④双子の水棲妖怪
沈みかかる夕日で、辺りは橙色に染まっている。
俺は刀をわずかに動かし、太陽の光を刀に反射させた。その光を槍の妖怪の残った右目に当てる。
「...ぐっ」
その一瞬の隙に、俺は二刀を揃え、同じ方向から同時に斬りつける。槍の妖怪を庇うように、曲刀の妖怪が二本の曲刀で、俺の二刀を受け止める。俺の読み通りに。
槍の妖怪はすぐに体勢を戻し、俺に槍を突きたてようと動く。
俺は曲刀の妖怪と、鍔迫り合いになっていた二刀を、自ら手放す。急に俺の力が消えて、曲刀の妖怪は前につんのめるように、体勢を崩す。
俺は空いた両手で、迫ってきた槍を掴む。
柄を掴んで槍を受け止めた俺を、槍ごと振り回して弾き飛ばそうとする。
しかし、片腕となったその妖怪より、俺の方が力は上だ。
俺は逆に槍を引き寄せ、その妖怪から奪い取る。
起き上がりながら俺を斬りつけようとする曲刀の妖怪から、曲刀の範囲外まで少し距離をとる。
そして、三又の槍を失った妖怪に、勢いよく槍を投げつける。
「武器を無くしただけで、動きが固くなりすぎだ」
俺は自身の槍が胴体を貫通した妖怪にそう言った。
「蒼鱗!」
曲刀の妖怪は、槍で刺し貫かれ絶命した妖怪の姿を見て、ひどく動揺している。
「兄弟よ。仇は必ず、この紫鱗がとる」
俺が先ほど手放した刀はまだ曲刀の妖怪の足元にある。そのため、近くにある櫂を拾い上げ、薙刀のようにして構える。
「絶対に殺す。明智」
そう俺を睨みつけると、曲刀の妖怪は足元にある俺の刀を一本投げつけてくる。
俺は櫂で受け止める。しかし、櫂はその衝撃で折れる。
そして、曲刀の妖怪は海へと飛び込んだ。
とりあえず、俺は二刀を拾い、鞘に戻す。
そして、妖怪に突き刺さった三又の槍を引き抜く。投擲の構えをとって、じっと周囲の海面を見る。
(奴らはこの槍以外で、船を攻撃してこなかった。あの曲刀では船の破壊は不可能だからか?そして、こいつらは水中から地上に声をかけることができる。しかし...)
わずかに海面が揺れる。
俺は波紋の発生した中心に向けて、思い切り槍を投擲する。
おぞましい声の悲鳴が聞こえ、海面が赤く染まる。
「やはり、水上の様子は見えていない。だから、声をかけて人を誘導したり、砂袋の重りで騙されるわけか」
この妖怪は槍の妖怪のように船を破壊する力はない。そして、獲物に奇襲するためには必ず、海面から目視で確認しなくてはならない。
「面白いくらい読み通りの生態だったな」
突然、海面に広がっていた赤い血は、大きく俺の船の周りを回る。
そして、俺の周囲の海面は全て、赤く染まる。
「...貴様。本当にかなりの手練れだ。しかし、絶対に生かしては返さんぞ」
海面にはたくさんの魚が泳ぎ出す。
(この魚に紛れて海面の波紋を誤魔化す気か?それとも...)
俺はゆっくりと深呼吸する。
(仕方ない。覚悟を決めるか)
俺は行動を開始する。