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ともあれ処女厨滅びるべし

 カローラが王宮に泊まるようになった日の翌日の夜、カチューシャが寝ようと部屋に帰ると...
「お帰りなさいカチューシャ!」
「え? カローラ?」
 扉を開けるとネグリジェ姿のカローラに出迎えられた。
「お風呂でする? ベッドでする? それとも、こ・こ・で?」
「実質一択なんだけど!?」
 新婚三択のようでそうでない問にカチューシャは流されることなく突っ込んだ。
「むぅ、今のカチューシャなら私のこの姿にエッチな気持ちになってくれると思いましたのに...」
「ならないよ! なってもいきなりエッチとかしないよ!」
 ティアラの事を好きになり始めたカチューシャではあるが、まだ女性を性の対象とまでは思えないようだった、或いはカローラのアプローチにムードの欠片も無いせいかもしれないが...。
「カローラも、聖女なんだからもっと節度をもとうよ!」
「あら? 私だって、カチューシャとただエッチがしたいだけじゃありませんよ?」
「そうなの?」
 その行動にそれ以外の目的があるともカチューシャには思えなかったが。
「私たち聖女の一族は、女の子しか生まれないんですよ」
「そういう話は私も聞いたことあるけど」
 女神の力の影響なのか聖女の一族には代々女の子しか生まれていない事はそれなりに有名な話である。
「そして! ライカンには男の子しか生まれないじゃないですか!」
「まぁ、そうだね...」
 だからライカンを隠すために自分は女として育ったと、カチューシャは複雑な気分で同意する。
「私とカチューシャが子供を作ったら。聖女のライカン(♀)か、聖女の力を持てるライカン(♂)、どっちが産まれるか気になりませんか!?」
「いや気にならないけど...」
「えぇ!? カチューシャ冒険者なのに好奇心が足りません!」
「好奇心で子供を作るものじゃないし、仮に後者が産まれたら聖女の一族として一大事じゃないかな...」
 男の聖女(?)、それもライカンなど大事であろう。
「その時はもう一人適当な殿方と子供作ってそっちに力を継承すればよいのですわ」
「聖女の力ってそんな選んで継承できるものなんだ...」
 聖女の一族がどうやってその力を継承しているかはカチューシャも知らないが、どうにも雑な感覚で継承しているように見える。
「それに今の聖女の役目は魔王の復活に備えてこの血と力を絶やさないことですから、子作りは立派な聖女の役目なんですよ?」
 カローラの代は大きな戦争があったが、従来の聖女は長い平和でその力を持て余していたのが実情である。
「カローラが聖女の使命をしっかり受け入れてるのは知ってるけど、流石にまだ早いんじゃ...」
「聖女のお役目には誇りはもっていますが、さっさと子供をこさえて引退してしまうのもやぶさかではありませんもの」
「戦争に戦後の後始末に...カローラは歴代の聖女の中でも特に働いたものね」
 聖女の使命に熱心な彼女だからこそ、それらの大仕事に早くも疲れを感じてしまっていても仕方が無い。戦争には参加したものの戦後の後始末を押し付けてしまったことにカチューシャは申し訳なさも感じていた。
「ですから! エッチしましょう!」
「結局カローラ私とエッチしたいだけだよね!?」
「聖女の使命三割、残り七割くらいはそうですね!」
「使命半分切ってるんだけど!?」
 結局、散々ゴネて服を脱ぎだしたカローラを布団で包めてふん縛って彼女の部屋へ放り出す事で、ようやくカチューシャは寝られたのだった。

 
百合の国のプリンセス♂#8 ともあれ処女厨滅ぶべし
挿絵AIで作った挿絵


 なんか昨晩にカチューシャの部屋にカローラが夜這い(?)をかけたらしく、私は四人揃った朝食の後にその事を問いただしていた。
「いきなり抜け駆けなんてどういうつもりよ!」
「ごめんなさい。でもカチューシャもいきなり3Pは戸惑うでしょうし?」
「何言ってるのカローラ!?」
「この聖女自分は平気みたいな口ぶりですよ」
「私はカチューシャに攻められるなら他に何人いても別に...」
 この聖女清楚な見た目の割にレベル高いわね...じゃなくて。聞き捨てならないわね。
「はぁ?! カチューシャは受けでしょう!!」
「そこぉ!?」
「いいえ! 断じて攻めです!!」
「はぁお前戦争かぁ!?」
「こんな事で王女が滅多な事言わないで!」
 ライバルではあるけど分かり合えると思ったのに、全く分かり合えそうに無いわこの子! カチューシャが攻めとかマジあり得ない!!
「はいはい、リバ論争は一旦停戦頂いてお仕事のお話ですよ」
 聖女と王女のすわ戦争かといったところで珍しくお城から出ていたボンネットが帰ってきて間に入る。
「なによボンネット、珍しく出かけてると思ったら私たちに仕事?」
「何ですか人を引き篭もりみたいに」
「みたいにじゃなくて姫様はそのつもりで言ったんだと思いますよ」
 王宮住み込みで働いてるとはいえ、たまの休日すら若いメイドと乳繰り合ってて王宮から出てるところを殆ど見たことがない、本人もなにかにつけて外に出るのを嫌がるし。
「まぁワタクシの事はいいです、ティアラ様たちに騎士団のお仕事があります」
「騎士団の? 珍しいわね」
 一応私も騎士団員と言うことになってるから騎士団の仕事を手伝う事はあるけれど、わざわざ仕事を持ってこられるのは始めてだ。
 ボンネットが騎士団本部に呼び出された事と言い、何かのっぴきならない事なのかしら? そう身構える私だったのだけど...。


「まず、仕事の内容の前にワタクシたちエルフ族の文化について少し説明させて頂きます」
 ティアラたちを宥めて仕事の説明が始まると思ったら、ボンネットはエルフ族の文化に付いて話し始めた。私としてもエルフ族の文化は興味あるけど、仕事とどういう関係があるんだろう。
「ワタクシたちエルフの国...国といっても里のようなものですが...結婚の文化がありません」
 ボンネットもウィッグさんも独身なのは、エルフ族の文化から来るものなんだ。
「しかし性欲は人間と変わらずあり、夜の相手は取っ替え引っ替えで特定のパートナーを作りません」
「なんだが理解しがたい文化してるわね...」
「いけませんよティアラ、他の種族の文化をそういう風に言っては」
 カローラも聖女として私たちとは違った価値観してるものね。
「というのもエルフ族はとても出生率が低いため、相手を絞らず好相性を探す理由もあるそうですが...」
「寿命の長いエルフ族に簡単に子供ができたら人口爆発しちゃうものね」
「父親がわからなくなったりされないのですか?」
「子供ができた時は国を挙げてお祝いし、国民全員が親となります、誰が父親かは気にしませんね」
 結婚もしなければ両親という立場も希薄らしい、聞けば聞くほどエルフ族の文化は独特だなぁ。
「生まれた子供は16歳には夜の営みに参加します。こういった理由からエルフ族には男女共に処女童貞はまずいませんし、平たく言うとエルフ族の女性はみんなビッチです」
「ぶっちゃけるわね...」
 エルフの国でなくこの国にいるボンネットは、自分の故郷あまり好きでないのか、なんだか言葉の節々に棘を感じるような...。
「と、エルフ族の文化について理解されたところで、この話は一旦横に置いときまして」
「うん?」
 と、ボンネットは箱を横に置くジェスチャーをして話を変えた。
「今回の仕事はエルフの里から抜け出したユニコーンの保護です」
「まぁ!」
「「ユニコーン!?」」
 ユニコーンって、あの神聖な一角獣の! 私たちヒーラーの象徴的存在にもなってる! スゴイ、エルフの里にいたんだ。
「ユニコーンって、あの処女厨の!?」
 あれ? なんかティアラのイメージと私のイメージに著しく違いがあるような?
「はい、その処女厨がエルフの里を抜け出してユリゾンリリィに好みの乙女を求めてやってきています」
「それでさっきの話なの!?」
「エルフ族の女はビッチばかりなので、あの処女厨は度々こちら国に抜け出してくるんですよねぇ...」
 あぁ...そういう...。
「ユリゾンリリィは女同士のカップルが多いですから、パートナーが居ても処女率が高いこともあり、あの処女厨には楽園に見えるのでしょう」
「モノは使わないけど行為で処女膜破けちゃう事結構あるんじゃ?」
 この国では女同士であることが重要で、エッチでそう言った(男のアレみたいなの)道具を使うのは邪道、みたいな空気があるんだとか...ってプリムが言ってた。
「女同士はカウントしないのか...よほどエルフ族の女たちが論外なのか、アレの趣味のでしょうね」
「エルフ族の女性はこちらの国とよほど趣が違うのですね」
「そうですね、ワタクシがいた頃の会話を再現致しますと...」
 っと、ボンネットは昔を思い出すように少し溜めると...。
「こないだ狩り行ったときさ〜、鹿が交尾っててマジ一石二鳥で狩れて超キャパい!ってなってたら、相方がその鹿見て脳汁ドバってバイブスぶち上がり(笑)!マジでアッサムティーすぎて、まさかのその場野外ワンチャン突入でホント草通り越して森通り越してモーゼなんですけどwww」
「うん、ごめんエルフ語わかんないわ」
「でもなんとなく雰囲気が違うのはわかりますね...」
 わかるようなわからないエルフ語(?)だけれど、ユリゾンリリィと雰囲気がだいぶ違うのは理解できた。
「でもボンネットが里に居たのって300年以上前だよね?」
 いつからこの国にいるから詳しく知らないけど、少なくとも300年は仕えてるって話のはず。
「300年程度でエルフ族の文化は変わりませんよ、今回来たエルフ族の使者も似たようなものでしたね」
 それは見たかったような見たくないような、エルフ族って私たちが思ってるような厳かな文化してないのかな?
「で、私らがその逃げたした処女厨を保護しろって?」
「エルフ族の使者が来てたなら本人たちにやらせればよいのでは」
 たしかにエルフ族が里から出てきてたなら本人たちで捕まえればいいような。
「里のエルフ族だとケバい気配を察知して近付く前に逃げられてしまいます、ですので皆様どなたかにユニコーン好みの乙女になって頂き、捕獲をお願いしたいのです」
「あぁなるほど...」
「処女厨誘い出す囮になれって事ね、なんかやだなぁ...」
「いつもでしたらあのハーフエルフ似非エルフに女装させて誘い出しているのですが、今回は例の魔女対策に出払っているものでして」
 え、それはそれで見てみたいかも。
「ヅラのヤツそんなこともしてたのね...」
「女装自体は闘技場で見たことがありますが、お顔が気になりますね」
 闘技場のフルフェースの姿だと顔もわからないけど、ユニコーン好みの乙女となるとスゴイ綺麗な姿になるのだろうなぁ。
「不死身の魔女が暗躍している状況で、王女のティアラが出て良いのですか?」
「魔女が暗躍しているからこそ急がなければなりません、ユニコーンは様々な魔術道具の貴重な素材となります。同様の理由からエルフの里のユニコーンの存在を明るみにする訳にはいかないため騎士団内で解決する必要があります」
「度々起きてる風に言ってたのに初耳なのはそう言う理由だったのね」
「ユニコーンは現在東の森にいるようです、捕獲致しましたら信号魔法を打ち上げ下さい、ワタクシが保護に参ります」
 ボンネットは最後によろしくお願いしますと伝えると、他の仕事のためにその場を後にした。


「それで、誰が囮やる?」
 ボンネットがいなくなった後、私たちは処女厨を引き寄せるための相談に入る。
「やっぱり処女の方がいいのではないのでしょうか?」
「その"処女“ってのもどこまでを指すのやら、処女膜の有無? 経験の有無?」
 ヅラの女装が通用するくらいだからそこまで細かいわけではないのかもしれないけれど、アイツは規格外に強いから誘い出した後はどうとでもなる。ユニコーンは相応に凶暴性もあるって聞いてるから、誘い出した後の危険はできる限り減らしたい。
「ちなみに皆様、処女膜は?」
 この聖女ズケズケ聞いてくるわね...。
「私はライスシャワー乗り回してる時にやっちゃったわよ」
「私も母様とのプレイの時にやっちゃいましたね、経験の有無的にも私は論外になるでしょう」
 既婚者以前に変態には端から期待してないけどね。
「カチューシャは...長い冒険生活の激しい運動で破けてそうですね」
「え...あ...うん...確認したこと無いからわからないけど...」
 カローラがフォローしてるけど、私が乗馬でやっちゃってるんだから、カチューシャも無意識にやっちゃってそうよね、未経験なのは確認するまでもないようだけど。
「じゃあこの中で処女膜残ってるのはカローラだけ?」
 聖女ならユニコーン好みの乙女には確かに的確だろうけど、なんか釈然としないわね...。
「あ、私も一人で致してた時にモノを深く挿れ過ぎてしまいまして」
「うおい!」
「カローラなにぶっちゃっけってるの!?」
 聖女のくせにとは言わないけどやることやってんのね!
「となると、可能性があるのはカチューシャだけか」
「え!? 私!?」
 他のみんなは自覚があるけど、カチューシャだけは自覚がないからまだ可能性がある。
「カチューシャはそう言う経験もないでしょ?」
「そりゃ...ないけれど...」
「私が確認してみましょうか?」
「なんでアンタよ! 私だってやりたいわ!」
 思えばカチューシャの裸とか一度も見たこと無いなー、ガード硬いのよねぇこの子。
「私はカチューシャの裸みたことありますし?」
「はぁ!? ちょっ、なにそれ!」
 私もまだみたこと無いのに! ていうかなんで私が見たことないの知ってんのよ!
「待って! 事故だから! 見せたわけじゃないから!」
「あ、ゴメンナサイ、ナイショでしたね」
「この聖女したたかですね」
 絶対わざと暴露したでしょ...。
「カチューシャがイヤでしたら、私がやりますよ?」
「私だって構わないわよ」
「ううん、二人に危ないことはさせられないし、私ならもし暴れ出してもなんとかなるから...」
 カチューシャ強いもんなぁ...なんか色々負けててちょっと悔しい...。
「では! おめかししないといけませんね!」
「えっ」
 と、カローラの目が輝き始める、なるほど、さてはこれが狙いか...やっぱりウマが合うじゃん。
「そうね! 立派なレディにしてあげないと!」
「私はドレス見繕ってきますね!」
「えっえっ!?」
 元々がかわいいカチューシャだけど、化粧っ気が全くないから、磨いてみたいと常々おもってたのよねぇー!


「清楚な乙女なら普段の格好でも良かったと思うんだけど...」
「ダメダメ、ヒーラードレスたって清楚で可愛いけど戦闘服なんだから、乙女を演じるならちゃんと非戦闘服じゃないと!」
「そうですよ! 誘い出すなら万全を期さないといけません!」
 女装したウィッグさんで誘い出せるなら男の私でもいけると思って引き受けたけど、なんかカローラに乗せられた気がする...。
 プリムにしっかりメイクされて、ティアラとカローラが揉めに揉めて決まったシンプルな純白のドレスに身を包んで、すっかりお姫様のようになった私。
「あの...コルセットちょっと苦しいなって...」
「オシャレは我慢ですカチューシャ様!」
 始めて付けたけど偉い人たちこんなものいつもしてるの? ティアラがドレス着ない理由がわかった気がする...。
「これじゃもしもの時にまともに動けるかどうか...」
「まぁ私たちもいるから」
「もしものときは腹筋でぶっちぎちゃって下さい」
「えぇ...」
 それドレスも一緒に破けちゃいそうなんだけど...プリムの事だからそれも狙ってそうだなぁ...でも着付けてくれたのはカローラだしそこは大丈夫かな?
「ところでプリムはともかく私がダメでカローラが着付け手伝うの構わないの納得いかないんだけど!」
 下着姿とはいえ私の性別を知るカローラにだけ着付けの手伝いを頼んだからティアラが露骨に不満を漏らしてる。一人で着られたらいいのだけどシンプルめとはいえドレスなんて始めてで一人で着られるわけもなく。
「それは...えっと...」
「カチューシャは気になる子に肌を晒すのが恥ずかしいんですよ、ね?」
「あ...うん、ごめんね...」
 言い訳に困ってるとカローラがフォローしてくれた、ライバル宣言してるカローラが言うにはちょっと変なフォローだけれど。
「そういう事なら仕方無いわね...」
 でもティアラは納得してくれたらしい。
 カローラのアプローチには驚かされるけど、やっぱり私の事情を知ってくれてる人が居ると助かるなぁ...。でもやっぱり、ティアラにも話すべきなんだろうけど...なんだかどんどん話しにくくなってるような...。


 私のおめかしをした後にティアラとカローラと共にユニコーンがやってきてるらしい森へと入る。
 ユニコーンが来てるだけあって平和で神聖な雰囲気のある森で、この森を抜けてずっと行くとエルフの里があるらしい。ユリゾンリリィてライカンの里だけでなくエルフの里とも近くて交流があったんだ。
 ちのみにプリムは「ケバいエルフの臭いに気付くなら変態の臭いもダメでしょ」とティアラに留守番にされた、私がいるとはいえロイヤル・ガードなのに...。
「カチューシャならユニコーンも暴れることはないと思うけど、一応気を付けてね」
「うん、ちょっと動きにくいけど大丈夫」
「もしもの時は死なない程度にぶっ飛ばして下さいね! 生きてりゃ聖女の力で治しますから!」
「アンタ結構おっかない聖女の力の使い方するわね...」
 たしかに力の制御なんてあまり効かないから、ライカンの力でユニコーン攻撃したら大変な事になるだろうけど...。
「二人はどうするの?」
「取り敢えず池の向こう側で隠れてるわ、カチューシャも池を挟んでると鼻が利きづらいのよね?」
「うん、ユニコーンの嗅覚は分からないけど、ライカン程じゃないだろうし、女装したウィッグさんが囮になるなら大丈夫だと思う」
 多少距離があっても私なら臭いで性別の判断くらいはできるから、それができてないユニコーンは私より嗅覚がないと思う...多分だけど。
「それじゃあ気を付けてね? 処女厨に変なことされたらぶっ飛ばすのよ?」
「大丈夫だってば...」
 一応私たちヒーラーのシンボルで神聖な存在なんだけどなぁ...ユリゾンリリィじゃ随分評判が悪いみたいだけどやっぱり乙女(処女)好きって嗜好のせいなのかな?
 ティアラは私の事を何度も心配そうに繰り返して、カローラに連れられて池の向こうの森に消えていった。集中すれば二人の匂いが感じ取れるけど、これなら私に目を奪われたユニコーンが気が付くことはないかな。挿絵AIで作った挿絵


「いやー、それにしてもカチューシャ可愛いわぁ」
 池の畔で静々と座り込んで花を愛でるカチューシャの絵になること! 私よりお姫様してるわよあの子!
「素材がいいから磨きがいがありますわよねぇ」
 二人で散々揉めてあのドレスにしたけれど、やっぱり町娘風の赤頭巾なカチューシャも見てみたかったわね...。まぁ今回の深窓の令嬢風もめっちゃ可愛くて綺麗だからいいか。
「ところでアンタ、カチューシャとはどこまで行ってるの?」
「どこまで...と言いますと?」
 とぼけてるのかマジなのか、カローラは私の質問の意図を聞き返す。
「カチューシャの裸を見たとか言ってたじゃん、カチューシャとはどこまで進んでたのかなって...」
 あの子極端に肌を見せる事を嫌がって、着替えをメイドや私に手伝わせたことも無いのよね...。そのカチューシャがカローラだけには着替えを手伝わせたのは、私より信頼されてるってことなのかな...。
「あぁそういう事でしたら、何の心配もないですよ。私はカチューシャに告白して玉砕した時に一度は諦めてましたから、その後は特にアプローチしていませんの」
「じゃぁなんでまた急にアプローチ始めたのよ」
「カチューシャがティアラのことを気にかけてるからですかね」
「はぁ?」
 聖女のくせに横恋慕でやる気が出たっていうの!?
「カチューシャったら、本当に女の子に興味が無くって...。それなのに今はティアラを...女の子を好きになり始めてる、コレは私にもまだチャンスがあるかなーっと」
 ニッコリ笑って聖女はそんな事をいう、ホント強かだわこの子。
「だから、カチューシャが気にかけているのはアナタで、リードしているのもアナタなんですよ」
「でもカチューシャはカローラだけには着替えを手伝わせたじゃん」
「それは悔しいですが私をそういう対象と思えないだけで...」
「それでも告白してきた相手に肌をさらすなんて信頼してないとしないんじゃないの?」
「うーん...」
 そんな事言われても納得出来ないと言うと、カローラは少し悩んでから言葉を選ぶように切り出す。
「カチューシャは、どうしてあんなに肌を晒すのを嫌がると思いますか?」
「恥ずかしいとか...こういう国だから私らの事を警戒してじゃないの?」
 同性愛者の多い国なこともあって、同性でも肌を晒さないよう気を付けることはこの国じゃ珍しくもないし。
「ティアラの常識だと、そうなるのてすね。本当はプライベートなコトなので私から話すべきじゃないのですが...」
 カローラが少し躊躇ってからカチューシャの事を話してくれる、やつぱりカチューシャの肌に何か秘密が...?
「ご存じだと思いますが、カチューシャは物心ついた頃からの生粋の冒険者です」
「ちょっと世間とズレてるのはそう言う生活のせいよね」
 そういうところも可愛いのだけど。
「それで、冒険者という生活は生傷が絶えません、それはヒーラーなどの後衛であってもです」
 敵から直接攻撃を受けなくても戦いの衝撃や粉塵、岩肌や枝や葉っぱなど傷ができる要素はいくらでもある...という風には私も聞いている。
「でもカチューシャはヒーラーだし、そんな傷すぐ治せば跡は残らないじゃ」
 私もたまに無茶して生傷付けて帰ることあるけど、すぐに治されて後なんて残ったことないし。
「背中などの小さな傷は見逃してしまいがちですし、なによりカチューシャはあの通り優しい子なので、自分の傷より仲間の怪我の治療を優先させますから、自分の事を後回しにしてしまいます」
「まぁ...たしかに...」
 聖女のカローラは自分最優先でいいだろうけど、カチューシャが自分より仲間を優先するのは想像できる。
「そういうわけで、カチューシャはアレで結構目立たないところに傷があるんですよ」
「そうだったんだ...」
 あんな綺麗な肌してるのにもったいない...なんて王女の私だから言えることよね...。
「私は事故で一度カチューシャの裸を見てますけど、ティアラにはその傷を見せたくないんですよ」
「なんか...ごめん...」
 カチューシャにそんなコンプレックスがあったなんて...欲求に任せてカチューシャの裸を見たいなんて言ってた自分が恥ずかしくなってきた...。
「いえいえ、一緒にカチューシャとの愛情育みましょう♪」
「あ、うん、ありがとう」
 私をフォローするようにカローラは言ってくれて、なんだかこの子に敵わないような気がした...。
「まぁ、嘘は言ってませんしコレでいいですわね」
「うん?」
 なんか最後にボソッと言ってたけど、ちょっと落ち込んだせいで聞き逃してしまった、まぁ大したことじゃないでしょ。
「それにしても...ライバルなのに随分親切に話してくれるわね」
「それは勿論、女の子に興味のなかったカチューシャをその気にさせてくれたティアラには感謝していますし」
「うん?」
「別にカチューシャとティアラがくっついても、私は2号にでもなれれば満足ですから♪」
「はぁ!? 私とカチューシャが結婚しても諦める気が無いって言ってんの!?」
「どうして結婚したら諦めないといけないんですか?」
「いや結婚したら諦めなさいよ! そうなったら私とカチューシャは女王と王妃になるのよ!?」
「王族なら側室がいても普通ではないですか?」
「いやそうたけども!?」
 この聖女...思った以上に...ほんっっっと強かだわ!


「なんか騒がしいけど大丈夫かな...」
 ライカンなので耳もそこそこ良いのだけど、池の向こう側が明らかに騒がしい...。話の内容までは分からないけど、またカローラがティアラを煽ってる感じかなぁ。
「ふぅ...」
 乙女のフリをして、まあ普段から女の子のフリしてるんだけど...、近くの花を弄ぶ。
 そうやって暇をつぶしてると何故だか小鳥やリスやウサギなんかの小動物が寄ってくる。
「アナタたち警戒心ないのね、いつもの私なら食べられちゃうぞー」
 いつもならウサギは喜んで捕まえてシメてしまうのだけど、今は乙女のフリしてるしこの神聖な雰囲気の森の動物を食べるのはなんだか罰当たりな気がするのでやめておく。取り敢えず寄ってきた動物たちに指を差し出して軽く遊んでみる。
 小動物がコレだけ人間に寄ってくるのはこの森が警戒心を育てる環境にないということ、たしかに入ってきてからまるでモンスターの臭いがしないし、よっぽど平和な森らしい、エルフやユニコーンの加護なのかな。
「ん?」
 と、小動物たちをあやしていると大きな影が私を覆う。臭いなんて感じなかったのにと顔を上げてみると...
「わぁ...」
 美しい角を携えた、純白に輝く馬...ユニコーンが私を見つめていた...。
 いつもなら臭いもせず近付いてこられるとゴーストに出会ったように大慌てするのだけど、何故だかユニコーンには驚かなかった、やっぱり神聖な生き物だからだろうか。
「えっと...こんにちは?」
 で、どうするんだっけ...? あぁそうだ、膝枕して眠らせて捕まえる...って馬をどう誘導して膝枕すればいの!?
 ブシュルルル...
「ひゃっ」
 対応に困ってるとユニコーンは私の顔に口を寄せてきてペロッと舐めてくる。
 ビックリして声をあげるが、抵抗をしない私を見てユニコーンは更にペロとペロと顔中を舐めてきて
「あの...ちょっ...」...
 指や首筋...遂にはドレスの胸元を舌で器用にリボンを外して...
「くぉらー! 私のカチューシャになにしてんのよ処女厨!!」
 と、あわや胸に舌を突っ込まれるところでティアラが池の上をすっ飛んできた。え、なにその魔法。
「って、出てきちゃダメだよティアラ!?」
「いいえ、流石に調子に乗りすぎです! カチューシャの柔肌になんてことを...!」
 更にはカローラまで出てきてしまう。
「「私もまだなのに!」」
 なんかハモられたけどそこじゃない...。
「私は大丈夫だから...」
 チラッとユニコーンの方を見てみると、食ってかからんとするティアラにも、静かに怒ってるカローラにも何食わぬ顔をしている、二人もユニコーンの好みに合ってたのかな?
「カチューシャの膝枕で寝るくらいは許可するけど、舐め回すのは許可できないわ!」
「そうです! 膝枕だって私もまだなのに!」
 ティアラが私も私もと加わってる、ロリエルちゃんにはよくしてあげてたけど、ティアラ羨ましかったんだ...。(もちろん膝枕でアソコが当たらないようにはしてる)
フシュルル...
「え? はい、私は今の代の聖女ですけど」
 あれ? カローラがユニコーンに話かけられてる?
「まぁ! 破廉恥な! 同じ女神の使徒とて許せませんわ!」
「いや待って、アンタユニコーンと話せるの?」
 カローラが一人でまた何かに怒っているようだったけど、多分ティアラのいうそういうことだよね?
「はい、聖女もユニコーンも同じ女神の使徒なので、言葉がわかるようです」
「マジで!?」
「カローラも知らなかったなんて、歴代の聖女はユニコーンと会った事がなかったのかな?」
 そんなスゴイ話、言い伝えられてそうなものだし。でもエルフの里にいたんじゃ歴代の聖女がユニコーンに出会う機会もないか。
「それで、なんか怒ってたみたいだけど、なんて言ってたのよ」
「体を舐めようとしたのでなく、ドレスを脱がそうとしていただけだと...」
「ひぃっ!?」
「はぁ!? 何しようとしてんのよコイツ!?」
 思わぬ言葉を聞いて体を抱いて引く、器用な舌使いだとは思ったけど、そんなことされてたの私!?
ブシュフルル
「我々も裸なんだから動物に見られるくらい減るもんじゃないだろ、と仰ってます」
「フザケンナ処女厨!! 乙女の体をなんだと思ってんのよ! 金玉潰すわよ!」
「未遂に終わったんだし私も流石に全部脱がされる前に抵抗しただろうし...」 
「いやカチューシャなすがままだったじゃん! 絶対この変態ウマが怪しい魔法とか使って抵抗出来ないようにしてたわよ!」
 なすがままだったのはただくすぐったからだけど...。
「えっと...そもそも我は♀だと言ってますね」
「え?」
 乙女が好きっていうから、てっきり♂だとばかり思ってたけど。
「じゃあなに!? コイツも女の子好きの♀なわけ!?」
「ユリゾンリリィに来てるのは百合カップル目当てのようですね」
 うーん...類は友を呼ぶ...。
「じゃあ遠くから見守ってなさいよ! カチューシャに手を出してんじゃないわよ!」
「それはあまりにドチャクソ好みの子が居たから思わず我を忘れてた襲ってしまったと...」
「私襲われてたの!?」
 実は結構危なかったの!? 神聖なイメージぶち壊しだよ!
「ぶっ殺す...!」
「お? やんのか? 我エルフの里の国宝ぞ? 国際問題ぞ? とイキっております」挿絵AIで作った挿絵
 私もユニコーン嫌いになりそう...。
「というかカローラそんな正確に翻訳しないで...」
「あー! 腹立つ! さっさとボンネット呼んで里に送り返しちゃるこの変態処女厨!」
 まぁ逃げないみたいだし取り敢えずこれで保護はできたしお仕事達成だよね。私の中のユニコーンのイメージは壊れちゃったけど...。
「それが、是非カチューシャの馬にしてくれと仰ってますね」
「えぇ!?」
「はぁ!? 認められるわけ無いでしょ脱走常習犯! 国宝は里に帰って寂しく監禁されてなさいよ!」
 私もユニコーンが憧れのままだったら嬉しかったけど...。
(それに私が跨ると...)
 鞍で誤魔化せるとはいえ流石に男だってバレるんじゃないかなあ...と思ってたらカローラが耳打ちしてきて...
(ちなみに、ウィッグさんの女装もカチューシャの性別も織り込み済みだそうです)
 とのこだった...。
 じゃあなに? このユニコーン、♀で百合好きで女装っ子好きってこと? 尚且つそれを知って私をひん剥こうとしてた? もうヤダこの性獣...。


「えー、エルフの使者に旨を伝えたところ」
 ボンネットにユニコーンを押し付け、どうせ大事な国宝を任せるわけもないと高を括ってボンネットの報告をお城で受けたところ。
「バカウケwwwうちのヘッドもチリツモリピートで激おこキャパいからタリタリタナボタラッキーよ☆ オタクらぶん投げヨユーっしょ、ノチよろ!」
「ごめん、エルフの言葉わかんないわ」
 わかるようでわからないエルフ族の言葉の翻訳を求めたいけど、なんか嫌な予感が...。
「翻訳しますと、度重なる脱走に里長も嫌気が差していたのでこちらで預かってくれるなら願ったり叶ったりです、こちらの国になら安心して任せられるので後のことは任せました。とのことです」
「...要約すると?」
「体よく押し付けられましたね」
 うん、ボンネットの隣に処女厨がいる時点でそんな気はしたよ?
ブヒヒヒン
「ドヤァ、と申しております」
 うん、それは訳されなくてもわかったわ。
「フッッザケンナ、エルフの里!! 森に火ィ放ったろか!?」
「ティアラ、王女が滅多な事言わないで...」
 こうして不本意ながらユニコーンのヤツはカチューシャに仕える馬というとこになった。
 当のカチューシャもヒーラーの象徴なので悪い気はしないと言ってたものの、元々乗馬は苦手なので扱いに困っていた。まぁあまり乗ることが無いならいいか。
 そしてカローラの翻訳曰く、今後は百合を愛でて堪能するので主人を襲うようなことはしない、とのことなのだけど...
「ひゃあ!? もうコンフェッティ! スカートめくるのやめて!」
「あら、カチューシャ。今日も可愛らしい下着ですね」
「ガーター吊りよっしゃー!」
 女神の力だかでカチューシャに臭いを感知されないで近付けるらしく、プリムのセクハラを回避し続けたあのカチューシャに度々こうしてスカートめくりのセクハラなんかはしている。
 調子乗んな駄馬が!と思わないでもないけど、レアな恥ずかしがるカチューシャと下着を私も見られるからまぁヨシ! にしてもいつからあんな下着履くようになったんだろ...。
 あ、ちなみに名前は私のライスシャワーに合わせてコンフェッティ(紙吹雪)って名付けられたわ。
 

━カチューシャたちが森でユニコーンに気を取られている時の事
「フフフ...、今日のご飯(野草)を採りに来てたらよもやユリゾンリリィの王女を見つけるとは、コレは付いてますわ!」
 一行より少し離れた場所から、不死身の魔女マジェスティがカチューシャたちを覗いていた。
「現王女が幼すぎたらどうしようかと思いましたが、見たところ妊娠適齢期! 魔王様を産むに完璧な年齢ではありませんこと!」
「つーか国の情報全然集めてねぇんすか姐さん」
「しょうがないでしょ! ライカン共がチクったから例の守護者が魔族に反応する包囲網張って迂闊に動けなくなったんですもの!」
 魔族などそうそういるものではないので、首都周りに貼られたそれのせいで魔女はユリゾンリリィ国内の様子をあまり確認出来ずにいたのだった。
「こうしちゃいられませんわ! ご飯も集まりましたし帰って魔王様復活の作戦を建てなければ!」
「へい、飯からなら野草だけてなくウサギも捕まえましたぜ」
 と、警戒なく寄ってきたウサギをかしこいゴブリンは耳を掴んで見せ付ける。
「ちょ、そんな可愛らしい子食べられるわけないでしょ!? 離してあげなさい!」
「えぇ...」
 ウサギくらい人間も食べてると思っていたかしこいゴブリンなので、魔女の意外な言葉に渋々ウサギを逃がす。
「フフフ見てなさいよユリゾンリリィの可愛らしい王女様!」
 こうして不死身の魔女マジェスティは、“ドレス姿のカチューシャ"を王女と思い込むのだった。
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百合の国のプリンセス♂作者:万能ねぎトロ
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ともあれ処女厨滅びるべし

 カローラが王宮に泊まるようになった日の翌日の夜、カチューシャが寝ようと部屋に帰ると...
「お帰りなさいカチューシャ!」
「え? カローラ?」
 扉を開けるとネグリジェ姿のカローラに出迎えられた。
「お風呂でする? ベッドでする? それとも、こ・こ・で?」
「実質一択なんだけど!?」
 新婚三択のようでそうでない問にカチューシャは流されることなく突っ込んだ。
「むぅ、今のカチューシャなら私のこの姿にエッチな気持ちになってくれると思いましたのに...」
「ならないよ! なってもいきなりエッチとかしないよ!」
 ティアラの事を好きになり始めたカチューシャではあるが、まだ女性を性の対象とまでは思えないようだった、或いはカローラのアプローチにムードの欠片も無いせいかもしれないが...。
「カローラも、聖女なんだからもっと節度をもとうよ!」
「あら? 私だって、カチューシャとただエッチがしたいだけじゃありませんよ?」
「そうなの?」
 その行動にそれ以外の目的があるともカチューシャには思えなかったが。
「私たち聖女の一族は、女の子しか生まれないんですよ」
「そういう話は私も聞いたことあるけど」
 女神の力の影響なのか聖女の一族には代々女の子しか生まれていない事はそれなりに有名な話である。
「そして! ライカンには男の子しか生まれないじゃないですか!」
「まぁ、そうだね...」
 だからライカンを隠すために自分は女として育ったと、カチューシャは複雑な気分で同意する。
「私とカチューシャが子供を作ったら。聖女のライカン(♀)か、聖女の力を持てるライカン(♂)、どっちが産まれるか気になりませんか!?」
「いや気にならないけど...」
「えぇ!? カチューシャ冒険者なのに好奇心が足りません!」
「好奇心で子供を作るものじゃないし、仮に後者が産まれたら聖女の一族として一大事じゃないかな...」
 男の聖女(?)、それもライカンなど大事であろう。
「その時はもう一人適当な殿方と子供作ってそっちに力を継承すればよいのですわ」
「聖女の力ってそんな選んで継承できるものなんだ...」
 聖女の一族がどうやってその力を継承しているかはカチューシャも知らないが、どうにも雑な感覚で継承しているように見える。
「それに今の聖女の役目は魔王の復活に備えてこの血と力を絶やさないことですから、子作りは立派な聖女の役目なんですよ?」
 カローラの代は大きな戦争があったが、従来の聖女は長い平和でその力を持て余していたのが実情である。
「カローラが聖女の使命をしっかり受け入れてるのは知ってるけど、流石にまだ早いんじゃ...」
「聖女のお役目には誇りはもっていますが、さっさと子供をこさえて引退してしまうのもやぶさかではありませんもの」
「戦争に戦後の後始末に...カローラは歴代の聖女の中でも特に働いたものね」
 聖女の使命に熱心な彼女だからこそ、それらの大仕事に早くも疲れを感じてしまっていても仕方が無い。戦争には参加したものの戦後の後始末を押し付けてしまったことにカチューシャは申し訳なさも感じていた。
「ですから! エッチしましょう!」
「結局カローラ私とエッチしたいだけだよね!?」
「聖女の使命三割、残り七割くらいはそうですね!」
「使命半分切ってるんだけど!?」
 結局、散々ゴネて服を脱ぎだしたカローラを布団で包めてふん縛って彼女の部屋へ放り出す事で、ようやくカチューシャは寝られたのだった。

 
百合の国のプリンセス♂#8 ともあれ処女厨滅ぶべし
挿絵AIで作った挿絵


 なんか昨晩にカチューシャの部屋にカローラが夜這い(?)をかけたらしく、私は四人揃った朝食の後にその事を問いただしていた。
「いきなり抜け駆けなんてどういうつもりよ!」
「ごめんなさい。でもカチューシャもいきなり3Pは戸惑うでしょうし?」
「何言ってるのカローラ!?」
「この聖女自分は平気みたいな口ぶりですよ」
「私はカチューシャに攻められるなら他に何人いても別に...」
 この聖女清楚な見た目の割にレベル高いわね...じゃなくて。聞き捨てならないわね。
「はぁ?! カチューシャは受けでしょう!!」
「そこぉ!?」
「いいえ! 断じて攻めです!!」
「はぁお前戦争かぁ!?」
「こんな事で王女が滅多な事言わないで!」
 ライバルではあるけど分かり合えると思ったのに、全く分かり合えそうに無いわこの子! カチューシャが攻めとかマジあり得ない!!
「はいはい、リバ論争は一旦停戦頂いてお仕事のお話ですよ」
 聖女と王女のすわ戦争かといったところで珍しくお城から出ていたボンネットが帰ってきて間に入る。
「なによボンネット、珍しく出かけてると思ったら私たちに仕事?」
「何ですか人を引き篭もりみたいに」
「みたいにじゃなくて姫様はそのつもりで言ったんだと思いますよ」
 王宮住み込みで働いてるとはいえ、たまの休日すら若いメイドと乳繰り合ってて王宮から出てるところを殆ど見たことがない、本人もなにかにつけて外に出るのを嫌がるし。
「まぁワタクシの事はいいです、ティアラ様たちに騎士団のお仕事があります」
「騎士団の? 珍しいわね」
 一応私も騎士団員と言うことになってるから騎士団の仕事を手伝う事はあるけれど、わざわざ仕事を持ってこられるのは始めてだ。
 ボンネットが騎士団本部に呼び出された事と言い、何かのっぴきならない事なのかしら? そう身構える私だったのだけど...。


「まず、仕事の内容の前にワタクシたちエルフ族の文化について少し説明させて頂きます」
 ティアラたちを宥めて仕事の説明が始まると思ったら、ボンネットはエルフ族の文化に付いて話し始めた。私としてもエルフ族の文化は興味あるけど、仕事とどういう関係があるんだろう。
「ワタクシたちエルフの国...国といっても里のようなものですが...結婚の文化がありません」
 ボンネットもウィッグさんも独身なのは、エルフ族の文化から来るものなんだ。
「しかし性欲は人間と変わらずあり、夜の相手は取っ替え引っ替えで特定のパートナーを作りません」
「なんだが理解しがたい文化してるわね...」
「いけませんよティアラ、他の種族の文化をそういう風に言っては」
 カローラも聖女として私たちとは違った価値観してるものね。
「というのもエルフ族はとても出生率が低いため、相手を絞らず好相性を探す理由もあるそうですが...」
「寿命の長いエルフ族に簡単に子供ができたら人口爆発しちゃうものね」
「父親がわからなくなったりされないのですか?」
「子供ができた時は国を挙げてお祝いし、国民全員が親となります、誰が父親かは気にしませんね」
 結婚もしなければ両親という立場も希薄らしい、聞けば聞くほどエルフ族の文化は独特だなぁ。
「生まれた子供は16歳には夜の営みに参加します。こういった理由からエルフ族には男女共に処女童貞はまずいませんし、平たく言うとエルフ族の女性はみんなビッチです」
「ぶっちゃけるわね...」
 エルフの国でなくこの国にいるボンネットは、自分の故郷あまり好きでないのか、なんだか言葉の節々に棘を感じるような...。
「と、エルフ族の文化について理解されたところで、この話は一旦横に置いときまして」
「うん?」
 と、ボンネットは箱を横に置くジェスチャーをして話を変えた。
「今回の仕事はエルフの里から抜け出したユニコーンの保護です」
「まぁ!」
「「ユニコーン!?」」
 ユニコーンって、あの神聖な一角獣の! 私たちヒーラーの象徴的存在にもなってる! スゴイ、エルフの里にいたんだ。
「ユニコーンって、あの処女厨の!?」
 あれ? なんかティアラのイメージと私のイメージに著しく違いがあるような?
「はい、その処女厨がエルフの里を抜け出してユリゾンリリィに好みの乙女を求めてやってきています」
「それでさっきの話なの!?」
「エルフ族の女はビッチばかりなので、あの処女厨は度々こちら国に抜け出してくるんですよねぇ...」
 あぁ...そういう...。
「ユリゾンリリィは女同士のカップルが多いですから、パートナーが居ても処女率が高いこともあり、あの処女厨には楽園に見えるのでしょう」
「モノは使わないけど行為で処女膜破けちゃう事結構あるんじゃ?」
 この国では女同士であることが重要で、エッチでそう言った(男のアレみたいなの)道具を使うのは邪道、みたいな空気があるんだとか...ってプリムが言ってた。
「女同士はカウントしないのか...よほどエルフ族の女たちが論外なのか、アレの趣味のでしょうね」
「エルフ族の女性はこちらの国とよほど趣が違うのですね」
「そうですね、ワタクシがいた頃の会話を再現致しますと...」
 っと、ボンネットは昔を思い出すように少し溜めると...。
「こないだ狩り行ったときさ〜、鹿が交尾っててマジ一石二鳥で狩れて超キャパい!ってなってたら、相方がその鹿見て脳汁ドバってバイブスぶち上がり(笑)!マジでアッサムティーすぎて、まさかのその場野外ワンチャン突入でホント草通り越して森通り越してモーゼなんですけどwww」
「うん、ごめんエルフ語わかんないわ」
「でもなんとなく雰囲気が違うのはわかりますね...」
 わかるようなわからないエルフ語(?)だけれど、ユリゾンリリィと雰囲気がだいぶ違うのは理解できた。
「でもボンネットが里に居たのって300年以上前だよね?」
 いつからこの国にいるから詳しく知らないけど、少なくとも300年は仕えてるって話のはず。
「300年程度でエルフ族の文化は変わりませんよ、今回来たエルフ族の使者も似たようなものでしたね」
 それは見たかったような見たくないような、エルフ族って私たちが思ってるような厳かな文化してないのかな?
「で、私らがその逃げたした処女厨を保護しろって?」
「エルフ族の使者が来てたなら本人たちにやらせればよいのでは」
 たしかにエルフ族が里から出てきてたなら本人たちで捕まえればいいような。
「里のエルフ族だとケバい気配を察知して近付く前に逃げられてしまいます、ですので皆様どなたかにユニコーン好みの乙女になって頂き、捕獲をお願いしたいのです」
「あぁなるほど...」
「処女厨誘い出す囮になれって事ね、なんかやだなぁ...」
「いつもでしたらあのハーフエルフ似非エルフに女装させて誘い出しているのですが、今回は例の魔女対策に出払っているものでして」
 え、それはそれで見てみたいかも。
「ヅラのヤツそんなこともしてたのね...」
「女装自体は闘技場で見たことがありますが、お顔が気になりますね」
 闘技場のフルフェースの姿だと顔もわからないけど、ユニコーン好みの乙女となるとスゴイ綺麗な姿になるのだろうなぁ。
「不死身の魔女が暗躍している状況で、王女のティアラが出て良いのですか?」
「魔女が暗躍しているからこそ急がなければなりません、ユニコーンは様々な魔術道具の貴重な素材となります。同様の理由からエルフの里のユニコーンの存在を明るみにする訳にはいかないため騎士団内で解決する必要があります」
「度々起きてる風に言ってたのに初耳なのはそう言う理由だったのね」
「ユニコーンは現在東の森にいるようです、捕獲致しましたら信号魔法を打ち上げ下さい、ワタクシが保護に参ります」
 ボンネットは最後によろしくお願いしますと伝えると、他の仕事のためにその場を後にした。


「それで、誰が囮やる?」
 ボンネットがいなくなった後、私たちは処女厨を引き寄せるための相談に入る。
「やっぱり処女の方がいいのではないのでしょうか?」
「その"処女“ってのもどこまでを指すのやら、処女膜の有無? 経験の有無?」
 ヅラの女装が通用するくらいだからそこまで細かいわけではないのかもしれないけれど、アイツは規格外に強いから誘い出した後はどうとでもなる。ユニコーンは相応に凶暴性もあるって聞いてるから、誘い出した後の危険はできる限り減らしたい。
「ちなみに皆様、処女膜は?」
 この聖女ズケズケ聞いてくるわね...。
「私はライスシャワー乗り回してる時にやっちゃったわよ」
「私も母様とのプレイの時にやっちゃいましたね、経験の有無的にも私は論外になるでしょう」
 既婚者以前に変態には端から期待してないけどね。
「カチューシャは...長い冒険生活の激しい運動で破けてそうですね」
「え...あ...うん...確認したこと無いからわからないけど...」
 カローラがフォローしてるけど、私が乗馬でやっちゃってるんだから、カチューシャも無意識にやっちゃってそうよね、未経験なのは確認するまでもないようだけど。
「じゃあこの中で処女膜残ってるのはカローラだけ?」
 聖女ならユニコーン好みの乙女には確かに的確だろうけど、なんか釈然としないわね...。
「あ、私も一人で致してた時にモノを深く挿れ過ぎてしまいまして」
「うおい!」
「カローラなにぶっちゃっけってるの!?」
 聖女のくせにとは言わないけどやることやってんのね!
「となると、可能性があるのはカチューシャだけか」
「え!? 私!?」
 他のみんなは自覚があるけど、カチューシャだけは自覚がないからまだ可能性がある。
「カチューシャはそう言う経験もないでしょ?」
「そりゃ...ないけれど...」
「私が確認してみましょうか?」
「なんでアンタよ! 私だってやりたいわ!」
 思えばカチューシャの裸とか一度も見たこと無いなー、ガード硬いのよねぇこの子。
「私はカチューシャの裸みたことありますし?」
「はぁ!? ちょっ、なにそれ!」
 私もまだみたこと無いのに! ていうかなんで私が見たことないの知ってんのよ!
「待って! 事故だから! 見せたわけじゃないから!」
「あ、ゴメンナサイ、ナイショでしたね」
「この聖女したたかですね」
 絶対わざと暴露したでしょ...。
「カチューシャがイヤでしたら、私がやりますよ?」
「私だって構わないわよ」
「ううん、二人に危ないことはさせられないし、私ならもし暴れ出してもなんとかなるから...」
 カチューシャ強いもんなぁ...なんか色々負けててちょっと悔しい...。
「では! おめかししないといけませんね!」
「えっ」
 と、カローラの目が輝き始める、なるほど、さてはこれが狙いか...やっぱりウマが合うじゃん。
「そうね! 立派なレディにしてあげないと!」
「私はドレス見繕ってきますね!」
「えっえっ!?」
 元々がかわいいカチューシャだけど、化粧っ気が全くないから、磨いてみたいと常々おもってたのよねぇー!


「清楚な乙女なら普段の格好でも良かったと思うんだけど...」
「ダメダメ、ヒーラードレスたって清楚で可愛いけど戦闘服なんだから、乙女を演じるならちゃんと非戦闘服じゃないと!」
「そうですよ! 誘い出すなら万全を期さないといけません!」
 女装したウィッグさんで誘い出せるなら男の私でもいけると思って引き受けたけど、なんかカローラに乗せられた気がする...。
 プリムにしっかりメイクされて、ティアラとカローラが揉めに揉めて決まったシンプルな純白のドレスに身を包んで、すっかりお姫様のようになった私。
「あの...コルセットちょっと苦しいなって...」
「オシャレは我慢ですカチューシャ様!」
 始めて付けたけど偉い人たちこんなものいつもしてるの? ティアラがドレス着ない理由がわかった気がする...。
「これじゃもしもの時にまともに動けるかどうか...」
「まぁ私たちもいるから」
「もしものときは腹筋でぶっちぎちゃって下さい」
「えぇ...」
 それドレスも一緒に破けちゃいそうなんだけど...プリムの事だからそれも狙ってそうだなぁ...でも着付けてくれたのはカローラだしそこは大丈夫かな?
「ところでプリムはともかく私がダメでカローラが着付け手伝うの構わないの納得いかないんだけど!」
 下着姿とはいえ私の性別を知るカローラにだけ着付けの手伝いを頼んだからティアラが露骨に不満を漏らしてる。一人で着られたらいいのだけどシンプルめとはいえドレスなんて始めてで一人で着られるわけもなく。
「それは...えっと...」
「カチューシャは気になる子に肌を晒すのが恥ずかしいんですよ、ね?」
「あ...うん、ごめんね...」
 言い訳に困ってるとカローラがフォローしてくれた、ライバル宣言してるカローラが言うにはちょっと変なフォローだけれど。
「そういう事なら仕方無いわね...」
 でもティアラは納得してくれたらしい。
 カローラのアプローチには驚かされるけど、やっぱり私の事情を知ってくれてる人が居ると助かるなぁ...。でもやっぱり、ティアラにも話すべきなんだろうけど...なんだかどんどん話しにくくなってるような...。


 私のおめかしをした後にティアラとカローラと共にユニコーンがやってきてるらしい森へと入る。
 ユニコーンが来てるだけあって平和で神聖な雰囲気のある森で、この森を抜けてずっと行くとエルフの里があるらしい。ユリゾンリリィてライカンの里だけでなくエルフの里とも近くて交流があったんだ。
 ちのみにプリムは「ケバいエルフの臭いに気付くなら変態の臭いもダメでしょ」とティアラに留守番にされた、私がいるとはいえロイヤル・ガードなのに...。
「カチューシャならユニコーンも暴れることはないと思うけど、一応気を付けてね」
「うん、ちょっと動きにくいけど大丈夫」
「もしもの時は死なない程度にぶっ飛ばして下さいね! 生きてりゃ聖女の力で治しますから!」
「アンタ結構おっかない聖女の力の使い方するわね...」
 たしかに力の制御なんてあまり効かないから、ライカンの力でユニコーン攻撃したら大変な事になるだろうけど...。
「二人はどうするの?」
「取り敢えず池の向こう側で隠れてるわ、カチューシャも池を挟んでると鼻が利きづらいのよね?」
「うん、ユニコーンの嗅覚は分からないけど、ライカン程じゃないだろうし、女装したウィッグさんが囮になるなら大丈夫だと思う」
 多少距離があっても私なら臭いで性別の判断くらいはできるから、それができてないユニコーンは私より嗅覚がないと思う...多分だけど。
「それじゃあ気を付けてね? 処女厨に変なことされたらぶっ飛ばすのよ?」
「大丈夫だってば...」
 一応私たちヒーラーのシンボルで神聖な存在なんだけどなぁ...ユリゾンリリィじゃ随分評判が悪いみたいだけどやっぱり乙女(処女)好きって嗜好のせいなのかな?
 ティアラは私の事を何度も心配そうに繰り返して、カローラに連れられて池の向こうの森に消えていった。集中すれば二人の匂いが感じ取れるけど、これなら私に目を奪われたユニコーンが気が付くことはないかな。挿絵AIで作った挿絵


「いやー、それにしてもカチューシャ可愛いわぁ」
 池の畔で静々と座り込んで花を愛でるカチューシャの絵になること! 私よりお姫様してるわよあの子!
「素材がいいから磨きがいがありますわよねぇ」
 二人で散々揉めてあのドレスにしたけれど、やっぱり町娘風の赤頭巾なカチューシャも見てみたかったわね...。まぁ今回の深窓の令嬢風もめっちゃ可愛くて綺麗だからいいか。
「ところでアンタ、カチューシャとはどこまで行ってるの?」
「どこまで...と言いますと?」
 とぼけてるのかマジなのか、カローラは私の質問の意図を聞き返す。
「カチューシャの裸を見たとか言ってたじゃん、カチューシャとはどこまで進んでたのかなって...」
 あの子極端に肌を見せる事を嫌がって、着替えをメイドや私に手伝わせたことも無いのよね...。そのカチューシャがカローラだけには着替えを手伝わせたのは、私より信頼されてるってことなのかな...。
「あぁそういう事でしたら、何の心配もないですよ。私はカチューシャに告白して玉砕した時に一度は諦めてましたから、その後は特にアプローチしていませんの」
「じゃぁなんでまた急にアプローチ始めたのよ」
「カチューシャがティアラのことを気にかけてるからですかね」
「はぁ?」
 聖女のくせに横恋慕でやる気が出たっていうの!?
「カチューシャったら、本当に女の子に興味が無くって...。それなのに今はティアラを...女の子を好きになり始めてる、コレは私にもまだチャンスがあるかなーっと」
 ニッコリ笑って聖女はそんな事をいう、ホント強かだわこの子。
「だから、カチューシャが気にかけているのはアナタで、リードしているのもアナタなんですよ」
「でもカチューシャはカローラだけには着替えを手伝わせたじゃん」
「それは悔しいですが私をそういう対象と思えないだけで...」
「それでも告白してきた相手に肌をさらすなんて信頼してないとしないんじゃないの?」
「うーん...」
 そんな事言われても納得出来ないと言うと、カローラは少し悩んでから言葉を選ぶように切り出す。
「カチューシャは、どうしてあんなに肌を晒すのを嫌がると思いますか?」
「恥ずかしいとか...こういう国だから私らの事を警戒してじゃないの?」
 同性愛者の多い国なこともあって、同性でも肌を晒さないよう気を付けることはこの国じゃ珍しくもないし。
「ティアラの常識だと、そうなるのてすね。本当はプライベートなコトなので私から話すべきじゃないのですが...」
 カローラが少し躊躇ってからカチューシャの事を話してくれる、やつぱりカチューシャの肌に何か秘密が...?
「ご存じだと思いますが、カチューシャは物心ついた頃からの生粋の冒険者です」
「ちょっと世間とズレてるのはそう言う生活のせいよね」
 そういうところも可愛いのだけど。
「それで、冒険者という生活は生傷が絶えません、それはヒーラーなどの後衛であってもです」
 敵から直接攻撃を受けなくても戦いの衝撃や粉塵、岩肌や枝や葉っぱなど傷ができる要素はいくらでもある...という風には私も聞いている。
「でもカチューシャはヒーラーだし、そんな傷すぐ治せば跡は残らないじゃ」
 私もたまに無茶して生傷付けて帰ることあるけど、すぐに治されて後なんて残ったことないし。
「背中などの小さな傷は見逃してしまいがちですし、なによりカチューシャはあの通り優しい子なので、自分の傷より仲間の怪我の治療を優先させますから、自分の事を後回しにしてしまいます」
「まぁ...たしかに...」
 聖女のカローラは自分最優先でいいだろうけど、カチューシャが自分より仲間を優先するのは想像できる。
「そういうわけで、カチューシャはアレで結構目立たないところに傷があるんですよ」
「そうだったんだ...」
 あんな綺麗な肌してるのにもったいない...なんて王女の私だから言えることよね...。
「私は事故で一度カチューシャの裸を見てますけど、ティアラにはその傷を見せたくないんですよ」
「なんか...ごめん...」
 カチューシャにそんなコンプレックスがあったなんて...欲求に任せてカチューシャの裸を見たいなんて言ってた自分が恥ずかしくなってきた...。
「いえいえ、一緒にカチューシャとの愛情育みましょう♪」
「あ、うん、ありがとう」
 私をフォローするようにカローラは言ってくれて、なんだかこの子に敵わないような気がした...。
「まぁ、嘘は言ってませんしコレでいいですわね」
「うん?」
 なんか最後にボソッと言ってたけど、ちょっと落ち込んだせいで聞き逃してしまった、まぁ大したことじゃないでしょ。
「それにしても...ライバルなのに随分親切に話してくれるわね」
「それは勿論、女の子に興味のなかったカチューシャをその気にさせてくれたティアラには感謝していますし」
「うん?」
「別にカチューシャとティアラがくっついても、私は2号にでもなれれば満足ですから♪」
「はぁ!? 私とカチューシャが結婚しても諦める気が無いって言ってんの!?」
「どうして結婚したら諦めないといけないんですか?」
「いや結婚したら諦めなさいよ! そうなったら私とカチューシャは女王と王妃になるのよ!?」
「王族なら側室がいても普通ではないですか?」
「いやそうたけども!?」
 この聖女...思った以上に...ほんっっっと強かだわ!


「なんか騒がしいけど大丈夫かな...」
 ライカンなので耳もそこそこ良いのだけど、池の向こう側が明らかに騒がしい...。話の内容までは分からないけど、またカローラがティアラを煽ってる感じかなぁ。
「ふぅ...」
 乙女のフリをして、まあ普段から女の子のフリしてるんだけど...、近くの花を弄ぶ。
 そうやって暇をつぶしてると何故だか小鳥やリスやウサギなんかの小動物が寄ってくる。
「アナタたち警戒心ないのね、いつもの私なら食べられちゃうぞー」
 いつもならウサギは喜んで捕まえてシメてしまうのだけど、今は乙女のフリしてるしこの神聖な雰囲気の森の動物を食べるのはなんだか罰当たりな気がするのでやめておく。取り敢えず寄ってきた動物たちに指を差し出して軽く遊んでみる。
 小動物がコレだけ人間に寄ってくるのはこの森が警戒心を育てる環境にないということ、たしかに入ってきてからまるでモンスターの臭いがしないし、よっぽど平和な森らしい、エルフやユニコーンの加護なのかな。
「ん?」
 と、小動物たちをあやしていると大きな影が私を覆う。臭いなんて感じなかったのにと顔を上げてみると...
「わぁ...」
 美しい角を携えた、純白に輝く馬...ユニコーンが私を見つめていた...。
 いつもなら臭いもせず近付いてこられるとゴーストに出会ったように大慌てするのだけど、何故だかユニコーンには驚かなかった、やっぱり神聖な生き物だからだろうか。
「えっと...こんにちは?」
 で、どうするんだっけ...? あぁそうだ、膝枕して眠らせて捕まえる...って馬をどう誘導して膝枕すればいの!?
 ブシュルルル...
「ひゃっ」
 対応に困ってるとユニコーンは私の顔に口を寄せてきてペロッと舐めてくる。
 ビックリして声をあげるが、抵抗をしない私を見てユニコーンは更にペロとペロと顔中を舐めてきて
「あの...ちょっ...」...
 指や首筋...遂にはドレスの胸元を舌で器用にリボンを外して...
「くぉらー! 私のカチューシャになにしてんのよ処女厨!!」
 と、あわや胸に舌を突っ込まれるところでティアラが池の上をすっ飛んできた。え、なにその魔法。
「って、出てきちゃダメだよティアラ!?」
「いいえ、流石に調子に乗りすぎです! カチューシャの柔肌になんてことを...!」
 更にはカローラまで出てきてしまう。
「「私もまだなのに!」」
 なんかハモられたけどそこじゃない...。
「私は大丈夫だから...」
 チラッとユニコーンの方を見てみると、食ってかからんとするティアラにも、静かに怒ってるカローラにも何食わぬ顔をしている、二人もユニコーンの好みに合ってたのかな?
「カチューシャの膝枕で寝るくらいは許可するけど、舐め回すのは許可できないわ!」
「そうです! 膝枕だって私もまだなのに!」
 ティアラが私も私もと加わってる、ロリエルちゃんにはよくしてあげてたけど、ティアラ羨ましかったんだ...。(もちろん膝枕でアソコが当たらないようにはしてる)
フシュルル...
「え? はい、私は今の代の聖女ですけど」
 あれ? カローラがユニコーンに話かけられてる?
「まぁ! 破廉恥な! 同じ女神の使徒とて許せませんわ!」
「いや待って、アンタユニコーンと話せるの?」
 カローラが一人でまた何かに怒っているようだったけど、多分ティアラのいうそういうことだよね?
「はい、聖女もユニコーンも同じ女神の使徒なので、言葉がわかるようです」
「マジで!?」
「カローラも知らなかったなんて、歴代の聖女はユニコーンと会った事がなかったのかな?」
 そんなスゴイ話、言い伝えられてそうなものだし。でもエルフの里にいたんじゃ歴代の聖女がユニコーンに出会う機会もないか。
「それで、なんか怒ってたみたいだけど、なんて言ってたのよ」
「体を舐めようとしたのでなく、ドレスを脱がそうとしていただけだと...」
「ひぃっ!?」
「はぁ!? 何しようとしてんのよコイツ!?」
 思わぬ言葉を聞いて体を抱いて引く、器用な舌使いだとは思ったけど、そんなことされてたの私!?
ブシュフルル
「我々も裸なんだから動物に見られるくらい減るもんじゃないだろ、と仰ってます」
「フザケンナ処女厨!! 乙女の体をなんだと思ってんのよ! 金玉潰すわよ!」
「未遂に終わったんだし私も流石に全部脱がされる前に抵抗しただろうし...」 
「いやカチューシャなすがままだったじゃん! 絶対この変態ウマが怪しい魔法とか使って抵抗出来ないようにしてたわよ!」
 なすがままだったのはただくすぐったからだけど...。
「えっと...そもそも我は♀だと言ってますね」
「え?」
 乙女が好きっていうから、てっきり♂だとばかり思ってたけど。
「じゃあなに!? コイツも女の子好きの♀なわけ!?」
「ユリゾンリリィに来てるのは百合カップル目当てのようですね」
 うーん...類は友を呼ぶ...。
「じゃあ遠くから見守ってなさいよ! カチューシャに手を出してんじゃないわよ!」
「それはあまりにドチャクソ好みの子が居たから思わず我を忘れてた襲ってしまったと...」
「私襲われてたの!?」
 実は結構危なかったの!? 神聖なイメージぶち壊しだよ!
「ぶっ殺す...!」
「お? やんのか? 我エルフの里の国宝ぞ? 国際問題ぞ? とイキっております」挿絵AIで作った挿絵
 私もユニコーン嫌いになりそう...。
「というかカローラそんな正確に翻訳しないで...」
「あー! 腹立つ! さっさとボンネット呼んで里に送り返しちゃるこの変態処女厨!」
 まぁ逃げないみたいだし取り敢えずこれで保護はできたしお仕事達成だよね。私の中のユニコーンのイメージは壊れちゃったけど...。
「それが、是非カチューシャの馬にしてくれと仰ってますね」
「えぇ!?」
「はぁ!? 認められるわけ無いでしょ脱走常習犯! 国宝は里に帰って寂しく監禁されてなさいよ!」
 私もユニコーンが憧れのままだったら嬉しかったけど...。
(それに私が跨ると...)
 鞍で誤魔化せるとはいえ流石に男だってバレるんじゃないかなあ...と思ってたらカローラが耳打ちしてきて...
(ちなみに、ウィッグさんの女装もカチューシャの性別も織り込み済みだそうです)
 とのこだった...。
 じゃあなに? このユニコーン、♀で百合好きで女装っ子好きってこと? 尚且つそれを知って私をひん剥こうとしてた? もうヤダこの性獣...。


「えー、エルフの使者に旨を伝えたところ」
 ボンネットにユニコーンを押し付け、どうせ大事な国宝を任せるわけもないと高を括ってボンネットの報告をお城で受けたところ。
「バカウケwwwうちのヘッドもチリツモリピートで激おこキャパいからタリタリタナボタラッキーよ☆ オタクらぶん投げヨユーっしょ、ノチよろ!」
「ごめん、エルフの言葉わかんないわ」
 わかるようでわからないエルフ族の言葉の翻訳を求めたいけど、なんか嫌な予感が...。
「翻訳しますと、度重なる脱走に里長も嫌気が差していたのでこちらで預かってくれるなら願ったり叶ったりです、こちらの国になら安心して任せられるので後のことは任せました。とのことです」
「...要約すると?」
「体よく押し付けられましたね」
 うん、ボンネットの隣に処女厨がいる時点でそんな気はしたよ?
ブヒヒヒン
「ドヤァ、と申しております」
 うん、それは訳されなくてもわかったわ。
「フッッザケンナ、エルフの里!! 森に火ィ放ったろか!?」
「ティアラ、王女が滅多な事言わないで...」
 こうして不本意ながらユニコーンのヤツはカチューシャに仕える馬というとこになった。
 当のカチューシャもヒーラーの象徴なので悪い気はしないと言ってたものの、元々乗馬は苦手なので扱いに困っていた。まぁあまり乗ることが無いならいいか。
 そしてカローラの翻訳曰く、今後は百合を愛でて堪能するので主人を襲うようなことはしない、とのことなのだけど...
「ひゃあ!? もうコンフェッティ! スカートめくるのやめて!」
「あら、カチューシャ。今日も可愛らしい下着ですね」
「ガーター吊りよっしゃー!」
 女神の力だかでカチューシャに臭いを感知されないで近付けるらしく、プリムのセクハラを回避し続けたあのカチューシャに度々こうしてスカートめくりのセクハラなんかはしている。
 調子乗んな駄馬が!と思わないでもないけど、レアな恥ずかしがるカチューシャと下着を私も見られるからまぁヨシ! にしてもいつからあんな下着履くようになったんだろ...。
 あ、ちなみに名前は私のライスシャワーに合わせてコンフェッティ(紙吹雪)って名付けられたわ。
 

━カチューシャたちが森でユニコーンに気を取られている時の事
「フフフ...、今日のご飯(野草)を採りに来てたらよもやユリゾンリリィの王女を見つけるとは、コレは付いてますわ!」
 一行より少し離れた場所から、不死身の魔女マジェスティがカチューシャたちを覗いていた。
「現王女が幼すぎたらどうしようかと思いましたが、見たところ妊娠適齢期! 魔王様を産むに完璧な年齢ではありませんこと!」
「つーか国の情報全然集めてねぇんすか姐さん」
「しょうがないでしょ! ライカン共がチクったから例の守護者が魔族に反応する包囲網張って迂闊に動けなくなったんですもの!」
 魔族などそうそういるものではないので、首都周りに貼られたそれのせいで魔女はユリゾンリリィ国内の様子をあまり確認出来ずにいたのだった。
「こうしちゃいられませんわ! ご飯も集まりましたし帰って魔王様復活の作戦を建てなければ!」
「へい、飯からなら野草だけてなくウサギも捕まえましたぜ」
 と、警戒なく寄ってきたウサギをかしこいゴブリンは耳を掴んで見せ付ける。
「ちょ、そんな可愛らしい子食べられるわけないでしょ!? 離してあげなさい!」
「えぇ...」
 ウサギくらい人間も食べてると思っていたかしこいゴブリンなので、魔女の意外な言葉に渋々ウサギを逃がす。
「フフフ見てなさいよユリゾンリリィの可愛らしい王女様!」
 こうして不死身の魔女マジェスティは、“ドレス姿のカチューシャ"を王女と思い込むのだった。
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百合の国のプリンセス♂作者:万能ねぎトロ
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