陰キャ女子、人外男子に出会う
湿っぽいのが嫌い。
湿っぽいのが嫌い。ウジウジするのが嫌い。ボッチなんてあり得ない。
だから、私は私が嫌い。
中学生にもなって、友達のひとりもいない。なかよしグループからは仲間はずれ。いつも優等生を気取っているクセに成績も冴えない。
作り笑いばかり上手くなって、家族や教師の顔色をうかがっている。何におびえているの? それすら、わからない。
その上、私には秘密がある。見えてはいけないモノが見える。最初は見間違いだと思った。でも、違った。
スマホのカメラ越し限定で、私には幽霊が見える。
こんなこと、誰かに相談することもできない。いいえ、そもそも私には心を開ける相手なんてひとりもいない。
奴らには塩が効くことが分かった。取り憑かれたら気力が失せることも分かった。なら、やっつけるしかない。やらなきゃやられる。私は塩を持ち歩くようになった。
ある春の日の夕暮れ時。いつも通り帰りたくもない家に帰ると、玄関の前に見知らぬ男が立っていた。
振り向いたその男の顔を見た瞬間、私は理解した。ソイツが、この世のものではないことを。そして、私は恐怖より先に、こう思った。
ついに、スマホ越しでなくても見えるようになってしまった......!! 私はもう、普通じゃない。
その男......目つきが鋭く、高校生くらいに見え、黒のジャケットに黒のパンツで身を固めている......が、こちらに気付いて歩いてくる。
塩、塩......!! 私が塩を取り出すより先に、男が口を開いた。
「アンタ、この家の人間か?」
今まで幽霊の声を聞いたことは無かった。凍りつくような、美声だった。
「おい、聞いてるのか、アンタ......いや、待て。お前、アリサか?」
「ひ、ヒィっ!!」
わ、私の名前を、知ってる!? タダの幽霊じゃないわ、この感じ......!! なんとか、ごまかさないと!
「わ、私に言っているの、ストーカーさん?」
しまった、強がってどうにかなる相手じゃない!
「フフ、フフフ......やはりアリサだ。会いたかったぞ。大きくなったものだな。十年振りか。俺の事など覚えておらんだろう」
な、何なの!? 十年振り? 私が三歳のときに会ってるっていうの? いえ、それより、塩......あった!
「これでも食らいなさい!」
私は男に塩をかけた! ......はずだった。男は私の背後に回り込んでいた。
「塩、か。お前、やはり......」
男は、ため息混じりに言い放った。
「見えるのだな、見えてはならぬモノが」
「!!」
「図星、か。ずいぶん孤独にさいなまれただろう。辛かったな」
「あ......んた......」
「アリサ?」
「アンタなんかに、何が! わかるっていうの!? 得体の知れない化け物だからって、私に気安く同情しないで!」
「そうか、なら仕方あるまい」
男が私の前に再び姿を現す。そして、ひと言。
「おはぎ」