第三十三話 名前
そうして三人は成田空港へ。
「紹介するぜ。こちら通訳の戸場区具 塁さんだ」
「「チェンジ!!」」
仙が見つけてきた通訳は、ソッコーで帰らせた。
「まったく、話が違うではないか仙」
「あの人は名前がアウトだよ~」
「いや、名前は関係ないし、偏見だろ?」
予定とは変わり、三人で長いフライトへ。
全額フランス大使館持ちでファーストクラスだ。
大使を脅して予算を勝ち取った千佳伊が微笑む。
広いソファーで向かい合い、シャンパンで乾杯した。
「機内料理も悪くないな。仙、現地での新しい通訳の手配を頼む」
「もう見つけたぜ。CDG空港に来てくれるってさ」
「さっすが仙! 仕事が早いね~」
アラカルトメニューを制覇する勢いの弧見。
三人は怒涛の勢いで食べて寛いで過ごした。
そうして現地の空港へ到着。
「紹介するぜ。こちら通訳のルイ・トバッグさんだ」
「帰れ!」
「デジャヴしか感じないんだけど!?」
またも千佳伊が秒で追い返す。
「ちゃんと別人だったろ? 何が問題なんだ?」
「塁とルイの違いでしかないではないか。紛らわしい」
「似た名前はダメだって仙も言ってたよね?」
スマホのアプリを駆使し、どうにかホテルのチェックインを済ませる。
五つ星ホテルのスイートルーム。
圧倒的な豪華さに物怖じせず、さっそく千佳伊が服を脱ぎ散らかす。
「おい千佳伊、いきなり目の前で脱ぐな」
「今さらだろう? それよりも類似するキャラ名の問題について議論する」
千佳伊のノートパソコンで表示されるのは、よく使われるキャラ名たち。
近くにあった大理石の柱へ、弧見が連続頭突きを始めた。
「お・も・い・だ・さ・せ・な・い・で!」
「おい、やめろ壊れる。歴史的な建造物だぞ」
「ふむ。私と仙が指摘したことがまだトラウマなのか」
以前、弧見はアから始まる名前を好んでいた。
同じ作品内にアーク、アース、アレク、アックス、アレックスなどが殺到。
アから始まる名前だけで20人いたのだ。
二人から「誰が誰かわからん」と総ツッコミを受け、引きこもった経験がある。
涙目の弧見が部屋の隅で暗黒モードへ。
「ふへへへ、自作の名前くらい......自由につけたっていいじゃない~」
「いや、作者本人が混乱して、間違い多発してんのはダメだろ?」
「もういっそ、ア1号、ア2号で全部並べれば良い」
弧見は備え付けの巨大な花瓶を持ちあげた。
「ちょちょ! 待て落ちつけ弧見!」
「弧見よ。普段重いものを持たないのに、筋肉痛になっても知らんぞ?」
ニコリと微笑む弧見。
直後、最大級音量の破砕音が高級ホテルに響き渡った。