1
西海の果ての果て、虹の彼方の遠つ海に、竜の棲む大島があるという。
竜は神獣。滅多に姿を現さない。けれども、稀に人の国に降り立つことがあり、少しの災いと多くの恵みを与える。
竜は、気の儘、季の巡り。
もし竜に出逢えたのならば、礼やかに持て成し、誠心をもって接すれば、真の幸祐を得るであろう。
竜は伝説であり夢であり、稀なる現でもある。
* * * *
好運というのは、予期せぬところから降ってくる。
初めはそれとはわからぬほど、小さな種のよう。
そして、その種を拾うことも幸運であり、予兆なのだ。
村の老爺が酒瓶を傾けながら、訳知り顔でそんなことを言っていた。
好き運に巡り合うためにはどうしたらいいのかと訊けば、「さてなぁ」と笑うばかりだった。神官様ならわかるかもしれんなぁと、はぐらかされる。
勘は良い方だと思うけれど、わたしは神官でも予言者でもまじない師でもない、ごく平凡な村娘だから、吉兆を先読みするなんて、できるはずもない。
天気予報だって、当てるのはなかなかに難しいのだ。