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第四十二話 照合

 仙せんと千佳伊ちかいは、音楽プロデューサーとの待ち合わせ場所へ向かう。

「あれじゃね? 古室さんから指定されたの」
「よつまた喫茶店と書いてあるし、合っているな」

 入店して席につき、メニューを開く。

「なんだこれは。コーヒーも、アールグレイも見当たらん」
「紅茶専門店らしいからな。プリンが美味しいらしいぞ」

メニュー内容は変わっているが、値段が高いのもあって味は良かった。

「雰囲気は良い。だが、雰囲気小説は良くないと思わないか仙」
「え? 今日もやるの? 外なのに?」
「外だったとしても、仙となら私はやるぞ!」

 唐突に始まる創作論。

「ふわっとした情景描写、意味のない〝ながら〟の数珠つなぎ......」

 テーブルに紙のメニューを叩きつける千佳伊。

「繰り返されるあくまで風味の哲学や自問。どれもこれもうっとうしいわ!」
「純文学ってそういうもんじゃね?」
「オ〇ニーならよそでやれと言っている!」
「ちょ! ここ家じゃねーから抑えろ!」

 仙がひたすら他の客に頭をさげていく。
 その間、すまし顔の千佳伊は、提供されたプリンを堪能していた。

「古室とやらはまだ来ないのか? 30分は過ぎているぞ?」
「待ってる間にも、また新しいDMが届いたな」

 騒動が落ち着くのにあわせ、出版を持ちかけるDMも増えた。
 興味なさげな千佳伊はプリンを食べ続ける。

「どうせバズっているアカウントに連投しているのだろう。捨て置け」
「どれどれ、へぇ~。こいつ、イーロン・フェイスとマブダチなんだってさ」
「ん? なんだ。それなら私のところにも来たぞ?」

 千佳伊と仙は送られてきたDMの文面を照合してみた。

「うっわ。一言一句が完璧に同じだ」
「ラインに誘導しようとしているし、詐欺で確定だな」

 有名人と知り合い。
 別のコミュニケーションツールへと誘導。
 いずれも分かりやすいほどの釣り針である。
 なのに、詐欺の被害者が後を絶たない。

「自作が認められたと浮かれ、冷静な判断ができなくなるのだろう。愚かだな」
「そう言うなよ。あ! 古室さんこっちです!」

 音楽プロデューサーの古室がようやく現れた。

「いやぁ、電車が混んでいてね。すまない」
「相変わらず胡散臭いな、お前。有名人という証拠は何か見せられないのか?」
「おい、千佳伊! 古室さんに失礼だろ!」

 苦笑いを浮かべた古室がサングラスを外し、おしぼりで顔を拭う。

「いやいや、僕が活躍していたのはもう30年も前だからね。仕方ないよ」
「俺の目に間違いはないです。古室さんは本物ですよ!」

 外していた薄いサングラスをかけ直す古室。

「証拠というか、僕の友人なら紹介できるかな」
「どなたです?」
「イーロン・フェイスさ。知ってるだろ? マブダチなんだ」
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間違った創作論を語る作家の話作者:元毛玉(もとけだま)
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第四十二話 照合

 仙せんと千佳伊ちかいは、音楽プロデューサーとの待ち合わせ場所へ向かう。

「あれじゃね? 古室さんから指定されたの」
「よつまた喫茶店と書いてあるし、合っているな」

 入店して席につき、メニューを開く。

「なんだこれは。コーヒーも、アールグレイも見当たらん」
「紅茶専門店らしいからな。プリンが美味しいらしいぞ」

メニュー内容は変わっているが、値段が高いのもあって味は良かった。

「雰囲気は良い。だが、雰囲気小説は良くないと思わないか仙」
「え? 今日もやるの? 外なのに?」
「外だったとしても、仙となら私はやるぞ!」

 唐突に始まる創作論。

「ふわっとした情景描写、意味のない〝ながら〟の数珠つなぎ......」

 テーブルに紙のメニューを叩きつける千佳伊。

「繰り返されるあくまで風味の哲学や自問。どれもこれもうっとうしいわ!」
「純文学ってそういうもんじゃね?」
「オ〇ニーならよそでやれと言っている!」
「ちょ! ここ家じゃねーから抑えろ!」

 仙がひたすら他の客に頭をさげていく。
 その間、すまし顔の千佳伊は、提供されたプリンを堪能していた。

「古室とやらはまだ来ないのか? 30分は過ぎているぞ?」
「待ってる間にも、また新しいDMが届いたな」

 騒動が落ち着くのにあわせ、出版を持ちかけるDMも増えた。
 興味なさげな千佳伊はプリンを食べ続ける。

「どうせバズっているアカウントに連投しているのだろう。捨て置け」
「どれどれ、へぇ~。こいつ、イーロン・フェイスとマブダチなんだってさ」
「ん? なんだ。それなら私のところにも来たぞ?」

 千佳伊と仙は送られてきたDMの文面を照合してみた。

「うっわ。一言一句が完璧に同じだ」
「ラインに誘導しようとしているし、詐欺で確定だな」

 有名人と知り合い。
 別のコミュニケーションツールへと誘導。
 いずれも分かりやすいほどの釣り針である。
 なのに、詐欺の被害者が後を絶たない。

「自作が認められたと浮かれ、冷静な判断ができなくなるのだろう。愚かだな」
「そう言うなよ。あ! 古室さんこっちです!」

 音楽プロデューサーの古室がようやく現れた。

「いやぁ、電車が混んでいてね。すまない」
「相変わらず胡散臭いな、お前。有名人という証拠は何か見せられないのか?」
「おい、千佳伊! 古室さんに失礼だろ!」

 苦笑いを浮かべた古室がサングラスを外し、おしぼりで顔を拭う。

「いやいや、僕が活躍していたのはもう30年も前だからね。仕方ないよ」
「俺の目に間違いはないです。古室さんは本物ですよ!」

 外していた薄いサングラスをかけ直す古室。

「証拠というか、僕の友人なら紹介できるかな」
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「イーロン・フェイスさ。知ってるだろ? マブダチなんだ」
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