第1話 荒野が3、鳥が7
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遠い異国の地にて。
果てしなく広がる荒野、地平線の向こうには、まるで天へ昇ろうとする竜のような土煙が立ち込めていた。
なにかが地鳴りを轟かせながらこちらへ向かってくる様子を、双眼鏡越しに眺めるカスガ大尉は、今置かれた状況に大きなため息を一つ吐いた。
「トム、俺たちはアフガンにいたはずだよな?」
「ええ、そのはずでしたが、何故オーストラリア西部にいるんでしょうね?」
「敵の新兵器か、超能力に目覚めたのか、それともモルモットにされたのか? ああ、それより全員無事か?」
「全員無事です。もっとも、我々が何故ここにいるのか、未だにわかりません」
「無事ならそれでいい。トム、お前も見たか?」
「ええ、鳥ですね。荒野が3、鳥が7ですね」
「おいサマーフィールド伍長、お前の出身、南部だったよな? クリスマスじゃねえのに、パーティバーレルの食べ放題が来たぜ!」
「イエッサー。南部のアラバマ出身よ。それよりもキャプテン、ステイツのクリスマスはターキーよ? でもあれは......エミューね」
「ほう、じゃあ七面鳥狩りに変更だな! ところで、エミューとやらは食えるのか?」
「さあ? サマーフィールド伍長はどうですか?」
「高たんぱくでおいしいらしいわよ。先住民も食べていたみたいね」
「で、その先住民は......うん、お前らのご先祖様がやらかしてくれたらしいな?」
「キャプテン、私の出身はテキサスです。嫌味な紳士気取りたちに言ってくださいよ?」
「そうよ、トム中尉の言うとおりよ。英語圏の白人だからって、いくらなんでも雑すぎないかしら?」
「「「HAHAHA!」」」
トム中尉、サマーフィールド伍長とジョークを交わしていたカスガ大尉だったが、笑い合ったのも束の間。
おびただしい量の土煙を巻き上げながら、真っすぐ彼らへ向かってくるエミューの群れは、まるで地を這う竜のようであった。
太鼓のような唸り声を上げて迫るエミューの群れ。
エミューたちに敵意があるのか不明である。
しかし、このまま進路を変えなければ、彼らの所属する米海兵隊シエラ中隊との接触は避けられない。
「トム、ハンヴィーに籠ってやり過ごすか、威嚇するか、どうする?」
「ハンヴィーから適当に撃ってやり過ごしましょう。部隊をいくつかに分けて各自で対応。キャプテンは左翼をお願いします」
「おいトム、俺は日本陸軍大尉だ。今はただの傭兵だから、そもそも指揮権なんてねえぞ?」
「キャプテンなら部下たちも喜んで付いていきますよ? 特にサマーフィールド伍長、お調子者のボブ、ミッキーの上等兵コンビはあなたに首ったけですからね」
「勘弁してくれ。なんで射撃下手トリオを押しつけるんだよ?」
「失礼ね、キャプテン。あんな数で当たらないほうがおかしいわよ?」
「そのとおりだぜ。人じゃないだけ気が楽だぜ」
「ボブ、ニワトリに追いかけられて『ママー! オーマイガー!』って叫ぶお前がそれ言う?」
「ミッキー、カエルにビビって『マミー!
オーノー!』って泣いてたお前が?」
「「「「「HAHAHA!」」」」」
そうして特に緊張感のないまま部隊編成を終え、左翼を担うカスガ大尉(傭兵)、右翼にマイケル軍曹の部隊が展開し、少し下がった中央のトム中尉でいわゆる鶴翼の陣を形成。
各々エミューの群れを迎え撃つ準備は整ったが......一つ、彼らは忘れていた。
かつて人類が、鳥類に完敗した歴史のことを――――。
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