ホーム›一次元に恋をした›第一話 良薬は稀に甘し
← 前の話目次

第一話 良薬は稀に甘し

私は風折せん。JKではないけど普通の女子高校生。”世間はJKという言葉の意味を知らずに使ってる”。そう告げた幼い頃の零は私にJKとは”ジャカルタ”っていう意味だって教えてくれた。告げてくれるならもっと別の物が良いと私はずっと、今も思っている。だけど、昔に浸っていては今を楽しめないから話を戻したら、少々目眩がした。

何かと思えば、前からJKと女子高校生の二人組が歩いてきていた。その光量差によって目眩が引き起こされたのだと思う。

つくづく思うよ。人はどうしてテレパシーを使えないのかなって。テレパシーを使えればきっと、相手の脳内なんて覗き放題。それなら、相手をあまり困らせることもなくなると私は思う。環境に適応するために生物は進化するはず。それなのに、人間はなんでテレパシーを使えないのか私には分からない。でも分かるとしたら、目の前で歩いている女子高校生が困っているということくらいかな。自分を取り囲む全ての環境、要因をポジティブに考えるのは”K•B•JK”考えが浅くて馬鹿なジャカルタの悪い癖だと思う。だけど、注意して欲しいのは、ここまで言っておいて私は何もしないという点。手出しするほど私は暇じゃないし、助けを求められた記憶はない。だから、私ができることと言ったら、見て見ぬふりをして零と帰る。それだけしかない。それに、変に関わるだけ面倒くさいって零も思うだろうし。

「ね、零。私も零がプレイしてるゲームやりたいんだけど、ゲーム名教えてくれないかな?」

何か考え事をしていたのか零はボーっとしていた。授業中眠い顔するのは私もそうだけど、帰る時ぐらい、少々笑って欲しいものだよ。

「零ってば、聞いてる?」

「あっ...、わりぃ。何の話だっけ?」

「零がプレイしてるゲームの名前を教えて欲しいって話。」

「って言われても俺、結構色んなやつプレイしてんだけどな。どれだ?」

そう言って私にスマホを渡してきた。言わんばかりに履歴を漁ってくださいって言ってるようなものだから、見て見たけど、今時の男子高校生と思えないほど潔白だった。それにゲームも含め、やましいものなんて一切なくて、心ばかり楽しみにしていたのに残念。

「これこれ。ヒロイックテールってやつ。ありがとね」

そう言って私はスマホを零に返した。

「お前も意外とゲーム好きなんだな。」

「別にそうじゃないけど、零が楽しそうにプレイするのを見てると私もやりたくなって」

それを聞くや否や、零の頬は少し赤らんだ。

「熱ある?ちょっと赤いよ」

熱があるか確かめることを口実に手を伸ばしみた。だけど、それが嫌だったのか、振り払われてしまった。

「あるも何も人間だからあるに決まってるだろ。ね、熱がないのは死人だ。」

「それもそうだね」

そうは言っても、絶対熱あるよ。零ってよく誤魔化し癖あるから早死にしそう。だから、私が隣にいてあげないと。そうは思うけど、影みたいに引っ付いて泊まることはできないから私は自分の家に帰った。正確に言えば帰る道中だなんて零は言いそうだけど。

「せ〜ん..!」

涙目で変な声を出しながら後ろから歩いてきたのは矢崎 龍臥。龍臥と私、零は幼なじみで、同じ高校に通っている。サッカー部のエースで女子からの人気も高い。幼い頃はよく遊んでいたけど、最近はあんまりそうでもない。それに、世間ってのは、男女が一緒にいるだけで、付き合ってるとかないとか、色恋しか頭にない暇人だからね。龍臥が私みたいのと一緒にいるとまずいでしょうし、それに...、

「どうしたの。そんなひどい顔して」

「零が...、零にカラオケ行こってメールしたのに既読すらしてくれないんだよ」

それに、龍臥は零のことが好きすぎる狂人的存在。恋愛対象としては見てないからまだ良いものの、これもこれで取り合いになりそう。

「零は今日、忙しくて既読つけられなかったんだよきっと。」

「そうだよね。あっそうだ。夏休みに海行こうよ。4人で」

「誰と誰と誰と誰?」

「俺と零とせんと幽樂で」

「私は日による。予定あるから。それに、龍臥って夏休みバイトないの?」

「ふっふ~ん、せん君、君は俺をあまり侮らないでくれ。俺はいつだってさぼるくらいは余裕だぜ。言い訳リストだって100個は作ったし」

「さぼるって、それは、...」

「そういうのは後々考えれば良いし、俺のことなんだから上手くやるさ。で、行くか行かないかどっち?」

「行く」

「じゃ、決まりだな。俺この後、部活の集まりあるからじゃな」

私は、学校へ向かう龍臥に背を向けたまま手を振って見たけど、傍から見ると変な感じがして、上手くできなかった。

今年となれば、ドアノブも冷んやりとしている。真昼に裸足で歩いて火傷しないなんてことはない。アスファルトにフライパンを置いて、目玉焼きだなんて余裕で焼ける。夏なのに割と寒かったり、暑かったりで暑中見舞いにするか残暑見舞いにするかで悩む程度には、まじめに困っている。

立ち話も何だから、入って座ることにした。

「ただいま〜」

「おかえり」

返事はきたけど、忙しそうにしていてそれどころには見えなかった。

「せん。お母さん今日夜勤で、お父さんも遅くなるらしいから夜更かししないでよ」

「わかってるって。もう子供じゃないんだし」

「じゃ、お留守番頼んだよ。」

「はーい。って何歳だと思ってるんだよ」

私の家はちょっと珍しい。家系図を見れば分かるんだけど、お父さんの旧姓は春木市でお母さんは風折。つまりは、婿入りってケース。って言ってもそこまで珍しく思ったことはないし、これと言って優遇されることは何一つないし。ま、何でもいいけどさ、端的言っちゃえば親同士が仲いいってことだよ。私の両親は零と龍臥の両親と家が近いこともあって結構仲がいい。聞けば、高校の時の同級生だとか。

馴れ初め話はここまでにして、スマホを片手にゲームを始めた。機械音痴だからあんまりゲームとか得意じゃないけど、プレイすればそのうち強くなるってどっかの人も言ってたし。

そう言って起動したのはいいものの、ダウンロードが遅すぎる。こういうゲームに限って容量の侵食が激しいものだよ。このまま待っていてもきりないからとりあえず、お風呂に入ることにした。

少し緩くなっているけど、追い焚きするのもめんどくさいからそのまま入水することにした。

「あー...」

思わずおっさんみたいな声が出ちゃった。リラックスするっていうよりか、温たかめのプールに入ってる気分。けど、リラックスした時が一番危ないって言うからその分には結構いい湯だと思うよ。

私は、意味もなく水面に映る自分の顔を見た。水は濁ってるほうが綺麗に映るって聞いたけど、本当に全くきれいなほどに私の心までをも映し出している。私が零を好きだと思う、この恋心を紙屑のように捨ててしまえば、一層楽になれたのに。その時は、銚子川ぐらい純白な自分になれてたのにね。でも私は今、冥界に一人迷い込んで、彷徨ってる幽霊に等しい。成仏という言葉を忘れた挙句、居場所まで失ってしまっている。自分の墓何てどこにもない。あるはずもない。所詮、需要でもない人間は勝手に死んで、勝手に忘れ去られていく。そこに何かあるとした、一方的な執念的未練だけ。成仏したところで、それは別に消えることはない。そのものを構成する主成分なのだから、消そうにも消せずにしつこくそこに残り続ける。だから私の心は銚子川のように綺麗になることはなく、三途の川のように未練で黒いまま、この世を去る。その時は、全てを剥ぎ捨てて、苦悩も何もかも消えて亡くなって、死の向こう側を体験することができると思う。それこそ、俗に言う安楽死ってやつでしょうけど、私が安楽死だなんてもの、できるはずもなく、ただただ惨めに藻掻き苦しみ死ぬ。

こんなこと思っていても自分に酔ってくるだけで、お風呂が裏目に出てしまう。元からぬるいお湯だったのに、さらに冷水を投下したような気分になったから、お風呂から出ることにした。今だけなら、わんちゃん、ねこちゃんがお風呂嫌いな気持ちがわかるよ。いや、あっちの場合は、自分は入らないから主も入らないでという注意喚起と言ったところだろうね。やっぱり、人間と生き物とは分かり合えないものだね。

そんなことより、酔いを醒ますのにはやっぱり冷えきった水を流し込むのが一番だと思う。そして、酔い醒めに食べる夕ご飯は美味しい。けど、そんなのは感情による副作用であって、現実ではない。ただの幻想だよ。決してそうと言ったわけじゃないけど、幻想の中なら不味くても美味しく感じられる。なら、犯罪者は自分たちの幻想に引きずり込まれて抜け出せなくなった人ってことになるね。現に、私の家の周りは犯罪者が多い。この前だって、連続覗き魔の男を警察に届けたくらいだし。ま、その分おまけ感覚で実績がついてくるから結構大助かりな面もあるけどね。

とりあえず、リストチェックがてらテレビをつけた。だけど、私がいつも見てるニュース番組は放映されていなかった。だから、テレビを消そうとリモコンに手を差し伸べようとした瞬間、画面が切り替わった。慌てた様子の女子アナウンサーが息を切らしながら、原稿を読み上げた。

「ハァ...速報です。たった今入った情報によりますと、東京都、江戸川区内の臨海町で車との衝突事故がありました。」

少しながら消すかためらったけど、衝突事故はよくあることだから私にとっての需要性は低い。だからテレビを消そうと再び手を差し伸べた瞬間、私の耳には聞いてはいけないワードが入ってきた。

「警察によりますと、被害者は近くの高校に通う夜霞 零さん17歳だと分かっています。また、夜霞さんは病院に運ばれましたが、そのおよそ1時間後に死亡が確認されました。犯人は車で轢き逃げした模様で、警察は事件について引き続き調査を続けています。」

夜霞 零という言葉を耳にした私にはそれが誰なのか分かる。分からないはずがない。一秒たりとも忘れたことはなかった。数時間前まで隣にいた。なのにどうして...。何で...。何で...何で、何で...、何でなの..、何で、..神様は私から徴収するの...。ねぇ..何でってば...。

理性が見る見る崩れ去っていく私に転機が訪れた。

ガチャガチャ..

「空いてんじゃねぇーかよ...まったく、無駄な手魔かけさせやがって」

そうだよね...。人はいつかどこかで必ず死ぬ。それが今か、明日か。明後日か、数か月後、それとも何十年も後ってな違いしかそこにはない。なら、私も一層死んでしまえば、楽になれるし、運良ければ、死後にだって零と巡り合わせられる...。

ギィー..ギィィ...

私は少しずつ少しずつ、空き巣に近づいて行った。

「クッ...。誰かいるのか...」

返事するのは面倒臭い。必要最低限のことをしてくれればいい。それ以外に私が求めることはない...。

いざ、空き巣を目の前にして見たが全く恐怖を覚えない。むしろ、アドレナリンが分泌されて興奮状態に入ってる。

「いたのか。まあ、いい。金目のものの場所を教えろ」

「いやだ...」

教えても教えなくても結果として殺されはするけど、財産まで盗まれるのは心外だから教えるわけにはいかない。

「いいからさっさと言え!殺すぞ。」

あーあ、期待外れだ。色んな犯罪者を見てきた私には分かる。このおっさんは、威勢だけいい犬のように吠えるけど、覆面を被っている以上犬は犬。本当に殺そうとはしないだろうね..。でも、少し賭けに出てみようと思う。ルールは簡単。殺されさえすれば私の勝ち、殺されなければ私の負け。と言っても賭けてくれるような人はどこにもいない。これでは、プラマイ0と言ったあたりだろうか。いや、殺した後に金を持っていかれるから実質マイナス寄りって言ったあたりだね。でも、マイナスにマイナスを掛ければプラスになるだなんてことを小1にして理解していた知識人は、..もう、いない...。私なんて、今頃になって、やっと..、やっと理解したっていうのに...。褒めてくれる君が居ないのなら、私は..、私は、この同士の義務敗おじさんから褒美をもらうとするね...。

「いいよ...、殺して。どうしたの?いいって言ってるじゃないの。どうしたの?何で殺してくれないの?ねぇ、そのナイフなら一突きだよね?早く殺してくれないかな?そんな勿体ぶらないでさ、グサッとやったら快感かもよ?さ、早く?ね、ね、早くさぁー?刺して楽にしてよ。早くってば。ねぇー?」

クソッ...、何だこの女..。狂気に満ち溢れていやがる..。おかしい...、おかしすぎる。俺が言えた口じゃねぇが、この女も中々にやべぇー奴だ..。例えるならそうだな、死神そのものだな...。

「うっ、..うるせぇー!。し、死にたきゃ勝手に一人で死にやがれ...」

そう言って、空き巣は捨て台詞を吐いて逃げていった。けど、私は死ねなかった...。三途の川を渡る資格ですら、私にはなかった...。それでも、私は諦めずに頑張ることにした。

リビングへと引き返す途中、お風呂場が目についた。お湯を捨てた記憶はなく、案の定そこに残っていた。それを見て、私は”楽しい楽しい”遊びを思いついた。一人でやるから競争と言えないかもしれないけど、潜水競争をする。学校で友達とかとどれだけ水中で息止められるかを競うやつのことを私はそう呼んでる。

脱ぐのは面倒臭いからそのまま入ることにした。1時間以上潜ることを想定していたけど、中々きつくて、一分にも満たないうちに出てきてしまった。やっぱり、自分の力で死のうとするのは難しい。安楽死したいと思うけど、そう簡単に殺してくれそうな勇者はいない。さっきのもただの根性なしのチンピラだったし。

ふと目に入った薬箱が私の脳内に電流を走らせた。睡眠薬を大量に摂取して自殺したってニュースがあった気がする。

私は睡眠薬の瓶を箱から取り出し、中から5錠取り出した。口に入れれば、少し甘味が感じられたのと同時にめまいがしてきた。これも幻想なのだろうかな。今夜はいい夢が見れるようなそんな気分..
......................................................................................................................................................................................................
あとがき小月
。質問は答えられる範囲で極力答えるようにはする。その他、アドバイス等あったらコメントに書いてくれ
シェア
← 前の話
プロローグ 全ての始まりは鉄の味
最新話です
目次に戻る
一次元に恋をした作者:小月
目次を見る
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません
ホーム›一次元に恋をした›第一話 良薬は稀に甘し
← 前の話目次

第一話 良薬は稀に甘し

私は風折せん。JKではないけど普通の女子高校生。”世間はJKという言葉の意味を知らずに使ってる”。そう告げた幼い頃の零は私にJKとは”ジャカルタ”っていう意味だって教えてくれた。告げてくれるならもっと別の物が良いと私はずっと、今も思っている。だけど、昔に浸っていては今を楽しめないから話を戻したら、少々目眩がした。

何かと思えば、前からJKと女子高校生の二人組が歩いてきていた。その光量差によって目眩が引き起こされたのだと思う。

つくづく思うよ。人はどうしてテレパシーを使えないのかなって。テレパシーを使えればきっと、相手の脳内なんて覗き放題。それなら、相手をあまり困らせることもなくなると私は思う。環境に適応するために生物は進化するはず。それなのに、人間はなんでテレパシーを使えないのか私には分からない。でも分かるとしたら、目の前で歩いている女子高校生が困っているということくらいかな。自分を取り囲む全ての環境、要因をポジティブに考えるのは”K•B•JK”考えが浅くて馬鹿なジャカルタの悪い癖だと思う。だけど、注意して欲しいのは、ここまで言っておいて私は何もしないという点。手出しするほど私は暇じゃないし、助けを求められた記憶はない。だから、私ができることと言ったら、見て見ぬふりをして零と帰る。それだけしかない。それに、変に関わるだけ面倒くさいって零も思うだろうし。

「ね、零。私も零がプレイしてるゲームやりたいんだけど、ゲーム名教えてくれないかな?」

何か考え事をしていたのか零はボーっとしていた。授業中眠い顔するのは私もそうだけど、帰る時ぐらい、少々笑って欲しいものだよ。

「零ってば、聞いてる?」

「あっ...、わりぃ。何の話だっけ?」

「零がプレイしてるゲームの名前を教えて欲しいって話。」

「って言われても俺、結構色んなやつプレイしてんだけどな。どれだ?」

そう言って私にスマホを渡してきた。言わんばかりに履歴を漁ってくださいって言ってるようなものだから、見て見たけど、今時の男子高校生と思えないほど潔白だった。それにゲームも含め、やましいものなんて一切なくて、心ばかり楽しみにしていたのに残念。

「これこれ。ヒロイックテールってやつ。ありがとね」

そう言って私はスマホを零に返した。

「お前も意外とゲーム好きなんだな。」

「別にそうじゃないけど、零が楽しそうにプレイするのを見てると私もやりたくなって」

それを聞くや否や、零の頬は少し赤らんだ。

「熱ある?ちょっと赤いよ」

熱があるか確かめることを口実に手を伸ばしみた。だけど、それが嫌だったのか、振り払われてしまった。

「あるも何も人間だからあるに決まってるだろ。ね、熱がないのは死人だ。」

「それもそうだね」

そうは言っても、絶対熱あるよ。零ってよく誤魔化し癖あるから早死にしそう。だから、私が隣にいてあげないと。そうは思うけど、影みたいに引っ付いて泊まることはできないから私は自分の家に帰った。正確に言えば帰る道中だなんて零は言いそうだけど。

「せ〜ん..!」

涙目で変な声を出しながら後ろから歩いてきたのは矢崎 龍臥。龍臥と私、零は幼なじみで、同じ高校に通っている。サッカー部のエースで女子からの人気も高い。幼い頃はよく遊んでいたけど、最近はあんまりそうでもない。それに、世間ってのは、男女が一緒にいるだけで、付き合ってるとかないとか、色恋しか頭にない暇人だからね。龍臥が私みたいのと一緒にいるとまずいでしょうし、それに...、

「どうしたの。そんなひどい顔して」

「零が...、零にカラオケ行こってメールしたのに既読すらしてくれないんだよ」

それに、龍臥は零のことが好きすぎる狂人的存在。恋愛対象としては見てないからまだ良いものの、これもこれで取り合いになりそう。

「零は今日、忙しくて既読つけられなかったんだよきっと。」

「そうだよね。あっそうだ。夏休みに海行こうよ。4人で」

「誰と誰と誰と誰?」

「俺と零とせんと幽樂で」

「私は日による。予定あるから。それに、龍臥って夏休みバイトないの?」

「ふっふ~ん、せん君、君は俺をあまり侮らないでくれ。俺はいつだってさぼるくらいは余裕だぜ。言い訳リストだって100個は作ったし」

「さぼるって、それは、...」

「そういうのは後々考えれば良いし、俺のことなんだから上手くやるさ。で、行くか行かないかどっち?」

「行く」

「じゃ、決まりだな。俺この後、部活の集まりあるからじゃな」

私は、学校へ向かう龍臥に背を向けたまま手を振って見たけど、傍から見ると変な感じがして、上手くできなかった。

今年となれば、ドアノブも冷んやりとしている。真昼に裸足で歩いて火傷しないなんてことはない。アスファルトにフライパンを置いて、目玉焼きだなんて余裕で焼ける。夏なのに割と寒かったり、暑かったりで暑中見舞いにするか残暑見舞いにするかで悩む程度には、まじめに困っている。

立ち話も何だから、入って座ることにした。

「ただいま〜」

「おかえり」

返事はきたけど、忙しそうにしていてそれどころには見えなかった。

「せん。お母さん今日夜勤で、お父さんも遅くなるらしいから夜更かししないでよ」

「わかってるって。もう子供じゃないんだし」

「じゃ、お留守番頼んだよ。」

「はーい。って何歳だと思ってるんだよ」

私の家はちょっと珍しい。家系図を見れば分かるんだけど、お父さんの旧姓は春木市でお母さんは風折。つまりは、婿入りってケース。って言ってもそこまで珍しく思ったことはないし、これと言って優遇されることは何一つないし。ま、何でもいいけどさ、端的言っちゃえば親同士が仲いいってことだよ。私の両親は零と龍臥の両親と家が近いこともあって結構仲がいい。聞けば、高校の時の同級生だとか。

馴れ初め話はここまでにして、スマホを片手にゲームを始めた。機械音痴だからあんまりゲームとか得意じゃないけど、プレイすればそのうち強くなるってどっかの人も言ってたし。

そう言って起動したのはいいものの、ダウンロードが遅すぎる。こういうゲームに限って容量の侵食が激しいものだよ。このまま待っていてもきりないからとりあえず、お風呂に入ることにした。

少し緩くなっているけど、追い焚きするのもめんどくさいからそのまま入水することにした。

「あー...」

思わずおっさんみたいな声が出ちゃった。リラックスするっていうよりか、温たかめのプールに入ってる気分。けど、リラックスした時が一番危ないって言うからその分には結構いい湯だと思うよ。

私は、意味もなく水面に映る自分の顔を見た。水は濁ってるほうが綺麗に映るって聞いたけど、本当に全くきれいなほどに私の心までをも映し出している。私が零を好きだと思う、この恋心を紙屑のように捨ててしまえば、一層楽になれたのに。その時は、銚子川ぐらい純白な自分になれてたのにね。でも私は今、冥界に一人迷い込んで、彷徨ってる幽霊に等しい。成仏という言葉を忘れた挙句、居場所まで失ってしまっている。自分の墓何てどこにもない。あるはずもない。所詮、需要でもない人間は勝手に死んで、勝手に忘れ去られていく。そこに何かあるとした、一方的な執念的未練だけ。成仏したところで、それは別に消えることはない。そのものを構成する主成分なのだから、消そうにも消せずにしつこくそこに残り続ける。だから私の心は銚子川のように綺麗になることはなく、三途の川のように未練で黒いまま、この世を去る。その時は、全てを剥ぎ捨てて、苦悩も何もかも消えて亡くなって、死の向こう側を体験することができると思う。それこそ、俗に言う安楽死ってやつでしょうけど、私が安楽死だなんてもの、できるはずもなく、ただただ惨めに藻掻き苦しみ死ぬ。

こんなこと思っていても自分に酔ってくるだけで、お風呂が裏目に出てしまう。元からぬるいお湯だったのに、さらに冷水を投下したような気分になったから、お風呂から出ることにした。今だけなら、わんちゃん、ねこちゃんがお風呂嫌いな気持ちがわかるよ。いや、あっちの場合は、自分は入らないから主も入らないでという注意喚起と言ったところだろうね。やっぱり、人間と生き物とは分かり合えないものだね。

そんなことより、酔いを醒ますのにはやっぱり冷えきった水を流し込むのが一番だと思う。そして、酔い醒めに食べる夕ご飯は美味しい。けど、そんなのは感情による副作用であって、現実ではない。ただの幻想だよ。決してそうと言ったわけじゃないけど、幻想の中なら不味くても美味しく感じられる。なら、犯罪者は自分たちの幻想に引きずり込まれて抜け出せなくなった人ってことになるね。現に、私の家の周りは犯罪者が多い。この前だって、連続覗き魔の男を警察に届けたくらいだし。ま、その分おまけ感覚で実績がついてくるから結構大助かりな面もあるけどね。

とりあえず、リストチェックがてらテレビをつけた。だけど、私がいつも見てるニュース番組は放映されていなかった。だから、テレビを消そうとリモコンに手を差し伸べようとした瞬間、画面が切り替わった。慌てた様子の女子アナウンサーが息を切らしながら、原稿を読み上げた。

「ハァ...速報です。たった今入った情報によりますと、東京都、江戸川区内の臨海町で車との衝突事故がありました。」

少しながら消すかためらったけど、衝突事故はよくあることだから私にとっての需要性は低い。だからテレビを消そうと再び手を差し伸べた瞬間、私の耳には聞いてはいけないワードが入ってきた。

「警察によりますと、被害者は近くの高校に通う夜霞 零さん17歳だと分かっています。また、夜霞さんは病院に運ばれましたが、そのおよそ1時間後に死亡が確認されました。犯人は車で轢き逃げした模様で、警察は事件について引き続き調査を続けています。」

夜霞 零という言葉を耳にした私にはそれが誰なのか分かる。分からないはずがない。一秒たりとも忘れたことはなかった。数時間前まで隣にいた。なのにどうして...。何で...。何で...何で、何で...、何でなの..、何で、..神様は私から徴収するの...。ねぇ..何でってば...。

理性が見る見る崩れ去っていく私に転機が訪れた。

ガチャガチャ..

「空いてんじゃねぇーかよ...まったく、無駄な手魔かけさせやがって」

そうだよね...。人はいつかどこかで必ず死ぬ。それが今か、明日か。明後日か、数か月後、それとも何十年も後ってな違いしかそこにはない。なら、私も一層死んでしまえば、楽になれるし、運良ければ、死後にだって零と巡り合わせられる...。

ギィー..ギィィ...

私は少しずつ少しずつ、空き巣に近づいて行った。

「クッ...。誰かいるのか...」

返事するのは面倒臭い。必要最低限のことをしてくれればいい。それ以外に私が求めることはない...。

いざ、空き巣を目の前にして見たが全く恐怖を覚えない。むしろ、アドレナリンが分泌されて興奮状態に入ってる。

「いたのか。まあ、いい。金目のものの場所を教えろ」

「いやだ...」

教えても教えなくても結果として殺されはするけど、財産まで盗まれるのは心外だから教えるわけにはいかない。

「いいからさっさと言え!殺すぞ。」

あーあ、期待外れだ。色んな犯罪者を見てきた私には分かる。このおっさんは、威勢だけいい犬のように吠えるけど、覆面を被っている以上犬は犬。本当に殺そうとはしないだろうね..。でも、少し賭けに出てみようと思う。ルールは簡単。殺されさえすれば私の勝ち、殺されなければ私の負け。と言っても賭けてくれるような人はどこにもいない。これでは、プラマイ0と言ったあたりだろうか。いや、殺した後に金を持っていかれるから実質マイナス寄りって言ったあたりだね。でも、マイナスにマイナスを掛ければプラスになるだなんてことを小1にして理解していた知識人は、..もう、いない...。私なんて、今頃になって、やっと..、やっと理解したっていうのに...。褒めてくれる君が居ないのなら、私は..、私は、この同士の義務敗おじさんから褒美をもらうとするね...。

「いいよ...、殺して。どうしたの?いいって言ってるじゃないの。どうしたの?何で殺してくれないの?ねぇ、そのナイフなら一突きだよね?早く殺してくれないかな?そんな勿体ぶらないでさ、グサッとやったら快感かもよ?さ、早く?ね、ね、早くさぁー?刺して楽にしてよ。早くってば。ねぇー?」

クソッ...、何だこの女..。狂気に満ち溢れていやがる..。おかしい...、おかしすぎる。俺が言えた口じゃねぇが、この女も中々にやべぇー奴だ..。例えるならそうだな、死神そのものだな...。

「うっ、..うるせぇー!。し、死にたきゃ勝手に一人で死にやがれ...」

そう言って、空き巣は捨て台詞を吐いて逃げていった。けど、私は死ねなかった...。三途の川を渡る資格ですら、私にはなかった...。それでも、私は諦めずに頑張ることにした。

リビングへと引き返す途中、お風呂場が目についた。お湯を捨てた記憶はなく、案の定そこに残っていた。それを見て、私は”楽しい楽しい”遊びを思いついた。一人でやるから競争と言えないかもしれないけど、潜水競争をする。学校で友達とかとどれだけ水中で息止められるかを競うやつのことを私はそう呼んでる。

脱ぐのは面倒臭いからそのまま入ることにした。1時間以上潜ることを想定していたけど、中々きつくて、一分にも満たないうちに出てきてしまった。やっぱり、自分の力で死のうとするのは難しい。安楽死したいと思うけど、そう簡単に殺してくれそうな勇者はいない。さっきのもただの根性なしのチンピラだったし。

ふと目に入った薬箱が私の脳内に電流を走らせた。睡眠薬を大量に摂取して自殺したってニュースがあった気がする。

私は睡眠薬の瓶を箱から取り出し、中から5錠取り出した。口に入れれば、少し甘味が感じられたのと同時にめまいがしてきた。これも幻想なのだろうかな。今夜はいい夢が見れるようなそんな気分..
......................................................................................................................................................................................................
あとがき小月
。質問は答えられる範囲で極力答えるようにはする。その他、アドバイス等あったらコメントに書いてくれ
シェア
← 前の話
プロローグ 全ての始まりは鉄の味
最新話です
目次に戻る
一次元に恋をした作者:小月
目次
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません