ホーム不条識な狼の理(下)♗66
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 匂いを追って歩く最中に主にキアラの解説とヒカミの考察であたしは状況を大方理解した。
 二日前にハクスイとキアラは再会し、あたし達が合流するまで待機という事でハクスイはキアラの家に泊まっていたらしい。
 そして、ついさっきロッカンバーテンズでキアラが勤務中にハクスイは客として酒を飲んでいた所を、全身を隠すような装束のムハ教の伝統衣装に身を包んだ三人がハクスイを誘拐して行った。
「でもおかしな事を言っていたんですよね。京香さんの事を那坐のキョウだろって言ったり。ムハ教の恰好して、ムハ教へのテロ行為への疑いで連行するとか。
 歩さんとの爆破計画の件で、わたし達が攻撃したのはノア教です。万が一ノア教の人たちに一連の行動がバレていたらノア教に追われてってのは筋が通るんですが。
 どうも、あの場でムハ教を語るのは、身を隠す為にムハ教のフリをしたというのと、あの場で宗教を語り暴動を起こせば下手したら戦争の引き金になる。
 そう考えるとムハ教じゃない第三者である人が暴動を起こす為にやったのではないかと。
 京香さんはその辺賢いのか、お店の酒代って名目で刀を置いて、盛大にワインをぶちまけて自分の着物にもワインをつけて彼らに同行したんですよね。
 戦う事の出来る彼女がこの選択を取るあたり、ヒカミさんと樫山さんの合流も見越して、迎えに来てって意味かと。」
 なるほど。流石はハクスイだ。あたしだったら酒場で有らぬ疑いなんてかけられたら盛大に喧嘩しちゃう。でもその軽率な行動が大きな過ちに繋がるのか。
「今のキアラさんの話から、確証の無いおれの予想となるが、多分ハクスイの事を誘拐した奴らは第三勢力だけじゃなくて、ノア教の連中も少しは絡んでいるな。
 あれだけガチガチのノア教しかいない街の風俗嬢が突如居なくなったって話、ノア教以外どこから洩れるってんだよ。だとしたらEOAを疑う事になる。あれだけの計画と歩と貴志さんという指導者を据えて置きながら反逆が出るとはどうも考えにくい。
 なので、今回のハクスイの誘拐計画に加担しているのはノア教プラスの第三者だ。」
 第三者というヒカミの言葉にあたしは何となく佐竹の顔が浮かんだ。
『佐竹の可能性は?』
「ああ。おれもそう考えていたんだ。まあ勘だけどな。」
 うーん。勘だとしても二人して同じ人を思い付くのは何か嫌な予感しかしない。

 十分ほど歩いて匂いを追って廃劇場へと辿りついた。
「さすがですよね。人間の4000倍から6000倍の嗅覚があるとは言いますけど。樫山さんの今の嗅覚はわたしたちの嗅覚とは感覚が違うわけですよね。本当に、トイレの後は会いたくないですね。」
 やっぱり、みんなそこ気にするよね。
 まあ。悪いけど、どっちを誰が出したかわかる程度の嗅覚だからさ。慣れたけど。
「いや。小便ならまだいいけど、問題はう......」
「ヒカミさん!コンプラ的に止めましょう。そこピーって修正かけられちゃいますよ。女子なんですよ。これ女子の会話なんですよ。」
「そうだな。確かによくねえな。女子ってのはうんこもオナニーもしない生き物だからな。」
 いやまって。あとのセリフの方がゲスいし、ピー二回入れるって。
 劇場の中に入ると、早速匂いが濃くなった。複数の人間がついさっき歩いた後の匂いだ。
『多分、このまま正面ホールから入ったら鉢合わせると思う。匂いがこっちのドアの方に向かっている。』
「そうか。ちなみに人数まで把握出来そうか?何種類匂いがあるとかで。」
 流石に難しいなあと思いつつも、意識を集中させて正面ホール側のドア近辺を嗅いだ。
『五人以上十人未満。でも、この中には確実にハクスイの匂いもする。』
「流石に、もうちょい情報が欲しいな。こっちは三人の上にしかも、人質を取られている側だ。」
 ヒカミが周りを見渡すと何か見つけたらしく、突然跳んだ。天井の何かにつかまって、そのまま天井の穴に入ってく。
「通気口だ。劇場だから、演出の為の煙の換気と照明とかその他ワイヤとかのトリック用で、天井裏にスペース作って建てる事が多いんだ。広さ的に多分、建物全体まで渡れるだろうから、ちょっと様子を見てくる。」
 そそくさとヒカミは行ってしまった。
「佐竹の所為で、グリフォンとは聞いては居ましたけど、あれじゃあまるで猿ですね。」
『ほんとだよ。どうやったらここから一回のジャンプで上まで届くのかもわからないよ。』
「もともとヒカミさんの跳躍力って異常でしたからね。約一年前、迷路でミノタウロスと戦った時もヒカミさんの跳躍力と京香さんの剣術が要な部分ありましたしね。」
『あの二人、元の世界ではカラクリ忍者村のアクション役者だったからね。火山流忍者業火丸が主役だけど、人が足りない時の悪の浪士のハクスイの殺陣がもの凄くてさ。助っ人なのにハクスイ出る日は当たり回って言われる程だったよ。』
「ヒカミさんもあの身のこなしで忍者って適任過ぎるけど、京香さんの全国制覇のガチの剣術で殺陣って似合うなあ。向こうに無事に戻れたら是非新生区には観光に行ってカラクリ忍者村に行かないと。」
 無事に戻れたらという言葉で、キアラの死にますという宣言のあの電話を思い出した。
「ちなみに樫山さんはカラクリ忍者村でバイトしてなかったんですか?」
『あたしは主に介護の方のバイトがあったからね。でもどうしても人が足りない日は、さあみんなで業火丸を応援だーってちびっこ達に合図する村人役とかはたまにやっていたよ。』
「じゃあ折角なので三人が出勤している日に観光したいですね。」
そうか。なんでこんなにも明るく未来の事を語るのかと思ったら、あたしはキアラの死の宣告は知らない体になっているんだった。
 いやでも、それはヒカミに託す事でみんなで無事に戻れる未来を描いているから平然とこの事を話すのか......キアラがよく分からない。久しぶりに会ったせいなのか。思えば一年前の最後のあの日もキアラが突然死神の契約を開きだしたのが最後だ。あの時もキアラはやっぱりよく分からない人だなあって。
 ああ。辞めた。考えすぎだ。
『そうだね。ヒカミもハクスイも喜ぶよ。』
 あまり感情が出ないように答えた。
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不条識な狼の理(下)作者:駿河鵬命
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 匂いを追って歩く最中に主にキアラの解説とヒカミの考察であたしは状況を大方理解した。
 二日前にハクスイとキアラは再会し、あたし達が合流するまで待機という事でハクスイはキアラの家に泊まっていたらしい。
 そして、ついさっきロッカンバーテンズでキアラが勤務中にハクスイは客として酒を飲んでいた所を、全身を隠すような装束のムハ教の伝統衣装に身を包んだ三人がハクスイを誘拐して行った。
「でもおかしな事を言っていたんですよね。京香さんの事を那坐のキョウだろって言ったり。ムハ教の恰好して、ムハ教へのテロ行為への疑いで連行するとか。
 歩さんとの爆破計画の件で、わたし達が攻撃したのはノア教です。万が一ノア教の人たちに一連の行動がバレていたらノア教に追われてってのは筋が通るんですが。
 どうも、あの場でムハ教を語るのは、身を隠す為にムハ教のフリをしたというのと、あの場で宗教を語り暴動を起こせば下手したら戦争の引き金になる。
 そう考えるとムハ教じゃない第三者である人が暴動を起こす為にやったのではないかと。
 京香さんはその辺賢いのか、お店の酒代って名目で刀を置いて、盛大にワインをぶちまけて自分の着物にもワインをつけて彼らに同行したんですよね。
 戦う事の出来る彼女がこの選択を取るあたり、ヒカミさんと樫山さんの合流も見越して、迎えに来てって意味かと。」
 なるほど。流石はハクスイだ。あたしだったら酒場で有らぬ疑いなんてかけられたら盛大に喧嘩しちゃう。でもその軽率な行動が大きな過ちに繋がるのか。
「今のキアラさんの話から、確証の無いおれの予想となるが、多分ハクスイの事を誘拐した奴らは第三勢力だけじゃなくて、ノア教の連中も少しは絡んでいるな。
 あれだけガチガチのノア教しかいない街の風俗嬢が突如居なくなったって話、ノア教以外どこから洩れるってんだよ。だとしたらEOAを疑う事になる。あれだけの計画と歩と貴志さんという指導者を据えて置きながら反逆が出るとはどうも考えにくい。
 なので、今回のハクスイの誘拐計画に加担しているのはノア教プラスの第三者だ。」
 第三者というヒカミの言葉にあたしは何となく佐竹の顔が浮かんだ。
『佐竹の可能性は?』
「ああ。おれもそう考えていたんだ。まあ勘だけどな。」
 うーん。勘だとしても二人して同じ人を思い付くのは何か嫌な予感しかしない。

 十分ほど歩いて匂いを追って廃劇場へと辿りついた。
「さすがですよね。人間の4000倍から6000倍の嗅覚があるとは言いますけど。樫山さんの今の嗅覚はわたしたちの嗅覚とは感覚が違うわけですよね。本当に、トイレの後は会いたくないですね。」
 やっぱり、みんなそこ気にするよね。
 まあ。悪いけど、どっちを誰が出したかわかる程度の嗅覚だからさ。慣れたけど。
「いや。小便ならまだいいけど、問題はう......」
「ヒカミさん!コンプラ的に止めましょう。そこピーって修正かけられちゃいますよ。女子なんですよ。これ女子の会話なんですよ。」
「そうだな。確かによくねえな。女子ってのはうんこもオナニーもしない生き物だからな。」
 いやまって。あとのセリフの方がゲスいし、ピー二回入れるって。
 劇場の中に入ると、早速匂いが濃くなった。複数の人間がついさっき歩いた後の匂いだ。
『多分、このまま正面ホールから入ったら鉢合わせると思う。匂いがこっちのドアの方に向かっている。』
「そうか。ちなみに人数まで把握出来そうか?何種類匂いがあるとかで。」
 流石に難しいなあと思いつつも、意識を集中させて正面ホール側のドア近辺を嗅いだ。
『五人以上十人未満。でも、この中には確実にハクスイの匂いもする。』
「流石に、もうちょい情報が欲しいな。こっちは三人の上にしかも、人質を取られている側だ。」
 ヒカミが周りを見渡すと何か見つけたらしく、突然跳んだ。天井の何かにつかまって、そのまま天井の穴に入ってく。
「通気口だ。劇場だから、演出の為の煙の換気と照明とかその他ワイヤとかのトリック用で、天井裏にスペース作って建てる事が多いんだ。広さ的に多分、建物全体まで渡れるだろうから、ちょっと様子を見てくる。」
 そそくさとヒカミは行ってしまった。
「佐竹の所為で、グリフォンとは聞いては居ましたけど、あれじゃあまるで猿ですね。」
『ほんとだよ。どうやったらここから一回のジャンプで上まで届くのかもわからないよ。』
「もともとヒカミさんの跳躍力って異常でしたからね。約一年前、迷路でミノタウロスと戦った時もヒカミさんの跳躍力と京香さんの剣術が要な部分ありましたしね。」
『あの二人、元の世界ではカラクリ忍者村のアクション役者だったからね。火山流忍者業火丸が主役だけど、人が足りない時の悪の浪士のハクスイの殺陣がもの凄くてさ。助っ人なのにハクスイ出る日は当たり回って言われる程だったよ。』
「ヒカミさんもあの身のこなしで忍者って適任過ぎるけど、京香さんの全国制覇のガチの剣術で殺陣って似合うなあ。向こうに無事に戻れたら是非新生区には観光に行ってカラクリ忍者村に行かないと。」
 無事に戻れたらという言葉で、キアラの死にますという宣言のあの電話を思い出した。
「ちなみに樫山さんはカラクリ忍者村でバイトしてなかったんですか?」
『あたしは主に介護の方のバイトがあったからね。でもどうしても人が足りない日は、さあみんなで業火丸を応援だーってちびっこ達に合図する村人役とかはたまにやっていたよ。』
「じゃあ折角なので三人が出勤している日に観光したいですね。」
そうか。なんでこんなにも明るく未来の事を語るのかと思ったら、あたしはキアラの死の宣告は知らない体になっているんだった。
 いやでも、それはヒカミに託す事でみんなで無事に戻れる未来を描いているから平然とこの事を話すのか......キアラがよく分からない。久しぶりに会ったせいなのか。思えば一年前の最後のあの日もキアラが突然死神の契約を開きだしたのが最後だ。あの時もキアラはやっぱりよく分からない人だなあって。
 ああ。辞めた。考えすぎだ。
『そうだね。ヒカミもハクスイも喜ぶよ。』
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