忠誠
北方にある辺境の小国は、いつにもまして厳しい冬を迎えることとなりました。
王妃が亡くなられたのです。たった一人の息女、幼い姫を残して。
国王の嘆きは深く、同じように、家臣達も、民達も、悲しみの淵に沈みました。
慈愛に満ちた王妃は、だれからも愛されていましたから。
優美で気高く慈愛に満ち、暖かな春の女神のような王妃だったのです。王妃の死を悼み、泣かぬ者はいないほどでした。
嘆きの深さは、やがて王妃の忘れ形見である姫への溺愛へと傾倒していきました。
宮廷に仕える者全てが、愛らしく美しい幼い姫に忠誠を誓いました。
やがて国を統べることになるであろう、王位継承権第一位の姫に。
幼い姫はこう呼ばれました。
「我らの未来の主」「我らの希望の姫君」「我らの麗しき王女」―――
幼い姫は、手の甲に幾度も誓約と忠誠の接吻を受け、かしずく者達に誇らしげな微笑みを返しました。