月が消え去った夜に
「ずっと、ずっと、ずっと......!!!!
あたしはあんたのことが嫌いだった!!!」
波打つくせ毛を振り乱しながら
苦しそうに声を振り絞る。
床を睨みつけながら息を荒げる少女の瞳は湖面のように揺らめいていた。
驚いたように彼女を見つめる月の妖精のような
美しく儚げな少女。
どうせ、いつものように
心配の言葉を投げかけるのだと思っていた。
彼女は優しく微笑み、
顔を上げた少女の両頬を包み込む。
そして、慈愛の瞳をこちらに
向けたまま、
星空に聞こえてしまわぬように
囁いた。
「......私も......あなたのことが大嫌いだった」
少女はひどく動揺する。
何故、自分よりも苦しそうに顔を歪ませ、
雪のように白い肌に水晶のような透明な涙を
流すのか、わからなかった。
大嫌いだと言いながら、何故。
「ねぇ、見て。
今夜も月は浮かばない」
数年前、夜空から消えた月は
今も姿を見せることはない。
星々が我を見よと言わんばかりに煌めいているが
主人公である月がいない夜空は何とも退屈な
ものであろうか。
「私達の小さい頃夢、覚えてる?」
「......月に行くこと......」
「ふふふ。今考えると可愛い夢よね。
かぐや姫だからって誰でも
月に行けるわけじゃないのに......」
真っ直ぐな黒髪をたなびかせて
少女は振り向いた。
「でも、チーズケーキにかぐや姫は
月面着陸できない」
その言葉に少女の瞳が星の光を受けて煌めいた。
どうして、その言葉を覚えてるの......?