プロローグ
緑豊かな森の中、鳥の囀りが聞こえてくる。
双子の兄妹は木剣を手に、向かい合っていた。
年齢は8歳。
赤い髪と青い瞳をもつ、ふたり。
兄の名はソル。妹の名はマーニ。姓はアルヘイナ。
ソルが木剣を中段で構える。マーニは下段で構えた。
一陣の風が吹き抜け、木々がざわめく。
ソルが地を蹴った。
「はぁぁぁっ!」
木剣を振り下ろす。
マーニは半歩後ろへ下がり、木剣を振り上げる。
ソルの手から木剣が弾き飛ばされた。
「ぁ」
慌てて木剣を拾いに走る。
マーニは呆れながら尋ねた。
「まだ続けるの?」
ソルは木剣を拾い、すぐに構え直す。
「次で最後にするから!」
マーニが目を細めた。
「もう聞き飽きたよ。これで30回目だっけ?」
「32回目だ!」
マーニは息を吐いた。
「はいはい。でも、本当にこれで最後だからね?」
「今度こそ!」
ソルは木剣を握り締め、走り出した。
「てりゃぁぁぁっ!」
マーニは右足を軸に、半歩身体をずらして攻撃をかわす。
この時、勢い余ったソルは、その足をマーニの右足に引っかけ、前のめりに転倒した。
ごつん。
「ソル、大丈夫?」
「ああ」
体を起こしたソルの額の右側には切り傷があり、そこから薄っすらと血が滲んでいる。
マーニの表情が見る見る青ざめた。
「ソル、頭から血が出ているよ......」
ソルは定まらない視点で、マーニを見て、笑みを浮かべる。
「あれ? マーニがふたりいる......?」
そのまま、意識を失った。
*
――これは、8年前の出来事だ。
あの後、何があったのか覚えていない。
意識が戻った時、あいつが泣いていたのを今でも覚えている。
だから、俺は二度とあいつを悲しませないよう、心に誓った。
それは、16歳になった今でも変わらない。