骨川アキラの、周囲に対する視点。
071
周りなんて気にしなくていい、自分が好きなものだけ大切にすればいいんだ......叔母はいつも僕にそう言ってくれた......
「んー......ねえサガっち......」
「んー?」
「この衣装、ちょっときつくない?」
僕は......変わっている......少なくとも、学校の女子たちの目にはそう映っていた
「え?......サイズはちゃんと測ったはずなんだけどな......もしかしてアキラちゃん太った?」
「バカ言うなよ......この衣装、もう何回作り直せばいいんだよ......」
僕はあまり良くない家庭に生まれた......父と母はいつも喧嘩ばかりしていて......そして僕自身にも手を上げてきた
僕はいつも両親に叱られていた。子供の頃からコスプレ衣装や女装に興味があったから......
彼らはいつも僕に、もっと普通の男らしく振る舞えと言い続けた......でも僕には、そうしたいという気持ちが少しもなかった
中学に上がると......クラスメイトからはいつも変わり者扱いされた......男子たちのような激しい遊びは好きになれず、女子たちと遊ぼうとしたけれど、女子たちの方が男子よりずっと激しかった......
だから僕は、誰とも馴染むことができなかった
「それで......真百合んの衣装は?ちゃんと着られる?」
「一応着られるけど......胸のところがきつくて......」
「もう......この肉塊が!」
「ちょっとサガっち!人の胸を勝手に触らないでよ!」
あの頃から僕は、ずっと一人だった......
一人で喋り......一人でメイクをし......一人で絵を描く......誰も僕のことなんて気にかけてくれなかった......
「ねえ......同人誌の原稿ってどこまで進んでる?今年の冬コミ、サガっちも売り子する予定だよね?」
「うん......“ラホリ”の同人誌なんだ......百合ジャンルの。今はもうラフ画は終わってて、あとは線画と仕上げだけ......」
「へえ......ヘレナミスティックの同人誌か......私たちのチームもだいぶSNSで話題になってきたもんね」
そう......中学二年生になった頃、僕は同人誌の世界に興味を持ち始めた......それから死に物狂いで絵の練習をした......
それでもやはり......オタクだという理由で、あの連中からいじめられ続けた......当時の僕は何も言い返せなかった。反抗すれば両親が困った立場に置かれるかもしれないと思ったから......そしてもし彼らが困った状況になれば......僕はまた暴力を振るわれることになるだろうと分かっていたから......
「あ、そうそう......昨日、シャーロット先輩がストーカー相手をあんなにこき下ろしたおかげで、フォロワーが一晩の配信だけで三万人になったんだって」
「まあね......アキくんまで“shit!”って叫んでたくらいだったからね......」
中学二年生の夏を迎える頃、僕は初めての同人誌をコミケで完売させることができた......
自分の夢を追いかけ、それを実現できたという感覚......あの時、僕は心の底から期待していた。この場所なら、みんなから変わり者と見られてきた自分でも受け入れてもらえるかもしれないと......
その年の冬コミを迎えた時......僕は決めた......コスプレに挑戦してみようと......
からかわれるかもしれないと、心の中では覚悟していた......でも実際には、まったく逆のことが起こった......
「サガっちもフォロワー増えてるよね......今もう一万人くらいいるんじゃない?」
「10,888人だよ......」
「あ、そうそうそれ......ホラーゲームでも一つやってみたら?」
「黙ってよ真百合ん、ホラーゲームやるくらいなら死んだ方がマシだから」
僕は、僕にとても優しく接してくれる人たちに出会った......彼らはもう、僕のことを変わり者だとは思わなかった......
初対面なのに、まるで昔からの友達のように話しかけてくれた。好きなアニメやゲームの話をして、あちこちに一緒に出かけて......そこには悪意なんて何一つなかった......
だから僕は、もうどうでもよくなった......嫌なことなんて全部、気にしないことにした
両親に暴力を振るわれても......僕はただ薄く笑って、傷の手当てをしに行った
友達に靴に画鋲を仕込まれても......僕はただそのまま靴を履いて、その痛みを気にしないことにした
からかわれたら......ただイヤホンをつけて、音楽を大音量で流せばよかった......
[ねえ君......これ、自分で描いたの?]
[あ......うん......よかったら一冊いかがですか?]
[買うよ!......私も同人誌の売り子やってるんだ......]
[そ......そうなんですか?......えっと......よろしくお願いします......骨川アキラです]
[菅原サメだよ......この白髪、染めてるわけじゃないからね......生まれつきなんだ]
[ああ......そうなんですね......]
僕がサガっちに出会ったのは、中学三年生の夏コミでのことだった......その後、真百合んとも出会った......
僕の家庭の方は、次第に喧嘩が絶えなくなっていった......そして最終的には、すべての事情を知っていた叔母が、僕を引き取って育ててくれることになった
暮らしはどうかと聞かれれば......叔母と一緒に暮らすようになってからの生活は、まさに地上の楽園だと断言できる
叔母は、僕がどんな人間なのか、ずっと前から理解してくれていた......そして僕を全力で応援し、僕がなりたい自分を心から受け入れてくれた......
「それで......ヘレナミスティックもついに四人揃ったんだね......」
「四人?......何言ってるのアキラちゃん......ヘレナミスティックの初期メンバーは五人のはずだよ......」
「五人......じゃああと一人だけか......」
「あぁ......でもアキくん、まだ五人目を見つけられてないんだよね......真百合ん、興味ある?」
「ないよ......衣装の裁縫だけで死にそうなのに......週三、四回配信なんてやらされたら死んじゃう......」
僕が出会った人たちは......みんな、僕が好きなものを心から好きでいてくれた......
僕を疎ましく思わない......僕を押しのけたり追い払ったりしない......
だからこそ......僕はあの時、あれほど必死にハルくんを守ろうとしたんだと思う......「男」である僕が「女子」に飛びかかって殴りかかったのは、あの連中がハルくんをからかい、見下したからだった......退学になるかもしれないなんて、そんなことは考えもしなかった......
それはまるで、過去の自分――「好きなものを好きだと言う気持ち」を守れなかったあの頃の自分を、もう一度目の前にしているようだった......
「こんにちはー子供たち......衣装、どこまで進んだ?」
「まあ順調ですよ......あ......お菓子ありがとうございます、叔母さん......」
「もう......それで、真百合ちゃんとサメちゃんは今日ここに泊まるのよね?」
「はーい......」
「はは......夜更かししすぎないでね......明日、学校遅刻しちゃうわよ」
「はーい......」
そして今、僕にはチームが......いや......いい友達がいる......いい叔母がいる......いい先輩たちがいる......いい人生がある......
だったら、蟻や白蟻みたいな罵倒の言葉なんて、どうでもいいじゃないか......そうだろう?