
㉔ 残酷な真相
「そうよ。そして私は、昨日までに、渡辺正人くんについて、詳しく調べてみたのよ。アナタたち家族は、3月の春休みに、とある旅行先の事故で、全員、行方不明になっているわ」「......ボクも自分なりに、注意深く、新鮮な死体を選んだんだけどね。脳の一部の損傷のせいで、記憶を完全にコピー出来なかったんだよ」
「あら、ソレは残念......先生から生徒まで、学校関係者の記憶は、すっかり改ざん出来たのにね?」「......」「アナタには、鶴舞公園近くの、マンションの記憶も有ったし、もちろん部屋の鍵も、持っていたけど、自分の部屋やベッドまでは、思い出せなかった。だから毎日、リビングで寝ていたのね?」「ああ、そうとも......でも何でそれを?」「私、以前アナタにご褒美をあげたでしょ?」「ご褒美?ああ、頬にキス......」「あの時、私、アナタの耳たぶの裏に、ちょっとやそっと、洗ったぐらいじゃ取れない、小型発信機を着けておいたのよ」「......成る程。抜かりの無い事だ。流石は真田雪子」「アナタの純情そうな青年の演技も、見事だったわ」「そりゃあ、どうも。そこら辺は、彼の記憶によるところが大きいがね」「......あら、もう演技はおしまいかしら?」「どうやら、ここが終局かな。もう演技は必要あるまい」 二人はそのまま、しばし黙り込んで睨み合った。「アナタの狙いは......やはり私の"時空違いの弟"、雪村なのかしら?」「無論、そうだ。あのような危険な存在を、我々四次元人としては、野放しにはしておけない」「我々......と言いながら、アナタたちは、決して一枚岩では無い。雪村を危険視する見解は、四次元人全体の総意では無いはずよ?」「他の連中が、危機感に疎い、ボンクラ揃いなのだよ」「雪村の事は、私たちチーム・サン・ジェルマンで、きちんと管理しているわ。それでは不満なの?」「もう既に彼は、惑星一つを、遥か遠くの星系まで、飛ばしてしまった。そんな事は、この三次元世界において、神にも勝るワザだ。許されない事なのだ」「それについては、本人も深く反省し、二度とやらないと、誓いを立てたのよ?」「ニンゲンは、何度でも同じ過ちを繰り返す生き物だ。信用出来るものか!」「......どうやら、この話は平行線のようね。できれば、穏便に事を進めたかったんだけど」「キミがボクの邪魔をすると言うのなら、今ここで決着をつけるしかあるまい。残念だよ。キミへのボクの気持ちは、ホンモノだったというのに......」「......それだって、生前の彼の記憶を元に、作り出した幻想でしょ?」 そしてまた、二人は睨み合ったのだった。

㉔ 残酷な真相
「そうよ。そして私は、昨日までに、渡辺正人くんについて、詳しく調べてみたのよ。アナタたち家族は、3月の春休みに、とある旅行先の事故で、全員、行方不明になっているわ」「......ボクも自分なりに、注意深く、新鮮な死体を選んだんだけどね。脳の一部の損傷のせいで、記憶を完全にコピー出来なかったんだよ」
「あら、ソレは残念......先生から生徒まで、学校関係者の記憶は、すっかり改ざん出来たのにね?」「......」「アナタには、鶴舞公園近くの、マンションの記憶も有ったし、もちろん部屋の鍵も、持っていたけど、自分の部屋やベッドまでは、思い出せなかった。だから毎日、リビングで寝ていたのね?」「ああ、そうとも......でも何でそれを?」「私、以前アナタにご褒美をあげたでしょ?」「ご褒美?ああ、頬にキス......」「あの時、私、アナタの耳たぶの裏に、ちょっとやそっと、洗ったぐらいじゃ取れない、小型発信機を着けておいたのよ」「......成る程。抜かりの無い事だ。流石は真田雪子」「アナタの純情そうな青年の演技も、見事だったわ」「そりゃあ、どうも。そこら辺は、彼の記憶によるところが大きいがね」「......あら、もう演技はおしまいかしら?」「どうやら、ここが終局かな。もう演技は必要あるまい」 二人はそのまま、しばし黙り込んで睨み合った。「アナタの狙いは......やはり私の"時空違いの弟"、雪村なのかしら?」「無論、そうだ。あのような危険な存在を、我々四次元人としては、野放しにはしておけない」「我々......と言いながら、アナタたちは、決して一枚岩では無い。雪村を危険視する見解は、四次元人全体の総意では無いはずよ?」「他の連中が、危機感に疎い、ボンクラ揃いなのだよ」「雪村の事は、私たちチーム・サン・ジェルマンで、きちんと管理しているわ。それでは不満なの?」「もう既に彼は、惑星一つを、遥か遠くの星系まで、飛ばしてしまった。そんな事は、この三次元世界において、神にも勝るワザだ。許されない事なのだ」「それについては、本人も深く反省し、二度とやらないと、誓いを立てたのよ?」「ニンゲンは、何度でも同じ過ちを繰り返す生き物だ。信用出来るものか!」「......どうやら、この話は平行線のようね。できれば、穏便に事を進めたかったんだけど」「キミがボクの邪魔をすると言うのなら、今ここで決着をつけるしかあるまい。残念だよ。キミへのボクの気持ちは、ホンモノだったというのに......」「......それだって、生前の彼の記憶を元に、作り出した幻想でしょ?」 そしてまた、二人は睨み合ったのだった。
