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Episode 39 AFTERMATH

夕暮れが、孤児院を橙色へ染めていた。
庭では子ども達の笑い声が響いている。

レート。
ライラ。

他の子ども達も走り回っていた。
ゼロはその様子を窓越しに見つめている。
その間にステラは、来客用のティーカップを机へ並べる。

――コンコン――

「どうぞ」

――キイッ――

「ステラ。来たよ」

「久しぶりだな」

エルザ・クラウド。
レイ・アレン。

二人が部屋に入ってくる。

「姉さん!レイ!」

ステラは二人の名前を呼ぶ。
ゼロもソファから立ち上がる。

「無事だったか」

「ああ」

レイは短く答えた。

「やっと落ち着いたってところさ」

気心の知れた口調でエルザが呟いた。

「じゃないと、アンタたちの顔も見に来れないからね」

四人はテーブルを囲む。

「はい、紅茶」

静かな時間が流れる。

「ふふっ。平和だねえ」

エルザが笑う。

「そういえば、あの時の子供は?」

「クランツ?あの子なら庭よ」

「クランツ、か。いい名前じゃないか」

ステラが窓の外を見る。
クランツは少し離れた場所から子ども達を眺めていた。

「馴染めてるのかい?」

「まだ緊張してる。でも、少しずつ慣れてきたわ」

「そうかい。それならよかった」

エルザは安心したように頷く。

「ま、俺たちも戦った甲斐があったわけだ」

レイも窓の外へ視線を向けた。

「ああ」

ゼロも窓の外に視線を向けたまま頷いた。

――カチャ――

「......クオンツだが」

レイが言葉を切り出す。

「完全に封鎖された」

「完全にだと?すべてか?」

「研究資料も、責任者も何もかも消えている」

ゼロは腕を組みながら難しい顔をする。

「証拠は?」

「無い」

「......無い?」

「ああ。不自然なぐらいに何も無い」

レイは淡々と調査結果を伝えた。

「意図的」

エルザが静かに続ける。

「そう考えるのが自然だろうねえ」

「最初から、ということか」

「そう。全部消すつもりの計画だった」

ステラは窓の外を見つめながら呟く。

「クオンツ設立当初の目的とズレてきてたのは感じてた」

「例の事件の後からかい?」

エルザが問い返す。

「ううん、その少し前から」

「少し前......」

「BLACK MARKET」

――ガタンッ――

「TRADER上層部の市場介入っ――!?」

「おいおい......話がデカいぞ、そいつは」

エルザとレイが困惑する。

「その責任を押し付けられて、レイヴンさんとルークさんは更迭されたの」

「どうりで......」

「............」

「今更言っても戻りはせん。それはそれだ」

ゼロが事実を突きつける。

「今のクオンツについてだ。レイ」

「......一つだけ気になることがある」

レイは言葉を続けた。

「何だ」

ゼロが視線を向ける。

「――人数が合わない」

「保護した人数か?」

「死亡が確認された人数、研究所の収容記録。それも含めて......一人足りない」

「え......?」

ステラが息を呑んだ。

「記録漏れ......じゃないの?」

「アタシも最初はそう思った」

エルザがカップをゆっくりと揺らした。

「でも、違う」

その目が鋭くなる。

「最初から、その一人だけ記録が存在しない」

ゼロは眉をひそめる。

「存在......しない......」

「ああ」

レイが頷く。

「いた形跡だけ在った。それ以外は何も」

「何も?」

ステラが聞き返す。

「名前。番号。何も無い」

「......記録に無い存在がいるって言うの......」

ステラはそっとカップを握り直した。

「ゼロ。TRADER本部に動きはないのか?」

「各支部への伝達に、お前たちから聞いた話は無い」

「......そうか」

夕焼けの中。

孤児院には――
いつもと変わらない笑い声が響いていた。
あとがき朔來 織
最後までお読みいただき、ありがとうございます。 『SOUL TR@DE』は毎日18:00更新予定です。 面白いと思っていただけましたら、 評価・ブックマークで応援いただけると励みになります。 "SEE YOU AT THE NEXT MARKET."
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夕暮れが、孤児院を橙色へ染めていた。
庭では子ども達の笑い声が響いている。

レート。
ライラ。

他の子ども達も走り回っていた。
ゼロはその様子を窓越しに見つめている。
その間にステラは、来客用のティーカップを机へ並べる。

――コンコン――

「どうぞ」

――キイッ――

「ステラ。来たよ」

「久しぶりだな」

エルザ・クラウド。
レイ・アレン。

二人が部屋に入ってくる。

「姉さん!レイ!」

ステラは二人の名前を呼ぶ。
ゼロもソファから立ち上がる。

「無事だったか」

「ああ」

レイは短く答えた。

「やっと落ち着いたってところさ」

気心の知れた口調でエルザが呟いた。

「じゃないと、アンタたちの顔も見に来れないからね」

四人はテーブルを囲む。

「はい、紅茶」

静かな時間が流れる。

「ふふっ。平和だねえ」

エルザが笑う。

「そういえば、あの時の子供は?」

「クランツ?あの子なら庭よ」

「クランツ、か。いい名前じゃないか」

ステラが窓の外を見る。
クランツは少し離れた場所から子ども達を眺めていた。

「馴染めてるのかい?」

「まだ緊張してる。でも、少しずつ慣れてきたわ」

「そうかい。それならよかった」

エルザは安心したように頷く。

「ま、俺たちも戦った甲斐があったわけだ」

レイも窓の外へ視線を向けた。

「ああ」

ゼロも窓の外に視線を向けたまま頷いた。

――カチャ――

「......クオンツだが」

レイが言葉を切り出す。

「完全に封鎖された」

「完全にだと?すべてか?」

「研究資料も、責任者も何もかも消えている」

ゼロは腕を組みながら難しい顔をする。

「証拠は?」

「無い」

「......無い?」

「ああ。不自然なぐらいに何も無い」

レイは淡々と調査結果を伝えた。

「意図的」

エルザが静かに続ける。

「そう考えるのが自然だろうねえ」

「最初から、ということか」

「そう。全部消すつもりの計画だった」

ステラは窓の外を見つめながら呟く。

「クオンツ設立当初の目的とズレてきてたのは感じてた」

「例の事件の後からかい?」

エルザが問い返す。

「ううん、その少し前から」

「少し前......」

「BLACK MARKET」

――ガタンッ――

「TRADER上層部の市場介入っ――!?」

「おいおい......話がデカいぞ、そいつは」

エルザとレイが困惑する。

「その責任を押し付けられて、レイヴンさんとルークさんは更迭されたの」

「どうりで......」

「............」

「今更言っても戻りはせん。それはそれだ」

ゼロが事実を突きつける。

「今のクオンツについてだ。レイ」

「......一つだけ気になることがある」

レイは言葉を続けた。

「何だ」

ゼロが視線を向ける。

「――人数が合わない」

「保護した人数か?」

「死亡が確認された人数、研究所の収容記録。それも含めて......一人足りない」

「え......?」

ステラが息を呑んだ。

「記録漏れ......じゃないの?」

「アタシも最初はそう思った」

エルザがカップをゆっくりと揺らした。

「でも、違う」

その目が鋭くなる。

「最初から、その一人だけ記録が存在しない」

ゼロは眉をひそめる。

「存在......しない......」

「ああ」

レイが頷く。

「いた形跡だけ在った。それ以外は何も」

「何も?」

ステラが聞き返す。

「名前。番号。何も無い」

「......記録に無い存在がいるって言うの......」

ステラはそっとカップを握り直した。

「ゼロ。TRADER本部に動きはないのか?」

「各支部への伝達に、お前たちから聞いた話は無い」

「......そうか」

夕焼けの中。

孤児院には――
いつもと変わらない笑い声が響いていた。
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