

二十二話 国家総ホワイト化計画
司祭も決まったので本格的に教理を決めようと、町にヒアリングしに行くことにする。昨晩ユタカが言った『皆のお腹が空かないような世界』はいい線をいっている気がした。
――飢餓がない......生きる上では大事だよなぁ。
何の気なしにどう見ても城には見えない城に行き、国王に謁見する。とりあえず国民代表で国王に聞いてみるだけだ。
貧乏ゆすりしながら書類に目を通していた国王は、俺を見るなり目を輝かせた。
「ダイチ様! どうかされましたか?」
「ちょっと聞きたいことがあってきた」
「なんでしょう? 上腕二頭筋との会話方法でしょうか?」
「待って何その無駄スキル?」
「ダイチ様、無視してよろしいです」
溜息を吐くメイセキに、ごめんと両手を合わせる。
「教理を考えててさ。何か参考になりそうな話があればって」
「ダイチ様、それは相談してよろしいものなのですか?」
「あ......」
その辺は全く考えてなかったな!
「まぁ、俺ってお前らの祈りから生まれてるようなもんだし、いいんじゃないか?」
「それなら、いいのですが......」
「ダイチ様、私は休みが欲しいです!」
国王が勢いよく言う。とても国王らしからぬ言い方だが、よくよく考えてみるとここの為政者達は、国を滅亡させないために奔走してきたはずだ。少し光がさしてきた今、休みが欲しくなるのは道理だろう。
「確かに! 俺も欲しい!!」
「ダイチ様も休息がないのですか?」
俺はドヤ顔で国王に指を立てて振る。
「俺は神になってから、一度も休暇がない。そして、ほとんど寝てもいない。この前やっと三十分寝た!」
「死なないのですか?!」
「ふ......神に睡眠は不要なのさ......」
「なるほど、寝る必要がない場合、ずっと働き続けられるということですね......」
メイセキが哀れそうに俺を見る。やめてくれ、そんな目で見ないでくれ! ちょっと泣きたくなるだろ?!
「まあ、ダイチ様も含め、全ての信者がきっちり休めるようになると良いですね」
「それだメイセキ! 儂も休暇が欲しい!」
「陛下は基本鍛えるだけじゃないですか。私は早く伴侶を探さないといけないのに......このままでは行き遅れてしまいます」
「メイセキって独身なんだ?」
「ま、まだ二十八ですよ!」
独身か訊かれて年齢を答えるあたり、相当焦ってるなコイツ......。
「メイセキ言っておるだろう? お前には我妻の妹、オッキナ・シーリンがおるではないか!」
「オッキナ様は好みではないのです!! そして年齢が十も上ではありませんか!!」
「ふむ......オッキナはメイセキを好いておるのに......」
「俺、縁結びの神様も目指してもいいですよ?」
「ほほう?」
「ダイチ様!」
メイセキが本格的に涙目になってきたので撤退する。
――なるほどな。メイセキの将来の奥さんはオッキナさん......じゃなくて、休暇だな......。
「ムガク、そういえばこの世界の暦ってどうなってる?」
「ガギグゲゴ歴が一般的だにゃ。今はガギグゲゴ歴二〇二六年六月四日木曜日にゃん」
「わーお、グレゴリオ。休日は何曜日?」
「ないにゃん」
「は?」
「休日と定められている日は、ないにゃん」
あまりの事実に俺は言葉を失う。
「――いや! 不定休? 不定休ってことだよな?!」
「ないにゃん。仕事がない日が休みにゃん」
「いや、嘘だろ......? そんな、世界自体がブラックということか......??」
手が震える......いや、全身が震えている。そんな、休みが定められていない世界があっていいのだろうか? この世界自体が、ブラック企業体質だと......?
――カイゼンしなければ......。
これは非常に由々しき事態である。ブラック企業から死という強制ログアウトシステムで逃げ出せたはずなのに、転生先の世界が更にブラックとは......皮肉過ぎないか?
「せめてウミノハーシ国だけでも、ホワイトにしねぇと......!」
俺はのんびり平和に暮らしたいのだ。
俺は飛翔して教会に戻ると、数人の町民と祈りを捧げるユタカに声をかけた。
「ユタカ決めたぞ! 一つ目の教理!!」
「?! はい、なんでしょうか?!」
「一日三食おやつ付き、週休三日!!」
「ダイチ様、それはたぶん教理じゃなくて教義です!」