1話 物事は突き詰めて考えると、結局分からないに行き着く
ここは食べ物が売っているスーパー。
目の前には果物が置いてある棚があり、上段の少し奥には梨。下段にはりんごがあった。
そんな梨とりんごの境目に、『2割引↓』と書かれたのぼりが棒に吊るされていた。
「うーーーん............分からない」
前髪は長く、頭の上に大きな団子状の髪を乗せたような髪型をしている。ショルダーバッグを肩に掛け、ネックウォーマーを首に着ている青年。
俺、囚覚十恕は悩んでいた。
ネックウォーマーを、口が隠れるまで持ち上げる。
2割引......そして、矢印で下を指している。のぼりは上段にある梨と、下段にあるりんごの間......。
この場合普通は、矢印の方向を見て下段にあるりんごが二割引の対象と捉えられる。
が、しかし。
『↓』矢印とりんごの間をよく見て欲しい。
その間の奥には、梨があるだろう? これによって平面的に縦で見て、矢印に一番近いのは、りんごではなく梨ということになる。
って言うことはだよ。こののぼりの二割引の対象はりんごではなく、梨だといえることになる。
でもね。
普通に見たらこれはりんごが対象だと思うと思う。
じゃありんごなんじゃないの? って。
そもそもこの『2割引↓』は、値段から二割引してくれるってことなの?
もう、表示されている値段は二割引しましたよ。二割引した後の値段だよってことの可能性もある訳で。
というか、買った全員が二割引してもらえるのか? なんかよく分からない、このスーパー限定のカードを持ってる人だけとかいうルールが、後から出てくる可能性。
こののぼり自体古いもので、もう二割引は終わっている可能性。
......。
物事というのは、突き詰めて考えると「答えはこう」と決まっているもの以外、結局のところ考えても分からなくなるんだ。
だから。
「よく考えたけど全然分からない」
俺は、ネックウォーマーを元の位置まで下げ、手の空いている店員に話しかける。
「あの、あそこの梨とりんごの間にある二割引って、りんごが今の表示されている値段から二割引ってことですか?」
店員さんは、笑顔で答えた。
「はい。そうですよ」
「そうですか、ありがとうございます」
俺はりんごの元へ行き、一つ取り、その場を離れる。
まだやってたし、対象はりんごだったか......。
丁度、横をすれ違った銃のモデモン、銃犬が主人の隣を楽しそうにして歩いていた。
「バンバン!」
俺はそれを横目にスーパーを出た。
俺は買い物を終え、帰路につくのだった。
こうして人知れず、囚覚十恕の物語が始まろうとしていた――――。