㉓ アナタは誰
「渡辺くん、アナタ、さっきまで何処にいたのかしら?」
雪子さんは、静かにボクに尋ねる。
「......ボク?ボクは家で寝ていたよ」
「あらそう......因みにどんなベッドで?」
「......そ、そりゃあ、普通のベッドだよ」
「昨日の夕食は......何を食べたの?」
「......えっ?」
「食卓には誰が居た?......アナタの家族は、全部で何人?」
「......」
「答えられないわよね?だって本物のアナタは、もうこの世に居ないんですもの......どうやら死体をコピーしても、記憶までは、完全に再現出来なかったみたいね?」
「......」
「ココで最初にアナタに出逢ったあの時に、気づくべきだったわ。そもそもあの日、私は怪しい気配を察知したから、この座標に来たのよ」
「......」
「でも、ほぼ同じタイミングで、あのアラハバキたちが現れたから、すっかり誤魔化されてしまったのよ。私とした事が迂闊だったわ」
「......」
「あら、ダンマリなのね。何か言ったらどうなの?」
「......いつ、気がついたんだい?」
ボクは、やっとの事でそう言った。
「一昨日の段ボールロボット騒ぎの後よ。あれから冷静になって、この1週間程の間に起こった出来事を自分なりに整理して考えてみたの」
「......」
「良く考えたら、アナタは私の思い出を、最初から事細かく、覚えてい過ぎだったわ。何かの弾みで、消した記憶のフラッシュバックが有ったとしても、私の自己紹介のエピソードまでは、中々思い出せないもの。」
「......」
「それに、他の子たちのチカラの発現。鈴木さんも、佐倉さんも、花井くんも、みんなテレキネス系。まあ、町田さんだけは、上空の水蒸気を扱うから、少し特殊だけど、テレキネスの一種と言えなくも無いわ......でも、アナタのそれは、生身の三次元人が扱うには、余りにも危険な代物よ」
「......」
「時間を止めるなんて、下手をすると自らの寿命を縮めかねない......でも死体の成分を元に、再構築した肉体なら、そのチカラの行使に耐えられる。消耗したらソレを捨てて、別の死体を探せばいいんだしね。もしくは私たちのように、不老不死のカラダを持っていなくちゃね?」
「......」
「もっとも決定的だったのは、アナタが最後にやった、他人のリモートコントロールね。アレは完全に、三次元の肉体を持っていないと、出来ないワザだわ」
「......」
「空気中に漂う微粒子を、直接使って、肉体を無理矢理作れば、たちまちそれは、悪魔然とした姿になってしまう......でも、そんなモノは、今日まで何処にも見かけなかった」
「......」
「......という事は、つまり」
「誰かの死体を利用した......と考えたんだね?」
ボクは諦めて白状した。