ホームある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。オンラインコンサルティング業務
← 前の話目次次の話 →
AIで聴く

ログインすると、この話をAIの声で聴けます。

オンラインコンサルティング業務

 
 006

「これで完了......」

 マウスをクリックすると、人生相談サイトが画面に表示された。専用のプログラムで荒らしたちを弾き出す設定も済んでいる。

「あとは待つだけだな......」

 実のところ、これまでにも何人か相談に乗ったことはある......とはいえ、そう頻繁でもないが。

 昨日、菅原との打ち合わせから帰ってきた後、新たに応募した会社すべてから不採用メールが届いた......本当に気が狂いそうだ。

 俺はそれらの不採用通知を眺めながら考えた。

「今ここでビルから飛び降りたら、楽になれるかな......」

 でも、やはり同じだ......俺にはできない。

 一人だったらよかったのに......そうしたら余計な生活の重荷を背負わずに済むのに。

「待て!何を考えてるんだ!あれは俺たちの妹だぞ!......自分で生きていけるようになるまで、ちゃんと面倒を見ないといけないだろ......」

「でも考えてみれば......どうせ大学に入ったら一人暮らしをするんだろうし......」

 それでも生活費は俺が出すことになるんだが......

「...............これまでの人生、ろくなことしかなかった......生きてていいことなんて、一つもないのか」

 両親が誰かも知らない......育ててくれたおじさんもおばさんも死んでしまった......面倒を見てくれる親戚も誰もいなくて、ずっと一人でやってきた......

 あげく......誰かが妹を押しつけていなくなった......学校に通いながら働きながら......自分と妹の学費を必死に稼いできた。

「なんで今まで死のうとしなかったんだろう......」

 でも、そうしたら妹には頼れる家族が誰もいなくなる......

 考えれば考えるほど気が滅入る......もういい、どうにでもなれ。そんなことを考えていたとき、相談の申し込みが一件入った......確認してみると、荒らしではなさそうだ。

「えっと......こんにちは。僕、女子校に通ってる男子生徒なんですけど......女の子と話すのが苦手で......相談に来ました......」

 それだけか......うーん......返事してみよう。

「了解......直接会えないか?......対面の方が、いろいろと話しやすいと思うんだけど......」

 送信した。コーヒーを足しに行こうとしたら、もう返信が来ていた。

「じゃあ......今日の放課後......ジリンカフェで会いましょう」

 こいつ、宮嶋の生徒か......世間は狭いな。

 また女子校の前で変質者扱いされても困るので、先にカフェで待つことにした。

 店内を見回すと......カップルばかりで埋まっている。

「俺はこの人たちを眺めるだけが関の山か......」

 やがて一人の少年が店に入ってきた。左右を見渡して、俺を見つけると近づいてきた。

 照れ屋そうな少年で、黒い髪が片目にかかっていた。なぜ女の子と話せないのかは、一目見ればわかった。

「あの......アキトさんですか......」

「そうだよ......君が、悠太くんか?」

「はい......」

 俺はアイスコーヒーを頼み、彼にはアイスココアを注文した。

「君が相談したいのは......女の子と上手く話せるようになりたい、ってことだよな?」

「はい......」

「じゃあまず聞くけど......お母さんや先生みたいに、年上の女性とは話せるか?」

 異性恐怖症はこれまでも何人か見てきた。こういうタイプの人は、年上とは普通に話せるが、同い年か少し上くらいになると話せなくなることが多い。

「はい......でも同い年だとすごく緊張してしまって......」

「なるほど......女の子には近づけるけど、緊張して話せない、って感じか?」

「はい......正直、誰かと話すのも苦手で......」

「一番手っ取り早い方法は......女友達を一人作ることだよ」

「え......」

 俺は菅原に電話した。少し経って、

「もしもーし!」

「!」

「手伝ってほしいことがあるって聞いたけど......何かあった?」

「実はこの子、女の子と話すのが苦手でさ......ちょっと助けてやってくれないか?」

「え......あれ......同じクラスの......悠太くんだよね?」

「あ......え......そ......そうだけど......」

 症状はかなり重そうだ......

「なるほどね......悠太くんって、女の子に慣れてないというより、どう接すればいいかわからないんだと思う......男子校から来たんだっけ?......」

 悠太がうなずいた。

「あ......女の子と男の子への接し方って、違うんだね......」

「そうなの......多分悠太くんは、女の子が何を考えてるかわからなくて緊張するんだと思う......少しずつ練習していけば、自信もついてくるんじゃないかな」

「な......なるほど......」

 菅原は手を差し出して悠太と握手した。

「じゃあ今日から......友達ね」

「と......友達......そうなの......」

 悠太の目に涙が浮かんだ......本当に、女の子に友達になろうと言われただけで泣くのか、こいつ。

「うん!わたしが女の子と話す練習に付き合ってあげる......」

 優しくて、愛らしい......それが菅原サメという人間だ。

 思えばそれが、俺が酔った勢いで迷いもなく告白した理由なのかもしれない......

「菅原......一つ頼みがあるんだけど」

「何ですか?」

「悠太くんの問題を解決したのが俺じゃなくて菅原だったんだから......料金は半額にするよ」

 言い終わると悠太が立ち上がった。

「はい......じゃ......じゃあ......先に失礼します......あの......明日また会いましょう、菅原さん......」

「うん!また明日ね」

「料金ですか......」

 彼女がすかさずこちらを向いた......俺はサイトを開いて見せた。相談している間に、さらに三件の申し込みが入っていた。

「人生相談......25歳の男による......サイト名がダサすぎますよ......」

「知らないよ......SNSをあなたたちみたいに使いこなしてるわけじゃないし......」

「つまり......人に相談に乗って......お金を稼いでるんですか?」

「まあそういうことだよ......どこも雇ってくれないんだから仕方ないだろ......」

 彼女は向かいの席に座った。

「アキトさんが連絡してくれたモデル制作の人と話したんですけど......きれいなモデルにするなら、制作費が二十万円くらいかかるって言ってました」

「......いいモデルにしたいんだな」

 彼女がうなずいた......俺が知る限り、モデルが良ければ良いほど注目を集めやすくなる......だからこんな高い予算を組んだのだ。

「結構かかるな......でも大丈夫......二人で稼いでいけば......二ヶ月あれば集められるよ......」

「二ヶ月ですか!でもすごく大きな金額ですよ」

「そうだな......」

 銀行アプリの通知音が鳴った......俺は画面を見せた。

「五千円!」

「そう......相談料は一回一万円。毎日一人ずつ一万円なら......一ヶ月もかからずに二十万円になる」

「二ヶ月っていうのは、悠太くんみたいに半額になるお客さんもいるからってことですね......」

「その通り......」

 彼女は真剣に電卓を叩き始めた......かなりわくわくしている様子だ。

「菅原......一つお願いがあるんだけど......」

「何ですか?」

「バイトを増やして収入を足してくれないか......計画を少しでも早く進めるために」
シェア
← 前の話
業務について話し合うための会議を予定する
次の話 →
兄と妹の間の、次第に縮まっていく距離。
ある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。作者:SakuSaku
目次を見る
✍️
まだ感想がありません
あなたの一言が、作者の次の一話につながります。
最初の感想を書いてみませんか?
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません
ホームある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。オンラインコンサルティング業務
← 前の話目次次の話 →

オンラインコンサルティング業務

 
 006

「これで完了......」

 マウスをクリックすると、人生相談サイトが画面に表示された。専用のプログラムで荒らしたちを弾き出す設定も済んでいる。

「あとは待つだけだな......」

 実のところ、これまでにも何人か相談に乗ったことはある......とはいえ、そう頻繁でもないが。

 昨日、菅原との打ち合わせから帰ってきた後、新たに応募した会社すべてから不採用メールが届いた......本当に気が狂いそうだ。

 俺はそれらの不採用通知を眺めながら考えた。

「今ここでビルから飛び降りたら、楽になれるかな......」

 でも、やはり同じだ......俺にはできない。

 一人だったらよかったのに......そうしたら余計な生活の重荷を背負わずに済むのに。

「待て!何を考えてるんだ!あれは俺たちの妹だぞ!......自分で生きていけるようになるまで、ちゃんと面倒を見ないといけないだろ......」

「でも考えてみれば......どうせ大学に入ったら一人暮らしをするんだろうし......」

 それでも生活費は俺が出すことになるんだが......

「...............これまでの人生、ろくなことしかなかった......生きてていいことなんて、一つもないのか」

 両親が誰かも知らない......育ててくれたおじさんもおばさんも死んでしまった......面倒を見てくれる親戚も誰もいなくて、ずっと一人でやってきた......

 あげく......誰かが妹を押しつけていなくなった......学校に通いながら働きながら......自分と妹の学費を必死に稼いできた。

「なんで今まで死のうとしなかったんだろう......」

 でも、そうしたら妹には頼れる家族が誰もいなくなる......

 考えれば考えるほど気が滅入る......もういい、どうにでもなれ。そんなことを考えていたとき、相談の申し込みが一件入った......確認してみると、荒らしではなさそうだ。

「えっと......こんにちは。僕、女子校に通ってる男子生徒なんですけど......女の子と話すのが苦手で......相談に来ました......」

 それだけか......うーん......返事してみよう。

「了解......直接会えないか?......対面の方が、いろいろと話しやすいと思うんだけど......」

 送信した。コーヒーを足しに行こうとしたら、もう返信が来ていた。

「じゃあ......今日の放課後......ジリンカフェで会いましょう」

 こいつ、宮嶋の生徒か......世間は狭いな。

 また女子校の前で変質者扱いされても困るので、先にカフェで待つことにした。

 店内を見回すと......カップルばかりで埋まっている。

「俺はこの人たちを眺めるだけが関の山か......」

 やがて一人の少年が店に入ってきた。左右を見渡して、俺を見つけると近づいてきた。

 照れ屋そうな少年で、黒い髪が片目にかかっていた。なぜ女の子と話せないのかは、一目見ればわかった。

「あの......アキトさんですか......」

「そうだよ......君が、悠太くんか?」

「はい......」

 俺はアイスコーヒーを頼み、彼にはアイスココアを注文した。

「君が相談したいのは......女の子と上手く話せるようになりたい、ってことだよな?」

「はい......」

「じゃあまず聞くけど......お母さんや先生みたいに、年上の女性とは話せるか?」

 異性恐怖症はこれまでも何人か見てきた。こういうタイプの人は、年上とは普通に話せるが、同い年か少し上くらいになると話せなくなることが多い。

「はい......でも同い年だとすごく緊張してしまって......」

「なるほど......女の子には近づけるけど、緊張して話せない、って感じか?」

「はい......正直、誰かと話すのも苦手で......」

「一番手っ取り早い方法は......女友達を一人作ることだよ」

「え......」

 俺は菅原に電話した。少し経って、

「もしもーし!」

「!」

「手伝ってほしいことがあるって聞いたけど......何かあった?」

「実はこの子、女の子と話すのが苦手でさ......ちょっと助けてやってくれないか?」

「え......あれ......同じクラスの......悠太くんだよね?」

「あ......え......そ......そうだけど......」

 症状はかなり重そうだ......

「なるほどね......悠太くんって、女の子に慣れてないというより、どう接すればいいかわからないんだと思う......男子校から来たんだっけ?......」

 悠太がうなずいた。

「あ......女の子と男の子への接し方って、違うんだね......」

「そうなの......多分悠太くんは、女の子が何を考えてるかわからなくて緊張するんだと思う......少しずつ練習していけば、自信もついてくるんじゃないかな」

「な......なるほど......」

 菅原は手を差し出して悠太と握手した。

「じゃあ今日から......友達ね」

「と......友達......そうなの......」

 悠太の目に涙が浮かんだ......本当に、女の子に友達になろうと言われただけで泣くのか、こいつ。

「うん!わたしが女の子と話す練習に付き合ってあげる......」

 優しくて、愛らしい......それが菅原サメという人間だ。

 思えばそれが、俺が酔った勢いで迷いもなく告白した理由なのかもしれない......

「菅原......一つ頼みがあるんだけど」

「何ですか?」

「悠太くんの問題を解決したのが俺じゃなくて菅原だったんだから......料金は半額にするよ」

 言い終わると悠太が立ち上がった。

「はい......じゃ......じゃあ......先に失礼します......あの......明日また会いましょう、菅原さん......」

「うん!また明日ね」

「料金ですか......」

 彼女がすかさずこちらを向いた......俺はサイトを開いて見せた。相談している間に、さらに三件の申し込みが入っていた。

「人生相談......25歳の男による......サイト名がダサすぎますよ......」

「知らないよ......SNSをあなたたちみたいに使いこなしてるわけじゃないし......」

「つまり......人に相談に乗って......お金を稼いでるんですか?」

「まあそういうことだよ......どこも雇ってくれないんだから仕方ないだろ......」

 彼女は向かいの席に座った。

「アキトさんが連絡してくれたモデル制作の人と話したんですけど......きれいなモデルにするなら、制作費が二十万円くらいかかるって言ってました」

「......いいモデルにしたいんだな」

 彼女がうなずいた......俺が知る限り、モデルが良ければ良いほど注目を集めやすくなる......だからこんな高い予算を組んだのだ。

「結構かかるな......でも大丈夫......二人で稼いでいけば......二ヶ月あれば集められるよ......」

「二ヶ月ですか!でもすごく大きな金額ですよ」

「そうだな......」

 銀行アプリの通知音が鳴った......俺は画面を見せた。

「五千円!」

「そう......相談料は一回一万円。毎日一人ずつ一万円なら......一ヶ月もかからずに二十万円になる」

「二ヶ月っていうのは、悠太くんみたいに半額になるお客さんもいるからってことですね......」

「その通り......」

 彼女は真剣に電卓を叩き始めた......かなりわくわくしている様子だ。

「菅原......一つお願いがあるんだけど......」

「何ですか?」

「バイトを増やして収入を足してくれないか......計画を少しでも早く進めるために」
シェア
← 前の話
業務について話し合うための会議を予定する
次の話 →
兄と妹の間の、次第に縮まっていく距離。
ある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。作者:SakuSaku
目次
✍️
まだ感想がありません
あなたの一言が、作者の次の一話につながります。
最初の感想を書いてみませんか?
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません