プロローグ
「天にまします我らが女神ヴェルディアーテ様。 私の魂を捧げます。 どうか弟の病を治してください。 御加護がありますように」
「天にまします我らが女神ヴェルディアーテ様。 私の魂を捧げます。 どうか弟の病を治してください。 御加護がありますように」
膝をつき、教会で祈る少女――エミリアは立ち上がり祭壇を見た。
ウェーブのかかった金髪に、ローリエの冠。背には純白の翼が広がり、長い衣は神々しいまでに美しい。
その女神像へエミリアは熱い視線を向けた。
今一度、心の中で願いを唱える。心優しい娘のたった一つの願いを。
◇
その日の夜。
エミリアは誰かに体を揺すられて、目を覚ました。
「......どうしたの、眠れないの?」
弟かと思い眠い目をこする。目に入ったのはいつもの可愛い弟ではない。
白く輝く羽が月明かりを遮った。
窓から差し込む光の中に、一人の女性が浮かんでいる。
「ハァイ、エミリア。あなたを迎えに来ましたわ」
そこにいるのは昼間、教会で祈りの対象だった女神ヴェルディアーテ、そのものだった。
「ヴェルディ、アーテ......さま......」
「そうよ、さぁ行くわよ」
「え。え。えぇぇぇ?!」
「あなた、私に願いを叶えて貰うかわりに魂を供物にしたでしょ?」
言った。
確かに「私の魂を捧げます」と、言った。
「さ、行くわよ。あなたの願いは叶えたわ」
横を見れば規則的に胸が上下している弟がいる。
「ちょうど眷属が欲しかったし。お願いをかなえたご褒美が欲しいもの」
にっこりと女神が美しく、神々しく微笑む。
エミリアは手を引かれ夜空へと飛び立った。
「まっ、待ってええええ!!」
肉体は後ろにある。
魂になったエミリアは肉体を置き去りにし、ヴェルディアーテの眷属になった。