ホーム籠城食堂他所者の商人
← 次の話目次前の話 →
挿絵AIで作った挿絵

他所者の商人

「いよう!ジョニービー!精が出るな。」
ジェフリーの隣で痩せっぽちのロニーがジョニービーことパン屋のジョン=ベイカーに気軽に声をかけている。
「やぁ、ロニー。今日は朝番かい?」
街の住人の大半は顔なじみだ。
互いに気兼ねがない。
「そうさ!おかげで二日酔いが辛くて仕方がない!」
ロニーがお道化て肩をすくめてみせた。
どうやら、昨日のアリスの予言は当たったらしい。
ジョニービーがさもありなんと笑った。
クレーネ清涼はうまいからな!」
「違いない!ところでミルン爺さんは元気にしてたかい?」
「元気だったな。最近仕事が少なくて体が鈍るとこぼしていたよ。」
ミルン爺さんは北門を出て少しのところにある粉屋だ。
フロル川に注ぐ支流に水車小屋を構えている。
パン屋のジョニービーは毎朝パンを焼くと、店をおかみさんに任せて、翌日のパンに使う粉をミルン爺さんのところへ買い出しに行く。
「そうかい。またよろしく伝えてくれ。さ、あんたは通っていいよ。」
言わずもがなだが、ジョニービーは頷くと北門を通って街に入っていった。

今日のジェフリーの小隊は朝番で北門の門番をしていた。
門番は小隊の内、二人が城門の上で見張りに立ち、二人が通行人の監視をする。
通行人の監視と言っても、町の住人以外からは通行料を徴収し、商人の荷物には別に関税を徴収する。
関税は品目によっても変わる為、積荷も確認しなくてはならない。
ロニーの横ではジェフリーが商人のホリスの荷馬車を調べていた。
「ホリス、今日は随分、荷物が多いな。馬車も二つなんて、どうしたんだ?」
ホリスは遠方の商人だが、いつもウェストメーレ街道を行き来して、ロズベリーアポンフロルをしょっちゅう通るから、やはり顔なじみだった。
「ちょっと、良い儲け話があってな。」
ホリスは商人らしくほくそ笑んで返した。
「こっちの大樽二つはタールだな?こっちの箱は...」
「松脂さ。」
ジェフリーが箱の蓋を開けようとしている後ろからホリスが言った。
「わかった。次は後ろの馬車を見せてもらうよ。」
「手間をかけて、すまんな。」
「いや、こっちこそ時間を取らせて悪いな。規則なんだ。」
普段は目録を提示させて、目視で簡単にチェックするだけだが、十台に一台はしっかりチェックすると言う規則があった。
ほとんどの町の門で無視されているような死文化された規則だが、今のロズベリーアポンフロルを治める代官、シェリンガム卿は王都からの評価を気にする小心な男で、こんな規則も徹底をするよう指示していた。

ジェフリーは次の荷馬車に取り掛かった。
目録と見比べながら
「こっちの二つがワインの樽だな。中樽とあるが、少し大きくないか?」
「ジェフ、細かいことは抜きだ。大樽と言うには小さいだろ?急な仕入れでな、無理を言ってあるやつで出してもらったんだ。」
樽の大きさの規格は地域や国によって異なる。
こんな時に面倒な話にならないよう、ホリスのような優秀な商人なら南部の規格にあった樽を扱うようにする。
余所の樽で持ってくるなんて珍しいことだ。
「確かに大樽とは言えないな...どこの樽だ?」
「ふふ。そいつは内緒だ。あんたが商人に乗り換えた時、俺のとっておきのルートを知られているのは困るからな!」
「残念ながら商人になる予定はないけどな。この町では売らないと言っていたな?まぁ、良いだろう。」
町で売る商品であれば厳密に課税するところだが、ホリスはロズベリーアポンフロルには滞在せず通り抜けるだけだという。
それであれば...とジェフリーは判断した。
ジェフリーは適当に見えて、この手の規則には厳しい男だった。
ホリスはほっとしたような顔をした。
「ひとつ貸しとくよ。」
「おいおい、貸しかよ!?」
ジェフリーは笑いながら次の荷物に手を付けた。
「こちらも松脂だな?それに...」
ジェフリーは目録に目を落として、驚いた。
「ホリス?珍しいな。こいつは矢じゃないか?」
「そうさ。」
ホリスは涼しい顔をして答える。
海千山千の男だが、こんな顔をする時は詮索されたくない時だ。
「...、わかった。全て目録通りだな。」
ジェフリーは後ろの馬車から降りた。
「じゃあ、通行税と関税の計算だが...」
ジョニービーのような町の住人は名前の確認だけで門の出入りは自由だが、余所者が町に入る時は通行税が徴収される。
それに荷物にも関税が課せられる。
特に商人や商人の運ぶ商品の税は高めに設定されている。
「商人一人に御者が一人、それにワインは『大樽』が二つで...」
ジェフリーが計算を始めた。
「おい!ジェフ!」
「やぁホリス。あんたにしては珍しいな今回の荷は?タールに松脂、ワイン、それに矢だって?どこで売る?この先の町と言えばアヴォンマスあたりか...」
「わかったよ!早速借りを返すよ!」
ジェフリーがにやにやしだした。
「まったく、あんたは変わってるな!賄賂は一切取らないくせに情報は欲しがりやがる!」
「『変人ジェフリー』って呼ばれてるからな。俺は不本意なんだけどな...」
「まったくだ。『忌々しいジェフリー』って呼んでやるよ。とにかく、耳を貸せ...」
ジェフリーは顔をホリスに寄せた。
ホリスはひそひそ声のつもりらしいが、元々声の大きい男だ。
普通に聞こえる。
「アヴォンマスの艦隊がもうすぐ出撃するらしいんだ。」
タール、ピッチの材料となる松脂、ワイン、矢、どれも出港する艦隊が必要とするものだ。
「例のレオフロド諸島の件か?」
「そうだ。艦隊を派遣してスぺランに圧力をかけるんだろうって話だ。示威行為だな。」
スぺラン王国はメカニア王国と海を挟んだ南の隣国だ。
そしてその海に浮かぶレオフロド諸島は独自に王を戴く小国家だが、これまで海の両岸にある大国のいずれかに従ってきた。
現在はメカニア王国に従っているが、最近、スぺラン王国がしきりにレオフロド王に自国へ所属するよう言ってきているらしい。

「じゃあな!」
金を支払ったホリスは意外に上機嫌で街に入って行った。
他の衛兵なら賄賂を取られたり、関税をぼられる時もある。
その点、ジェフリーは生真面目で、小隊の面々にもそれは徹底させていた。
衛兵の役得を取り上げるような指示だが、ロニー、ボリス、フィルは従っている。

「次!」
ジェフリーが言うとホリスの後ろに並んでいた四人組の男達が手形を取り出して、進み出た。
ジェフリーはさっきから気になっていた。
男達はホリスとのやりとりに聞き耳をたてていたように見えたからだ。
男達は手にしていた手形を差し出す。
手形を差し出した時、一人の袖が捲れ、上腕部が露になった。
その腕には刺青タトゥーがあった。
中心部だけが暗紫色の灰黄色をした花の柄であった。
花を囲うように何か文字が彫られている。
しかし、よくは見えなかった。
男はすぐに素手を引っ張り、刺青タトゥーを隠してしまった。

ジェフリーは全員から手形を受け取りながら男達を見た。
男達は無表情に手形を受け取ったジェフリーを見返している。

手形を持っているということは既に町に入った余所者と言うことだ。
余所者がロズベリーアポンフロルに入るには通行税が課せられるが、街に滞在している者は滞在期間中の出入りに関しては通行税が免除される。
そういう者には滞在者である証として手形が渡される。
これを提示することで無税で城門を出入りできる。
但し、町人が名前を確認されるように、手形を持った者は宿泊先などを確認される。
「どうも。手形ですね。三日前にロズベリーにお越しですね?ようこそ、ロズベリーへ。」
ジェフリーはにっこり笑顔を向けたが、男達はむっつりと見返すだけだった。
「どちらに宿泊ですか?」
古き清泉亭イ・オゥド・ブルナ・インだ。」
古き清泉亭イ・オルド・ブルナ・インね?」
ジェフリーはなるほどと思った。
彼等が昨夜不在だったあとの四人のようだ。
今朝は早朝から門番をしていて、彼等が出て行ったのは見ていない。
つまり門外で夜を過ごしたらしい。
「良い宿だろ?」
心の中でジェフリーは『鶏腿肉のグリルをごちそうさま。』と思いながら、話しかけた。
「あぁ。」
「食事も酒もうまい。」
「あぁ。」
「あんた達、あそこに宿泊しているならクレーネ清涼はもう飲んだかい?まだなら、あんた達、損しているってもんだ。今夜はあれで乾杯すべきだな。」
「飲んだよ。」
四人の男達は迷惑そうに返事する。
急いでいるのか?
疲れているのか?
「荷物はないな?」
滞在者で手形を持っていても外で商品を仕入れて町に入るのであれば、その関税は当然徴収される。
ジェフリーはもう一度、手形に目を落とした。
「よし。問題ない。通ってくれ。」
男達はジェフリーが差し出した手札を受け取ると無言で歩いて行った。
ジェフリーは男達が町の雑踏の中に消えて行くのを見送っていた。

「やぁ!あんた、前にもこの町に来たな?グウェルゼスターからと言っていたな?」
「あぁ、そうだ。前もあんたが門番だったな。今日もお願いするよ。」
「ようこそ!ロズベリーへ!目録を見せてくれ...全部、毛織物か...」
隣ではロニーが次の商人に取り掛かっていた。

「ジェフリー!おい、ジェフリー!」
ジェフリーはいつまでも四人の男が去った後を呆けたように見つめていた。
「おい!ジェフリー!ジェフ!ジェフ!」
ロニーの叫び声で漸く我に返った。
「あぁ?」
「あぁ?じゃないよ!後ろつかえてんだ!しっかりしてくれ!」
ロニーが呆れる。
ホリスの荷の確認で時間がかかった為、北門には行列ができていた。
ジェフリーは次の通行人に取り掛かった。
「やぁ、セブ。いつもの集金かい?よし、通ってくれ。次!」
あとがき荒野旅人
挿絵は痩せっぽちのロニーです。
シェア
前の話 →
古き清泉亭
← 次の話
攻城論
籠城食堂作者:荒野旅人
目次を見る
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません
ホーム籠城食堂他所者の商人
← 前の話目次次の話 →
挿絵AIで作った挿絵

他所者の商人

「いよう!ジョニービー!精が出るな。」
ジェフリーの隣で痩せっぽちのロニーがジョニービーことパン屋のジョン=ベイカーに気軽に声をかけている。
「やぁ、ロニー。今日は朝番かい?」
街の住人の大半は顔なじみだ。
互いに気兼ねがない。
「そうさ!おかげで二日酔いが辛くて仕方がない!」
ロニーがお道化て肩をすくめてみせた。
どうやら、昨日のアリスの予言は当たったらしい。
ジョニービーがさもありなんと笑った。
クレーネ清涼はうまいからな!」
「違いない!ところでミルン爺さんは元気にしてたかい?」
「元気だったな。最近仕事が少なくて体が鈍るとこぼしていたよ。」
ミルン爺さんは北門を出て少しのところにある粉屋だ。
フロル川に注ぐ支流に水車小屋を構えている。
パン屋のジョニービーは毎朝パンを焼くと、店をおかみさんに任せて、翌日のパンに使う粉をミルン爺さんのところへ買い出しに行く。
「そうかい。またよろしく伝えてくれ。さ、あんたは通っていいよ。」
言わずもがなだが、ジョニービーは頷くと北門を通って街に入っていった。

今日のジェフリーの小隊は朝番で北門の門番をしていた。
門番は小隊の内、二人が城門の上で見張りに立ち、二人が通行人の監視をする。
通行人の監視と言っても、町の住人以外からは通行料を徴収し、商人の荷物には別に関税を徴収する。
関税は品目によっても変わる為、積荷も確認しなくてはならない。
ロニーの横ではジェフリーが商人のホリスの荷馬車を調べていた。
「ホリス、今日は随分、荷物が多いな。馬車も二つなんて、どうしたんだ?」
ホリスは遠方の商人だが、いつもウェストメーレ街道を行き来して、ロズベリーアポンフロルをしょっちゅう通るから、やはり顔なじみだった。
「ちょっと、良い儲け話があってな。」
ホリスは商人らしくほくそ笑んで返した。
「こっちの大樽二つはタールだな?こっちの箱は...」
「松脂さ。」
ジェフリーが箱の蓋を開けようとしている後ろからホリスが言った。
「わかった。次は後ろの馬車を見せてもらうよ。」
「手間をかけて、すまんな。」
「いや、こっちこそ時間を取らせて悪いな。規則なんだ。」
普段は目録を提示させて、目視で簡単にチェックするだけだが、十台に一台はしっかりチェックすると言う規則があった。
ほとんどの町の門で無視されているような死文化された規則だが、今のロズベリーアポンフロルを治める代官、シェリンガム卿は王都からの評価を気にする小心な男で、こんな規則も徹底をするよう指示していた。

ジェフリーは次の荷馬車に取り掛かった。
目録と見比べながら
「こっちの二つがワインの樽だな。中樽とあるが、少し大きくないか?」
「ジェフ、細かいことは抜きだ。大樽と言うには小さいだろ?急な仕入れでな、無理を言ってあるやつで出してもらったんだ。」
樽の大きさの規格は地域や国によって異なる。
こんな時に面倒な話にならないよう、ホリスのような優秀な商人なら南部の規格にあった樽を扱うようにする。
余所の樽で持ってくるなんて珍しいことだ。
「確かに大樽とは言えないな...どこの樽だ?」
「ふふ。そいつは内緒だ。あんたが商人に乗り換えた時、俺のとっておきのルートを知られているのは困るからな!」
「残念ながら商人になる予定はないけどな。この町では売らないと言っていたな?まぁ、良いだろう。」
町で売る商品であれば厳密に課税するところだが、ホリスはロズベリーアポンフロルには滞在せず通り抜けるだけだという。
それであれば...とジェフリーは判断した。
ジェフリーは適当に見えて、この手の規則には厳しい男だった。
ホリスはほっとしたような顔をした。
「ひとつ貸しとくよ。」
「おいおい、貸しかよ!?」
ジェフリーは笑いながら次の荷物に手を付けた。
「こちらも松脂だな?それに...」
ジェフリーは目録に目を落として、驚いた。
「ホリス?珍しいな。こいつは矢じゃないか?」
「そうさ。」
ホリスは涼しい顔をして答える。
海千山千の男だが、こんな顔をする時は詮索されたくない時だ。
「...、わかった。全て目録通りだな。」
ジェフリーは後ろの馬車から降りた。
「じゃあ、通行税と関税の計算だが...」
ジョニービーのような町の住人は名前の確認だけで門の出入りは自由だが、余所者が町に入る時は通行税が徴収される。
それに荷物にも関税が課せられる。
特に商人や商人の運ぶ商品の税は高めに設定されている。
「商人一人に御者が一人、それにワインは『大樽』が二つで...」
ジェフリーが計算を始めた。
「おい!ジェフ!」
「やぁホリス。あんたにしては珍しいな今回の荷は?タールに松脂、ワイン、それに矢だって?どこで売る?この先の町と言えばアヴォンマスあたりか...」
「わかったよ!早速借りを返すよ!」
ジェフリーがにやにやしだした。
「まったく、あんたは変わってるな!賄賂は一切取らないくせに情報は欲しがりやがる!」
「『変人ジェフリー』って呼ばれてるからな。俺は不本意なんだけどな...」
「まったくだ。『忌々しいジェフリー』って呼んでやるよ。とにかく、耳を貸せ...」
ジェフリーは顔をホリスに寄せた。
ホリスはひそひそ声のつもりらしいが、元々声の大きい男だ。
普通に聞こえる。
「アヴォンマスの艦隊がもうすぐ出撃するらしいんだ。」
タール、ピッチの材料となる松脂、ワイン、矢、どれも出港する艦隊が必要とするものだ。
「例のレオフロド諸島の件か?」
「そうだ。艦隊を派遣してスぺランに圧力をかけるんだろうって話だ。示威行為だな。」
スぺラン王国はメカニア王国と海を挟んだ南の隣国だ。
そしてその海に浮かぶレオフロド諸島は独自に王を戴く小国家だが、これまで海の両岸にある大国のいずれかに従ってきた。
現在はメカニア王国に従っているが、最近、スぺラン王国がしきりにレオフロド王に自国へ所属するよう言ってきているらしい。

「じゃあな!」
金を支払ったホリスは意外に上機嫌で街に入って行った。
他の衛兵なら賄賂を取られたり、関税をぼられる時もある。
その点、ジェフリーは生真面目で、小隊の面々にもそれは徹底させていた。
衛兵の役得を取り上げるような指示だが、ロニー、ボリス、フィルは従っている。

「次!」
ジェフリーが言うとホリスの後ろに並んでいた四人組の男達が手形を取り出して、進み出た。
ジェフリーはさっきから気になっていた。
男達はホリスとのやりとりに聞き耳をたてていたように見えたからだ。
男達は手にしていた手形を差し出す。
手形を差し出した時、一人の袖が捲れ、上腕部が露になった。
その腕には刺青タトゥーがあった。
中心部だけが暗紫色の灰黄色をした花の柄であった。
花を囲うように何か文字が彫られている。
しかし、よくは見えなかった。
男はすぐに素手を引っ張り、刺青タトゥーを隠してしまった。

ジェフリーは全員から手形を受け取りながら男達を見た。
男達は無表情に手形を受け取ったジェフリーを見返している。

手形を持っているということは既に町に入った余所者と言うことだ。
余所者がロズベリーアポンフロルに入るには通行税が課せられるが、街に滞在している者は滞在期間中の出入りに関しては通行税が免除される。
そういう者には滞在者である証として手形が渡される。
これを提示することで無税で城門を出入りできる。
但し、町人が名前を確認されるように、手形を持った者は宿泊先などを確認される。
「どうも。手形ですね。三日前にロズベリーにお越しですね?ようこそ、ロズベリーへ。」
ジェフリーはにっこり笑顔を向けたが、男達はむっつりと見返すだけだった。
「どちらに宿泊ですか?」
古き清泉亭イ・オゥド・ブルナ・インだ。」
古き清泉亭イ・オルド・ブルナ・インね?」
ジェフリーはなるほどと思った。
彼等が昨夜不在だったあとの四人のようだ。
今朝は早朝から門番をしていて、彼等が出て行ったのは見ていない。
つまり門外で夜を過ごしたらしい。
「良い宿だろ?」
心の中でジェフリーは『鶏腿肉のグリルをごちそうさま。』と思いながら、話しかけた。
「あぁ。」
「食事も酒もうまい。」
「あぁ。」
「あんた達、あそこに宿泊しているならクレーネ清涼はもう飲んだかい?まだなら、あんた達、損しているってもんだ。今夜はあれで乾杯すべきだな。」
「飲んだよ。」
四人の男達は迷惑そうに返事する。
急いでいるのか?
疲れているのか?
「荷物はないな?」
滞在者で手形を持っていても外で商品を仕入れて町に入るのであれば、その関税は当然徴収される。
ジェフリーはもう一度、手形に目を落とした。
「よし。問題ない。通ってくれ。」
男達はジェフリーが差し出した手札を受け取ると無言で歩いて行った。
ジェフリーは男達が町の雑踏の中に消えて行くのを見送っていた。

「やぁ!あんた、前にもこの町に来たな?グウェルゼスターからと言っていたな?」
「あぁ、そうだ。前もあんたが門番だったな。今日もお願いするよ。」
「ようこそ!ロズベリーへ!目録を見せてくれ...全部、毛織物か...」
隣ではロニーが次の商人に取り掛かっていた。

「ジェフリー!おい、ジェフリー!」
ジェフリーはいつまでも四人の男が去った後を呆けたように見つめていた。
「おい!ジェフリー!ジェフ!ジェフ!」
ロニーの叫び声で漸く我に返った。
「あぁ?」
「あぁ?じゃないよ!後ろつかえてんだ!しっかりしてくれ!」
ロニーが呆れる。
ホリスの荷の確認で時間がかかった為、北門には行列ができていた。
ジェフリーは次の通行人に取り掛かった。
「やぁ、セブ。いつもの集金かい?よし、通ってくれ。次!」
あとがき荒野旅人
挿絵は痩せっぽちのロニーです。
シェア
← 前の話
古き清泉亭
次の話 →
攻城論
籠城食堂作者:荒野旅人
目次
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません