業務について話し合うための会議を予定する
005
目も当てられない状態で目が覚めた......正直に言うと、昨夜何を言ったのかほとんど覚えていない。
「はあ.........」
目をこすりながら起き上がると、メールが届いていた。
『放課後、ジリンカフェで会いましょう......』
送り主は......菅原......サメ......
「誰だっけ......」
昨夜、女の子に会ったような気はぼんやりとするのだが......このメッセージを送ってきた子と同じ人物かどうかも定かじゃない。
「放課後って......今何時だ......」
時計を見ると、もう午後だった。
「......そんなに酔ってたのか、俺」
階下に降りると、食卓の上にラップをかけた朝食が置いてあった。
妹のメモには「遅起きしないでくださいね、お兄ちゃん......全部食べてね......せっかく作ったんだから」と書いてあった。
彼女はいつもこうしてメモを残す......俺とはあまり話さないから。
「.........はあ......」
朝食をレンジで温めて食べ、それからシャワーを浴びた。
俺は高校時代の制服に着替えた。
長袖シャツに紺色のニットベスト、黒いスラックス。黒いブルーライトカットメガネを額に乗せ、右耳だけピアスをつけた。
この格好をする理由は単純だ......もう一度10代に戻りたいだけ。高校時代に制服を着ていたのも俺だけだったが。
「ちょっと出てきます......」
菅原という女の子にどこの学校か聞いてみると、宮嶋私立女子高等学校と返ってきた。
「あれ......じゃあこの子、俺の後輩じゃないか......」
俺と妹も同じ学校に通っていた。同じ学校の子に会うとは思わなかった......
俺が通っていたのは普通の私立校で、ある程度裕福な家の子しか通えない学校だった。そこそこ整った環境のお嬢様学校だったが、どうやら共学から女子校に変わったらしい。さらに宮嶋私立芸能学校の分校もあり、学内アイドルグループのコンテストも開催されていた。
俺がそこに入れたのは青山という苗字のおかげだった......かつて商家として栄えた由緒ある家柄で、俺と妹は二人とも中学からここの入学枠をもらっていた。
「校門の前で待つのがいいか」
校門の前に立ってタバコに火をつけた。しばらく吸っていると、何かが「やめろ」と告げているような気がした。
しかし俺は気にしなかった......そのまま吸い続けた。
やがて下校のチャイムが鳴り......生徒たちが次々と出てきた。何人かが俺を、まるで変質者でも見るような目で見ていた。
「ここ女子校だったのを完全に忘れてた」
やがて一人の女の子が姿を現した。どこへ行っても忘れるはずのない、短い銀髪の女の子。
「おい......君、菅原か?」
「あ......えっと......」
「菅原さん、この人誰?」「あなた誰ですか?......怪しすぎるから通報しますよ......」
「えっ」
ただ声をかけただけで......通報されるのか。
彼女は慌てて俺の手を掴むと、その場からさっさと離れた。
「ごめんね!今日用事があって......じゃあね!!」
「あ......うん」
何なんだこれは......
ジリンカフェにて。
「聞いてください!......わたし、VTuberのことは他の人に隠してるんで......絶対に喋らないでくださいよ......」
「待って!俺はそんなこと言うつもりは全然ない」
昨夜何をしたのか、少しずつ思い出してきた......俺はこの子にVTuberにしてやると約束していたのだ。
しかも告白までしていた。
「それなら良かったです......はい、これ」
彼女がモバイルバッテリーを返してきた......そうか、昨夜別れるとき持って帰るのを忘れたんだった。
「......一つ聞いていいか?......なんでVTuberになりたいのか、だけど......」
「お答えできません......」
......何か事情があるんだな......まあいい......他人のプライベートには踏み込まない。
「じゃあ仕事の話をしよう......頭の中にモデルのイメージはある?キャラクターは考えてるか?」
学校へ向かう道中でYouTubeのVTuberをいくつか見てきたので、多少はわかってきた。
「もうモデルのラフは描いてあります......正面、横、後ろ、衣装の各パーツも......」
「へえ......上手いな......」
描かれていたのは、サメの着ぐるみを着た小さな女の子のキャラクターだった。青い髪に青い瞳、鋭い牙。顔立ちは本人に負けず劣らず愛らしい。設定には「サメから人間に変異したため、生活費を稼ぐためにVTuberとして人間社会で暮らしている。ゲームとお絵描きが好き」と書いてあった。
「ところで......サメモデルのVTuberって、もういるんじゃないか?」
たしかかなり有名な子がいたはずだ。
「サメモデルのVTuberは31人もいるんですよ......一人増えたって別にいいじゃないですか」
苗字がサメで、サメも好き......なかなかのギャップだ。
「サメが好きなのか......」
「好きですよ......サメってかっこいいじゃないですか......自慢するわけじゃないけど、世に出たサメ映画は全部観てますから......」
「ほお......」
成田良悟先生(『デュラララ‼』『Fate/strange Fake』著者)かよこの子......もし二人が会ったらサメ映画トークで盛り上がること間違いなしだな。
「じゃあ......モデルのデザインは決まった......絵を描くのは君に任せよう......」
「わかりました......」
「次はモデルを動かせるようにする人......業界に知り合いが多少いるから......連絡してみる。安心してもらえるように、なるべく女性の人に頼んでみるよ......」
「ありがとうございます......」
「機材については......ウェブカメラ、モニター二枚、高スペックのPC......合わせると五十万円は超えるな......」
彼女はまた暗い顔になった......
「お金のことは俺が何とかする......」
「い......いいんですか!」
「VTuberとして活動を始めたら......自分を売り込んで有名になれ......そうしたら、その時でいいから返してくれ......」
「......頑張ります!......」
「よし!」
「ここまでしてくれて......本当にありがとう」
「まあ......約束したからには......やり遂げないとな......」
彼女はしばらく黙っていた......それからぽつりと言った。
「青山......さん......」
「アキトでいいよ」
「じゃあ、アキトさん......昨夜のこと......告白してくれたじゃないですか......」
タバコが手から落ちそうになった......言い間違いだったと言い訳することもできる......でも一度言ってしまった以上、もうどうにもならない。
「その......すぐに付き合うのはちょっと早い気がするから......とりあえず......お互いのことをもっと知ってからでいいですか......」
様子を見るってことか......まるで婚約みたいだな。
「いいよ......俺は全然構わない......」
「そうですか......」
そして彼女は微笑んだ......花が咲いたように、美しい笑顔だった。