ep101 検証結果、そして再検証へ
客間を使うことを美月に伝えてくると理人はキッチンに向かった。眞琴もタブレットを持ってくると朝陽を客間に押し込んでから、自室に一度戻る。
客間にいる情報を知っている人間が蒼だけになった。
そのため、3人の視線は物言いたげに蒼を見ている。蒼は視線を気にもしないでソファに座り、説明するわけでもなくボーと天井を見上げていた。
その手には理人から一度預かったミサンガが握られている。
「おい、椎名どういうことだ?」
痺れを切らした中原が蒼とは反対のソファに腰掛けながら尋ねる。朝陽と昴もそれぞれ中原の左右のソファに腰をかけながらも、瞳は蒼を捉えている。
「んー? まこっさんが検証結果は説明してくれると思うから後でなー」
「概要は今、説明できるだろ!」
「出来るけど、多分まとめての方がいいと思うぞ?」
「......中原さん、話す気のない蒼には何言っても無駄だと思うよ?」
中原と蒼のやりとりを見て、朝陽が口を挟む。付き合いが長いだけあって、よくわかってるなと蒼はうんうんと頷く。
「高梨、お前は事情知ってるのか?」
「ん? 知らないよ? 眞琴さんに色々説明なく頼まれただけだから!」
「......お前はそれでいいのか」
元気に返す朝陽に中原は呆れている。昴はどうしたらいいのかわからないようで曖昧に微笑んでいた。
そのまま、少し沈黙が流れるが、比較的すぐに扉が開く音と共に破られた。
「えっ、この空気何?」
「ほぉ、面白いことになってるな」
「......蒼、迷惑かけたらダメでしょう」
理人と眞琴、そして美月が客間に入ってきた。
「別に俺は迷惑かけてない!」
美月は入ってきてすぐに場の空気を読み、蒼の方に向かってきながら注意をする。なんで決めつけるんだと蒼はすぐに食らいついた。
客間に元々いた中原達はなんとも言えない表情をしている。その表情がさらに冤罪を生むんだよ! と蒼は思わずギロリと見る。
「......まあ、そこはどうでもいい話だ。とりあえず検証結果の報告だ」
眞琴は客間の空気を気にもせずに片手にパソコン、片手をポケットに突っ込みながら奥へと歩く。そして、机の上にパソコンを置く。
「プロジェクターはどこだ?」
「眞琴さん、ちょっと待って、今準備します」
美月が客間の奥にある棚を漁り、プロジェクターを出す。察した蒼はソファから降りて、窓のカーテンを閉める。周りが暗くなる。すぐに入口にいた理人が電気をつけた。
「まこっさん、一応白壁にも投映出来るけど、スクリーン出す?」
「投映出来るなら、問題ない」
「はーい」
蒼は確認を終えると先ほど座っていた席に戻ろうとして気付く。すぐに眞琴の元に向かうと、パソコンの横にミサンガを置いた。そして、席に戻る。
慣れた様子で美月がパソコンに接続しながらプロジェクターの設定を行っている。
「終わったか」
ただ見てるだけだった眞琴は、パソコンを少し移動された。先程まで眞琴がいた場所の背後にある白壁には眞琴のパソコンのデスクトップと思われる画面が映し出されていた。
「えっ、いつの間にプレゼン資料作っていたんですか?」
投映が見えるように客間の電気を調節しながら理人は驚いたように声を上げる。
「そんなの、検証中に決まっているだろう」
当たり前のことを聞くなというように眞琴は白衣のポケットから手を出した。そしてマウスを動かし、一つのファイルを開く。プレゼンの資料画像にしか見えない。よく検証しながら作ってたなと蒼も感心した。
眞琴は視線で、美月と理人にも席に着くように促す。
そして、眞琴以外の全員が座ったのを確認すると満足そうに頷き、口を開く。パソコンの白い光が眞琴のニヤリと笑った顔をほのかに照らしており、ぱっと見は悪役にしか見えない。
「まずは、ミサンガの話からか」
そう切り出して、眞琴はミサンガを見せる。そして、入手経路やミサンガに付与されている能力と、先ほどの検証で得られた結果をスライドを用いりながら、簡潔に説明していく。
内容は知っていたが、よくできた資料画像に蒼は釘付けになる。
「――だよな、椎名」
「へ?」
突然、眞琴に話を振られて蒼は呆けた声を上げた。全く自分に話を振られるとは思っていなかったのだ。キョロキョロと周りを見回してから、眞琴を見て自分を指差す。
「この場にお前以外に椎名がいるのか?」
呆れたような声に、確かにと蒼は思った。そして、素直に聞く。
「なんの話?」
「......聞いてなかったのか?」
「知ってる内容だったから!」
元気よく答える。左右から呆れたように息を吐く音が聞こえた。しかし、蒼は気にしない。
「それで?」
「最後にお前が追加した検証の話だ」
「あっ、装着者が念じればってやつ?」
「それだ」
眞琴は頷いた。
「そこで思った。桑内にはミサンガについて説明していただろう? だから能力は認識されないと無意識で思っていた可能性がある」
「あー、なるほど! なら後はミサンガの特性を知らない能力者とミサンガの特性を知ってて思い込む無能力者で検証する必要があるってことか!」
「そうだ」
蒼と眞琴の2人で盛り上がっていると、恐る恐るというように理人が手を挙げた。
「あのー、2人で盛り上がってるところ悪いけど、朝陽が限界みたい」
理人の言葉に、朝陽を見ると人差し指を頭に当てて、「うーん」と唸っていた。いつもの光景なので蒼はスルーすることにした。
「それなら、また検証のための人が必要にならない?」
「問題ない、すでに呼んである」
さっきも聞いた台詞をニヤリとまた眞琴は告げた。
「また、被害者が増えるのか......」
理人が頭を抱えながら呟くも蒼も眞琴も無視をした。