

十五話 一難去ってまた一難
「ヒィィィィィ!!」
町について早々に、綺麗な悲鳴を聞くことができた。そう、メイセキの悲鳴だ。
「新しい俺の従魔のナースクイーンだ。よろしくな」
「さ、サスガですダイチ様......」
「あと、山に千匹くらい仲間の蜘蛛もいるぞ」
「ヒィィィ! なんて......なんてことだ......」
青白くなった顔を両手で覆って、メイセキは天を仰ぐ。うん、そんなに苦手だとは思わなかった。でも、ごめん、もう仲間になったからね!
「これからはトロール達は採集とかに専念してもらって、蜘蛛たちを護衛やパトロールに回せるんじゃないかと思う」
「それは、非常に助かりますが......」
「まぁまぁ、メイセキ。君ならできるよ」
「う......陛下......私のトラウマを知っている癖に」
「なになに、トラウマって?」
「メイセキは幼少の頃、アシダカグモが顔に乗っていた事がトラウマなのです」
「うわぁ......それはそれは......」
――ドンマイとしか言いようがないな、うん。
改めて、国王は俺に跪く。
「改めまして、国民である兵士をお助け頂き、ありがとうございました」
メイセキも含む他の連中も一斉に跪いて、俺に頭を下げる。なんとも居心地が悪い状況だ。
「いいよ、いいよ。担当神として信者を守っただけだから」
俺の言葉にメイセキが蜘蛛に怯えながらもキッと顔を上げる。
「しかしながら、状況を整理しないまま向かうことは今後はやめて頂きたく存じます」
「......ごめん」
「ダイチ様が死なないのは分かっておりますが、状況のノイズになりますので......」
「まって、俺って死なないの?」
メイセキが何を今更と言わんばかりに片眉を上げる。
「神は信仰がなくならない限り不滅ですが?」
「え、死なないの?!」
「神なのにご存知ないのですか?」
「クソ上司と脳筋兄貴の引継ぎ不足が発覚したぞ......いや、説明してたか......?」
「えぇ......」
「信仰が無くなったら、死ぬのは理解してたけど、物理的に死なないのは初耳な気がする」
「肉体がないのに物理的に死ぬこともありますか?」
「いや、俺、肉体がないの今日初めて知ったし......」
「えぇ......」
周囲から「この神で大丈夫か?」という視線が飛んでくるが、仕方ない。うん。仕方ない。知らなかったんだもん。全てはちゃんと説明しないクソ上司が悪い!
パポン
――まてまて、神威下がった! 神威下がった! 実害、実害はやめて!!
「でも、大丈夫。この国はしっかり護るから!」
ピコン
――狭間ぁ!!
「......あれ、何でしょう?」
「ん? なんだ??」
兵士の声に空を見上げると、空に不自然な点が浮いていた。それが段々大きくなり、人型になっていく。
「あっれー!? 意外と滅亡してねーじゃん!」
金髪、色白で彫りが深そうな高身長の男性が、純白の翼をはためかせながら地上に降り立った。プロゲーマーがしていそうなサングラスがキラリと太陽に反射する。
「......どなたですか?」
「キレイーナの配下の癖に、俺を知らねーとは! 流石、新生神(しんせいしん)!」
「どなたですか?」
「でも、まだ滅亡してないとはな! 驚きだ!」
「どなたですかね!?」
「あぁ?」と謎の神はやっと俺を見る。
「俺様は、テンショーン・ターカイヨ。このワンダーランドの五大宗教の主神だ! ターカイヨ教の主神を拝めるんだ、崇めよ愚民共!」
「......」
「なんだ、その目は!?」
「いや......うん......ナンデモナイデス」
「あぁん?」とかヤンキーみたいなことを言っていたが、テンショーンは切り替えが早いらしい、すぐに町を歩き回ろうとする。
「あの、何しに来たんですか?」
「滅亡を確認しに来たんだよ!」
「なんで確認しに来たんです?」
「そりゃあ、侵略だな!」
嫌な言葉に国王を始めとした国民に緊張が走る。しかし、テンショーンはそんな国民を見て、ニッと笑った。
「どうだ、ビッジョ教からターカイヨ教に入信してもいいぞ! こんな下っ端の神じゃなく、ベテランの神を派遣してやろう!」
広場に集まった国民がザワつく。主神自ら勧誘に来るのは些か卑怯ではないだろうか?
パポン
――おい、今心変わりしたやついるだろ! 怒らないから自首しなさい! 怒らないから!
「おい、そこの新人! お前も俺の部下になるか?」
「え、なんですか急に?」
「どうせキレイーナのことだろう、扱い雑なんじゃねぇか? 来いよ、手厚くOJTしてやるよ!」
「え......」
やだ、ちょっとときめいちゃったじゃないの!!