ホーム『木刀討伐録』 —九十九迅、討伐団始めました—第壱話討伐団結成!
目次次の話 →

第壱話討伐団結成!

 和。

 それは争わず、互いを尊重し合い、調和を保つことを意味する言葉。



 ――だが、この世界にそんなものは存在しない。



 国取り合戦は絶えず続き、人は人と争う。



 さらに人々を脅かす存在がいた。



 魔物。



 魔物には二種類存在する。



 一つは知能が低く、群れで人を襲う一般魔族。



 そしてもう一つは、高い知能を持ち、軍勢を率い、城すら落とす高位魔族。



 奴らは滅ぼした城を根城とし、人を喰らい、国を侵していく。



 そんな魔物たちを討伐する者たち――討伐団。



 その日、一人の青年が新たな討伐団を結成した。



 腰に差しているのは刀ではない。



 木の棍棒だった。



「行くぜ! てめぇら!」



 青年――九十九迅が勢いよく叫ぶ。



 しかし返事はない。



 なぜなら団員は――まだ迅一人だけだからだ。



「......」



 風が吹いた。



 城下町“桜”。



 長い平和が続くこの街は、今日も賑わっていた。



 迅が通りを歩いていると、定食屋の店主が顔を出す。



「おっ? 迅の旦那じゃねぇか! 討伐団結成したって聞いたぜ!」



「ま、まぁな」



 迅は得意げにピースする。



 すると店主はニヤニヤしながら聞いた。



「それで? 団員は何人集まったんで?」



「......俺だけだよ」



「あちゃー」



 店主は頭を掻く。



「まぁ予想通りっちゃ予想通りだが......」



「うるせぇな」



「いやだってよぉ。今人気の討伐団って、大体女団長んとこだろ?」



 それは事実だった。



 この世界で名を上げている討伐団の団長は、なぜか女性が多い。



 理由は単純。



 冷静で、現実的で、統率力がある。



 そして何より――華がある。



「男どもの本音なんざ簡単よ。“美人がいるから入りてぇ”だ」



「最低だなこの世界」



「お前もその一人だろうが」



「まぁな!」



 迅は即答した。



「こっから俺は美人団員に囲まれて、華々しいハーレム人生が始まる予定だからな!」



 店主は豪快に笑う。



「旦那はほんっと前向きだなぁ!」



「いいだろ? 長所だ」



「ま、俺ぁ応援してるぜ。命預ける相手が明るい方が安心できるしな」



「任せとけ!」



 迅は胸を叩く。



 その腰に差さっているのは、やはり木の棍棒。



 刀ですらない。



 通行人がヒソヒソと話す。



「なんだあれ......」



「討伐団で木の棒?」



「子供の稽古か?」



 迅は聞こえていないフリをした。



 討伐団には位が存在する。



 下から、



 新兵。

 一般兵。

 幹部。

 武人。

 武神。



 大半は一般兵止まり。



 幹部ですら一握り。



 武人ともなれば一国に名を轟かせる実力者。



 そして武神は――化け物だ。



「ま、俺なら余裕で武神だな」



 迅は自信満々に呟いた。



 そして向かった先は、討伐所。



 この街の討伐団たちが集う場所だった。



 依頼、情報、危険区域。



 全てがここに集まる。



 迅は堂々と掲示板の前へ立つ。



「さて......俺に相応しい仕事はあるかな」



 すると周囲の討伐団員たちが笑い始めた。



「おい見ろよ」



「木の棒持ってるぞあいつ」



「弱すぎて追い出されたのか?」



 迅の額に青筋が浮かぶ。



「うるせぇ!! てめぇらどうせ女追いかけるために討伐団入ったんだろうが!!」



「ちげぇよ! 市民を守るためだ!」



「綺麗事抜かしてんじゃねぇ!」



 迅は指を突きつける。



「あと俺は弱くねぇ! この辺じゃ根性あることで有名なんだよ!!」



「聞いたことねぇよ!!」



 全員の声が揃った。



 すると、受付の女性が困ったように近づいてくる。



「あの......申し訳ありません」



「ん?」



「依頼を受けるには、討伐団員が二人以上必要になります」



「............え?」



 迅の動きが止まる。



「そういうの先に言って?」



 受付嬢は苦笑いした。



 迅は静かに踵を返す。



 そして何事もなかったかのように討伐所を出ていった。



 こうして九十九迅は――



 依頼を受ける前に、まず仲間探しをすることになった。
あとがき戸部
読んでくださりありがとうございました! 次回もお楽しみに!
シェア
次の話 →
第弐話仲間募集中
『木刀討伐録』 —九十九迅、討伐団始めました—作者:戸部
目次を見る
✍️
まだ感想がありません
あなたの一言が、作者の次の一話につながります。
最初の感想を書いてみませんか?
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません
ホーム『木刀討伐録』 —九十九迅、討伐団始めました—第壱話討伐団結成!
目次次の話 →

第壱話討伐団結成!

 和。

 それは争わず、互いを尊重し合い、調和を保つことを意味する言葉。



 ――だが、この世界にそんなものは存在しない。



 国取り合戦は絶えず続き、人は人と争う。



 さらに人々を脅かす存在がいた。



 魔物。



 魔物には二種類存在する。



 一つは知能が低く、群れで人を襲う一般魔族。



 そしてもう一つは、高い知能を持ち、軍勢を率い、城すら落とす高位魔族。



 奴らは滅ぼした城を根城とし、人を喰らい、国を侵していく。



 そんな魔物たちを討伐する者たち――討伐団。



 その日、一人の青年が新たな討伐団を結成した。



 腰に差しているのは刀ではない。



 木の棍棒だった。



「行くぜ! てめぇら!」



 青年――九十九迅が勢いよく叫ぶ。



 しかし返事はない。



 なぜなら団員は――まだ迅一人だけだからだ。



「......」



 風が吹いた。



 城下町“桜”。



 長い平和が続くこの街は、今日も賑わっていた。



 迅が通りを歩いていると、定食屋の店主が顔を出す。



「おっ? 迅の旦那じゃねぇか! 討伐団結成したって聞いたぜ!」



「ま、まぁな」



 迅は得意げにピースする。



 すると店主はニヤニヤしながら聞いた。



「それで? 団員は何人集まったんで?」



「......俺だけだよ」



「あちゃー」



 店主は頭を掻く。



「まぁ予想通りっちゃ予想通りだが......」



「うるせぇな」



「いやだってよぉ。今人気の討伐団って、大体女団長んとこだろ?」



 それは事実だった。



 この世界で名を上げている討伐団の団長は、なぜか女性が多い。



 理由は単純。



 冷静で、現実的で、統率力がある。



 そして何より――華がある。



「男どもの本音なんざ簡単よ。“美人がいるから入りてぇ”だ」



「最低だなこの世界」



「お前もその一人だろうが」



「まぁな!」



 迅は即答した。



「こっから俺は美人団員に囲まれて、華々しいハーレム人生が始まる予定だからな!」



 店主は豪快に笑う。



「旦那はほんっと前向きだなぁ!」



「いいだろ? 長所だ」



「ま、俺ぁ応援してるぜ。命預ける相手が明るい方が安心できるしな」



「任せとけ!」



 迅は胸を叩く。



 その腰に差さっているのは、やはり木の棍棒。



 刀ですらない。



 通行人がヒソヒソと話す。



「なんだあれ......」



「討伐団で木の棒?」



「子供の稽古か?」



 迅は聞こえていないフリをした。



 討伐団には位が存在する。



 下から、



 新兵。

 一般兵。

 幹部。

 武人。

 武神。



 大半は一般兵止まり。



 幹部ですら一握り。



 武人ともなれば一国に名を轟かせる実力者。



 そして武神は――化け物だ。



「ま、俺なら余裕で武神だな」



 迅は自信満々に呟いた。



 そして向かった先は、討伐所。



 この街の討伐団たちが集う場所だった。



 依頼、情報、危険区域。



 全てがここに集まる。



 迅は堂々と掲示板の前へ立つ。



「さて......俺に相応しい仕事はあるかな」



 すると周囲の討伐団員たちが笑い始めた。



「おい見ろよ」



「木の棒持ってるぞあいつ」



「弱すぎて追い出されたのか?」



 迅の額に青筋が浮かぶ。



「うるせぇ!! てめぇらどうせ女追いかけるために討伐団入ったんだろうが!!」



「ちげぇよ! 市民を守るためだ!」



「綺麗事抜かしてんじゃねぇ!」



 迅は指を突きつける。



「あと俺は弱くねぇ! この辺じゃ根性あることで有名なんだよ!!」



「聞いたことねぇよ!!」



 全員の声が揃った。



 すると、受付の女性が困ったように近づいてくる。



「あの......申し訳ありません」



「ん?」



「依頼を受けるには、討伐団員が二人以上必要になります」



「............え?」



 迅の動きが止まる。



「そういうの先に言って?」



 受付嬢は苦笑いした。



 迅は静かに踵を返す。



 そして何事もなかったかのように討伐所を出ていった。



 こうして九十九迅は――



 依頼を受ける前に、まず仲間探しをすることになった。
あとがき戸部
読んでくださりありがとうございました! 次回もお楽しみに!
シェア
次の話 →
第弐話仲間募集中
『木刀討伐録』 —九十九迅、討伐団始めました—作者:戸部
目次
✍️
まだ感想がありません
あなたの一言が、作者の次の一話につながります。
最初の感想を書いてみませんか?
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません