Episode 36 CHILDREN
朝食を終えると、子ども達は一斉に外へ飛び出していった。
「待てー!」
「こっちこっち!」
庭へ笑い声が広がる。
クランツは廊下の窓から、その様子を見つめていた。
それぞれが好きなように遊んでいた。
「外、行ってみる?」
ステラが隣へ立つ。
クランツは小さく首を横へ振った。
「そう」
それだけ言うと、ステラは庭へ歩いていく。
「こらこら、走りながら食べないの」
小さな女の子の口元をハンカチで拭く。
「ありがとう!」
元気よく笑うと、その子はまた走っていった。
「ぼくのー!」
「俺のだよー!」
今度は二人の男の子が取っ組み合いを始める。
ステラは苦笑しながら間へ入った。
「順番ね?」
二人は顔を見合わせる。
「......うん」
「うん」
クランツは、その光景を目で追っていた。
「......」
庭の隅。
「ふわぁぁぁぁっ......」
一本の木にもたれ掛かり、黒髪の少年が欠伸をしている。
子ども達が駆け寄る。
「レート!」
「遊ぼう!」
「やだ」
即答。
「えー!」
子ども達は不満そうに頬を膨らませる。
「やる気出せー!」
「そうだそうだー!!」
レートは気にしない。
そのまま木陰へ座り込み、空を見上げた。
「またサボってる」
ステラが笑う。
「サボってない」
「じゃあ何してるの?」
「休憩」
「まだ何もしてないでしょう?」
レートは少しだけ考えた。
「......じゃあ、このあと頑張る」
ステラは思わず吹き出した。
「それなら仕方ないわね」
叱らない。
責めない。
笑って終わる。
そんな大人が、目の前にいる。
その時だった。
一人の小さな女の子が勢いよく転んだ。
「いたぁ......」
泣きそうな声。
ステラは真っ先に駆け寄る。
「大丈夫?」
膝についた土を優しく払う。
「ほら」
手を差し伸べる。
女の子は小さく頷き、その手を握った。
「えらいえらい」
頭をそっと撫でる。
泣き顔だった女の子は、少しだけ笑った。
「ありがとう、ステラ先生」
また元気に走っていく。
クランツは、その光景を見つめていた。
子ども達の笑い声が響く。
幸せという日常は――
庭いっぱいへ広がっていた。