金曜日の昼下がり
奇妙な書庫のほんの怪異を封印する、私と魔女の物語
信じられないことに、今、私はウサギを追いかけている。
パンツスーツにパンプス姿のいい大人が、都会の人混みの中を全力疾走で、一羽のウサギを追っていた。
そのウサギは、私が公園のベンチでファーストフードを貪っていたところにやってきた。私のカバンのファスナーを前足で開き、鍵束だけを迷いなく抜き取り、盗んで逃げた。
疲れのせいで幻覚を見ているのかもしれない。
しかし、鍵を奪われたのは現実のようで、私はウサギを追わざるを得なかった。
それは大事な鍵なのだ。
家の鍵、会社のロッカーの鍵、デスクの鍵、それから......もっと大切な鍵も一緒だったはず。
ウサギはぴょんぴょん跳ねて、時折立ち止まり、思い出したように振り返る。まるで本気を出していない。私が追いつくのを少し待って、地下鉄の入り口へ潜っていった。
「待って!」
ウサギに続いて飛び込んだ私は、地下への穴に深く深く落ちていった。