♗22
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「つまりは、一手目で一番力が強いサクが、ミノタウロスを抑える。
二手目。その後ろで、おれはハクスイの身体を土台に、ミノタウロスの肩に飛び移って肩車みたく頭を押さえて、なるべくコケさせるようにバランスを傾けさせる。
三手目。ハクスイは、膝の関節を狙って、可能なら、片膝だけでも腱を切る。うまくいけばここでコケる。
四手目。コケていたら、片腕でもいいからサクが持ち前の怪力で抑える。コケていなかったら、転ばせるフォローののち抑えこみ。
五手目。ミノタウロスが完全にコケている体で、歩が手榴弾を口に突っ込み、退避。
尚、作戦実行中に、一人でも奴に捕まってしまった場合、キアラは一人でゴール出口へ向かう。
キアラ以外の捕まってないメンツで、倒すことより、救出と撤退を最優先とする。
しかし、その捕まった一人が食われた場合にのみ、必ず救出を諦めて、ゴール出口に走る。
まとめるとこうだよな。」
キアラがもう一枚描いてくれた絵は、あたし達全員の身長とミノタウロスの実物比率の絵であった。
ミノタウロスの大きさは目測二メートル七十センチ。ヒカミの倍とは言わないが、かなりの大きさである。
このどうやって転ばせるかというのも案を出したのが、ヒカミであった。
ハクスイが膝の腱を二本切るというのが最初の案であったが、一本切れた時点で相当暴れるだろうから、二本目を狙うのがかなり難しいし危険。そして一本目も、どれほど強靭かがわからないから、場合によってはちょっと痛い膝カックンにしかならないかもしれない。この辺のマイナス点で不採用。
ここでヒカミの衝撃的な発言。おれの走り高跳びの記録は155センチだと。なぜこの人は自分の身長より跳躍力の方が上なのかと。体育の授業で、ハクスイにバスケ負けたくなくて、頑張って修行したとか、よくわかんないけど、跳べるらしい。
ミノタウロスの肩に飛び移るというのも、カラクリ忍者村業火丸の修行で相当やったから100パーセント成功するから、問題ないって。
この忍術を元に作戦を練り直したのが今のヒカミのまとめとなる。
女子五人のパーティなのに、人狼とチャカ持ちボクサーと暴力侍と、忍者。そして、俊足漫画家。駄目だ。字面だけで渋滞する。
「ああ。問題ない。これなら、今までここをクリアしてきた人たちが生贄というやり方でしかやって来なかった事を......ミノタウロスを倒せる。二場をだし抜ける。」
歩の目は正直言って、輝いている感じがした。彼氏と仲間も追ってこの世界に一人で来て、こちらでも初めて会った良い仲間に出会えたと。そんな感じに。希望が滲み出ていた。
ヒカミもそこから何かを感じとったみたいで、歩とヒカミは目を合わせた途端、ハイタッチを決めた。
その光景を見て、たった一瞬のそのハイタッチを見て、現実世界で、あたしのヒカミのハイタッチもきっと周りの人にはこうやって映っていたのだろうと思った。
周りの不安のすべて消し飛ばすような、綺麗な掌と掌が弾ける音。
そう。不安なんてない。こんな訳わかんない世界でも。きっと。あたしらならイケるって。
ここで格好つけといて。それでミノタウロスは無事討伐しましたと書きたいけど。残念ながら、そんなに直ぐに話は進まない。
だって、怪我人がいる。怪我させたのはあたしのせいだから何も言えないけど。
鬼教官歩の計らいにより、全員が最低限の護身スキルを身につけるまで、この休憩所で暮らすというルールが適応されたのだ。