第一話:お兄ちゃんのお仕事
「真昼、お前もゲームしてみるか?」
「えっ、いいの?」
「今度の新作は小学生も遊べるゲームだから、本物の小学生にプレイしてみてほしいんだ」
「新作ゲーム? やってみたい!」
「じゃあ、ログインアイテムをもらってきてやるよ」
「やったぁ!」
夏休みに入る少し前。
深夜お兄ちゃんがぼくをゲームにさそってくれた。
新作のゲームなんてワクワクするね。
「夏休みの宿題、先に終わらせるんだぞ」
「うん」
ゲームをするためには、宿題を終わらせないといけない。
一学期の終業式が終わった後、ぼくは家まで走って帰った。
国語と算数のドリルは、帰ってすぐ始めた。
「ほれ真昼、おにぎり作ったから解きながら食え」
「ありがとう」
パパとママはお仕事で夜おそくまで帰ってこないから、いつもお兄ちゃんが晩ごはんを作ってくれる。
鮭フレークがたっぷり入ったおにぎりは、ぼくの大好物だ。
温かいごはんに、塩味がついたパリパリの海苔が巻かれているのも好き。
ぼくは左手におにぎりを持ってむしゃむしゃ食べながら、右手に鉛筆を持ってドリルを解き続けた。
「なんか、そうやってるの見てると、お前が社畜に見えてくるよ」
「『シャチク』って、パパやママみたいに朝早くから夜おそくまで働いたり、土曜日や日曜日も会社に行く人のことだよね」
「そう。よく知ってるじゃないか」
「テレビで言ってたよ」
「そっか。じゃあパパとママが少しでも休めるように、これからも家のことはオレたちがやろうな」
「うん」
お兄ちゃんには、食べながらドリルを解くぼくがシャチクっぽく見えるらしい。
この前見たテレビで、シャチクは食事の時間も仕事するって言ってたから、それっぽく見えるのかも。
パパやママはたまに家でも書類の仕事をすることがあって、そのときは今のぼくみたいにおにぎりやサンドイッチを食べながらやってたのを思い出した。
シャチクはつかれすぎると過労死するらしいよ。
過労死すると異世界転生しちゃって、家族とは会えなくなるかもって言ってた。
そんなの、やだな。
ぼくはパパとママが過労死しないように、つかれすぎないように、家のそうじを引き受けたんだ。
食器を洗うのも、ぼくがやっているよ。
お兄ちゃんは、パパとママが家ではゆっくりできるようにって、みんなのごはんを作ってくれている。
ドリルが全て片付いても、パパとママはまだ帰ってこない。
いつも、ぼくがねむっている時間に帰ってくるんだ。
パパとママに会えるのは、朝だけだった。