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#10 それぞれのプレリュード

百合の国のプリンセス♂#10 それぞれのプレリュード
挿絵AIで作った挿絵

―およそ300年前
「どいつもこいつも全然ダメですね...」
 冒険者ギルドの酒場でエルフの女はボヤいていた。
(冒険者ギルドの存在を聞いて期待してたんですけど、まさかこんなレベルが低いとは...。)
 彼女、ボンネットは16歳でエルフの里で成人として認められた事で里を抜け出すことが許された。
(もっと早くエルフの里を抜け出すべきでしたね...)
 エルフ族は基本的に里に籠りきりだが、別段里の外に出る事を制限している訳ではない。しかしそれは成人してからの話で、成人するまで外に出ることは出来ない。
「はぁ...」
 そしてようやく里から出られたボンネットは冒険者ギルドに登録したものの、頭を抱えていた。
(まさかエルフ族に転生するなんて...どんな確率ですか...)
 そう、彼女は大昔から秘術を用いて転生したのだ、というのも...
(魔王が復活してどこかで力を蓄えているというのに、急がないと...)
 魔王が復活する時、自らも何処かの子として蘇る。それが魔王を倒した勇者が、復活した魔王から建国したユリゾンリリィを護るための方法だった。
「よりにもよって聖女も世代交代したてでまだ10歳の小娘。早いとこ仲間を集めないと行けないのに...」
 魔王の討伐は自分一人の力ではない、しかし魔王と同じ秘術が使えるのは一人だけだった。故に勇者は国を妹に任せ秘術によって早逝した。
 そして転生した時代で聖女と新たな魔王討伐のメンバーを集めるつもりでいたのだが、自分の死後確立された「冒険者ギルド」とやらに期待してみれば全くの当て外れ、てんで魔王と戦えるレベルではない。
「どうせなら私好みの美人の女冒険者とかいませんかね...」
 転生したとて性嗜好に変わりはない。自分一人で転生したため最愛の妹もいない今、新たなパートナーも欲しいなと改めてギルド内を見渡すと...
「依頼の報告だ、確認を頼む」
 丁度仕事を終えたらしいオレンジ髪の美女が目に入った。 
(っているじゃんいるじゃん! クリティカルどストライクのテラ美女が来てじゃん!? しかも見たところフリーで相当の腕前じゃん!? 大本命大革命やるじゃん冒険者ギルド! 掌大スクリュー!!)
 16年間エルフの里で過ごした影響で心の声がちょっと騒がしくなっているボンネットであった。
「ねぇ、アナタ。私と組みませんか?」
「......キミは?」
 そんな内心をおくびにも出さず、ボンネットは極めて冷静に女冒険者に声を掛ける。挿絵AIで作った挿絵
「私はエルフのボンネット。冒険者なりたてでまだランクは低いけど、実力はアナタに負けませんよ」
「エルフ族とは...珍しい。実力も...たしかにその自信の裏付けはありそうだ」
「正直、私のレベルにあう冒険者がいなくて困ってたんです、アナタも同じ理由ではありませんか?」
 このギルドで三日ほど様子を見てみたが彼女の眼鏡にかなう者は美女抜きにしてもこの女冒険者が始めてだった。恐らくこの女冒険者が一人で活動しているのも同じ理由だろうとボンネットは予想する。
「私の場合、名を挙げるのが目的で仲間を必要としていないだけだな」
「それなら尚更、私と組みませんか? エルフの美女と美人冒険者のタッグ、名前を広めるにはこれ以上ない話題性でしょう?」
 ボンネットとしても魔王が活動を開始した時に備えて名声がある方が色々と都合がいい、そう言う意味では彼女と目的が一致する。
「ふむ...たしかに...、一人で活動するよりも効率は良さそうだな。なにより、一人でいると他の冒険者の誘いが疎ましく思えてきたところだ」
「パーティー結成ね。よろしく、えーと...」
 握手をしようと手を差し出して、ボンネットは女冒険者の名前を聞いていないことに気が付く。
「名乗っていなかったな。私の名前は“ウィッグ"、よろしく頼むボンネット」
「えぇ、よろしく」
 運命のイタズラか、こうしてお互いの正体に気が付くこともなく、転生した魔王と勇者はパーティーを結成したのだった。
 そしてボンネットがウィッグの性別を知り失恋するのは、もうちょっと先の事である。


―ボンネットとウィッグがパーティーを結成してからおよそ3年...
「平和過ぎる...」
「平和なのは喜ぶべき事だが...我々としては仕事が無くて困るな」
 野宿の準備をしながら二人は今日は仕事が無かったことを振り返る。
 二人が組んでからというもの冒険者ギルド始まって以来の活躍でその名声は留まるところを知らなかったが、活躍しすぎて平和になってしまっていた。
「そもそもこれ以上名声を上げようにも大口の仕事がありませんしね」
 大型の魔物も、魔族の出現も、大口の依頼は全て二人が片付けてしまったし、二人の強さにビビって魔族も魔界に引き籠もってしまった。
「そろそろ潮時かもしれんな」
「ウィッグの目的は名を挙げてユリゾンリリィの騎士に士官することでしたね」
「あぁ、聞くところによると向こうにも私たちの名前は広まっているようだ」
「そのために女の格好までしてね...。全く、アナタを口説いた昔の私をひっぱたいてやりたいですよ」
「イヤ...すまない。まさかキミがそう言う趣味だとは思わなくてな...男を好きにならないと分かっていたらすぐにでも話していたんだが」
 ウィッグが女装をしていると話したのは二人が組んでから3ヶ月ほど経ってから。二人の信頼関係が固まりボンネットがウィッグにアプローチを始めたという最悪のタイミングであった。
 敢え無く失恋したボンネットであったが、女装してる分には見た目は好みだしウィッグの強さは魔王討伐には不可欠だとパーティーを解消することはなかった。
「私としても、アナタがユリゾンリリィの騎士になるならこれ以上冒険者を続ける理由もありませんが...」
 ボンネットとしてはウィッグ程の騎士がユリゾンリリィに在中するならコレほど有り難いことはない。魔王の活動開始に備えられるのだから。
「ふむ? そう言えばお前が冒険者になった理由を聞いたことが無いな」
「私の目的も...ユリゾンリリィに士官するなら話しておいたほうがいいですね...」
 そして、他人でなくなったウィッグには話しておくべきだとボンネットは思った。
「ここだけの話...。魔王は復活しています」
 ウィッグは一緒ギョッとするが、平静を装い問う。
「......。何故そう思う、あの国は今も尚平和が続いてるようだが」
 自分が復活したことで魔王の加護...呪いは無くなりモンスターの発生等が目立つようになってはいるが、まだ大事にはなっていない。魔王の復活が知られているはずがないのだ。
「情報の出処は言えませんが...。恐らく復活した魔王は力を蓄えているか、準備しているのでしょう。私は魔王が活動を始めた時に備えて共に戦える仲間を探していました」
「にわかには信じがたいが...お前程の者が言うならそうなのだろうな」
「信じてくれるのですか?」
 信じるもなにも自分がその魔王なのだから、とウィッグは思ったが、それは胸に秘めることにする。少なくとも今は、魔王として活動する気は無いのだから。
「ようやく話してくれたお前の秘密を疑うほど私は疑り深くはないよ」
「魔王の復活を知る私は、アナタがユリゾンリリィに士官すると言う目的を聞いた時、止めるべきでしたのでしょう...アナタには危険な使命を負わせてしまいました」
「魔王復活の事実を知ったとしても、私の...母の祖国を救いたいと思う気持ちは変わりない」
「そうですか、では...アナタとはユリゾンリリィでお別れですね」
「お前はどうするんだ? また魔王に備えて仲間探しか?」
「いえ、私は近衛かメイドとして潜り込んで、中から様子を見ようと思います」
「ではユリゾンリリィまでが我々の最後の冒険となるな」
「そうなりますね」
 最後の目的地が決まった二人は、それから三年分の冒険を語り合うのだった。


―そして現在
「こんの鬼畜勇者! 転生しておいて300年もワタクシを放置ってどういうことですの!?」
「イヤ正直、魔女は死なない以外に敵じゃないので完全に忘れてましたね。なんなら殺したような気もしてましたね」
 騎士団の密室でボンネットとマジェステが揉めて、それをウィッグが見守っていた。
「封印場所まで記録しておいてそりゃないだろお前...」
「記録を残したのは妹ですから。あの子ったらホントマメなんですから...」
 ウィッグとボンネットがユリゾンリリィに仕えてから30年後、全く老けないウィッグをボンネットが問い詰めたことでお互いの正体が発覚していた。
「どちらにせよアナタの封印を解いてやる義理なんてありませんでしたし」
「ムキー! アナタが覚えてればワタクシだって事を起こさず魔王様に仕えたですのよ!」
「ザマァないですね」
「ムキー!!」
「落ち着けマジェステ、お前じゃ敵わん」
 そしてマジェステが騎士団員となってウィッグの下に付いたというので、勇者としてボンネットは一応の様子見に来たのである。煽りに来た訳では無い、多分。
「それよりボンネット、他にも生きている私の部下はいるのか?」
「さぁ? 乗り込んだ時に向かって来た者は全員殺したと思いますが、建国のドタバタで死体は全て確認していませんし、なにより先に逃げた者がいればワタクシでは分かりかねますね」
「そうか...」
 部下が全て魔族になっていたわけではないが、生き残りがいればマジェステ以外にもまだ生きているものがいるかもしれない、そんな淡い期待がウィッグにはあった。
「ただ...カチューシャ様が...」
「カチューシャ? あの子はどう見ても私の部下ではないだろう」
「いえ、あの子の強さを見ると、魔王のもう片腕だったライカンを思い出すなと...」
 ボンネットは魔王と戦う前に立ちはだかったライカンの姿を思い浮かべる、流石に名前までは思い出せないが...。
「バイザーか...たしかにあの強さはアイツを思い出すが、ライカンの里には度々私が顔を出しているが見た覚えはないな」
「元より里のライカンたちは人間との交配で魔族としての力を殆ど失っていますからね。女のライカンなんて激レアなのも先祖返りの影響かもしれませんね」
「え、あの子ライカンでしたの!?」
「あぁ、女のライカンで、それもバイザーのヤツに匹敵するほどのな」
 あの時ウィッグが急いでたのはカチューシャのためというより、カチューシャに殺され続けることになるであろうマジェステを心配してのことでもあったのだ。
「ヒィィ! 次にお会いしたらよく謝っておきませんと...」
「まあ、流石にアナタの両腕が両方生きてたなんて、そんな都合の良いことは無いでしょう」
 そう思うウィッグたちであったが...。

―19年ほど前
「この臭い...目標はまだ先か...」
 銀髪の小柄な男は鼻を利かせて討伐目標の魔族の行方を探る。
 彼はサイザー、かつて魔王の片腕として仕えた最強のライカン。勇者との戦いで一命を取り留め、現在まで生き延びた魔王配下の唯一の生き残りである。(もっとも、マジェステも封印されてるものの生きてはいるが)
「魔王様復活まで他の魔族なんぞにこの地を自由にさせるわけにはいかん...」
 魔王の力によって魔族となった彼は老いることがなく、数十年おきに名を変えながらも魔王復活に備えて冒険者としてこの大陸の平和を密かに守り続けていた。
(なんだ...? 人の臭い...?)
 サイザーは後方から人の近付く臭いを感知する。魔族の出現でこの辺りは人が近寄らないはずだが、明らかにこちらに向かって来ているではないか。挿絵AIで作った挿絵
 数十年に一度現れるかどうかの魔族は強大な力を持ち並の冒険者に敵うものではない。単独の方が全力(ライカンの力)を出せるサイザーはパーティーを組まないで依頼を受けたが、よもや単独で挑むような愚か者は居ないと思っていたが...。いや、一人いたのだ。
「おっ! どうやら間に合ったか!」
 サイザーが近付く臭いを持っていると、身の丈ほどもある大剣を抱えた金髪の女が現れる。
「お前は...噂に聞くアルトリウスか」
 近年目覚ましい活躍をする稀代の女冒険者の名は聞いたことがあった。アルトリウスという割に大柄ではないが赤髪に大剣、そして猛者の出で立ちは間違いなく彼女がその噂の人物だろう。
「アンタが一匹狼のサイザーか、いくらなんでも一人で魔族に挑むなんて無茶が過ぎるぜ」
「それで俺を追ってきたというわけか。しかしもとより一人で片付けるつもりの仕事だ、手柄をくれてやるつもりはない」
「手柄なんていらねぇよ、魔族の討伐をアンタ一人になんて任せられねぇ。アンタの実力も聞いちゃいるが、二人の方が達成率も上がるだろ?」
「なるほど...そこも噂に聞く通りか」
 稀代の冒険者ベルメット。異名をアルトリウス。その名前が轟くのは何もその実力や功績の高さからではない。彼女が勇名を馳せたのは何より、彼女のその人間性からである。
「おまえの活躍で昨今の冒険者の行儀がよくなっているとは聞いたが...、まぁ納得だな」
 彼女が現れるより前の冒険者及び冒険者ギルドの評判は地の底だった。依頼のために手段選ばない者、違法な依頼、目標物や手柄の横取り、新人潰し、ギルド間での抗争...etc...
 そんな冒険者の評判を変えたのがベルメットだった。「冒険者の仕事に貴賤はない」と仕事を選り好みせず、常に誠実に、それでいて猛者であった。
 彼女に救われた者、争った者、共に戦った者、そのいずれもが彼女の冒険者としての姿に憧れ、彼女に憧れた者達もまた誰かの憧れとなって、連鎖するように冒険者と冒険者ギルドはその腐敗を正していった。
 やがて彼女の姿勢は、“冒険者ギルドは信頼により運営されるべきである”という理念として制度にまで昇華された。
 ベルメット本人にそのつもりは無かったのだろう。しかしたった一人で冒険者たちの在り方を変えてしまった功績は歴代の如何なる冒険者にも勝る。
 故に彼女はこう呼ばれるのだ「稀代の冒険者」と。
「話に聞く通りなら断ったところで無駄だろうな」
「どういう風に聞いてるか知らねぇけど、アンタが一人で戦うつもりでも手伝わせてもらうぜ!」
「勝手にしろ...言っとくが...」
「誰かとつるんだ事なんてないから、連携はとれない、自分の身は自分で守れ、だろ?」
「......分かってるならいい、邪魔だけはするなよ」
 サイザーとしては老いることがなくしかもライカンなので有名になり過ぎるのは困るため、この仕事で魔族と同士討ちになったことにして暫く身を潜めるつもりで居たのだが、有名人が一緒なら丁度良い。手柄をこの女に押し付ければ自分の功績はまだ暫く抑えられると、ベルメットの手伝いはやぶさかでもなかった。


「おっつかれー! 勝利の後はやっぱりコレだねー!」
 仕事を終えて酒場で寛ぐベルメットとサイザーの前には、山盛りの肉料理が並べられていた。
「祝勝祝いに酒を一杯どころか、肉をいっぱいとは...」
「酒なんかより肉だろ肉! 酒じゃ体力は付かねぇしな!」
 と、ベルメットは女性らしさもかなぐり捨てて肉料理にかぶりつく。
「あまり同意したくないが、酒よりかはマシだな」
 そしてその光景に呆れながら、サイザーはカトラリーで切り分けながらもベルメットに負けない速度で肉料理を口に運んでは飲み込んでいく...。
「お、アンタもいける口だねぇ。どうだい食い比べといこうじゃねーか!」
「勝手に比べろ、俺は俺のペースで食わせてもらう」
「あんまり余裕ぶってるとお前の食う分がなくなっちまうぜー?」
「ふん...」
 意に返さずといったサイザーだったがベルメットの食べる速度が加速するとそれに合わせて彼もまた加速し、酒場の厨房はまるで鍛冶場のような騒ぎになるのだった。
.........
「ベルメット、俺と組む気はないか?」
「一匹狼のアンタからとは意外だね」
 酒場の肉を二人で食い尽くしたあとサイザーはベルメットに提案した。
 コレまで一人で活動してきた彼だが、自分が本気を出さなくとも魔族を圧倒した彼女は自分の正体を隠すのに丁度いいと思ったのだ。彼女程の名声の隣にいれば自分は体よく日陰者になれるという算段だ。
「先の戦闘でお前の強さに惚れたと言ったところか」
「口説き文句にしてはロマンスに欠けるが、悪くないね。アタシもアンタの本気を見てみたいしな」
「お前に任せても十分だと思ったまでだ」
「どうだか、最初はあんなこと言ってた割に手柄をくれてやるために手を抜く冒険者なんてアタシも始めて見たものだがね」
 ベルメットに手柄を渡すために手を抜いていたのはお見通しだったらしい。
「気付いてるなら話が早い、俺は有名になると困るものでな、お前には俺の日陰になってもらいたい」
「だから女を誘う言葉じゃないっての」
 開き直ったサイザーの言葉に呆れるベルメットだったが、彼の正直な言葉はまんざらでもなかった。
「いいぜ。アタシも詮索しねぇからアタシの側では存分にやりな」
「お前一人で済む事が殆どだろうがな...」
 こうして、一匹狼狼のサイザーと稀代の冒険者ベルメットのパーティが結成されたのだった...。


―1年後

「やってしまった...」
 早朝、宿のベッドの上で目覚めたサイザーはその状況に頭を抱えていた。
 街を守る大口の仕事を達成したところ、気を良くした酒場の主人に酒を奢られ、普段は飲まない酒を煽ったのがマズかった、昨夜の記憶がまるでない。
 そして目覚めてみれば裸で寝てる自分と同じく隣で裸で寝てるベルメット...これは完全に行為に及んだ後であった。
「もとよりこの俺が一人の人間と親密になり過ぎたか...」
 魔族でありライカンであるサイザーはこれまで誰かと親しくなりすぎないよう気を付けてきた。そんな長年の生活に孤独を感じていたのも原因かも知れないが、ベルメットは彼にとってあまりに魅力的な女性だった。
 その強さも、人間性も、1年共に過ごすうちに彼女に惹かれていたことを彼は自覚していた。故に酒の勢いで行為に及んでしまったのだろうと自戒する。
「潮時だなベルメット...世話になった」
 そして、その日の朝、サイザーはベルメットの前から黙って姿を消した。まさか彼女が自分の子を宿したとは知らずに...。

―半年後

「すいませんベルメットさん、こちらの手紙受け取りを拒否されました」
「あーもーサイザーのヤツ...、せめて中身見ろっての...」
 冒険者ギルドの受付でお腹が大きくなり始めてきたベルメットはサイザーに宛てた手紙が封も切らずに帰ってきたことに頭を抱えていた。
 サイザーが自分の前から姿を消した当初は。彼に惹かれ始めていたベルメットもその意向を汲んで彼を追うようなことはしなかった。
 しかし、自分の妊娠が発覚したため、彼に伝えようと冒険者ギルドを通して連絡を取ろうとしていたのだが、こちらを警戒してまるで捕まらないし伝言も手紙も拒否されている。
「アイツにはアイツなりの事情があるんだろうけどさ...」
 結局、1年共に活動してサイザーが人目を忍んで生きる理由を聞くことはできなかった。
 何もサイザーに行為や妊娠の責任を取らせたいわけでない。孤独に生きようとする彼に子供ができたことを、ただ伝えたかったのだ。
「梨の礫じゃしゃーない。諦めてアタシも故郷に戻って大人しくしてるよ、暫くは活動できないからギルドもそのつもりでいてくれよ」
「はい、しばらく休んで元気なお子さん産んでくださいね。私たちギルドはあなたの復帰をずっとお持ちしています」
 こうして故郷でカチューシャを産んだベルメットはサイザーが孤独に生きようとする理由を、産まれた我が子に耳と尾がある事で知る。
 カチューシャがライカンである事実は故郷の村の中で秘匿され、ライカンには男しかいないということで、ライカンである事を隠すためにカチューシャは女として育てられる事となった。


―カチューシャが産まれて7年程経った頃
「ねぇお母さん、私のお父さんって?」
 街で見かけた仲良い父母娘の三人家族を見てカチューシャは何度目かの父親の質問をしてみた。挿絵AIで作った挿絵
「前に話しただろう? お前のお父さんは10年前の魔公爵討伐の激戦で亡くな...」
「違うよ、大怪鳥との戦闘で亡くなった、だよ、設定ブレブレじゃん。あと10年前じゃ私の産まれた年と計算合わないよ」
「あーそうだっけ? てかチシャお前今いくつだっけ?」
「まだ七歳」
 ライカンの成人までの成長は早い、カチューシャは産まれて3年目には冒険者として母と行動を共にするようになり、まだ七歳にも関らず既に12歳のようなしっかりした少女(男)として育っていた。母のベルメットが娘(息子)の年齢を間違うのも無理はない。
「お前がしっかり者すぎてなんだかもう10年は経った気分だよ、はっはっはっ!」
「はぐらかさないでよ、それにしっかり者だと思うならいい加減戦闘中に私を小脇に担ぐのやめて欲しいんだけど」
 カチューシャが3歳、見た目は6歳になった頃にはベルメットは冒険者に復帰したが、大事な我が子を危険な目に合わせられないと、常に片手で小脇に抱え、片手で大剣を振り回すという戦いをしていた。カチューシャは母の小脇でその豪快な戦いを至近距離で眺めると共に、魔法でサポートをしている。
「そんな! 母に抱かれて戦うのがイヤだというのか!?」
「うん、イヤ。私見た目はもう母親に担がれる歳じゃないんだから、普通に恥ずかしい」
「こ、これが噂に聞く反抗期!?」
「違うってば」
 結局、その日も母の小脇に担がれるのをやめる説得のために父親の事を聞くことはできず。
 カチューシャも何度目かのはぐらかしに父親の事を聞くことは諦めたのだった。
 カチューシャが産まれる前はサイザーに知らせようとしていたベルメットだったが、産まれた我が子がライカンで、その父親のサイザーがライカンである事を知って、ライカンの我が子をサイザーが連れ去ってしまうのでは考えて、父親の事を秘密にし、サイザーに伝えることもやめていたのだった...。


―同じ頃

「間に合わなかったか...」
 暴風雨の嵐の中、ウィッグは崖下に落ちた馬車を見つけ、肩を落とした...。
「おかーさん? おかーさん!」
 わずかな生存の可能性も考えて崖下に飛び降りると、嵐の音に消え入りそうな少女の声が聞こえる。
「ねえ、おかーさん?」
 その声に近づいてみれば、わが子を守らんと自らの身体をクッションにした母に抱かれた六歳程の少女が、物言わぬ母に言葉を求めていた。
「行こう、嵐の中にいては危険だ」
「でも...おかあさんが...! おとうさんも!」
 ウィッグはその痛ましい姿の少女を母の腕から引き剥がして少女を抱き抱える。
「私一人では君の両親までは運べない、一度君を安全な所に送ってから改めて二人を迎えに行こう」
「おかあさん...おとうさん...!」
 少女は両親の死を理解しているのだろう、ウィッグに抱きかかえられたまま、離れていく両親をただ呼び続けていた。
「君、名前は?」
「...ティアラ」
 少女ティアラは、行商人の両親を嵐の中の事故で失った。


「あぁ...なんということ...」
 騎士団本部で報告を聞いたヴェール王妃は、親友夫婦の死に膝から崩れ落ちた。
「私が無理をしてでも止めていれば...」
 かつてその行商人夫婦のキャラバンのメンバーだったヴェールは、クランに見初められた後も友人として交流を続けていた。
 交易を終えた2人は観光都市であるユリゾンリリィでの滞在費は高く付くと天候が変わる前に急いで出発し、嵐を心配したヴェールがウィッグに2人を追わせたのだった。
「この子だけは、母親の身体で守れて無事でした」
「あぁティアラ...あなただけでも無事で良かった...」
 親友夫婦の忘れ形見となった娘をヴェールは抱きしめる。抱きしめられたティアラは両親の死を受け止めきれず虚ろだった。
「自分は両親の回しゅ...お迎えに戻ります」
「ありがとう、ウィッグ」
 遺体の回収...と言いそうになってティアラの手前ウィッグは言い直す。
「アナタは王宮へ、気持ちが落ち着いたらこれからの事を一緒に考えましょう」
「...コクン」
 言葉の意味を理解したかは定かでは無いが、ティアラは小さく頷いて王宮へと招かれた。
 ティアラは王妃の親友の娘とはいえ、商談で失礼があってはいけないと父親と馬車で留守番が常だったので王宮へ入るのは(物心が付いてから)初めてだった。とはいえ、絢爛豪華な王宮の内装に目が奪われるような状況でもなく、ティアラはただなすがままに王宮の一室へと案内されるのだった。
「この部屋でゆっくして。一人は寂しいだろうから...キャペリン、あなたの娘と一緒に居させてあげて」
「かしこまりました。事情は概ね...娘にも伝えておきます」
 キャペリンは仕事の手伝いをさせてる娘を呼ぶと小声でティアラの事情を説明して子供二人を部屋に残す。
「始めまして、私はメイド見習いのプリム。お話できる...?」
「う...うん...」
 まだ両親を失った実感のわかないティアラだったが、賢い両親に育てられたこともあって聡い子であった、自分が孤児になったという状況も飲み込み始めていた。
「辛いなら無理してお話しなくてもいいからね? 一人が不安なら私は黙って側にいるし、一人でいたいなら部屋を出て扉の前にいてあげる」
「大丈夫...あリがとう...やさしいね...」
 プリムもまた立派な親の教育もあって、既に気遣いの良くできる少女であった。
「プリムは...その歳でもう働いてるんだ...?」
 孤児になった自分もこれから仕事を探さないといけないだろうか?と年が近いにも関らず既に働いているプリムを見つめる。
「私は母様が侍女長だからこの年齢からメイド見習いとして仕事をさせてもらってるの。私の希望で、好きでやってる事だよ」
「そう...なんだ...凄いね...」
 行商人の両親に付いて回っているティアラだが、両親の商談を間近で見たことはあまりなく、両親から受け継ぐような技術や知識は殆どない。両親もティアラが10歳になるくらいから商売を教えるつもりであり、ティアラに行商人を無理に継がせる気も無かったのだ。
「わたし...なんにもできない...」
 両親を失って、自分の無力さに気が付いて、これからの事がなんにも分からなくて、ティアラは多くの不安に襲われて座り込む。
 それに気が付いたプリムは静かにティアラの頭を抱いて優しく撫でる。
「不安だよね...大丈夫...。あなたの大好きなご両親の代わりにはならないけれど、きっと素敵な人があなたの新しい親になってくれるだろうから...」
 ここ、ユリゾンリリィは同性愛者の多い国、養子として孤児の引き取り手は引く手数多。両親が多分どちらも母親と言うことになるだろうが、孤児になったティアラにもすぐに引き取り手は見つかるだろう。
 両親を失った傷は暫く癒えることはないだろうけど、せめて孤独になることはないと、プリムは優しくティアラの不安に寄り添ってあげた。挿絵AIで作った挿絵
 それから間もなく、ヴェール王妃がティアラを自分たちの娘として引き取る事、王女として迎える事をティアラと相談し、王女となったティアラがプリムを親友とするのに時間は掛からなかった。


―そして現在
「うっひょー! 姫様の今日のパンチラに私のテンションも絶好調ですぜ!」
「別に今のプリムも嫌いじゃないけどさ...時々残念に思うのよね...アンタの成長に付いて」
「何ですか急に!」
「昔は違ったんだ?」
「それはもう私のお姉さんみたいなしっかり者だったよ...」
 風のいたずらでめくれたスカートにテンションをバクアゲするプリムに、ティアラは下着を見られた羞恥心よりも、初めて会ったときのことをふと思い出してその変わり映えに苦笑するのだった...。

 それぞれの始まりと変化、成長...。
 コイツだけどうしてこうなった。
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百合の国のプリンセス♂作者:万能ねぎトロ
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#10 それぞれのプレリュード

百合の国のプリンセス♂#10 それぞれのプレリュード
挿絵AIで作った挿絵

―およそ300年前
「どいつもこいつも全然ダメですね...」
 冒険者ギルドの酒場でエルフの女はボヤいていた。
(冒険者ギルドの存在を聞いて期待してたんですけど、まさかこんなレベルが低いとは...。)
 彼女、ボンネットは16歳でエルフの里で成人として認められた事で里を抜け出すことが許された。
(もっと早くエルフの里を抜け出すべきでしたね...)
 エルフ族は基本的に里に籠りきりだが、別段里の外に出る事を制限している訳ではない。しかしそれは成人してからの話で、成人するまで外に出ることは出来ない。
「はぁ...」
 そしてようやく里から出られたボンネットは冒険者ギルドに登録したものの、頭を抱えていた。
(まさかエルフ族に転生するなんて...どんな確率ですか...)
 そう、彼女は大昔から秘術を用いて転生したのだ、というのも...
(魔王が復活してどこかで力を蓄えているというのに、急がないと...)
 魔王が復活する時、自らも何処かの子として蘇る。それが魔王を倒した勇者が、復活した魔王から建国したユリゾンリリィを護るための方法だった。
「よりにもよって聖女も世代交代したてでまだ10歳の小娘。早いとこ仲間を集めないと行けないのに...」
 魔王の討伐は自分一人の力ではない、しかし魔王と同じ秘術が使えるのは一人だけだった。故に勇者は国を妹に任せ秘術によって早逝した。
 そして転生した時代で聖女と新たな魔王討伐のメンバーを集めるつもりでいたのだが、自分の死後確立された「冒険者ギルド」とやらに期待してみれば全くの当て外れ、てんで魔王と戦えるレベルではない。
「どうせなら私好みの美人の女冒険者とかいませんかね...」
 転生したとて性嗜好に変わりはない。自分一人で転生したため最愛の妹もいない今、新たなパートナーも欲しいなと改めてギルド内を見渡すと...
「依頼の報告だ、確認を頼む」
 丁度仕事を終えたらしいオレンジ髪の美女が目に入った。 
(っているじゃんいるじゃん! クリティカルどストライクのテラ美女が来てじゃん!? しかも見たところフリーで相当の腕前じゃん!? 大本命大革命やるじゃん冒険者ギルド! 掌大スクリュー!!)
 16年間エルフの里で過ごした影響で心の声がちょっと騒がしくなっているボンネットであった。
「ねぇ、アナタ。私と組みませんか?」
「......キミは?」
 そんな内心をおくびにも出さず、ボンネットは極めて冷静に女冒険者に声を掛ける。挿絵AIで作った挿絵
「私はエルフのボンネット。冒険者なりたてでまだランクは低いけど、実力はアナタに負けませんよ」
「エルフ族とは...珍しい。実力も...たしかにその自信の裏付けはありそうだ」
「正直、私のレベルにあう冒険者がいなくて困ってたんです、アナタも同じ理由ではありませんか?」
 このギルドで三日ほど様子を見てみたが彼女の眼鏡にかなう者は美女抜きにしてもこの女冒険者が始めてだった。恐らくこの女冒険者が一人で活動しているのも同じ理由だろうとボンネットは予想する。
「私の場合、名を挙げるのが目的で仲間を必要としていないだけだな」
「それなら尚更、私と組みませんか? エルフの美女と美人冒険者のタッグ、名前を広めるにはこれ以上ない話題性でしょう?」
 ボンネットとしても魔王が活動を開始した時に備えて名声がある方が色々と都合がいい、そう言う意味では彼女と目的が一致する。
「ふむ...たしかに...、一人で活動するよりも効率は良さそうだな。なにより、一人でいると他の冒険者の誘いが疎ましく思えてきたところだ」
「パーティー結成ね。よろしく、えーと...」
 握手をしようと手を差し出して、ボンネットは女冒険者の名前を聞いていないことに気が付く。
「名乗っていなかったな。私の名前は“ウィッグ"、よろしく頼むボンネット」
「えぇ、よろしく」
 運命のイタズラか、こうしてお互いの正体に気が付くこともなく、転生した魔王と勇者はパーティーを結成したのだった。
 そしてボンネットがウィッグの性別を知り失恋するのは、もうちょっと先の事である。


―ボンネットとウィッグがパーティーを結成してからおよそ3年...
「平和過ぎる...」
「平和なのは喜ぶべき事だが...我々としては仕事が無くて困るな」
 野宿の準備をしながら二人は今日は仕事が無かったことを振り返る。
 二人が組んでからというもの冒険者ギルド始まって以来の活躍でその名声は留まるところを知らなかったが、活躍しすぎて平和になってしまっていた。
「そもそもこれ以上名声を上げようにも大口の仕事がありませんしね」
 大型の魔物も、魔族の出現も、大口の依頼は全て二人が片付けてしまったし、二人の強さにビビって魔族も魔界に引き籠もってしまった。
「そろそろ潮時かもしれんな」
「ウィッグの目的は名を挙げてユリゾンリリィの騎士に士官することでしたね」
「あぁ、聞くところによると向こうにも私たちの名前は広まっているようだ」
「そのために女の格好までしてね...。全く、アナタを口説いた昔の私をひっぱたいてやりたいですよ」
「イヤ...すまない。まさかキミがそう言う趣味だとは思わなくてな...男を好きにならないと分かっていたらすぐにでも話していたんだが」
 ウィッグが女装をしていると話したのは二人が組んでから3ヶ月ほど経ってから。二人の信頼関係が固まりボンネットがウィッグにアプローチを始めたという最悪のタイミングであった。
 敢え無く失恋したボンネットであったが、女装してる分には見た目は好みだしウィッグの強さは魔王討伐には不可欠だとパーティーを解消することはなかった。
「私としても、アナタがユリゾンリリィの騎士になるならこれ以上冒険者を続ける理由もありませんが...」
 ボンネットとしてはウィッグ程の騎士がユリゾンリリィに在中するならコレほど有り難いことはない。魔王の活動開始に備えられるのだから。
「ふむ? そう言えばお前が冒険者になった理由を聞いたことが無いな」
「私の目的も...ユリゾンリリィに士官するなら話しておいたほうがいいですね...」
 そして、他人でなくなったウィッグには話しておくべきだとボンネットは思った。
「ここだけの話...。魔王は復活しています」
 ウィッグは一緒ギョッとするが、平静を装い問う。
「......。何故そう思う、あの国は今も尚平和が続いてるようだが」
 自分が復活したことで魔王の加護...呪いは無くなりモンスターの発生等が目立つようになってはいるが、まだ大事にはなっていない。魔王の復活が知られているはずがないのだ。
「情報の出処は言えませんが...。恐らく復活した魔王は力を蓄えているか、準備しているのでしょう。私は魔王が活動を始めた時に備えて共に戦える仲間を探していました」
「にわかには信じがたいが...お前程の者が言うならそうなのだろうな」
「信じてくれるのですか?」
 信じるもなにも自分がその魔王なのだから、とウィッグは思ったが、それは胸に秘めることにする。少なくとも今は、魔王として活動する気は無いのだから。
「ようやく話してくれたお前の秘密を疑うほど私は疑り深くはないよ」
「魔王の復活を知る私は、アナタがユリゾンリリィに士官すると言う目的を聞いた時、止めるべきでしたのでしょう...アナタには危険な使命を負わせてしまいました」
「魔王復活の事実を知ったとしても、私の...母の祖国を救いたいと思う気持ちは変わりない」
「そうですか、では...アナタとはユリゾンリリィでお別れですね」
「お前はどうするんだ? また魔王に備えて仲間探しか?」
「いえ、私は近衛かメイドとして潜り込んで、中から様子を見ようと思います」
「ではユリゾンリリィまでが我々の最後の冒険となるな」
「そうなりますね」
 最後の目的地が決まった二人は、それから三年分の冒険を語り合うのだった。


―そして現在
「こんの鬼畜勇者! 転生しておいて300年もワタクシを放置ってどういうことですの!?」
「イヤ正直、魔女は死なない以外に敵じゃないので完全に忘れてましたね。なんなら殺したような気もしてましたね」
 騎士団の密室でボンネットとマジェステが揉めて、それをウィッグが見守っていた。
「封印場所まで記録しておいてそりゃないだろお前...」
「記録を残したのは妹ですから。あの子ったらホントマメなんですから...」
 ウィッグとボンネットがユリゾンリリィに仕えてから30年後、全く老けないウィッグをボンネットが問い詰めたことでお互いの正体が発覚していた。
「どちらにせよアナタの封印を解いてやる義理なんてありませんでしたし」
「ムキー! アナタが覚えてればワタクシだって事を起こさず魔王様に仕えたですのよ!」
「ザマァないですね」
「ムキー!!」
「落ち着けマジェステ、お前じゃ敵わん」
 そしてマジェステが騎士団員となってウィッグの下に付いたというので、勇者としてボンネットは一応の様子見に来たのである。煽りに来た訳では無い、多分。
「それよりボンネット、他にも生きている私の部下はいるのか?」
「さぁ? 乗り込んだ時に向かって来た者は全員殺したと思いますが、建国のドタバタで死体は全て確認していませんし、なにより先に逃げた者がいればワタクシでは分かりかねますね」
「そうか...」
 部下が全て魔族になっていたわけではないが、生き残りがいればマジェステ以外にもまだ生きているものがいるかもしれない、そんな淡い期待がウィッグにはあった。
「ただ...カチューシャ様が...」
「カチューシャ? あの子はどう見ても私の部下ではないだろう」
「いえ、あの子の強さを見ると、魔王のもう片腕だったライカンを思い出すなと...」
 ボンネットは魔王と戦う前に立ちはだかったライカンの姿を思い浮かべる、流石に名前までは思い出せないが...。
「バイザーか...たしかにあの強さはアイツを思い出すが、ライカンの里には度々私が顔を出しているが見た覚えはないな」
「元より里のライカンたちは人間との交配で魔族としての力を殆ど失っていますからね。女のライカンなんて激レアなのも先祖返りの影響かもしれませんね」
「え、あの子ライカンでしたの!?」
「あぁ、女のライカンで、それもバイザーのヤツに匹敵するほどのな」
 あの時ウィッグが急いでたのはカチューシャのためというより、カチューシャに殺され続けることになるであろうマジェステを心配してのことでもあったのだ。
「ヒィィ! 次にお会いしたらよく謝っておきませんと...」
「まあ、流石にアナタの両腕が両方生きてたなんて、そんな都合の良いことは無いでしょう」
 そう思うウィッグたちであったが...。

―19年ほど前
「この臭い...目標はまだ先か...」
 銀髪の小柄な男は鼻を利かせて討伐目標の魔族の行方を探る。
 彼はサイザー、かつて魔王の片腕として仕えた最強のライカン。勇者との戦いで一命を取り留め、現在まで生き延びた魔王配下の唯一の生き残りである。(もっとも、マジェステも封印されてるものの生きてはいるが)
「魔王様復活まで他の魔族なんぞにこの地を自由にさせるわけにはいかん...」
 魔王の力によって魔族となった彼は老いることがなく、数十年おきに名を変えながらも魔王復活に備えて冒険者としてこの大陸の平和を密かに守り続けていた。
(なんだ...? 人の臭い...?)
 サイザーは後方から人の近付く臭いを感知する。魔族の出現でこの辺りは人が近寄らないはずだが、明らかにこちらに向かって来ているではないか。挿絵AIで作った挿絵
 数十年に一度現れるかどうかの魔族は強大な力を持ち並の冒険者に敵うものではない。単独の方が全力(ライカンの力)を出せるサイザーはパーティーを組まないで依頼を受けたが、よもや単独で挑むような愚か者は居ないと思っていたが...。いや、一人いたのだ。
「おっ! どうやら間に合ったか!」
 サイザーが近付く臭いを持っていると、身の丈ほどもある大剣を抱えた金髪の女が現れる。
「お前は...噂に聞くアルトリウスか」
 近年目覚ましい活躍をする稀代の女冒険者の名は聞いたことがあった。アルトリウスという割に大柄ではないが赤髪に大剣、そして猛者の出で立ちは間違いなく彼女がその噂の人物だろう。
「アンタが一匹狼のサイザーか、いくらなんでも一人で魔族に挑むなんて無茶が過ぎるぜ」
「それで俺を追ってきたというわけか。しかしもとより一人で片付けるつもりの仕事だ、手柄をくれてやるつもりはない」
「手柄なんていらねぇよ、魔族の討伐をアンタ一人になんて任せられねぇ。アンタの実力も聞いちゃいるが、二人の方が達成率も上がるだろ?」
「なるほど...そこも噂に聞く通りか」
 稀代の冒険者ベルメット。異名をアルトリウス。その名前が轟くのは何もその実力や功績の高さからではない。彼女が勇名を馳せたのは何より、彼女のその人間性からである。
「おまえの活躍で昨今の冒険者の行儀がよくなっているとは聞いたが...、まぁ納得だな」
 彼女が現れるより前の冒険者及び冒険者ギルドの評判は地の底だった。依頼のために手段選ばない者、違法な依頼、目標物や手柄の横取り、新人潰し、ギルド間での抗争...etc...
 そんな冒険者の評判を変えたのがベルメットだった。「冒険者の仕事に貴賤はない」と仕事を選り好みせず、常に誠実に、それでいて猛者であった。
 彼女に救われた者、争った者、共に戦った者、そのいずれもが彼女の冒険者としての姿に憧れ、彼女に憧れた者達もまた誰かの憧れとなって、連鎖するように冒険者と冒険者ギルドはその腐敗を正していった。
 やがて彼女の姿勢は、“冒険者ギルドは信頼により運営されるべきである”という理念として制度にまで昇華された。
 ベルメット本人にそのつもりは無かったのだろう。しかしたった一人で冒険者たちの在り方を変えてしまった功績は歴代の如何なる冒険者にも勝る。
 故に彼女はこう呼ばれるのだ「稀代の冒険者」と。
「話に聞く通りなら断ったところで無駄だろうな」
「どういう風に聞いてるか知らねぇけど、アンタが一人で戦うつもりでも手伝わせてもらうぜ!」
「勝手にしろ...言っとくが...」
「誰かとつるんだ事なんてないから、連携はとれない、自分の身は自分で守れ、だろ?」
「......分かってるならいい、邪魔だけはするなよ」
 サイザーとしては老いることがなくしかもライカンなので有名になり過ぎるのは困るため、この仕事で魔族と同士討ちになったことにして暫く身を潜めるつもりで居たのだが、有名人が一緒なら丁度良い。手柄をこの女に押し付ければ自分の功績はまだ暫く抑えられると、ベルメットの手伝いはやぶさかでもなかった。


「おっつかれー! 勝利の後はやっぱりコレだねー!」
 仕事を終えて酒場で寛ぐベルメットとサイザーの前には、山盛りの肉料理が並べられていた。
「祝勝祝いに酒を一杯どころか、肉をいっぱいとは...」
「酒なんかより肉だろ肉! 酒じゃ体力は付かねぇしな!」
 と、ベルメットは女性らしさもかなぐり捨てて肉料理にかぶりつく。
「あまり同意したくないが、酒よりかはマシだな」
 そしてその光景に呆れながら、サイザーはカトラリーで切り分けながらもベルメットに負けない速度で肉料理を口に運んでは飲み込んでいく...。
「お、アンタもいける口だねぇ。どうだい食い比べといこうじゃねーか!」
「勝手に比べろ、俺は俺のペースで食わせてもらう」
「あんまり余裕ぶってるとお前の食う分がなくなっちまうぜー?」
「ふん...」
 意に返さずといったサイザーだったがベルメットの食べる速度が加速するとそれに合わせて彼もまた加速し、酒場の厨房はまるで鍛冶場のような騒ぎになるのだった。
.........
「ベルメット、俺と組む気はないか?」
「一匹狼のアンタからとは意外だね」
 酒場の肉を二人で食い尽くしたあとサイザーはベルメットに提案した。
 コレまで一人で活動してきた彼だが、自分が本気を出さなくとも魔族を圧倒した彼女は自分の正体を隠すのに丁度いいと思ったのだ。彼女程の名声の隣にいれば自分は体よく日陰者になれるという算段だ。
「先の戦闘でお前の強さに惚れたと言ったところか」
「口説き文句にしてはロマンスに欠けるが、悪くないね。アタシもアンタの本気を見てみたいしな」
「お前に任せても十分だと思ったまでだ」
「どうだか、最初はあんなこと言ってた割に手柄をくれてやるために手を抜く冒険者なんてアタシも始めて見たものだがね」
 ベルメットに手柄を渡すために手を抜いていたのはお見通しだったらしい。
「気付いてるなら話が早い、俺は有名になると困るものでな、お前には俺の日陰になってもらいたい」
「だから女を誘う言葉じゃないっての」
 開き直ったサイザーの言葉に呆れるベルメットだったが、彼の正直な言葉はまんざらでもなかった。
「いいぜ。アタシも詮索しねぇからアタシの側では存分にやりな」
「お前一人で済む事が殆どだろうがな...」
 こうして、一匹狼狼のサイザーと稀代の冒険者ベルメットのパーティが結成されたのだった...。


―1年後

「やってしまった...」
 早朝、宿のベッドの上で目覚めたサイザーはその状況に頭を抱えていた。
 街を守る大口の仕事を達成したところ、気を良くした酒場の主人に酒を奢られ、普段は飲まない酒を煽ったのがマズかった、昨夜の記憶がまるでない。
 そして目覚めてみれば裸で寝てる自分と同じく隣で裸で寝てるベルメット...これは完全に行為に及んだ後であった。
「もとよりこの俺が一人の人間と親密になり過ぎたか...」
 魔族でありライカンであるサイザーはこれまで誰かと親しくなりすぎないよう気を付けてきた。そんな長年の生活に孤独を感じていたのも原因かも知れないが、ベルメットは彼にとってあまりに魅力的な女性だった。
 その強さも、人間性も、1年共に過ごすうちに彼女に惹かれていたことを彼は自覚していた。故に酒の勢いで行為に及んでしまったのだろうと自戒する。
「潮時だなベルメット...世話になった」
 そして、その日の朝、サイザーはベルメットの前から黙って姿を消した。まさか彼女が自分の子を宿したとは知らずに...。

―半年後

「すいませんベルメットさん、こちらの手紙受け取りを拒否されました」
「あーもーサイザーのヤツ...、せめて中身見ろっての...」
 冒険者ギルドの受付でお腹が大きくなり始めてきたベルメットはサイザーに宛てた手紙が封も切らずに帰ってきたことに頭を抱えていた。
 サイザーが自分の前から姿を消した当初は。彼に惹かれ始めていたベルメットもその意向を汲んで彼を追うようなことはしなかった。
 しかし、自分の妊娠が発覚したため、彼に伝えようと冒険者ギルドを通して連絡を取ろうとしていたのだが、こちらを警戒してまるで捕まらないし伝言も手紙も拒否されている。
「アイツにはアイツなりの事情があるんだろうけどさ...」
 結局、1年共に活動してサイザーが人目を忍んで生きる理由を聞くことはできなかった。
 何もサイザーに行為や妊娠の責任を取らせたいわけでない。孤独に生きようとする彼に子供ができたことを、ただ伝えたかったのだ。
「梨の礫じゃしゃーない。諦めてアタシも故郷に戻って大人しくしてるよ、暫くは活動できないからギルドもそのつもりでいてくれよ」
「はい、しばらく休んで元気なお子さん産んでくださいね。私たちギルドはあなたの復帰をずっとお持ちしています」
 こうして故郷でカチューシャを産んだベルメットはサイザーが孤独に生きようとする理由を、産まれた我が子に耳と尾がある事で知る。
 カチューシャがライカンである事実は故郷の村の中で秘匿され、ライカンには男しかいないということで、ライカンである事を隠すためにカチューシャは女として育てられる事となった。


―カチューシャが産まれて7年程経った頃
「ねぇお母さん、私のお父さんって?」
 街で見かけた仲良い父母娘の三人家族を見てカチューシャは何度目かの父親の質問をしてみた。挿絵AIで作った挿絵
「前に話しただろう? お前のお父さんは10年前の魔公爵討伐の激戦で亡くな...」
「違うよ、大怪鳥との戦闘で亡くなった、だよ、設定ブレブレじゃん。あと10年前じゃ私の産まれた年と計算合わないよ」
「あーそうだっけ? てかチシャお前今いくつだっけ?」
「まだ七歳」
 ライカンの成人までの成長は早い、カチューシャは産まれて3年目には冒険者として母と行動を共にするようになり、まだ七歳にも関らず既に12歳のようなしっかりした少女(男)として育っていた。母のベルメットが娘(息子)の年齢を間違うのも無理はない。
「お前がしっかり者すぎてなんだかもう10年は経った気分だよ、はっはっはっ!」
「はぐらかさないでよ、それにしっかり者だと思うならいい加減戦闘中に私を小脇に担ぐのやめて欲しいんだけど」
 カチューシャが3歳、見た目は6歳になった頃にはベルメットは冒険者に復帰したが、大事な我が子を危険な目に合わせられないと、常に片手で小脇に抱え、片手で大剣を振り回すという戦いをしていた。カチューシャは母の小脇でその豪快な戦いを至近距離で眺めると共に、魔法でサポートをしている。
「そんな! 母に抱かれて戦うのがイヤだというのか!?」
「うん、イヤ。私見た目はもう母親に担がれる歳じゃないんだから、普通に恥ずかしい」
「こ、これが噂に聞く反抗期!?」
「違うってば」
 結局、その日も母の小脇に担がれるのをやめる説得のために父親の事を聞くことはできず。
 カチューシャも何度目かのはぐらかしに父親の事を聞くことは諦めたのだった。
 カチューシャが産まれる前はサイザーに知らせようとしていたベルメットだったが、産まれた我が子がライカンで、その父親のサイザーがライカンである事を知って、ライカンの我が子をサイザーが連れ去ってしまうのでは考えて、父親の事を秘密にし、サイザーに伝えることもやめていたのだった...。


―同じ頃

「間に合わなかったか...」
 暴風雨の嵐の中、ウィッグは崖下に落ちた馬車を見つけ、肩を落とした...。
「おかーさん? おかーさん!」
 わずかな生存の可能性も考えて崖下に飛び降りると、嵐の音に消え入りそうな少女の声が聞こえる。
「ねえ、おかーさん?」
 その声に近づいてみれば、わが子を守らんと自らの身体をクッションにした母に抱かれた六歳程の少女が、物言わぬ母に言葉を求めていた。
「行こう、嵐の中にいては危険だ」
「でも...おかあさんが...! おとうさんも!」
 ウィッグはその痛ましい姿の少女を母の腕から引き剥がして少女を抱き抱える。
「私一人では君の両親までは運べない、一度君を安全な所に送ってから改めて二人を迎えに行こう」
「おかあさん...おとうさん...!」
 少女は両親の死を理解しているのだろう、ウィッグに抱きかかえられたまま、離れていく両親をただ呼び続けていた。
「君、名前は?」
「...ティアラ」
 少女ティアラは、行商人の両親を嵐の中の事故で失った。


「あぁ...なんということ...」
 騎士団本部で報告を聞いたヴェール王妃は、親友夫婦の死に膝から崩れ落ちた。
「私が無理をしてでも止めていれば...」
 かつてその行商人夫婦のキャラバンのメンバーだったヴェールは、クランに見初められた後も友人として交流を続けていた。
 交易を終えた2人は観光都市であるユリゾンリリィでの滞在費は高く付くと天候が変わる前に急いで出発し、嵐を心配したヴェールがウィッグに2人を追わせたのだった。
「この子だけは、母親の身体で守れて無事でした」
「あぁティアラ...あなただけでも無事で良かった...」
 親友夫婦の忘れ形見となった娘をヴェールは抱きしめる。抱きしめられたティアラは両親の死を受け止めきれず虚ろだった。
「自分は両親の回しゅ...お迎えに戻ります」
「ありがとう、ウィッグ」
 遺体の回収...と言いそうになってティアラの手前ウィッグは言い直す。
「アナタは王宮へ、気持ちが落ち着いたらこれからの事を一緒に考えましょう」
「...コクン」
 言葉の意味を理解したかは定かでは無いが、ティアラは小さく頷いて王宮へと招かれた。
 ティアラは王妃の親友の娘とはいえ、商談で失礼があってはいけないと父親と馬車で留守番が常だったので王宮へ入るのは(物心が付いてから)初めてだった。とはいえ、絢爛豪華な王宮の内装に目が奪われるような状況でもなく、ティアラはただなすがままに王宮の一室へと案内されるのだった。
「この部屋でゆっくして。一人は寂しいだろうから...キャペリン、あなたの娘と一緒に居させてあげて」
「かしこまりました。事情は概ね...娘にも伝えておきます」
 キャペリンは仕事の手伝いをさせてる娘を呼ぶと小声でティアラの事情を説明して子供二人を部屋に残す。
「始めまして、私はメイド見習いのプリム。お話できる...?」
「う...うん...」
 まだ両親を失った実感のわかないティアラだったが、賢い両親に育てられたこともあって聡い子であった、自分が孤児になったという状況も飲み込み始めていた。
「辛いなら無理してお話しなくてもいいからね? 一人が不安なら私は黙って側にいるし、一人でいたいなら部屋を出て扉の前にいてあげる」
「大丈夫...あリがとう...やさしいね...」
 プリムもまた立派な親の教育もあって、既に気遣いの良くできる少女であった。
「プリムは...その歳でもう働いてるんだ...?」
 孤児になった自分もこれから仕事を探さないといけないだろうか?と年が近いにも関らず既に働いているプリムを見つめる。
「私は母様が侍女長だからこの年齢からメイド見習いとして仕事をさせてもらってるの。私の希望で、好きでやってる事だよ」
「そう...なんだ...凄いね...」
 行商人の両親に付いて回っているティアラだが、両親の商談を間近で見たことはあまりなく、両親から受け継ぐような技術や知識は殆どない。両親もティアラが10歳になるくらいから商売を教えるつもりであり、ティアラに行商人を無理に継がせる気も無かったのだ。
「わたし...なんにもできない...」
 両親を失って、自分の無力さに気が付いて、これからの事がなんにも分からなくて、ティアラは多くの不安に襲われて座り込む。
 それに気が付いたプリムは静かにティアラの頭を抱いて優しく撫でる。
「不安だよね...大丈夫...。あなたの大好きなご両親の代わりにはならないけれど、きっと素敵な人があなたの新しい親になってくれるだろうから...」
 ここ、ユリゾンリリィは同性愛者の多い国、養子として孤児の引き取り手は引く手数多。両親が多分どちらも母親と言うことになるだろうが、孤児になったティアラにもすぐに引き取り手は見つかるだろう。
 両親を失った傷は暫く癒えることはないだろうけど、せめて孤独になることはないと、プリムは優しくティアラの不安に寄り添ってあげた。挿絵AIで作った挿絵
 それから間もなく、ヴェール王妃がティアラを自分たちの娘として引き取る事、王女として迎える事をティアラと相談し、王女となったティアラがプリムを親友とするのに時間は掛からなかった。


―そして現在
「うっひょー! 姫様の今日のパンチラに私のテンションも絶好調ですぜ!」
「別に今のプリムも嫌いじゃないけどさ...時々残念に思うのよね...アンタの成長に付いて」
「何ですか急に!」
「昔は違ったんだ?」
「それはもう私のお姉さんみたいなしっかり者だったよ...」
 風のいたずらでめくれたスカートにテンションをバクアゲするプリムに、ティアラは下着を見られた羞恥心よりも、初めて会ったときのことをふと思い出してその変わり映えに苦笑するのだった...。

 それぞれの始まりと変化、成長...。
 コイツだけどうしてこうなった。
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百合の国のプリンセス♂作者:万能ねぎトロ
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