世界の住人とあとがき
このお話は「月」にまつわる様々な民話・伝承を一つの世界にまとめたお話です。
以下、登場人物の出典と詳細です
・老人
出典は聖書に登場する物語
安息日に薪を集めた(労働した)罰のために月に幽閉され、その姿を永遠に晒すことになった男。
かつては子供に聞かせるお話だったが、流石に理不尽と思われたのか現代ではあまり聞かせることが無くなった様子。
月の世界ではその理不尽な境遇ながらも特に悲観もせず月の住人たちと仲良くやっており、毎日を楽しく過ごしている。
特に役割も無いので月の新たな住人の案内役を自主的に行っている。
・ジョウガ
出典は中国の月の女神
不老不死の薬を二つ飲んで天に昇った元人間。
伝承によっては夫を裏切って(夫の分も自分で飲んだ)神になったため、その罰としてカエルしかいない月に幽閉されたともされる。
月の世界の影の支配者(女神)
普段は医者(薬師)のフリをしているが、自らが飲んだ不老不死の薬を再現して月の住人たちに永遠を与えている。
それは自らの孤独を癒すためなのか、月の住人たちを想っての事なのか......。
・ウサギたち
出典は言わずもがな日本(と中国の一部)
月の模様から想像される動物としては独特で、しかも「餅をついている」とするのが面白い。
中国ではカエルが薬を煎じているともされている。
こちらの文化が広まらなかったのは餅を食べる口実が欲しかったからだろうか?
月の世界においても常日頃から餅をついている。
餅をつく事が楽しすぎて作り過ぎてしまうが、月の住人たちには好評である。
でも老人が喉に詰まらせないかといつも心配している。
・月の様々な住人たち
世界各国で月の模様から想像される動物や人の姿。
本を読むおばあさん、カニ、ワニ、クマ、etc...
様々な生き物が月の模様から想像され、月の住民は豊かになっていく。
しかしそこに「犬」の姿はないようだ......。
月の世界においては役割があったりなかったり。
危険な動物などもいるが(ワニヤクマなど)ここは永久に優しい夜の都。
月の住民たちが争う事はなく、みな仲良く穏やかに過ごしている。
・ロナ
出典は各国が月の模様に見る「水桶を運ぶ少女」と、マオリ(ニュージーランド)に伝わる伝承「月に攫われた少女ロナ」
月に攫われた彼女が悲しむことで、月に影ができると伝えられている。
月の世界では「水守」という役割で月の住人と、月の中で眠るラフコイたちを癒している。
健気で優しく元気に働く彼女は月の住人みんなからよく好かれており、彼女もみんなを好いている。
しかし、どれだけ月の世界が優しくとも彼女の地球への哀愁は尽きる事は無く、彼女が地球を想って悲しむことで月が欠け始める。
・バクナワ
出典はフィリピンのヴィサヤ地方の伝承
言質の伝承では巨大な龍が月を飲み込もうとするため月が欠けると伝えられている。
月蝕の際は太古などを叩いてバクナワを追い払う儀式があるらしい。
月の世界ではロナを想う住人の一人。
ロナが悲しむと目覚め、彼女を捉える月を喰らい、月の世界を喰らいつくそうとする。
その行いはロナを想う優しさからであり、そこに悪しき感情はない。
そして彼はまたロナの歌声で眠りにつく。なお、ずっと寝ているわけではないらしい。
・ラフコイたち
出典はフィンランドの一部部族の伝承
ラフコイと呼ばれる亡霊(あるいは精霊)が月を食べたり再生させたりすると伝えられている。
南オストロバニアでは精霊が月を食い、ラフコイが再生するという。
月の世界では地球で死した亡霊が月の中で眠り、水守のロナに癒されている。
ひとたび龍が月を食えば月の中から現れ、ロナのここを癒して新たな月の一部となって月を再生していく。
きっと地球に帰ったのだろう。
・クドリャフカ(アナタ)
宇宙船スプートニク2号に乗せられた悲劇の雌の犬。
愛されながらも地球に帰る事が期待されておらず、孤独な宇宙に放り出されることとなった。
地球軌道を始めて周回した、最初の動物である。
物語の最後に明らかになるアナタの正体。
彼女は物語の中では傍観者だが、この物語で救われたのはロナではなく
この優しい世界に迎え入れられた彼女である。
◆あとがき
クドリャフカの月、お読みいただきありがとうございます。
この物語は月のウサギのイラストを見てchatGPTと「他の国には月にどんな動物がいたり、伝承があるのだろう?」という雑談から着想を得て書いたものです。
あらゆる国の月の伝承を一まとめにしたらステキだな、と宮沢賢治の銀河鉄道の夜のような、幻想的な世界を目指して書きました。
おとぎ話のような幻想の世界で、最後に救われるのが現実の悲劇。ここは永久に優しい夜の都。
ところで「月」と言ったらかぐや姫がいないことを疑問に思われるかもしれませんが、多分ジョウガがかぐや姫です。(不老不死の薬を残してるし)