Episode 12 AFTER IMAGE
硝煙が消えていく。
崩れた高架橋の上。
レートは倒れた敵へ近付く。
仮面。
黒いロングコート。
胸元にも所属を示す紋章はない。
「......」
その身体へ手を伸ばす。
「レート」
クランツが声を掛ける。
レートは動きを止めた。
「もういない」
敵の足元を見つめている。
レートが視線を戻す。
そこには、誰もいなかった。
倒れていたはずの敵の姿が消えている。
あるのは、黒い布の切れ端。
「周辺――追跡反応なし」
ノアは周囲を見渡す。
瞳はまだ戦闘時のまま。
「了解」
レートは立ち上がった。
「追うか?」
クランツは即座に首を横へ振る。
「追わない」
迷いはない。
「敵は追わせたい」
「同感だ」
クロスは静かにしゃがみ込む。
「......」
黒い布を拾い上げ、生地を指先で撫でる。
「......見覚えがありませんね」
レートが視線を向ける。
「知ってる連中じゃないのか」
クロスはゆっくり首を振る。
「少なくとも、私が取引してきたどの組織とも一致しません」
「正体を隠してる、か」
クランツが小さく息を吐く。
「それだけ、この接触を知られたくないのでしょう」
クロスは布を丁寧に畳んだ。
「......終わった?」
ノアがようやく肩の力を抜いた。
クランツが小さく笑う。
「戻ったな」
ノアは少しだけ照れくさそうに笑った。
「集中すると、ああなるんだよ」
「助かった」
レートも肩を回しながら息を吐く。
「当然」
ノアは軽く親指を立てる。
「あなた方は」
そのやり取りを見ていたクロスが、静かに口を開く。
三人が振り向く。
「いつも、このような戦い方なのですか」
「いや――」
レートは苦笑した。
「今日は、まだ静かな方だ」
「確かにねー」
ノアが吹き出す。
クランツだけは笑わなかった。
「......まだ終わってない」
視線はまだ鋭さを消していない。
崩れた高架橋から数百メートル離れた廃ビル。
HOSTは静かに通信端末を耳へ当てていた。
『確認完了しました』
通信の向こうから、低い声が返る。
『どうだった』
HOSTは迷いなく答える。
『レート・グロウス』
『ノア・ルクス』
『クランツ・タークス』
軽く笑みを浮かべる。
『想定以上です』
通信相手は何も言わない。
HOSTは続ける。
『クロス・マージンの護衛としては、過剰戦力です』
『くくっ』
小さな笑い声が聞こえた。
『次の盤面へ進め』
――ピッ――
HOSTは端末を静かに下ろした。
「邪魔だな」
誰にも気付かれないまま。
ゆっくり仮面を外す。
「ここからが――」
その視線の先。
17区――ORPHAN
「本当の取引ですね」