ホーム不条識な狼の理♗11
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 身体が揺れるような違和感を覚えて、うとうとしながら目を開けた。
 何もかも意識がぼーっとする。揺れるというか運ばれたというか、自由の効かない身体で目だけをぐるりと回して辺りを確認すると、蝋燭の火が目に入った。
 あれ?ここは学校じゃない。卒業式じゃない。はて、蝋燭?
 目の前、数メートル先に蝋燭。薄暗いが、灯されたのが一つだとしたら、疑問が湧く程度には明るいので、視線を足元に方へと向けるとそちらにも蝋燭が見える。
 とにかく起きようと、身体を傾けようとしたが、ここであたしは自分の身に起きている重大な異変に気付いた。
 ......え?
 そして声すら出せない事に気付く。
 もう一度確認のように動こうとすると、やはり現実は無情で事実は変わら無い事を突きつけられる。
 あたし、縛られている。
 腕も、足も。そして、口からはダラダラと涎が落ちるように舌を押さえられ猿履が嵌められているのだ。腕に至っては後ろに回されて、手首から縛られているみたいで起き上がるは愚か、まともに寝がえりも打てないので土壁の床に転がされて抵抗しなくとももう既に身体が痛い。
 何故こんな事に?とにかく回らない頭で情報を集めようと視線を頭頂部の方へと向けると、あたしをこんな人質にした犯人はそこにいた。
「お目覚めだね。樫山さくらちゃん。」
 返答に皮肉でも返してやりたくても、そんな声すら出なかった。
 自称NPCの佐竹であった。
「返答も出来ないからね。それだと。僕の方から一方的に説明するよ。」
 そう言いながら、佐竹は無駄に私の周りをくるくると歩きながら、ゆっくりと解説を始めた。
「先ほども軽くは説明したけどね。僕はこの世界を管理する側のキャラクターだ。よって君の情報も、手に取るようにわかる。
 例えば君がサクって呼ばれている事も。その大事なあだ名も憧れの田中ヒカミにつけてもらった事も。そして3次元世界の君が、人ざらぬモノが視えるのが悩みである事も。」
 分かったよ!アンタが情報通である事も、何で今あたしを縛っているの?
「今、縛っておかないと危険なんだよ。今から【可視化】させるから。視える体質だからこそ視えない疑問はストレスだろう。ずーっと悩み続けていた悪夢もね。」
 悪夢の事まで知っていて、そんなにあたしの事を知っているなら、なんでこんな事するの?する必要ないじゃん。
「言ったろ。危険なんだよ。君。あと女の子は縛っておいた方が可愛い。それが人外なら尚更。」
 人外って何?
「僕は総称して【異形】と呼んでいるよ。そのまんまだけどね。」
 呼び名とかどうでも良いから!マジで意味わかんない!
「そもそも僕の仕事は、この世界で異形を創る事なんだ。勿論ミノタウロスも僕の作品だ。人類というのは有志以前からずっと、人の形をした人ざらぬ化物にずっと畏れを抱いてきた。どうしてだと思う。これは二場じゃなくて僕の意見なんだけどね。ただの動物は知性がないからいくらでも制圧できるけど、あの力で人間の知性を手に入れたらどうなると思う?ねえ怖いでしょ?」
 喋れないあたしが頭の中で思う事に返答してくれているのは分かったけど、会話が成立しているかは微妙だった。
 だって、今のあたしには佐竹の話が理解出来ない。
「僕はこの世界が理想だよ。【呪い】は可視化すれば良いし、呪いが無いものは科学の力で異形を創れば良い。異形こそが肉体を持ったものの理想の姿なんだ。」
 意味わかんない、
「つまり、趣味と実益を兼ねているんだ。僕の仕事。羨ましいだろう。ただ、ここからの君の仕事は趣味と実益を兼ねないだろうから大変だろうね。君はきっと嫌だと思う。」
 仕事とか、嫌がる事って何?さっきから全然意味わかんないし、ってかほどけよ!何で縛ってんだよ!
「じゃあ本筋にいこうか。【呪いは理不尽だ。でも不条理ではない。】だから君は狼なんだよ。」
 全く意味が分からないけど、今の言葉が凄く怖く響いた。
 理不尽と不条理。同じような意味で少し違う。逆らえないような運命のような響き。
「君の祖先にあたる人は大変な呪いに手を出した。きっと事情があったのだろう。そうでもしないと集落全てが無くなるような仕方ない選択肢だったのだろう。でも呪いの対価は?どうしよう。まだ生まれてこない未来の末代に対価を払ってもらおうと――」
 まって、何が、言っている意味が?
 対価?それってあたしが、
 呪い?ねえ、怖い事言わないでよ。
「変だと思わなかったか?子供の頃からずっと見る悪夢。神の様に妙なものを視る力。それはそうだよ。君のあったのは神の力さ。呪神はずーっとずーっと君の魂と一体化していたんだ。」
 ねえ、あたし、どうなるの?
「さあね。条理の赴くままさ。」
 ぐっと、頭を佐竹に掴まれた。
「僕は、君の力を解放するだけ。呪いが可視化するこの世界で。」
 首筋に一瞬だけ何か刺さる感じがした。多分注射器。なんか入れられた。怖い怖い怖い怖い怖い怖い、
「反応しやすいように、ちょーっとトランス状態に入ってもらうよ。君達のいた世界では禁止された薬物だけど、精神を分離させるには丁度良いんだ。これで劇的に細胞分裂を早めて、脳内のシナプスを活性化させる。これで脳のリミットが外れる。これで君は真実を視れるよ。」
 嫌だ!そんなの視たくない!何が真実だ、何が呪いだ。
 呼吸が荒い、唾液が止まらない。
「残念だね。【呪いは理不尽だ】精々頑張ってくれ。」

 ◆
 何度も嗅いだ。あの匂いだ。
 あの夢だ。
 あのお経だ。
 焼ける火の音がする、パチパチと木が弾ける音がして、火の傍にいるのか身体が凄く熱い、血の匂いがする。
 生暖かくて、頭の上からかけられて......
 ◆

『゛あ......がっ、』
 喉の奥から漏れる。苦しい。上手く呼吸が出来ない、空気が吸えない。喉の奥が酸っぱい。喉と胃がキリキリする。
 どっと、土の匂いと、強烈な獣臭。そして血の匂い。夏の動物園で、二日目のナプキン外した時の匂いって表現が一番近い。一気に吐き気が迫り上がる。
 喉から咳き込むと、ああそう、口は縛られているのだと、思い出すように、鼻から胃液が出ているのが分かる。酸っぱい匂い。
 自分の吐瀉物の匂いで、お経と火の音が夢でこちらが現実だと引き戻される。
 自分の顔周りがゲロまみれなのと、相変わらず苦しい、そりゃ吐いたなら苦しい、いやでも違くて、まだ心臓がうるさくて、軋むように右半身が痛い。
 そしてまた、周りの蝋燭がぐるぐると伸びる。あたしの身体が浮いている。多分、気がするだけで、浮いてない。痛い。
 ゴキリ。と妙な音がして、右手足に強烈な痛みが走った。
 そして頭蓋骨にも、ヒビが入ったんじゃないか?
 あっ。多分。これ。あたし。しんだ。
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不条識な狼の理作者:駿河鵬命
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 身体が揺れるような違和感を覚えて、うとうとしながら目を開けた。
 何もかも意識がぼーっとする。揺れるというか運ばれたというか、自由の効かない身体で目だけをぐるりと回して辺りを確認すると、蝋燭の火が目に入った。
 あれ?ここは学校じゃない。卒業式じゃない。はて、蝋燭?
 目の前、数メートル先に蝋燭。薄暗いが、灯されたのが一つだとしたら、疑問が湧く程度には明るいので、視線を足元に方へと向けるとそちらにも蝋燭が見える。
 とにかく起きようと、身体を傾けようとしたが、ここであたしは自分の身に起きている重大な異変に気付いた。
 ......え?
 そして声すら出せない事に気付く。
 もう一度確認のように動こうとすると、やはり現実は無情で事実は変わら無い事を突きつけられる。
 あたし、縛られている。
 腕も、足も。そして、口からはダラダラと涎が落ちるように舌を押さえられ猿履が嵌められているのだ。腕に至っては後ろに回されて、手首から縛られているみたいで起き上がるは愚か、まともに寝がえりも打てないので土壁の床に転がされて抵抗しなくとももう既に身体が痛い。
 何故こんな事に?とにかく回らない頭で情報を集めようと視線を頭頂部の方へと向けると、あたしをこんな人質にした犯人はそこにいた。
「お目覚めだね。樫山さくらちゃん。」
 返答に皮肉でも返してやりたくても、そんな声すら出なかった。
 自称NPCの佐竹であった。
「返答も出来ないからね。それだと。僕の方から一方的に説明するよ。」
 そう言いながら、佐竹は無駄に私の周りをくるくると歩きながら、ゆっくりと解説を始めた。
「先ほども軽くは説明したけどね。僕はこの世界を管理する側のキャラクターだ。よって君の情報も、手に取るようにわかる。
 例えば君がサクって呼ばれている事も。その大事なあだ名も憧れの田中ヒカミにつけてもらった事も。そして3次元世界の君が、人ざらぬモノが視えるのが悩みである事も。」
 分かったよ!アンタが情報通である事も、何で今あたしを縛っているの?
「今、縛っておかないと危険なんだよ。今から【可視化】させるから。視える体質だからこそ視えない疑問はストレスだろう。ずーっと悩み続けていた悪夢もね。」
 悪夢の事まで知っていて、そんなにあたしの事を知っているなら、なんでこんな事するの?する必要ないじゃん。
「言ったろ。危険なんだよ。君。あと女の子は縛っておいた方が可愛い。それが人外なら尚更。」
 人外って何?
「僕は総称して【異形】と呼んでいるよ。そのまんまだけどね。」
 呼び名とかどうでも良いから!マジで意味わかんない!
「そもそも僕の仕事は、この世界で異形を創る事なんだ。勿論ミノタウロスも僕の作品だ。人類というのは有志以前からずっと、人の形をした人ざらぬ化物にずっと畏れを抱いてきた。どうしてだと思う。これは二場じゃなくて僕の意見なんだけどね。ただの動物は知性がないからいくらでも制圧できるけど、あの力で人間の知性を手に入れたらどうなると思う?ねえ怖いでしょ?」
 喋れないあたしが頭の中で思う事に返答してくれているのは分かったけど、会話が成立しているかは微妙だった。
 だって、今のあたしには佐竹の話が理解出来ない。
「僕はこの世界が理想だよ。【呪い】は可視化すれば良いし、呪いが無いものは科学の力で異形を創れば良い。異形こそが肉体を持ったものの理想の姿なんだ。」
 意味わかんない、
「つまり、趣味と実益を兼ねているんだ。僕の仕事。羨ましいだろう。ただ、ここからの君の仕事は趣味と実益を兼ねないだろうから大変だろうね。君はきっと嫌だと思う。」
 仕事とか、嫌がる事って何?さっきから全然意味わかんないし、ってかほどけよ!何で縛ってんだよ!
「じゃあ本筋にいこうか。【呪いは理不尽だ。でも不条理ではない。】だから君は狼なんだよ。」
 全く意味が分からないけど、今の言葉が凄く怖く響いた。
 理不尽と不条理。同じような意味で少し違う。逆らえないような運命のような響き。
「君の祖先にあたる人は大変な呪いに手を出した。きっと事情があったのだろう。そうでもしないと集落全てが無くなるような仕方ない選択肢だったのだろう。でも呪いの対価は?どうしよう。まだ生まれてこない未来の末代に対価を払ってもらおうと――」
 まって、何が、言っている意味が?
 対価?それってあたしが、
 呪い?ねえ、怖い事言わないでよ。
「変だと思わなかったか?子供の頃からずっと見る悪夢。神の様に妙なものを視る力。それはそうだよ。君のあったのは神の力さ。呪神はずーっとずーっと君の魂と一体化していたんだ。」
 ねえ、あたし、どうなるの?
「さあね。条理の赴くままさ。」
 ぐっと、頭を佐竹に掴まれた。
「僕は、君の力を解放するだけ。呪いが可視化するこの世界で。」
 首筋に一瞬だけ何か刺さる感じがした。多分注射器。なんか入れられた。怖い怖い怖い怖い怖い怖い、
「反応しやすいように、ちょーっとトランス状態に入ってもらうよ。君達のいた世界では禁止された薬物だけど、精神を分離させるには丁度良いんだ。これで劇的に細胞分裂を早めて、脳内のシナプスを活性化させる。これで脳のリミットが外れる。これで君は真実を視れるよ。」
 嫌だ!そんなの視たくない!何が真実だ、何が呪いだ。
 呼吸が荒い、唾液が止まらない。
「残念だね。【呪いは理不尽だ】精々頑張ってくれ。」

 ◆
 何度も嗅いだ。あの匂いだ。
 あの夢だ。
 あのお経だ。
 焼ける火の音がする、パチパチと木が弾ける音がして、火の傍にいるのか身体が凄く熱い、血の匂いがする。
 生暖かくて、頭の上からかけられて......
 ◆

『゛あ......がっ、』
 喉の奥から漏れる。苦しい。上手く呼吸が出来ない、空気が吸えない。喉の奥が酸っぱい。喉と胃がキリキリする。
 どっと、土の匂いと、強烈な獣臭。そして血の匂い。夏の動物園で、二日目のナプキン外した時の匂いって表現が一番近い。一気に吐き気が迫り上がる。
 喉から咳き込むと、ああそう、口は縛られているのだと、思い出すように、鼻から胃液が出ているのが分かる。酸っぱい匂い。
 自分の吐瀉物の匂いで、お経と火の音が夢でこちらが現実だと引き戻される。
 自分の顔周りがゲロまみれなのと、相変わらず苦しい、そりゃ吐いたなら苦しい、いやでも違くて、まだ心臓がうるさくて、軋むように右半身が痛い。
 そしてまた、周りの蝋燭がぐるぐると伸びる。あたしの身体が浮いている。多分、気がするだけで、浮いてない。痛い。
 ゴキリ。と妙な音がして、右手足に強烈な痛みが走った。
 そして頭蓋骨にも、ヒビが入ったんじゃないか?
 あっ。多分。これ。あたし。しんだ。
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