ホーム›伝説のドラゴン様に求愛されまして。~甘党ドラゴンと村娘のおかしな日常›4
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 それにしてもドラゴンはお酒を好むのか。意外なような、そうでもないような。
 わたしからお酒を提供しておきながら言うのは何だけど、セレ様はこんな小さいうちからお酒を嗜んでいてものだろうか? でも、そもそもセレ様は、体は小さいけれど、もしかしたらかなりご高齢なのかも? 長老様のような話し方をするし......――
 わたしが考え事をしている間に、セレ様はビスケットを全て食べきってしまっていた。そして、空になったグラスをじっと見つめている。
「あ、セレ様。他のお菓子もあるんですが、どうでしょう?」
 慌てて尋ねると、セレ様は目をキラキラさせてわたしを見る。
 わかりやすいなぁ。顔はトカゲなんだけど、すごく表情豊かだ。黒眼くろめのキラキラ具合で察せられる。
 ともあれ、すぐさま次のお菓子を用意した。
 林檎の甘煮と、ビスケットを追加して、添えるのは柘榴ざくろのシロップ。お酒は山桃やまももの果実酒にした。
 甘いものだらけだけど、セレ様、平気かな?
 という心配は、無用だった。
 セレ様は、ことのほか林檎の甘煮を気に入ってくれたようだった。小瓶をふたつ、瞬く間に平らげてしまった。小瓶ふたつ重ねるとセレ様の体の長さと同じくらいなんだけど(尻尾は除き)、ドラゴンの胃袋はいったいどうなってるんだろうか。
 それに、林檎の甘煮はかなり甘く味付けしちゃったのだけど、セレ様はまったく平気みたい。山桃のお酒は濃厚な甘さのお酒なのだけど、こちらも気にせず飲んでいる。甘いお菓子と甘いお酒で、くどそうな組み合わせなんだけど......よほどお腹が空いていたのか、相当な甘党なのか。たぶん、後者だろう。
 セレ様は、前脚と口の周りを甘煮のシロップでベトベトにし、それも構わずがっついている。こういうのを見ると、まだ仔ドラゴンなのかなとも思ってしまう。口周りを拭いてあげたいのだけど、夢中で食べているのを邪魔しちゃ悪い。
 食後に前脚(両手)と口周りを洗えるよう、ボウルに水をいれて、セレ様の傍に置いておいてあげた。布巾と飲み水も並べておいた。
 それらを見て、セレ様は律儀に礼を言った。
「先ほどから吾わればかり馳走になっておるが、ミルカは食べぬのか」
「朝食は済んでますから」
 わたしのことはお気になさらず。全部食べちゃってもいいですよ、と言い添えるとセレ様は嬉しそうに「爆食」を再開させた。

 そういえば......気のせいではなく、セレ様の体がまた大きくなった気がする。食べた分お腹が膨らんだ、という感じではない。身体全体が大きくなってる。今のサイズだと、わたしの片手には乗せられないだろう。見つけたの時の何倍になってるだろうか。
 セレ様の豪快な食べっぷりを頬杖をついてぼんやり観察し、小首をかしげる。
 大きさだけでなく、「形」も変わってきているような気がする。顔はトカゲっぽいままなのだけど、栗鼠っぽさが上がったというか。頭の角も少し伸びているようだ。もうたん瘤には見えない。背中の翼は折りたたまれているので正確な大きさは測れないけれど、たぶんさっき見たより大きくなってるだろう。
 未確認生物感はあるけれど、ドラゴンっぽさはあまりない。少なくともわたしが思い描いていた「ドラゴン」とはかけ離れている。
 もちろん本物のドラゴンを見たことはない。
 でも、本に描かれている想像図とか、神殿の外壁にある古いレリーフとかで見ることはある。だからある程度「ドラゴンとはこういう姿なのだ」という予備知識というか、先入観はあって、それらはやはり「トカゲ」に似ている。だから今目の前にいる「水竜」様の姿はドラゴンと言われれば、まあたしかに、と言えなくもない。
 長老様のお話によると「本物」は、本に描かれたドラゴンの想像図に似ているらしい。もっと巨大で勇壮だという。けど、具体的にどう勇壮なのかわからない。大きさは空を覆うほど、と言っていた。それはさすがに誇張だとしても、大きいことは確かだろう。
 目の前にいる「水竜」様は、たしかにレリーフにあったドラゴンに似ていなくもない......けど。
 まさかドラゴンが「手乗りサイズ」とは思わなかったなぁ。


 皿に盛った林檎の甘煮と柘榴のシロップを食べきった水竜様が、けぷっと可愛いげっぷをもらした。慌ててお口を手で塞いだけれど、間に合わなかったみたい。ちょっと気恥ずかしそうに用意しておいたボウルに手をつけて洗い、口元も拭った。
 それからわたしの方に顔を向け、礼を言った。
「美味であった! こんなに美味なる菓子は、初めて食したぞ、ミルカ! とくに甘煮が気に入った。林檎の酸味と甘味がほどよく舌に絡んで、口の中にいい香りがひろがって、さらに柔らかな食感も良い。甘くて蕩けそうな美味さじゃ。柘榴のシロップも、美味かったぞ。このようにして果物を食すのは初めてじゃが、好よいものじゃな」
「ありがとうございます。そんなに褒められると照れちゃいますが、作った甲斐がありました。」
「なんと、これらは皆、ミルカが作ったものか?」
「はい。お菓子を作るのは好きですし、商売もしているので」
 青果だけでは売る時期も限られてしまうから、加工食品も販売している。幼い頃に母から伝授されたレシピもあるし、わたし自身が試行錯誤を重ねて作ったものもある。林檎の甘煮は、母直伝の味付けだ。
「左様であったか。素晴らしき甘味であった。あらためて礼を申すぞ、ミルカ」
 仮にも神獣である水竜様のお言葉だ。お世辞もあるかもしれないけど嘘はないだろうから、素直にお礼を受け取っておこう。
「どういたしまして」
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伝説のドラゴン様に求愛されまして。~甘党ドラゴンと村娘のおかしな日常作者:あるく
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 それにしてもドラゴンはお酒を好むのか。意外なような、そうでもないような。
 わたしからお酒を提供しておきながら言うのは何だけど、セレ様はこんな小さいうちからお酒を嗜んでいてものだろうか? でも、そもそもセレ様は、体は小さいけれど、もしかしたらかなりご高齢なのかも? 長老様のような話し方をするし......――
 わたしが考え事をしている間に、セレ様はビスケットを全て食べきってしまっていた。そして、空になったグラスをじっと見つめている。
「あ、セレ様。他のお菓子もあるんですが、どうでしょう?」
 慌てて尋ねると、セレ様は目をキラキラさせてわたしを見る。
 わかりやすいなぁ。顔はトカゲなんだけど、すごく表情豊かだ。黒眼くろめのキラキラ具合で察せられる。
 ともあれ、すぐさま次のお菓子を用意した。
 林檎の甘煮と、ビスケットを追加して、添えるのは柘榴ざくろのシロップ。お酒は山桃やまももの果実酒にした。
 甘いものだらけだけど、セレ様、平気かな?
 という心配は、無用だった。
 セレ様は、ことのほか林檎の甘煮を気に入ってくれたようだった。小瓶をふたつ、瞬く間に平らげてしまった。小瓶ふたつ重ねるとセレ様の体の長さと同じくらいなんだけど(尻尾は除き)、ドラゴンの胃袋はいったいどうなってるんだろうか。
 それに、林檎の甘煮はかなり甘く味付けしちゃったのだけど、セレ様はまったく平気みたい。山桃のお酒は濃厚な甘さのお酒なのだけど、こちらも気にせず飲んでいる。甘いお菓子と甘いお酒で、くどそうな組み合わせなんだけど......よほどお腹が空いていたのか、相当な甘党なのか。たぶん、後者だろう。
 セレ様は、前脚と口の周りを甘煮のシロップでベトベトにし、それも構わずがっついている。こういうのを見ると、まだ仔ドラゴンなのかなとも思ってしまう。口周りを拭いてあげたいのだけど、夢中で食べているのを邪魔しちゃ悪い。
 食後に前脚(両手)と口周りを洗えるよう、ボウルに水をいれて、セレ様の傍に置いておいてあげた。布巾と飲み水も並べておいた。
 それらを見て、セレ様は律儀に礼を言った。
「先ほどから吾わればかり馳走になっておるが、ミルカは食べぬのか」
「朝食は済んでますから」
 わたしのことはお気になさらず。全部食べちゃってもいいですよ、と言い添えるとセレ様は嬉しそうに「爆食」を再開させた。

 そういえば......気のせいではなく、セレ様の体がまた大きくなった気がする。食べた分お腹が膨らんだ、という感じではない。身体全体が大きくなってる。今のサイズだと、わたしの片手には乗せられないだろう。見つけたの時の何倍になってるだろうか。
 セレ様の豪快な食べっぷりを頬杖をついてぼんやり観察し、小首をかしげる。
 大きさだけでなく、「形」も変わってきているような気がする。顔はトカゲっぽいままなのだけど、栗鼠っぽさが上がったというか。頭の角も少し伸びているようだ。もうたん瘤には見えない。背中の翼は折りたたまれているので正確な大きさは測れないけれど、たぶんさっき見たより大きくなってるだろう。
 未確認生物感はあるけれど、ドラゴンっぽさはあまりない。少なくともわたしが思い描いていた「ドラゴン」とはかけ離れている。
 もちろん本物のドラゴンを見たことはない。
 でも、本に描かれている想像図とか、神殿の外壁にある古いレリーフとかで見ることはある。だからある程度「ドラゴンとはこういう姿なのだ」という予備知識というか、先入観はあって、それらはやはり「トカゲ」に似ている。だから今目の前にいる「水竜」様の姿はドラゴンと言われれば、まあたしかに、と言えなくもない。
 長老様のお話によると「本物」は、本に描かれたドラゴンの想像図に似ているらしい。もっと巨大で勇壮だという。けど、具体的にどう勇壮なのかわからない。大きさは空を覆うほど、と言っていた。それはさすがに誇張だとしても、大きいことは確かだろう。
 目の前にいる「水竜」様は、たしかにレリーフにあったドラゴンに似ていなくもない......けど。
 まさかドラゴンが「手乗りサイズ」とは思わなかったなぁ。


 皿に盛った林檎の甘煮と柘榴のシロップを食べきった水竜様が、けぷっと可愛いげっぷをもらした。慌ててお口を手で塞いだけれど、間に合わなかったみたい。ちょっと気恥ずかしそうに用意しておいたボウルに手をつけて洗い、口元も拭った。
 それからわたしの方に顔を向け、礼を言った。
「美味であった! こんなに美味なる菓子は、初めて食したぞ、ミルカ! とくに甘煮が気に入った。林檎の酸味と甘味がほどよく舌に絡んで、口の中にいい香りがひろがって、さらに柔らかな食感も良い。甘くて蕩けそうな美味さじゃ。柘榴のシロップも、美味かったぞ。このようにして果物を食すのは初めてじゃが、好よいものじゃな」
「ありがとうございます。そんなに褒められると照れちゃいますが、作った甲斐がありました。」
「なんと、これらは皆、ミルカが作ったものか?」
「はい。お菓子を作るのは好きですし、商売もしているので」
 青果だけでは売る時期も限られてしまうから、加工食品も販売している。幼い頃に母から伝授されたレシピもあるし、わたし自身が試行錯誤を重ねて作ったものもある。林檎の甘煮は、母直伝の味付けだ。
「左様であったか。素晴らしき甘味であった。あらためて礼を申すぞ、ミルカ」
 仮にも神獣である水竜様のお言葉だ。お世辞もあるかもしれないけど嘘はないだろうから、素直にお礼を受け取っておこう。
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