

Episode 1 FIRST PRICE
――ピッ――
電子音が静かな部屋に鳴り響いた。
端末の画面に、一人分の査定結果が表示される。
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>> SOUL CHART
NAME : NOAH LUX
MAIN JOB : COORDINATOR
VALUE : 4,847
DISTRICT RANK : 204
17 DISTRICT : ORPHAN
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「おっ?」
ポテトチップスを咥えたまま、ノア・ルクスが小さく笑う。
「2上がった」
「昨日よりか」
向かい側でチャイラテを飲むクランツが、静かに端末を覗き込む。
「......悪くない」
「このまま世界一目指す?」
「204位でか?」
「夢はデカく持つもの」
軽口を叩きながら、ノアはもう一度画面を見つめた。
数字が上がる。
それだけで少し嬉しい。
この世界では、それが当たり前だった。
――ピッ――
クランツも自分の端末を起動する。
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>> SOUL CHART
NAME : KRANZ TURKS
MAIN JOB : STRATEGIST
VALUE : 8,184
DISTRICT RANK : 72
17 DISTRICT : ORPHAN
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「変わらず」
「流石だねー」
「上がりもしない。下がりもしない」
「平和じゃん」
「......退屈だ」
「クランツらしい」
チャイラテを一口。
静かに端末を閉じた。
「ほい」
ノアが笑いながら端末を差し出す。
「次、レート」
「......はいはい」
ソファへ寝転がっていた青年が、気怠そうに身体を起こした。
レート・グロウス。
――ピッ――
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>> SOUL CHART
NAME : RATE GROWTH
MAIN JOB : LIQUIDATOR
VALUE : 0
DISTRICT RANK : ――――
17 DISTRICT : ORPHAN
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「......また0」
ノアが吹き出した。
「レート、お前マジで何なん?」
「俺が聞きてえよ」
「RANKすら出ないもんな」
「五年以上見続けりゃ、もう笑うしかない」
レートは苦笑しながら端末を閉じる。
結果は一度も変わらない。
世界が、自分だけを測れない。
「まあ」
ノアは肩を竦めた。
「0でも飯は食える」
「食わせてるのは俺らだけどな」
「細かい男はモテない」
三人の間に笑いが零れる。
古びた部屋。
窓から見える夕焼け。
遠くでは子供達がボールを蹴って遊んでいる。
17区――ORPHAN
誰も好き好んで来る街じゃない。
それでも、レート達にとっては帰る場所だった。
――コンコン――
――キイッ――
「入るぞ」
大柄な男が部屋へ入ってきた。
ゼロ・フォートレスだった。
「HODL BOLLINGERに依頼だ」
「内容は?」
クランツが立ち上がる。
「回収依頼」
ゼロは端末を机へ置いた。
――ピッ――
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>> RECOVERY REQUEST
TARGET
UNKNOWN TOKEN
LOCATION
04 DISTRICT : OBLIVION
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ノアの笑顔が少しだけ消えた。
「......またOBLIVIONかー」
「今回は深部らしい」
「報酬は?」
「高い」
「だから俺達か」
レートは端末を手に取る。
依頼書の最下部。
一文が表示されていた。
"RECOVERED BEFORE MARKET OBSERVATION."
「......市場観測前」
レートは静かに立ち上がる。
「行くか」
クランツが頷く。
ノアは残っていたポテトチップスを口へ放り込んだ。
「「了解」」
三人は部屋を出る。
夕陽が、ORPHANの街を赤く染めていた。
誰も知らない。
この依頼が世界そのものの価値を揺るがす――
最初の一歩になることを。