第54話 三度〈碧猫屋〉
── カランッ カラン... カラン...... ──
「あ~ 美味しかった~ やっぱ大市場は 美味い店多いな~」
ウインドチャイムが鳴る音と共に薄暗い店内に入ってくる褐色肌のエルフ。
少し低音の柔らかな東方訛り。
それに答える 鈴の鳴るような高音 西方標準語。
「あら? ちょうど良かった 紅瑠石 。今から 東の森まで 調達に行こうって思ってたとこ」
クリーム色の綿シャツに同じく綿の青いスカート。
キャンバス地の大きな鞄を たすき掛けに2つ掛け これまたキャンバス地の大きな背負い袋を背負い 肩丈ほどの糸杉の杖を手に持った少女。
店に入ってきた 闇エルフの眼を見てニッコリと微笑むソバカス娘。
「へ? 何言うてんの マリノア? 今日 ウチ やっと帰ってきたところやねんけど?」
「紅瑠石 アンタ 3ヶ月も留守にしてたでしょ? お陰で 依頼や採集が山積みになってるワケ。つべこべ言わずに手伝いなさいよ」
「えーっ 嫌やし。だいたい 東の森なんて オモロないやろ? 誰かバイトにでも行かせたら ええんちゃうの? ジーナとか おるやろ?」
魔導院に通うバイト少女の名を聞き ニヤリと笑うマリノア。
「それがさーっ アンタが留守にしてた3ヶ月の間に ちょっと面白いことになってんのよ。ジーナのヤツ 今日さ『幼馴染みの男の子と買い物行くからバイト休ませて欲しい』って。どう? 気になるでしょ? 詳しい話 聞かせてあげるから リイン村まで 付き合いなさいよ」
「......それは ...ちょっと オモロそうなハナシやな。しゃーない 付き合うわ。せやけど 護衛料は払ってや?」
「はいはい。適正価格でね」
「今回 依頼主 どこ?」
「リギャン侯爵家。さっき取り立てに行った時に聞いてたらさ 例のゴタゴタで回復薬の備蓄が激減したらしいわ。今回 上手く納品すれば 上お得意様ゲットってワケ」
「流石 マリノア。儲け話は逃さへんな~」
手分けして店仕舞いの用意をしながら 会話を続ける。
「まぁね。......エレノアールが もう少ししたら出勤してくる筈だし 戸締まりだけで 大丈夫よ」
「へいへいっと。報酬 銀貨50で ええやんな?」
「チッ......しょうがないわね。その代わり翼鷲獅が出ようが 火竜が出ようが 危険手当とか出さないからね?」
「......いや 流石に火竜出たらヤバいやろ......」
「ハァ? 契約は契約よ。それ以上はビタ一文出さないから」
── カランッ カラン... カラン...... ──
軽口を叩き合いながらも店仕舞いを終え 路上へと出る2人。
王都ウェスティリア大市場 東大通り 冬宿木小路下ル。
【秘石妙草 各種取扱い】薬種商〈碧猫屋〉。
......本日も 絶賛営業中。
~ to be continued in next business ~