悪戯っ子な後輩と声なき少女
032
「写真たくさんありますね......」
「僕は昔を懐かしむタイプなんだよ」
久志グループのおじさんたちと撮った写真、西尾たちを福岡から脱出させた時の写真、文化祭の写真、それに十年前の雰囲気そのままの写真がたくさんあった。
「へえ......MP3プレーヤーもあるんですね。しかも有線イヤホン付き」
そう言い終わるとすぐに彼女はイヤホンをつけて音楽を聴き始めた。
「まだ使えるじゃん......」
「わあ! ゲームの曲がいっぱいですね......なんというか......曲ひとつひとつが亜紀くんらしさ全開ですね......」
実はその曲は、僕が星野にアプローチし始めた頃、彼女がアップロードしてくれたものだった。
「古いものがたくさんありますね。半透明のコントローラーもありますし、これもらいますね」
「使えるかどうかもわからないぞ、それにPS4用のコントローラーだし」
「腕時計もありますし......折りたたみ携帯! すごく古いですね!!」
聞けば聞くほどくすぐったい気分になる......
「あれ......でも電源つかないですね......残念です」
電源がつかなくてよかった......
「おお......これは見たことないですね......」
「もういいよ、好きなの持ってっていいから。僕は先に仕事するね」
僕は彼女の頭を軽く撫でてから、また仕事に戻った。
ちょうどその時、現場で相談したいという客が来たので、僕は外出の準備をした。
「お客さんですか?」
「うん......行ってくるね」
僕は彼女の頬にキスをして手を振り、家を出た。
「材料も買ってきてくださいね......」
もう一方、街のある公園の前あたり――
ルリはその辺りを散歩しながら、いつもの日と同じように自分のブログに写真を投稿していた......
「はぁ......」
しばらく歩くと、近くの東屋で少し休憩した......今日は平日だったので、公園を歩く人はあまりいなかった。
「都会には......こんな綺麗な場所がたくさんあるんですね......」
実家と比べると......かなり違う。
「誰も邪魔してこないし......誰も詮索してこない......」
彼女は中学時代を思い出していた。当時の彼女はまだ地味な顔立ちの、田舎の学校の生徒だった......その頃の彼女は、誰からも見向きもされない女の子と何ら変わらなかった。
高校に上がると、彼女はこっそり宮島高校の受験を受け、合格した。ここに通うことを家族に説得するのに、かなりの時間がかかった。
「あの大人たちうるさすぎ」
彼女は東屋の横にある自動販売機で炭酸飲料を買い、一気に飲み干した。
「こんなことなら家出したほうがマシだったかも......」
彼女は周りを見渡し、退屈を感じたので、鞄を掴んで急いで歩き出した。前から歩いてくる人に気づかないまま。
「きゃっ!」
「!!!!......」
本能的に誰かとぶつかったと分かり、彼女はすぐに相手を支えようと駆け寄った。
「すみません! 私が悪いんです! 怪我はないですか!?」
「あ......あ......えっと......」
ぶつかられたその人は、まだ驚いた様子で、変な仕草をしていた。
「あれ......あなたって、もしかして」
ルリはその女性を支え、東屋の中に座らせた。
「あ......あ......」
彼女は自分の喉を指差し、首を横に振った。ルリはそれで、この人は話せないのだと理解した。
その人はただうつむいていた......たぶん「大丈夫です」という言葉を口に出せないからだろう。
でもルリは、その耳の聞こえない女性を驚かせるようなことをした。
「こんに......ちは......です......私の名前は......ルリ......カワルリ......コです......よろしく......お願い......します......」
彼女は目を見開いた、まるで珍しいものを見るように。ルリが手話を使えたからだ。その人は微笑みを返し、同じように手話で、とても幸せそうな様子で自己紹介をした。
「こんに......ちは......こちら......こそ......私の名前は......エノ......モト......ユ......リ......カです......よろしく......お願い......します......」
「こちらこそです!」
「.........ふふ......」
二人はお互いに微笑み合った。
榎本ユリカは、なかなか綺麗な顔立ちの女性だった......白と黒の夏服を着ていて、上品で洗練された雰囲気があった。
黒髪のポニーテールだが、髪には白いメッシュがたくさん入っている。両側に、怒った顔、悲しい顔、嬉しい顔、照れた顔の絵文字風のヘアピンをつけていた。表情はどちらかというと落ち着いた印象だった。
「その......手話......知ってる......んですか?」
「知ってます......手話を......習いたいと思ったのは......中学の頃......アニメの......『聲...の...形....』を......見たから......です......」
「へえ......」
彼女はスマホを開き、ルリに中学時代にそのアニメのポスターと一緒に撮った写真を見せた。
それからメモ帳アプリを開き、ルリに読んでもらうためのメッセージを書いた。
「すごく楽しかったです!」
「......書くんですね......」
「手話......知らない人......多いので......代わりに書くんです......」
「なるほど......」
こんな時、話し相手が見つかるのも悪くない。
「あの......私たち......カフェに......行って......お話し......ませんか?」
「あ......いいですよ......行きましょう......」
そうして二人は、おしゃべりをしながら歩いていった......