午後5時 スターズ
040
「よーみんな......」
[こんにちはです、師匠!!!]
[来たーーーーっ!!!!]
[やほーーーー!!!!]
[ついにきたーーーーっ]
[有名人登場ーーーっ]
[今やすごく有名になったよねえ......]
[ははっ]
[wwwwwwwwww]
「まあ......ずっと話してる通りさ、俺って人脈が広くて、作家業界から芸能界までいろいろ知り合いがいるじゃないですか......」
「でね......俺が関わってる広告代理店の仕事があって......そこから出演の話が来たんだよ。ある広告のメインで......」
[ああ......あのスマホゲームのCMのやつ?]
[ツイッターで見たことある......]
[そうそう、YouTubeの広告でも見たよ]
[見たことある]
[なるほどねえ......]
「俺はね、脚本を手伝ったり、プロット考えたり、撮影どうするか、演技どうするかとか......その日は普通に打ち合わせしてたんだよ。そしたら......クライアント側の人がいきなり俺を指差して、この役はあなたにぴったりだ、あなたみたいな人がいい、顔もいい......って言い出して」
「俺は......えっと、スタッフ側なんですけど......裏方です......って答えたんだよ」
『あなたって......この役にすごく合ってるんですよね......』
『えっと......私を使うんですか?』
『使います......エキストラとして』
[これだよ!! スター力......]
[よっぽど気に入られたんだね]
[アベンタドールさん、100円ドネート wwwwwwwwwwww]
『いや......私は裏方なので......ちょっと難しいかなと......』
『あなたが出るべきですよ......顔がすごく合ってる』
「それでカメラテストをすることになったんだけど......面白いのがさ、自分が所属してる会社でカメラテストをすることになって......俺が所属してる代理店のトップって、長年の知り合いの先輩でさ......広告とかスポンサー関係もその人がずっと助けてくれてて......」
「YouTubeやる前から、その会社の裏方の仕事を手伝い続けてたんだよね......そんな俺がカメラの前に出ることになるなんて......」
[おお......社長に感謝しないとですね......]
[仲いいんでしょうね......]
[俺もこの業界で働きたいなあ......そういう人に出会ってみたい......]
[まあ......師匠、顔は悪くないですからね......]
[笑えるwww]
「プロットはね......仕事で疲れ果てた男のところに、クライアントが直接打ち合わせに来るっていう感じで......」
『疲れた顔をしてみてください......』
「俺がちょっと疲れた表情をすると......」
『もっと疲れて......』
「......」
『残業なしで定時上がりした感じで......』
「定時上がりの顔ってどうすればいいですか......って聞いたら、椅子に背もたれて、目を細めて、ちょっとあくびして、首をちょっと回して......って教えてくれて」
『これ......自分でもあくびしてましたよね......』
『定時で上がった人の顔......あなた、定時で上がったことありますか?』
『六時まで働いてますね......』
『じゃあ......一時間だけ早く退勤したことにして......』
[wwwwwwwwwwwwwwww]
[そりゃそうだ、定時上がりの顔なんてどうすればいいんだよ......wwwwwwwwwwwwwwwwwwww]
[社内爆笑しそう......]
『じゃあどうすればいいんですか!?』
『じゃあ見せますね......これがノートパソコンとして......タイピングして、Enterを退屈そうに押して、パソコンを閉じる......ああ、そんな感じで......』
「で俺がそのとおりにやって......ついでに伸びもしてみたら......」
『アキさん......オフィスワーカーは伸びしませんよ......』
『え......定時上がりって伸びしないんですか? ブラック企業で働いてたことありますんで......』
『見栄えが悪くて......』
『え......』
『オフィスの人たちってこれくらいなんですよ......』
「そしたらあくびしながら手で口を覆って、首をちょっと傾けて......」
[何それ wwwww]
[ちょっと待って、俺も伸びするんだけど......]
[30秒のCMなのに、そこまで細かくするの......]
「でね......俺が一番好きな場面があって。代理店の社長、俺の先輩なんだけど......あなたが自分で出演すべきですよって言い出して......」
「編集の人も、スタジオの人も、撮影スタッフも全員賛成してくれてさ......俺も調子に乗って......」
『そうですよ......あなたが出た方が絶対いいと思いますよ......』
「そしたら先輩が」
『バカな......私がそんなにうまく演じられるわけないでしょ......』
[バカな......wwwwwwwwwwww]
[出たーーーーっ!......隠れた力を持ちながら素性を隠す主人公のアニメ的なセリフ......]
[かっこいいアニメの主人公セリフランキングTOP10 wwwwwwwwwwwwwww]
『ほらね!! あなたが出るべきだって!』
『そうですよ......定時上がりの人の演技、すごく上手かったじゃないですか......』
「そこが終わったら仕事の打ち合わせが続いて......でクライアントが俺に演技の学校へ行けって言い出して......」
[え?......たった数十秒のCMのために演技の勉強まで?]
[マジか......]
[CMの撮影だけでそこまでするの......]
「俺は先輩に......演技の学校は行かないです、その予算で焼き肉食いに行きましょうって言ったんだけど......でもクライアントは、このシーンであなたが主役なんだって言って......」
『CMは何秒ですか......』
『30秒......』
『セリフは何行ですか......』
『2行』
『私が主役なんですか?』
『主役ですよ......いや、マジで主役なんですよ......』
『それで?』