスの不幸体質考えたら、ろくな事にならない予感しかしいひんのよ」
「は? それはどういう意味だよ!」
蓮の言葉は流石に聞き捨てならず、蒼は噛みついた。しかし、近くで様子をうかがっていた天音や昴まで頷いている。
この場に蒼の味方はいないのだとすぐに悟る。別に味方がいなくても舌戦だけで勝利できる自信はあったが、別にそこまでして勝ちたいとも思えない。
「そのまんまの意味やん。なんか途轍もなく変な事に巻き込まれそうな予感がするんよ」
「人をトラブルメーカーみたいに言うなよ!」
惰性と条件反射で会話を続けながら蒼は頭の中で現在の人間関係を整理した。
魔女と蓮が姉弟、唯華が昴をダシに絶賛魔女をこき使ってる。
唯華の性格上、"サーカス"案件に所属する人間を巻き込むとは思えない。
となると、現在進行形でこのノアズ計画以外にもヤバい案件があるか、面倒な依頼を受けているのかとどちらかまで絞れる。
潰せるとすれば、それこそ全ての情報を仕入れて簡単に潰せるだろうノアズ計画を後回しにしてるということは、そんなに並行案件は酷いのか、破綻する未来が見えているのか。
蒼はいくつかの仮定を立てる。
しかし、考えてもわからないものに気を取られても仕方がないと、すぐに頭の片隅に追いやる。考えるのはやめるけれど、すぐに思い出せるように比較的浅い場所へとしまった。
「おい、わかりきってることで揉めるな。それより、もういいならそろそろずらかるぞ?」
「そうだ......って、そうだった! なぁ、REN」
天音が帰りを催促し始めたタイミングで蒼はそういえばと最初に疑問に思ったことを思い出した。
「この建物、不自然なくらいに人がいなかったんだけど、理由は? それと多分今日、過激派の奴ら会議とかじゃないの?」
「会議はしとらんよ?」
「でも、会議室には人の気配がしたぜ?」
「あー......」
蒼の疑問に蓮が視線を逸らす。蒼は、蓮に一歩近付いた。
「RENは俺達の味方だよな?」
「俺は、リーダーの味方やよ? それと会議室は春宮さんと、須藤さん......4月にシージャックを計画したリーダー格の男な? あの2人が話し合いしとるだけ。相性悪いから、平行線で話は進まないんよ」
蓮はパソコンに向き直ると、操作をする。
「気になるなら、確認するか?」
一応、情報は仕入れたほうがいいだろうと蒼と昴は確認する体勢に入る。
背後から天音の呆れたため息が聞こえた。