第弐話仲間募集中
「討伐団団員募集中!!」
そう書かれた看板を持ち、九十九迅は城下町の通りに立っていた。
――しかし。
誰一人として立ち止まらない。
通行人はチラッと看板を見る。
その後、迅の腰に差してある木の棍棒を見る。
そして何事もなかったかのように通り過ぎていった。
「............」
迅は乾いた笑みを浮かべる。
「おかしいな。未来の武神様だぞ?」
風だけが返事をした。
「やぁ、迅さん」
すると八百屋の方から声が飛ぶ。
振り向くと、八百屋の店主の娘――八百桃香が立っていた。
「なんだいそれ。仲間募集?」
「まぁな......」
迅は看板を少し上げる。
「見ての通り絶賛募集中だ」
「全然人来てないじゃないか」
「やめろ。傷付く」
桃香は迅の腰を見た。
「ていうかさ。その木の棒どうにかなんないの?」
「木の棒じゃねぇ。棍棒だ」
「いや変わんないだろ」
「違ぇよ。響きが強そうだろ」
桃香は呆れたようにため息を吐く。
「普通、討伐団なら刀くらい持つもんじゃないのかい?」
「欲しいよ? そりゃあな?」
迅は腕を組む。
「だが金がねぇ」
「威張ることじゃないだろ......」
「討伐団始めた理由も金欲しいからだしな!」
「最低すぎる」
迅はなぜか胸を張った。
「つまり今の俺は未来への投資段階ってわけだ」
「一文無しって言え」
桃香は再び棍棒を見る。
「でも本当は刀欲しいんだろ?」
「まぁ欲しいけどな」
迅は腰の棍棒を軽く叩く。
「今はこれで充分だ。駆け出しが背伸びしても仕方ねぇし」
「......ふぅん」
桃香は少しだけ優しい目をした。
「ま、死ぬんじゃないよ」
「おう。美人に囲まれるまでは死ねねぇ」
「はいはい」
桃香は呆れながら店へ戻っていった。
迅は再び看板を掲げる。
「討伐団員募集中でーす!! 初心者歓迎!! 将来性だけはあります!!」
だが誰も来ない。
子供にすら笑われた。
「お母ちゃん見てー! 木の棒持ってるー!」
「見ちゃいけません」
「なんで!?」
迅は静かに膝をつく。
「世知辛ぇ......」
それから一時間後。
流石に心が折れかけていた頃。
「......ねぇ」
不意に、女の声が聞こえた。
迅は顔を上げる。
そこに立っていたのは、一人の女剣士だった。
黒髪の長髪。
腰にはしっかりとした刀。
整った顔立ちに、凛とした雰囲気。
通行人たちが思わず振り返るほどの美人だった。
迅は思わず固まる。
「......美人だ」
「第一声それかい?」
女剣士は呆れたように笑った。
「討伐団員を募集しているんだろう?」
「あ、あぁ! もちろんだ!」
迅は慌てて立ち上がる。
「俺は九十九迅! 団長だ!」
「団員は?」
「俺だけだ」
「......」
「今加入すれば実質副団長だぞ」
「随分と軽い副団長だな......」
女剣士は小さく笑った。
「僕は天津京子。道場で剣術を学んでいた」
「ほう」
「だが少し窮屈でね。飛び出してきた」
京子は真っ直ぐ迅を見る。
「だから探していたんだ。“面白そうな討伐団”を」
迅はニヤッと笑う。
「見る目あるじゃねぇか」
「......ただ一つ聞いていいか?」
京子の視線が迅の腰へ向く。
木の棍棒。
「その武器、本当に木刀なのか?」