オンラインコンサルティング業務
006
「これで完了......」
マウスをクリックすると、人生相談サイトが画面に表示された。専用のプログラムで荒らしたちを弾き出す設定も済んでいる。
「あとは待つだけだな......」
実のところ、これまでにも何人か相談に乗ったことはある......とはいえ、そう頻繁でもないが。
昨日、菅原との打ち合わせから帰ってきた後、新たに応募した会社すべてから不採用メールが届いた......本当に気が狂いそうだ。
俺はそれらの不採用通知を眺めながら考えた。
「今ここでビルから飛び降りたら、楽になれるかな......」
でも、やはり同じだ......俺にはできない。
一人だったらよかったのに......そうしたら余計な生活の重荷を背負わずに済むのに。
「待て!何を考えてるんだ!あれは俺たちの妹だぞ!......自分で生きていけるようになるまで、ちゃんと面倒を見ないといけないだろ......」
「でも考えてみれば......どうせ大学に入ったら一人暮らしをするんだろうし......」
それでも生活費は俺が出すことになるんだが......
「...............これまでの人生、ろくなことしかなかった......生きてていいことなんて、一つもないのか」
両親が誰かも知らない......育ててくれたおじさんもおばさんも死んでしまった......面倒を見てくれる親戚も誰もいなくて、ずっと一人でやってきた......
あげく......誰かが妹を押しつけていなくなった......学校に通いながら働きながら......自分と妹の学費を必死に稼いできた。
「なんで今まで死のうとしなかったんだろう......」
でも、そうしたら妹には頼れる家族が誰もいなくなる......
考えれば考えるほど気が滅入る......もういい、どうにでもなれ。そんなことを考えていたとき、相談の申し込みが一件入った......確認してみると、荒らしではなさそうだ。
「えっと......こんにちは。僕、女子校に通ってる男子生徒なんですけど......女の子と話すのが苦手で......相談に来ました......」
それだけか......うーん......返事してみよう。
「了解......直接会えないか?......対面の方が、いろいろと話しやすいと思うんだけど......」
送信した。コーヒーを足しに行こうとしたら、もう返信が来ていた。
「じゃあ......今日の放課後......ジリンカフェで会いましょう」
こいつ、宮嶋の生徒か......世間は狭いな。
また女子校の前で変質者扱いされても困るので、先にカフェで待つことにした。
店内を見回すと......カップルばかりで埋まっている。
「俺はこの人たちを眺めるだけが関の山か......」
やがて一人の少年が店に入ってきた。左右を見渡して、俺を見つけると近づいてきた。
照れ屋そうな少年で、黒い髪が片目にかかっていた。なぜ女の子と話せないのかは、一目見ればわかった。
「あの......アキトさんですか......」
「そうだよ......君が、悠太くんか?」
「はい......」
俺はアイスコーヒーを頼み、彼にはアイスココアを注文した。
「君が相談したいのは......女の子と上手く話せるようになりたい、ってことだよな?」
「はい......」
「じゃあまず聞くけど......お母さんや先生みたいに、年上の女性とは話せるか?」
異性恐怖症はこれまでも何人か見てきた。こういうタイプの人は、年上とは普通に話せるが、同い年か少し上くらいになると話せなくなることが多い。
「はい......でも同い年だとすごく緊張してしまって......」
「なるほど......女の子には近づけるけど、緊張して話せない、って感じか?」
「はい......正直、誰かと話すのも苦手で......」
「一番手っ取り早い方法は......女友達を一人作ることだよ」
「え......」
俺は菅原に電話した。少し経って、
「もしもーし!」
「!」
「手伝ってほしいことがあるって聞いたけど......何かあった?」
「実はこの子、女の子と話すのが苦手でさ......ちょっと助けてやってくれないか?」
「え......あれ......同じクラスの......悠太くんだよね?」
「あ......え......そ......そうだけど......」
症状はかなり重そうだ......
「なるほどね......悠太くんって、女の子に慣れてないというより、どう接すればいいかわからないんだと思う......男子校から来たんだっけ?......」
悠太がうなずいた。
「あ......女の子と男の子への接し方って、違うんだね......」
「そうなの......多分悠太くんは、女の子が何を考えてるかわからなくて緊張するんだと思う......少しずつ練習していけば、自信もついてくるんじゃないかな」
「な......なるほど......」
菅原は手を差し出して悠太と握手した。
「じゃあ今日から......友達ね」
「と......友達......そうなの......」
悠太の目に涙が浮かんだ......本当に、女の子に友達になろうと言われただけで泣くのか、こいつ。
「うん!わたしが女の子と話す練習に付き合ってあげる......」
優しくて、愛らしい......それが菅原サメという人間だ。
思えばそれが、俺が酔った勢いで迷いもなく告白した理由なのかもしれない......
「菅原......一つ頼みがあるんだけど」
「何ですか?」
「悠太くんの問題を解決したのが俺じゃなくて菅原だったんだから......料金は半額にするよ」
言い終わると悠太が立ち上がった。
「はい......じゃ......じゃあ......先に失礼します......あの......明日また会いましょう、菅原さん......」
「うん!また明日ね」
「料金ですか......」
彼女がすかさずこちらを向いた......俺はサイトを開いて見せた。相談している間に、さらに三件の申し込みが入っていた。
「人生相談......25歳の男による......サイト名がダサすぎますよ......」
「知らないよ......SNSをあなたたちみたいに使いこなしてるわけじゃないし......」
「つまり......人に相談に乗って......お金を稼いでるんですか?」
「まあそういうことだよ......どこも雇ってくれないんだから仕方ないだろ......」
彼女は向かいの席に座った。
「アキトさんが連絡してくれたモデル制作の人と話したんですけど......きれいなモデルにするなら、制作費が二十万円くらいかかるって言ってました」
「......いいモデルにしたいんだな」
彼女がうなずいた......俺が知る限り、モデルが良ければ良いほど注目を集めやすくなる......だからこんな高い予算を組んだのだ。
「結構かかるな......でも大丈夫......二人で稼いでいけば......二ヶ月あれば集められるよ......」
「二ヶ月ですか!でもすごく大きな金額ですよ」
「そうだな......」
銀行アプリの通知音が鳴った......俺は画面を見せた。
「五千円!」
「そう......相談料は一回一万円。毎日一人ずつ一万円なら......一ヶ月もかからずに二十万円になる」
「二ヶ月っていうのは、悠太くんみたいに半額になるお客さんもいるからってことですね......」
「その通り......」
彼女は真剣に電卓を叩き始めた......かなりわくわくしている様子だ。
「菅原......一つお願いがあるんだけど......」
「何ですか?」
「バイトを増やして収入を足してくれないか......計画を少しでも早く進めるために」